本日、ここに平成十六年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましてはご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。
初めに、新たな行財政改革プランについて申し上げます。
本日、今後の区政構造改革の基本指針となる行財政改革プラン二〇〇四の素案を公表いたしました。今回のプランは、直面する平成十七年度、またそれ以降も恒常的に発生する財源不足に対処するとともに、右肩上がりの時代に構築され平成十年度頃まで引きずってきた行財政システムに代わる新たなシステムを構築し、歳出の構造改革を行うことに目的があります。真に行政が担うべきニーズや課題を選び、限られた財源をそれらに集中していくとともに、区民との協働を広げながら、地域社会が必要とする公共サービスを多様な主体が担い合っていく、そうした行政の姿、そして地域社会の姿を明確に描き、実現に向けた取組みを着実に進めてまいりたいと考えております。
さきの定例会でも申し上げましたように、現状のサービス水準を維持した場合には大きな財源不足が見込まれております。今年二月時点では、一般財源ベースで、平成十七年度に七十一億円、二十一年度までの五年間で三百八億円という見通しでございましたが、その後の変動要因を加え、八月時点で改めて推計いたしましたところ、十七年度では六十七億円、五年間では三百七十億円の財源不足との結果となりました。これは、国民健康保険や介護保険など、最新の医療費や給付費の増加傾向を踏まえて算定した結果、特別会計への繰出金が大きく変動したことが主な要因でございます。五年間の財源不足が六十二億円増加するという、前提条件が厳しさを増す中での素案の取りまとめとなったのでございます。
こうした財源不足に対しまして、本日お示ししたプランでは、人件費の抑制や内部管理コストの節減、事業や施設の再構築等によりまして、平成十七年度において約四十億円、五年間で約二百二億円の財政効果を生み出す内容となっています。しかしながら、これに義務教育施設整備基金の活用や一定の財源対策を加えても、依然として平成二十一年度までに百七十四億円の財源不足が見込まれ、今後も継続した改革の取組みが必要であると認識をしております。こうした状況を踏まえまして、今回のプランでは、五年間という計画期間のうち、平成十七年度から十九年度までの三年間を集中改革期間と位置付け、新たな改革の取組みを加えながら、毎年度プランを全面的に改定し、改革を推し進めるシステムを組み入れております。
次に、今回のプランが目指す改革の基本的な考え方について申し上げます。プランでは、区政の構造改革を進める考え方として、四つの目標を掲げております。
一番目は、「スリムで変化に強い行政経営の確立」であります。右肩上がりの時代に拡大を続け、身の丈以上に大きくなった行財政そのものをスリム化し、刻々と変化する社会環境に機敏に対応する財政と組織の力を回復することを意図したものであります。
二番目は、「身の丈に合った持続可能な財政構造の構築」です。安定した行財政運営を維持していくため、財政の健全性の目安となる財政指標の目標を設定しています。これまでの経常収支比率、公債費比率に加え、人件費比率、財政調整基金積立の目標を新たに加えております。
三番目は、「多様な主体の支え合いによる新たな公共の構築」です。本格的な高齢社会に向けて、多様化し、増大していく地域社会のニーズに対応していくためには、行政に加え、区民、地域団体、NPO、民間企業など、多様な主体が公共サービスを担い合っていくことが必要であります。こうした「新たな公共の創造」に向け、地域社会が潜在的に持つ地域の力を育て、区民や事業者との協働を拡大するために設定したものであります。現在進めている自治基本条例の検討や地域区民ひろぱ構想は、こうした仕組みづくりの中心的存在であり、これらを含めまして、今回のプランでは、「としま自治新時代の創造」という章を設け、体系化を図っております。
