平成17年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十七年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましてはご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。また、さきの臨時会におきまして区議会の最高人事を含む新たな議会構成が決定され、区政の発展に向け、積極的に議会活動が展開されていることに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。


 初めに、区長就任二期目の折返し点に立つ決意について申し上げます。


 今年度は、私が平成十一年に区長に就任してから、二期目に入り七年目となります。これまでの六年間を振り返りますと、バブル期の後遺症による危機的な財政状況を克服し持続可能な財政基盤を確立することが私に課せられた最大の課題であり、その改革に向けて、全身全霊を傾け、走り続けてきた日々でありました。一方、池袋地区における補助一七二号線や一七三号線、環状六号線の整備促進、東池袋四丁目地区における市街地再開発事業、環状五の一号線と地下鉄一三号線の早期開通や補助八一号線の沿道まちづくり、そして大塚駅南北自由通路や東長崎駅周辺の整備など、将来の地域発展の基盤となる都市再生について、強く推し進め、着実に成果を上げてきたと自負しております。さらには、放置自転車対策と住宅問題の解決に向け、全国に発信した二つの法定外税の創設、文化政策懇話会の提言に基づく総合的な文化政策など、新たな政策の展開に力を注いでまいりました。


 また、わかりやすく開かれた、透明度の高い区政運営を貫く中で、分権社会を担う自立した自治体として、区の組織風土も大きく変わってきたと感じております。この間、平成十三年度からの財政健全化計画、そして昨年度の行財政改革プラン二〇〇四と、毎年度、大変厳しい選択の連続でありましたが、議員並びに区民の皆様のご理解・ご協力により、大きな成果を上げることができたと考えております。しかし、ようやく変化の兆しが見え始めたとはいうものの、財政の構造改革については、いまだ道半ばであり、真の改革を成し遂げる上で、今年度こそが正念場であると考えております。過去のしがらみにとらわれず、しっかりと前を見て、新たな決意の下に、引き続き改革に臨んでまいります。


 さらに、今年度は、都区制度改革の解決に向けて重要な局面を迎える年でもあります。平成十二年の都区制度改革の際に積み残された、いわゆる主要五課題の解決は、今後の区財政と区民の暮らしに大きな影響を与える重大事であり、これらの課題の解決なくして、豊島区を初め、二十三区の真の自立はあり得ません。今年度中の全面解決に向け、区議会と一致協力し、不退転の決意を持って東京都と協議を進めてまいります。国レベルでの三位一体の改革や地方制度の改革など、区政を取り巻く社会経済環境の変化は、本当に速く、私たちの想像以上に激しいものがあります。そうした激しい変化の中にあっても、豊島区に暮らす区民が健やかに安心して生活を送り、生きがいを感じながら持てる力を発揮できる社会をつくり上げること、そして豊島という街の特徴や長所を最大限に引き出しながら、都市の持続可能性を確かなものとすることこそが行政の使命であると考えております。


 文化、健康、都市再生を中心とした政策展開に向け、街全体をキャンバスに、区民の皆様とともに将来像を描き、「住んでよし、訪れてよし」と評される、愛着と誇りを持てる街をつくり上げていかなければなりません。改めて、私たちの豊島区が東京の中で果たすべき役割について、明確な目標と展望を持って進んでいく必要があるのであります。それだけに、これからの二年間は、二期目の集大成として、財政健全化と地域再生への確かな道筋を示すため、未来をしっかりと見据えながら、区政改革に全力を尽くす所存であります。区民の皆様、議員の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。


 次に、今年度における行財政改革の取組みについて申し上げます。


 昨年度の行財政改革プラン二〇〇四では、平成十七年度以降の五カ年で二百十九億円もの財政効果を生み出しつつ、平成十七年度に見込まれていた六十七億円の財源不足に対応し、予算を編成することができました。また、今年四月からは、公共施設の民営化や指定管理者制度の活用、地域区民ひろばのモデル実施、生涯学習・スポーツに関する事務の区長部局への移行、公社統合によるとしま未来文化財団の設立など、一連の改革による新たな施策の展開がスタートいたしました。区政にとって大きな変化ではありますが、混乱もなく、順調に事業運営がスタートしております。しかし、最後の切り札ともいうべき職員の給与削減を含む、これまでにない改革の積重ねにより、何とか一つの山は越えたとはいえ、今年二月の財政推計では、依然として、平成十八年度に四十九億円、二十一年度までの四年間で百六十六億円の財源不足が見込まれております。


