本日、ここに平成十六年第四回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましてはご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。
初めに、今年になりましてからの度重なる台風の来襲や新潟県中越地震などの自然災害によりましてお亡くなりになった方々に対しまして、衷心より哀悼の意を表しますとともに、現在、復興に立ち向かっている多くの方々に対しまして、改めて激励の言葉をお送りいたしたいと存じます。
まず、新潟県中越地震への対応について申し上げます。
去る十月二十三日に発生した新潟県中越地震では、昨年十一月に災害時相互応援協定を締結した堀之内町が被災いたしました。区では、星野町長と直接連絡を取り合い、即座に物資の搬送等を決定し、翌日には被災地に駆け付け、水や食糧等の救援物資を現地に届けるとともに、人的支援も含め全面的な協力を申し入れました。その後、十一月十一日には、合併して魚沼市となった旧堀之内町に山木危機管理監を中心に九名の職員を派遣し、災害状況を確認いたしましたが、被災から三日後には電気が全戸復旧し、怪我人も軽症がほとんどであったことなどから、町は次第に落着きを取り戻しつつある様子でした。
また、旧堀之内町等への義援金ですが、区民、区議会、そして職員の皆様から大きなご支援をいただきまして、十一月二十五日現在、一千三百五十万円の義援金を送ることができました。皆様のご厚意に対し、心よりお礼申し上げます。
昨日は、今回の支援活動に対する感謝の意を伝えるという趣旨で、魚沼市と魚沼市議会、そして観光協会等の皆さんがお見えになり、中池袋公園において「地震に負けずがんばっています!魚沼市フェア」が開催されました。会場は大変な盛況で、被害状況を伝えるパネル展示や地場物産の販売などが行われ、被災地の皆さんが元気な姿を見せてくださいました。また、木下広防災対策調査特別委員長のご参加もいただき、区・警察・消防関係者を交えた防災懇談会も開催し、今回の震災について情報交換を行ったところでございます。
今回の支援活動では、協定に基づき迅速かつ適切な対応ができたものと考えておりますが、一方で、被災地の正確な状況把握や支援内容の選択とタイミング、支援を受ける側の負担軽減を図るネットワークの構築など、今後に向けた改善点も浮かび上がってまいりました。今月十八日には栃木県の南那須町との間で十団体目となる防災協定を締結いたしましたが、今回の支援活動の経験から、協定を結ぶ団体相互のネットワークを強化することで、より効果的な支援活動が可能となるとの思いを改めて強く感じたところであります。今後とも、区と防災協定を結ぶ自治体相互間で十分に協議を行い、より有効な支援体制を構築してまいりたいと考えております。また、こうした支援活動のあり方を初め、今回の被災状況や支援活動から明らかになった課題や教訓について、区の防災対策に生かすべく、既に点検作業に着手したところであります。避難所の運営やトイレ対策、備蓄物資の見直し、さらには民間事業者やボランティアとの協働など、区の防災計画全般にわたり早急に見直しを進めてまいります。
次に、池袋副都心の再生に向けた取組みについて申し上げます。
二十三区で唯一人口が減少した昨年に引き続き、残念ながら、今年もこうした豊島区の人口減少が続いております。九月の基準地価の状況を見ても、都心区の地価が上昇に転じる中、商業地・住宅地ともに、豊島区の地価下落は底入れの気配が感じられない状況であります。今こそ池袋副都心の輝きを、そして豊島区全体の元気を取り戻すために、価値ある街づくりへの取組みを本格化すべき時であります。