そして、四番目は、「安定した歳入確保に向けた魅力と価値の創造」です。今後の人口減少社会は、居住の場として都市が選ばれる時代であります。将来にわたり安定した都市経営を進めていくためには、都市の魅力と価値を高める戦略を明確に示し、民の力を引き出しながら、定住人口や来街者の増加、地域経済の活性化を図るなど、中長期的な視点から。税収に結び付くまちづくりを戦略的に展開していくことが重要であります。この目標は、こうした考え方に基づき、これまでにない新たな改革の目標として掲げたものであります。
また、歳出のうち、扶助費や国民健康保険を初めとする特別会計への繰出金は、その伸びが著しく、財政硬直化の構造的な要因となっております。本格的な高齢社会に向け、こうした社会保障や医療に関する経費を抑制することも大きな課題であります。プランでは、いわば都市経営という観点から、中長期的に歳入確保と歳出抑制に取り組むことを明らかにするため、「としま未来への経営戦略」と題する章を設けております。歳入確保としては文化政策と都市再生による「新たな魅力と価値を生むまちづくり」を、そして高齢社会の進展に伴う歳出抑制としては「健康政策」を、今後、戦略的に推進する新たな柱として位置付け、それぞれに基本的な方針を示しております。
次に、これら目標の実現に向けた主な取組みについて申し上げます。
初めに、公共施設の再構築についてであります。平成十五年度決算においても施設関連経費は依然として大きく、歳出総額の四割を占める状況であります。こうしたことから、今回のプランでは、施設の民営化や指定管理者制度の活用等により、サービス内容の維持・向上に留意しつつ、コスト削減に向けた見直しに大きく踏み込んでおります。
まず、猪苗代青少年センターと秀山荘につきましては、平成十七年度からの民営化を予定しております。民間の施設となりますが、区民への優遇措置、小中学校の移動教室は継続してまいります。区立保育園についても、今後五年間で七園について、民営化または委託化を進めるとともに、区立の特別養護老人ホームと高齢者在宅サービスセンターについても民営化を図ります。
また、公共施設の管理を民間に代行させる指定管理者制度についても積極的に活用を図ります。平成十七年度には、区民センター、社会教育会館、体育施設など二十施設を対象として、同制度への移行を予定しております。さらに、区民集会室につきましては、原則小学校区に一施設という新たな配置基準を設定し、三十八施設から三十二施設へ再配置を図ります。このほか、三カ所の児童館や巣鴨豊寿園、青年館の廃止、子ども家庭支援センターの統合、東池袋四丁目再開発施設への中央図書館の移転等も計画しております。
二番目に、事務事業の見直しについて申し上げます。見直しに当たっては、社会状況の変化、他自治体と比較したサービス水準の状況等を踏まえ、ゼロベースからの見直しを実施いたしました。その結果として、三十二項目の休廃止、七十一項目の見直し、そして十三項目にわたる受益者負担の適正化をプランに位置付けております。さらに、平成十七年度以降に予定しておりました投資的経費や新たな政策的経費の抑制にも取り組んでおります。これらに内部管理コストの節減や外郭団体への補助金等の見直しを加えた、人件費を除く歳出抑制効果は、平成十七年度で三十二億円、五年間で百七十四億円を見込んでおり、過去に例のない大きな見直しとなります。
三番目に、人件費の抑制についてでありますが、まず事務事業の見直しや公共施設の再構築と並行して、平成十七・十八年度の職員採用ゼロを含め、今後五年間で四百人の職員定数の削減を着実に実施してまいりたいと思います。また、特別職の給料等の減額、時間外勤務手当の削減、特殊勤務手当の見直し、再雇用職員の雇用期間の短縮など、人件費全般にわたり検討をしております。これらによる財政効果は、五年間で約七十二億円を見込んでおります。
四番目として、業務の民間委託であります。これまで進めてまいりました住民記録や国民健康保険のデータ入力業務、図書館の窓口業務、小学校給食調理業務等の委託をさらに加速するとともに、出納業務や粗大ごみ収集業務など、定型的・専門的業務を中心に委託範囲の拡大を図っております。