 六月に明らとなった平成十六年度の仮決算では、一般会計における実質収支の黒字が約二十八億円との結果が出ております。しかし、これは平成十六年度における厳しい執行抑制の努力や都区財政調整交付金の伸びが主な要因であり、さらに平成十六年度の予算が約三十五億円の財源対策として時習小学校跡地の売却益を見込んでいたことを考えれば、むしろ薄氷を踏むがごときの結果でありまして。到底楽観できるような材料ではありません。今年度の行財政改革プラン二〇〇五の策定に向けては、プラン二〇〇四の成果を確実に生み出すことはもちろん、それを前提として、さらなる改革を成し遂げることが必要となります。


 今後の改革においては、行政中心から民との協働へと大胆に発想を転換し、持続性と効果を見極めながら、多様な主体と連携した公共サービスの仕組みを築くことが重要となります。特に、本区にとりましては、歳出規模の約四割を占める施設関連経費の縮減は、改革を進める上で、避けて通れない緊急の課題であります。今後の施設改修経費の抑制を含め、民の力を活用する形での公共施設の運営の可能性を検討していく必要があると考えております。また、厳しい財政事情の中で新たなニーズや課題に対応していくためには、施策の重点化を図りながら、歳入を基本として、真に行政が担うべきものを選択し、限られた財源を集中していくことが必要であると考えております。現在、全庁を挙げて、こうした視点に基づく改革の検討を進めておりますので、九月には新たな改革の取組みについてお示ししたいと考えております。


 次に、新たな基本計画の策定について申し上げます。


 これまでの改革の取組み、そして地域の力との協働に向けた取組みを、一過性のものとせず、自治体経営の規範、そして継続的なシステムとして定着させていくためには、その方向性を区政の基本として明確に定める必要があります。また、文化、健康、都市再生を中心とした未来につながる重点的・戦略的な施策を明らかにしつつ、メリハリをつけながら分野ごとの政策を推進していくためにも、新たな基本計画が果たす役割は大変重要であると認識しております。さらには、平成十五年十月に策定した公共施設の再構築・区有財産の活用本部案につきましても、今後の改革に向けて、決断すべき時を迎えております。


 昨年十二月の基本構想審議会では、財政健全化に取り組む今だからこそ、施策や事業の優先順位を明確にすべきであるとの認識の下、計画事業選定小委員会が設置され、検討が進められてまいりました。そして、この六月から再開された基本構想審議会において、私の基本計画に対する考え方をお伝えし、年内の答申に向けた積極的なご審議をお願いしたところでございます。今年度においては、新たな基本計画と行財政改革プラン二〇〇五の策定を一体的に進め、九月には基本計画の素案をお示ししたいと考えております。


 次に、今年度における、街全体をキャンバスとして取り組む、文化、健康、都市再生の展開について申し上げます。


 まず、文化政策について申し上げます。


 これからの文化を担う人材、推進者の育成に向けて、昨年四月にスタートしたとしま文化フォーラムは、毎回多くの参加者を得ながら、現在、四期目を開催しております。そしてこの度、第一期から第三期まで連続して文化フォーラムに参加された二十九名の皆様に、文化特使をお願いすることといたしました。今後は、区内で行われる文化事業等に積極的にご参加いただき、本区が進める文化政策のサポート役としてお力添えをいただきたいと考えております。


 また、昨年十二月に認定を受けた地域再生計画につきまして、さらに新たな支援措置のメニューを加えた「文化芸術創造都市の形成『としまアートキャンバス』計画」を内閣府に提出いたしました。新たな計画は、文化創造の環境整備や土壌づくりに加え、街の中でのアートプログラムの展開や文化ボランティア育成の取組みなど、土壌に苗を植え、花開かせる内容を盛り込んだものであります。七月中には認定を受ける見込みであり、それを受け、NPOとの連携の下に、巣鴨・西巣鴨地区を中心として、様々な文化芸術イベントを計画しております。