池袋副都心の周辺では、これまで準備を進めてきた様々なプロジェクトが今後次々に実現する時期を迎えます。東池袋四丁目地区の市街地再開発事業、そして新たな文化の発信拠点となる新中央図書館と交流施設、渋谷方面への地下鉄十三号線の開通、帝京平成大学の進出、東口の駅前広場整備と新交番設置、観光情報センターの設置など、多くのプロジェクトが着実に進んでおります。また、現在、池袋駅周辺や東口のグリーン大通り、西口の劇場通りの沿道について、建築物の低層階における店舗・業務等の義務化、看板等の色や形の制限に加え、特に性風俗関連営業の新規出店制限に重きを置いた地区計画の導入を検討しております。これにより賑わいと活気に溢れた良好な街並みを誘導するとともに、治安対策や環境美化対策との連携により、副都心地域における一層の安全・安心を確保してまいりたいと考えております。さらに、今後十年の間に副都心周辺の都市計画道路の整備が大きく進展することも都市再生の大きな追い風であります。道路の整備と沿道の街づくりを一体的・計画的に推進することで、良質な都市型住宅や街並みの形成を誘導し、住みたい街、住み続けたい街としての価値とブランドを高め、地域の活性化とファミリー世帯の定住を促進してまいりたいと考えております。
そして、こうした都市再生の大きな動きとして、この秋から東池袋四・五丁目地区における補助八一号線沿道街づくりと、環状五の一号線南池袋二丁目地区の街区再編街づくりがいよいよスタートいたします。補助八一号線沿道街づくりは、都電の魅力を生かした街路整備を図りつつ、木造住宅密集地域の改善や防災性の向上など、沿道の街づくりを一体的に推進するものであります。今月の八日には、新たに発足した沿道街づくり協議会の第一回目が開催され、事業の早期実現への要望が強く出されたところであり、東京都との連携の下に、来年度の事業認可に向けた取組みを着実に推進してまいります。都区の連携をより強化するため、東池袋地区の街づくりに関する連絡・調整の場として、この十二月には東京都都市整備局の技監を会長とする都区連絡会を設置いたします。
次に、南池袋二丁目地区の街区再編街づくりについては、この度、事業のガイドラインとなる街並み再生方針案を策定いたしました。この制度は、地区全体の将来像を定め、都市計画による規制緩和の手法を活用しながら、段階的に道路等の基盤を整備し、魅力ある街並みを実現するものであります。都のしゃれた街並みづくり推進条例に基づく新たな制度であり、全国でも先駆的な取組みを展開するものであります。
そしてさらに、池袋西地区においても、二本の副都心アプローチ道路の整備と連動した街づくりが大きく進展いたします。区が事業主体である補助一七三号線沿道については、大規模なワンルームマンションの建設を禁止するなど、地域独自のルールを含む地区計画の策定作業を進めてまいりました。その結果、補助一七二号線に続き、来年一月には補助一七三号線沿道における地区計画が実現する予定であります。また、立教大学からの呼びかけによる「街全体をキャンパスに」とのコンセプトを基に、新しい街づくりを進めていきたいと考えております。
以上申し上げましたように、今後十年間の都市再生の取組みは、池袋副都心を「文化を基軸とした価値あるまち」へ生まれ変わらせる重要な局面でありますが、さらに強力なインパクトとなるのが新東京タワーの誘致であります。九月に設置した豊島区新東京タワー事業化準備委員会では、既に四回の会合を持ち、精力的に検討を進めております。造幣局敷地の土地取得を含む開発手法、事業収支、都市計画、そして実際の事業推進主体となる事業会社のあり方の検討など、短期間のうちに、事業計画書の策定は着実に進んでおります。十二月二十日前後には、放送事業者に対する提案を行いたいと考えております。来年三月末までには新タワー候補地が決定されると聞いておりますが、そこに至る過程には、まだまだ解決しなければならない様々な課題があると考えられます。区議会におかれましては、今月中にも新東京タワー事業化促進豊島区議員連盟が発足すると伺っております。さらに、今後は幅広く区民・事業者等の参加をいただきながら誘致活動を展開し、実現に向けた機運を盛り上げてまいりたいと考えております。今後、議会、行政、そして地域が一体となって、まさに豊島区を挙げて新東京タワーの誘致に向けた取組みを展開してまいりますので、区議会の皆様のより一層のご協力をいただきますようお願い申し上げます。
次に、文化特区の実現に向けた取組みについて申し上げます。
この十月に豊島区では文化芸術創造都市の形成に向けた地域再生計画を内閣府に提出したところであり、来月初旬には結果が発表されます。今回の地域再生計画は、文化芸術に親しめる環境づくりを通じて、地域コミュニティの再生と魅力ある街づくりを目指すものであります。