以上申し上げましたとおり、今回のプランは、内容・規模ともにいまだかつてない大きな改革となっております。それだけに、実行に伴う変化や痛みも、これまでになく大きなものであると認識をしております。しかし、この改革なくして、活力ある豊島区を次の世代に引き継いでいくことは困難であります。今回の素案の内容につきましては、広報紙等により区民の皆様にお知らせするとともに、私が先頭に立ち、全庁を挙げて一つ一つ改革の必要性を説明し、区民の皆様のご理解を得てまいりたいと考えております。
また、今回のプランは、今後三年間の集中改革期間における第一弾としてお示しするものであります。今後、さらなるダイナミックな改革の展開に向け、あらゆる可能性を探ってまいります。区議会の皆様におかれましても、区政の構造改革のあり方、そしてプランが掲げる個別の取組みにつきまして、ご意見・ご指導を賜りますよう心からお願いを申し上げる次第でございます。
次に、平成十五年度決算について申し上げます。
平成十五年度一般会計決算額は、歳入が収入率九六・二%で八百七十億七千一万九千円、歳出が執行率九五・一%で八百六十億六千六百二十万五千円となり、前年度決算額に比べて、歳入・歳出とも同率の四・九%、いずれも前年度に引き続きマイナスとなりました。歳入の減は、特別区税が課税人口の増などにより三年連続して増収となったものの、都区財政調整交付金が前年度に引き続き、しかも大幅な減収となったことなどによるものであります。また、歳出の減は、障害者支援費制度の創設などによる扶助費の増があったものの、人件費、公債費、投資的経費、さらには一般行政経費に至るまで、財政健全化による経費抑制効果が反映されたことによるものであります。歳入・歳出の差引きであります形式収支は十億三百八十一万四千円、実質収支は九億三千五百八十一万四千円となりました。また、前年度十八億八千二十七万七千円の赤字であった単年度収支は八千四百六十万六千円の黒字となりましたが、実質単年度収支は、六億百八十九万六千円の赤字、二年連続の赤字となりました。経常収支比率については、三年連続で八〇%台を維持できたものの、八七・二%と八〇%台後半の数値であり、財政硬直化が引き続き懸念される結果となっております。
次に、平成十七年度予算編成について申し上げます。
我が国の経済は、国全体としては堅調に回復しているとはいうものの、景気の先行きについては、海外経済の減速や原油高騰の影響、デジタル家電の頭打ちなど、懸念材料も多く、依然として雇用環境も厳しいことなどから、やや不透明感が漂い始めております。こうした状況下において平成十七年度の財政収支を見通しますと、歳入面では、特別区税と都区財政調整交付金についてはほぼ前年度並みを確保できる見込みであるものの、平成十六年度予算に計上した用地売却収入に代わる財源の手立てがないなど、非常に厳しい状況になっております。さらに、歳出面におきましても、義務的な経費である扶助費や特別会計繰出金など、財政構造の硬直化につながる経費が引き続き増となる見込みであります。先程申し上げましたとおり、平成十七年度の財源不足の見込みは六十七億円でありますが、現時点では、改革プランによる財政効果、義務教育施設整備基金の活用、そして約十八億円の財源対策を講ずることなど、一定の見通しを立て、予算編成作業を進めているところであります。
なお、組織内部の権限委譲に向けた取組みの一つとして、平成十七年度の予算編成から、編成作業の一部を各部局長に委ねる方式を採用いたしました。今後は、義務的経費や投資的経費などを除く経費について、来年度の予算額の枠を部局ごとに配分し、現場で直接サービスを担っている各部局が政策目標をより効果的に実現するよう、創意工夫を凝らしながら予算編成に取り組むことになります。将来的には、今回の実施結果を踏まえ、庁内の分権化をさらに進めてまいりたいと考えております。
次に、地域区民ひろば構想について申し上げます。