 また、今年の春から六月にかけ、目白・雑司が谷地区において、地域主体の文化活動が華やかに展開されました。目白フェスティバルに端を発した「道や広場の名付け親運動」や目白通りアートプロジェクト、目白バ・ロック音楽祭は、大きな話題を集めました。さらに、昭和の前期において多くの芸術家たちが活動した池袋モンパルナスの魅力の掘り起こしに向け、複数の区民団体が熱心に研究活動を展開しております。立教大学からも、池袋モンパルナスを活用した地域活性化の提案を頂いております。こうした地域主体の文化活動こそが、地域の個性、人材、そしてネットワークを育て、ひいては地域固有の価値をブランドとして高め、広げる原動力となるのではないかと思います。今年度、目白地区と駒込地区において実施する地域ブランド創出プロジェクトについては、こうした活動を担う皆さんを初め、大学や地域活動団体など、幅広いご参加をいただきながら、実効性の高い戦略プランとして取りまとめてまいりたいと考えております。


 次に、東池袋交流施設についてであります。この新たな文化創造・発信の拠点が全国的にも高く評価されるような運営を実現していくためには、平成十九年九月の開設に向けた、今後二年間の準備段階こそが重要であります。そのためには、ぜひとも民間からの専門家の参画が必要であると考えまして、この度、東京芸術劇場館長でとしま文化フォーラムの塾長でもあります小田島雄志氏に芸術顧問をお引き受けいただくことといたしました。小田島氏は、東京大学名誉教授であるとともに、我が国におけるシェイクスピア研究の第一人者であり、演劇の翻訳と評論により紫綬褒章受章、さらに平成十四年には文化功労者に選ばれるなど、卓越した専門性と幅広い人脈を有しておられます。文化芸術に関しては、恐らく日本では右に出る人はいないと言われる方であります。七月一日からの就任となりますが、今後、より専門的な見地から、事業運営のあり方等について、幅広く助言・指導をいただいてまいります。


 「文化創造のまちづくり」には、多くの人々の参画が必要不可欠であります。多様な主体による活動、そして協働による人と人とのつながりが広がることで、初めて新たな魅力と活力が生まれてまいります。そのため、今年十一月には、文化都市宣言を行いたいと思います。現在、区民の皆様からのご意見を募っておりますが、八月中に宣言文のパブリックコメントを行った後、議会にお諮りしたいと考えております。


 第二番目に、都市再生の展開について申し上げます。


 この四月、池袋東口にふくろうをイメージした交番が完成いたしました。そのユニークな外観は、区内の小中学生から募集したアイデアを基にデザインされたものであり、建築の専門誌にも紹介されました。既に、池袋の新たなランドマークとして親しまれるだけではなく、駅からの人の流れを一望できる場所に立地し、治安対策のシンボルとして、日夜、街の安全・安心に目を光らせております。


 また、五月十三日には、平成二十年四月の開校に向け、帝京平成大学の整備構想が発表されました。時習小学校跡地譲渡に当たっては、副都心の活性化に貢献する魅力ある施設整備を誘導するため、建物の高さを初め、周囲の道路拡幅や歩道上空地、周囲に塀をつくらない開放的な環境整備、千席規模のホールや地域開放型集会室の設置など、様々な条件等を設定いたしましたが、今回発表された整備構想は、これらの条件等を誠実に遵守したものとなっております。今後、設計段階、建設段階、そして開校後の地域との連携に至るまで、それぞれのステップにおいて、より魅力的な整備となるよう、周辺の皆様のご意見等を踏まえ、大学との調整・協議を続けてまいります。また、約五千人もの学生を迎えるに当たりまして、学園通りづくり事業に着手し、安全で快適な歩行者優先の道路づくりを進めてまいります。


 次に、都市計画道路環状五の一号線の地下通過道路問題についてであります。今後整備される地上部の道路の渋滞解消はもちろんのこと、明治通りの渋滞緩和、駅前広場の再整備、駅周辺の歩道の拡幅、そしてグリーン大通りのトランジットモール化など、地下通過道路の成否は、今後の副都心再生の鍵を握ると言っても過言ではありません。これから地上部における道路整備が始まることから、地下通過道路の事業決定は重要な局面を迎えると認識しており、その実現に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。