具体的な内容の第一点目は、公立学校の廃校校舎等の転用による芸術文化創造の環境づくりであります。既にこの八月から、旧朝日中学校の施設を転用して、「にしすがも創造舎」の愛称で文化芸術創造支援事業を展開しておりますが、今後はさらにこの施設を拠点として、子供たちとアートとの出会いの場や、地元住民と子供たちが相互に交流できる機会を数多く設けるなど、地域に根付いた文化活動とコミュニティの活性化を進めてまいります。
第二点目は、道路使用許可の円滑化による映画ロケ・イベント等の展開であります。大塚阿波踊りやふくろ祭りに代表される屋外イベント、池袋西口公園の野外ステージにおける音楽演奏やパフォーマンス、また、今月初めに池袋東口でモデル実施されたオープンカフェなど、交通管理者の理解を得ながら「道づかい」を工夫することで屋外で文化芸術に触れ、楽しめる環境づくりを進めてまいります。さらに、現在、映画やテレビドラマ等の撮影誘致等を行うロケーション・ボックス事業の検討を進めております。将来的には、区有施設にとどまらず、街全体へと映画撮影等の場を広げ、区の観光資源や文化資源を内外に発信し、地域の活性化に結び付けていきたいと考えております。
こうした取組みと実績を土台としながら、今後はさらに地域の文化リーダーや芸術文化団体の育成に向け、NPOや東京芸術劇場、大学等と連携しながら、「文化創造のまちづくり実行委員会」を組織し、実践的な講習会やシンポジウム、ワークショップ等を展開してまいります。
また、来年度から生涯学習・スポーツに関する事務を教育委員会から区長部局へ移行し、より総合的に文化行政を展開してまいります。教育委員会では、「教育としま」の名に相応しい充実した学校教育を進めてまいります。
次に、子ども家庭施策について申し上げます。
豊島区では、平成九年三月に子ども・家庭支援豊島プランを策定し、「子ども」と「子育て」に関わる諸施策を展開してまいりました。近年、豊島区の年少人口は次第に下げ止まりの傾向にあります。しかし、平成十五年の合計特殊出生率は〇・七七であり、全国の一・二九、東京都の〇・九九に比べて遙かに低く、地域社会や家庭の養育力の低下、子育ての心理的・経済的負担の増大、そして児童虐待の社会問題化など、「子ども」と「子育て」を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります。
こうしたことから、平成十五年七月に成立した次世代育成支援対策推進法を踏まえ、新たに豊島区子どもプランを策定することとし、今回、その素案を取りまとめたところであります。素案では、(仮称)「子どもの権利条例」の制定を初め、公私協働による保育所の充実、幼稚園と保育園の連携強化、中高生を対象とした十代倶楽部の整備、そして地域における教育力の再構築等の施策を盛り込んでおります。これまで地域区民ひろば構想としてご説明してまいりました子育てひろば、子どもスキップの開設についても、重要施策として位置付けております。子どもスキップにつきましては、来年度からのモデル実施に向け、子供の動線を踏まえた施設改修や部屋割り、職員構成、校庭開放との関係、そして緊急マニュアルの整備などについて、詳細な検討に基づく準備作業を進めているところであります。厳しい財政状況の中、財政健全化が至上命題でありますが、今回の子どもプランは、行財政改革の推進と歩調を合わせ、新たな施策を掲げる一方で、保育園の民営化など、従来の施策について再構築を図る内容となっております。
子育ての喜びを実感できる社会づくりを進め、子供が元気に育つ環境を整備することは、行政を初め、地域社会全体で取り組むべき責務であります。また、ファミリー世帯等の定住を促進するためにも、子育てに関する施策は重要であると考えております。年度内には子どもプランを策定し、地域の力との連携と協働を深めつつ、福祉や教育、住宅、そして文化や街づくり、さらには治安対策等も含めた、より総合的な施策展開をスタートさせたいと考えております。また、教育委員会におきましても、子どもプランとの整合を図りつつ、幼児教育振興計画の策定を進めております。今月八日に、学識経験者や区民、保育園・幼稚園の代表者からなる幼児教育振興計画検討委員会から、計画の策定指針についての報告をいただいたところであります。