現在、区が進めております地域区民ひろば構想は、区立小学校の通学区域を単位として、新たな地域コミュニティをつくり上げることを目的とするものであります。これまで積極的にご参加をいただいている町会、各種委員、PTAやボランティアの皆さんに加え、これから先、退職期を迎え、企業社会から地域社会に戻ってくる団塊の世代の方々にも、幅広く地域活動へ参加していただき、自己実現を図る場として地域に目を向けていただくためにも、魅力ある仕組みづくりが必要であります。そして、今後の少子高齢・低成長社会において、行政サービスを拡大することが難しい中、多様な地域社会のニーズに応える地域の力を育て、地域に活力と特色を生むための仕組みとしても重要な役割が期待できるものと考えております。
また、学校を開かれたものとし、学校を地域から支えていくという視点から、地域区民ひろば構想が目指す方向は、本区の教育改革とも合致するものであると考えております。これまで、地域区民ひろば構想の実現に向け、四月と七月の二十三小学校区での説明会や各種団体等への説明など、構想に対する理解を深める努力を積み重ねてまいりました。説明会では、仕組みがわかりにくい、目的と効果が明確でないといったご意見や、全児童クラブヘの移行に対する不安の声が多く聞かれたところであります。また、区議会からも、区民の意見を尊重すべき、拙速に移行すべきではないといったご意見をいただいてまいりました。
本格的な分権社会における新たな地域コミュニティづくりに向け、この構想が果たす役割の重要性について、私の認識に変わりはありません。しかし、この構想は、地域と区が力を合わせることで初めて実現し、真価を発揮するものであり、区民の皆様との共通認識、そして信頼関係の下に進めることが何よりも大切であります。したがいまして、この構想の意義や目的、効果について、区民の皆様とともに、さらに時間をかけて考え、よりよい仕組みとしていくため、すべての地域で平成十七年度から地域区民ひろばを実施するという、これまでの方針を変更することといたしました。具体的には、施設の整備条件等を踏まえて選定した巣鴨、西巣鴨、朝日、南池袋、高松、さくらの六つの小学校区において、まず平成十七年度にモデル実施を行うというものであります。ことぶきの家や児童館の廃止は行わず、現行制度の中で、利用制限の緩和や全児童クラブの実施など、地域区民ひろば構想を試行的に実施することで、区民の皆様とともに様々な検証を行ってまいります。こうしたモデル実施の結果を踏まえた上で、必要となる見直しを行い、来年の秋頃を目途に、平成十八年度以降の本格実施に向けた制度内容をお示ししたいと考えております。
次に、放置自転車等対策推進税について申し上げます。
既にお知らせしておりますように、放置自転車等対策推進税につきましては、約九カ月に及ぶ総務省との協議を経て、去る九月十三日にようやく総務大臣の同意を得ることができました。これまでの間に、総務省との協議では異例の公開ヒアリングや国会での政治的な圧力など、様々な紆余曲折がございました。一度は総務大臣による判断見送りの方針が示されましたが、豊島区議会の「早期同意を求める決議」という力強い後押しによりまして、一転、同意に至ったものと考えております。このことは、課税自主権を生かした地域固有の政策課題の解決に向け、地方の強い決意が国を動かしたものであり、この場をお借りいたしまして、改めて区議会の皆様方のご支援に心よりお礼を申し上げる次第でございます。
本税の創設は、一向に改善しない放置自転車問題に大きな一石を投じ、自転車利用者、行政、そして鉄道事業者が責任と負担を公平に分担する新たな仕組みの構築に向け、社会的な論議を巻き起こしました。これまで鉄道事業者からは様々な批判がありましたが、総務省はこれらの点も慎重に検討した上で同意したものと受け止めておりますので、本区としては自信を持ってこの税を導入していきたいと考えております。なお、総務大臣の同意には、鉄道事業者との関係を憂慮する趣旨の意見書が付けられておりますので、今後も誠意を持って鉄道事業者との協議を続けるとともに、具体的な施行時期につきましては、議会の皆様とも十分に協議をさせていただき、慎重に判断してまいります。
次に、帝京平成大学の誘致について申し上げます。