 そして、五月二十七日には、オーストリア大使館と「池袋の路面電車とまちづくりの会」の主催により、LRTのシンポジウムが開催されました。路面電車の歴史を持つオーストリアの技術者を初め、百四十人以上の方々が参加され、LRTの路盤技術の紹介、将来における池袋への導入の可能性など、熱心な意見交換が行われました。LRTの導入は、文化政策と都市再生を融合させたものであり、副都心再生の救世主として、大きな効果が期待できるものと確信しております。今後は、都電荒川線との相互乗入れも視野に入れつつ、新宿方面や荒川・北区方面と池袋や大塚、巣鴨がより強く結ばれる交通手段として、さらに検討を深めてまいりたいと考えております。


 一方、四月には、巣鴨・大塚地区においては、中心市街地活性化事業の推進母体となるタウンマネジメント機関として、区と地元商業者・企業が出資する株式会社豊島にぎわい創出機構が設置されました。本年度中には、中心市街地活性化法に基づく認定を受け、地域活性化に向けた各種事業の展開がスタートする予定であります。また、同じく四月には、池袋西口地区の課題解決と活性化を目的として、池袋西口商店街連合会と開発委員会が中心となり、NPO法人ゼファー池袋まちづくりが設立されました。これに呼応する形で、立教大学も、NPOとの協働と池袋西口の街づくりへの積極的な取組みを表明されております。こうした地域が主体となった組織基盤づくりは、新たな成熟した街づくりのスタイルとして、大変重要な取組みであると考えております。区といたしましても、目標を共有しながら、積極的に協働を進めるとともに、こうした取組みがさらに区内各地域に広がるよう、支援を行ってまいりたいと考えております。


 第三番目に、健康政策の展開について申し上げます。


 介護保険制度は、その発足時と比較して、要介護認定者の割合が増加しており、特に要支援や要介護一といった軽度の方々が大きく増加しております。また、軽度の人ほど介護度が悪化する割合が高いという傾向が見られ、自立支援を目的とする介護保険のあるべき姿から見て問題があるとの指摘から、現在、制度の見直しに向けた法改正が審議されているところであります。


 私は、区民一人一人が健康に暮らすことはもちろん、増加し続ける医療費を社会全体として抑制していくため、若年期、中年期、高齢期、それぞれのライフステージにおいて、健康づくりを促し、働きかける政策が必要であると考えております。こうした認識の下、本年三月、健康寿命の延伸と生活の質を高めていくことを基本目標とする健康推進プラン21を策定いたしました。このプランは、区民の自主的な健康づくり運動の拡大を主眼とするものであり、その目標達成のためには、生活習慣の改善や健康づくり、そして介護予防に関する取組みを支援する総合的な環境整備が重要となります。こうしたことから、六月中には、介護予防はもちろん、スポーツや生涯学習などを含め、特に中高年の健康政策を総合的に推進するための庁内体制として、助役を本部長とする健康対策・介護予防推進本部を設置いたします。


 今後は、中年期における生活習慣病対策と高齢期における介護予防対策の二つを重点課題として、施策を総合的に展開してまいります。中年期の生活習慣病対策としては、各種の健診事業による疾病の早期発見、早期治療といった二次予防だけでなく、生活習慣の見直しによる一次予防に重点を置いた保健事業を充実してまいります。高齢期の介護予防対策につきましては、多様な介護予防メニューを整備するとともに、「元気!ながさきの会」や体育協会を初めとする区民主体の活動との連携強化や、事業を支える人材の育成にも取り組んでまいります。


 昨年度実施いたしました介護老人保健施設えびすの郷や池袋スポーツセンターにおける筋力向上トレーニング等の事業には多くの参加者がありましたが、ほぼその全員に身体機能の改善が見られております。今年度は、さらに事業のメニューを増やしながら、菊かおる園やオリナスふくろうの杜の安寿などに事業拠点を拡大してまいります。また、地域連携の一つとして、目白地区において、民間スポーツ企業との提携・協力により、介護予防健診を初め、転倒・腰痛防止のための体操、快眠教室などの総合健康イベントとして、「としまおたっしゃタイム・めじろ」を六月から開催いたします。さらに、健康、医療、福祉系の学部からなる帝京平成大学との連携による健康政策の展開についても、平成二十年四月の開校に向けて、協議を進めてまいります。