私は、豊島区に住むすべての子供たちに、将来にわたり一人の個性ある人間として充実した人生を送れるような、生きる力の基礎を培える教育を保障してまいりたいと考えております。そのためには、家庭、幼稚園、保育所がそれぞれこうした重要な役割を認識して幼児教育に取り組むとともに、豊島区として中長期の幼児教育に関する実施計画を策定する必要があります。幼児教育振興計画につきましても、今回いただいた報告を基に、年度内の策定に向けて検討を進めてまいります。
最後に、行財政改革プランについて申し上げます。
九月に公表いたしました行財政改革プラン二〇〇四素案については、その後、十月から十一月にかけて、広報紙や説明会等によりプランの周知と説明を行うとともに、パブリックコメントを実施し、区民や関係団体の皆様から様々なご意見をお寄せいただきました。また、第三回定例会におきましても、一般質問や決算特別委員会の審議等を通じ、事務事業の見直し、公共施設の民営化や指定管理者制度の活用、区民との協働のあり方、そして職員の人件費など、様々な視点からご意見・ご指摘をいただいたところであります。聖域を設けず、ゼロベースから事業を見直すとの決意で臨んだ今回の改革プランでは、これまでにない事務事業の見直しを掲げております。しかし、直面する財政危機を克服し、区民との協働を基本にした新たな行財政システムを構築するためには、過去のしがらみにとらわれることなく、不退転の決意を持って構造改革を推し進めていかなければなりません。現在、素案に対するご意見を踏まえ、事務事業の休廃止及び見直しに関する各項目について、予算編成と並行して調整作業を進めており、今会期中には、来年度に向けた事務事業の見直しについて、一定の判断をお示ししたいと考えております。
また、事務事業の見直しを含む最終的な改革プランの内容につきましては、三位一体の改革による区財政への影響や都区財政調整交付金の動向等を踏まえ、平成十七年度予算案との整合を図った上で、来年の第一回定例会においてお示ししたいと考えております。職員の人件費のあり方につきましても、区議会を初め、区民の皆様からの声を真摯に受け止め、検討してまいります。
なお、素案でお示しした改革項目のうち、特別職の給料等の減額につきましては、来年一月から一年間、私が二〇%、助役が一〇%、収入役及び教育長が七%の減額という内容で、今定例会に条例をご提案しております。さらに、秀山荘及び猪苗代青少年センターの民営化、また公共施設の指定管理者への移行につきましても、プランの策定に先行して民間事業者の公募・選定などの準備作業を進めており、関連する条例を今定例会にご提案しております。来年四月からの円滑な実施に向け、現段階からの準備が必要となるものでありますので、区議会の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。
また、新たな基本計画の策定についてでありますが、現下の状況では、当初想定しておりました明確な数値目標と財源的な裏付けを持つ計画として策定することは大変難しい状況であると認識しております。現在、こうした状況について基本構想審議会にご説明し、事業計画のあり方を含む今後の策定方針等について、ご検討をいただいているところであります。今後、審議会における検討結果を踏まえ、新たな基本計画の策定内容を明らかにしてまいりたいと考えておりますので、何とぞ議員各位のご理解を賜りますようお願い申し上げます。
新井白石の「折たく柴の記」に、「調べ高ければ、聴く者稀なり」という言葉があります。自分だけが正しいといくら高みから話しかけても、耳を傾ける者は少ないという意味であります。人は誰でもそれぞれの感情、心を持っており、その心が納得しなければ、どんなに理屈が通っていても人を動かすことはできません。改革プランの実施に当たっては、私を初めとして、職員一人一人が区民の皆様と謙虚に向き合う心を片時も忘れてはならないと考えております。
本日ご提案申し上げます案件は、条例二十件、予算二件、その他二件、合わせて二十四件であります。各案件につきましては、後程日程に従いまして助役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして私の招集あいさつといたします。