この七月三十日、旧時習小学校用地売却の入札が行われ、千葉県市原市に本部を置く帝京グループの学校法人帝京平成大学が落札いたしました。落札金額は六十五億百万円で、最低予定価格を約二億円上回る結果となりました。私は、早速、帝京平成大学の沖永荘一理事長をお訪ねし、今後の構想について意見交換をしてまいりました。沖永氏は、現時点で、大学本部及び医療系の学部・学科、四千人程度の学生の移転を検討していること、また医療系の学部・学科を本区に移転することで、板橋区にある帝京大学医学部及び附属病院等との関係を密にし、地域に貢献する、医療を主体とした教育を行っていきたいとのお考えを表明されました。
大学は、文化のシンボルであり、後世に残る都市の財産でもあります。新たな大学の誘致は、「文化を基軸とした価値あるまちづくり」にとっても大きな効果が期待できると考えております。四千人もの学生により、副都心に新たな人の流れが生まれ、若者の息吹溢れる店舗も増えていくことが予想されます。さらに、大学が持つ知識や技術は、知的集積拠点として、公開講座の実施や産学連携による事業展開による地域や区民の皆様への貢献も期待できます。こうした認識の下、私は、帝京平成大学をまちづくりのパートナーとしてお迎えし、立教大学などとともに「大学の街・池袋」としてのイメージアップと文化政策の推進に向けた連携を深めてまいりたいと考えております。
なお、売却収入六十五億円のうち、三十五億円は平成十六年度の財源対策として充てるとともに、残る三十億円につきましては、義務教育施設整備基金に積み立てて、平成十七年度以降の施設整備に充ててまいります。
次に、新東京タワーの誘致について申し上げます。
私は、さきの定例会におきまして、世界に誇る新タワーの誘致実現に向け、区としてできる限りの協力と支援を行うことを表明いたしました。七月には、私を本部長とする新東京タワー誘致推進本部を設置し、NPO法人が提案する事業計画の策定支援、各種法令や都市計画上の課題整理などを進めるとともに、計画地である造幣局東京支局に対しまして、タワー構想を説明し、事業への協力要請を行ってまいりました。七月三十日には、私自身、大阪の造幣局本局を訪問し、直接、協力を要請してまいりました。そして、九月二十一日、これまでの基本的な調査検討を踏まえ、次なるステップへと進むため、区と区内事業者が協力する形で、新東京タワー事業化準備委員会を設立いたしました。
新タワーは、豊島区の将来に新たな展望を開くプロジェクトであり、区の総意として取り組むことが何より重要であると考えております。このため、まずは区内の企業等を中心とする準備委員会を立ち上げたものであります。今回設立した準備委員会の役割は、構想段階にある現在のタワー計画を年内という限られた期間の中で実現可能な事業計画書としてつくり上げることにあります。都市計画的な手法の整理や事業採算性を明確にした資金計画の策定を初め、調査検討項目は多岐にわたりますが、造幣局、そして放送事業者による適正なご判断をいただくためにも、事業計画書が果たす役割は大変重要となります。
池袋副都心への新タワーの誘致は、豊島区の街づくりを画する百年の計であります。民間のシンクタンクによる検証によれば、新タワー誘致による経済効果は、タワー周辺における波及効果を含め、年間七百六十九億円にも上るとの結果が出ております。東池袋四丁目の市街地再開発事業や補助八一号線の沿道まちづくり、南池袋二丁目の街区再編まちづくり、そしてLRTの導入と新タワーの誘致を総合的に進めることで、池袋副都心は大きく変わります。その効果は、池袋副都心から大塚・巣鴨へ、そして豊島区全体の価値を高めていくことに必ずやつながっていくと確信しております。
一昨日、今年の基準地価が発表されました。残念ながら、豊島区は、都心区の地価が上昇に転じる中、商業地・住宅地ともにまだまだ大きく下落が続いております。今こそ、新東京タワーの誘致を契機に、池袋副都心を大きく生まれ変わらせていかなければなりません。その実現に向け、区民の皆様から広くご支援をいただきながら、官民を挙げた取組みに全力を挙げてまいりますので、区議会の皆様のより一層のご協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
最後に、今後の文化政策の展開について申し上げます。
先般、八月十九日から二十四日の六日間にわたり、立教学院・立教大学主催による「江戸川乱歩と大衆の二十世紀展」が開催されました。今回は、立教学院創立百三十周年記念として、保存・修復がなされた旧江戸川乱歩邸土蔵も特別公開されました。六日間の入場者数は二万三千人に上り、旧乱歩邸にも一万五千人の見学者が足を延ばしたとのことです。また、この展覧会に合わせ、池袋各書店でのブックフェア、新文芸座での乱歩映画祭、池袋演芸場での乱歩新作落語口演等々、まさに乱歩づくしの感があります。こうした様々な企画が同時に進行することにより、街全体が会場と化し、多くの人々が池袋の街を訪れました。街を舞台に、大学、地元企業を初め、書店、映画、演芸等々の各種文化産業が乱歩を核にしてつながり合う、こうした取組みこそが、様々な文化的要素が複合的・重層的に組み合わさった文化クラスターのモデルケースであると考えます。この文化クラスターという考え方は、さきの文化政策懇話会の提言で初めて示されたものですが、様々な文化資源を一粒一粒のブドウの実に例え、それらをブドウの房のように有機的に結び付け、新たな文化活動を連鎖的に起こす仕組みを指しております。
このほかにも、NPOが運営主体となり、旧朝日中学校施設を活用した文化芸術創造支援事業として、にしすがも創造舎が八月にオープンいたしました。今月には、地域と立教大学が連携して開催された池袋ジャズフェスティバルが大成功を収めました。また、新たな文化の担い手の育成を目指すとしま文化フォーラムもいよいよ第二期を迎えました。そして、明日からは三十七回目となるふくろ祭りが始まり、東京よさこい、友好都市観光物産展も開催されます。また、今年十一月には、東口グリーン大通りにオープンカフェが登場いたします。これは、国土交通省の社会実験に、豊島区と区内の四団体が応募し、選定されたものであります。四日間という期間でありますが、秋風の下、歩道に広げられた大きなパラソル、ミニコンサート、路上アートなど、歩道を活用した楽しくお洒落な空間が出現する予定であります。
文化は、人と人とをつなぎ、次々に新たな可能性を街の中に生み出していきます。こうした連鎖こそが文化クラスターであり、私が目指す戦略的な文化政策のビジョンであります。こうした認識の下、今年度は、総合的な文化政策を推進していくための基本的な枠組みをつくり上げてまいりたいと考えております。まず、文化政策の総体を示す豊島区文化政策推進プランを年度内に策定いたします。これに合わせ、規制緩和等の支援措置を活用しながら、文化創造の環境整備を図るため、十月には内閣府へ地域再生計画を申請いたします。こうした取組みにより、豊島区全体で多様な文化クラスターが形成され、様々な創造活動が展開される文化特区の実現を図ってまいります。そして、この基本的な枠組みを土台とし、豊島区の文化政策の方向性を内外に明らかにし、区民の皆さんとともに「文化都市としまの創造」を推進していくため、来年には文化都市宣言を行いたいと考えております。
中国の古典「列子」に、「時を得る者は昌え、時を失う者は亡ぶ」という言葉があります。時流を的確に判断して、機会をつくり出せるかどうかが盛衰の分かれ目であるという趣旨であります。区政の構造改革も、池袋副都心を中心とした都市再生も、今、半世紀に一度の重要な局面を迎えていると言っても過言ではありません。今こそが好機、チャンスであり、その「時」なのであります。ここ数年の区政改革、そして都市再生に対する取組みの成否は、今後の豊島区の発展を大きく方向付けるものであります。こうした認識の下、全力を尽くして未来に向けた取組みを推し進めてまいります。何とぞ絶大なる議員各位のご理解・ご協力を重ねてお願い申し上げる次第であります。
本日ご提案申し上げます案件は、条例五件、決算認定五件、予算二件、その他六件、合わせて十八件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして助役並びに収入役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。