 次に、地域の教育力の向上に向けた取組みについて申し上げます。


 心豊かで逞しい子供たちを育てていくためには、学校のみならず、家庭や地域が連携しながら、地域の教育力を総合的に向上させていく必要があります。今年度は、文部科学省の委託事業である地域教育力再生プランを活用し、全児童クラブのモデル実施を行う六つの小学校区を中心として、放課後の居場所づくり事業である地域子ども教室や文化体験プログラムなどの事業展開を図ってまいります。放課後や学校休業日において、スポーツや科学など、各分野の専門家を招き、親子で参加できるこれらの事業は、全児童クラブ子どもスキップの充実に向けても大いに期待できるものであると考えております。


 また、地域の教育力を向上させていくために、区内の大学や民間企業、NPOなどとの連携の強化についても力を入れてまいります。子供たちの理数科離れの傾向が問題視される中、今年度から、立教大学との間で、理数教育連携の取組みをスタートすることといたしました。大学の理学部との連携により、小中学生がサイエンスに触れることの楽しさ、考える力の大切さを実感できるような体験的授業を実施し、科学的な素養を育成していきたいと考えております。


 また、先日は、学習院大学と豊島区との協働について、大勢の学生さんたちと意見交換をする機会を持つことができました。学生が、生きた学習の場として、街に出て、地域と交流し、連携する中から、新たな街づくりの展開を進めることができないかというご提案を頂きました。ご提案は、まさに学校と地域との連携による文化創造を目指す「街全体をキャンパスに」という区の考え方に共鳴するものであり、引き続き、具体的な協働のあり方について、協議していくことといたしました。


 今後とも、大正大学や東京音楽大学、そして新たに進出する帝京平成大学も含め、教育、文化、健康、街づくりなど、テーマの幅を広げながら、相互の協力関係を築き、地域の教育力の向上を図ってまいりたいと考えております。


 次に、治安対策について申し上げます。


 豊島区内の犯罪発生件数は、平成十六年以降減少傾向にありますが、最近の世情もあり、本年三月に実施いたしました「協働のまちづくりに関する区民意識調査」によりますと、区政の中で特に力を入れるべき対策として、治安対策が一番に挙げられております。文化を基軸とした都市再生を通じ、「住んでよし、訪れてよし」と評される街をつくるためにも、暮らしの安全・安心を確保するための治安対策は、緊急の課題であると考えております。


 特に、明るくクリーンな繁華街池袋のイメージアップに向けた取組みは重要であります。今年度につきましては、東口・西口における環境浄化パトロールや防犯意識の啓発活動に対する支援をさらに充実するとともに、暴力団排除協議会、マンション風俗対策協議会等との連携も強化してまいります。また、駅前広場と主要道路の沿道を対象として、店舗型性風俗特殊営業の新規出店を抑制するルールを地区計画の中で導入していきたいと考えております。さらには、内閣府の平成十七年度全国都市再生モデル調査を活用し、来街者を対象として「繁華街における不安感要因に関する意識調査」を実施する予定であります。風俗、客引き、放置自転車、そしてポイ捨てなど、池袋を訪れる多くの方々の視点から、池袋の繁華街が払拭すべきマイナス要因を調査した上で、地域、警察、行政との連携による効果的な対応策を検討していきたいと思います。


 次に、子供の安全対策についてであります。これまで実施してまいりました危機管理マニュアルの改善やセーフティ教室の充実、PTAのご協力による学校内外のパトロール等に加え、新たに警備会社のボランティアによる学校への立寄りと警戒、そして携帯電話のメール配信を活用した事件・不審者の情報提供システム等に取り組むなど、対策の充実・強化を図っております。また、学校施設の安全面では、すべての区立小中学校と六カ所の全児童クラブにおける防犯カメラの設置を夏前には完了するとともに、学校通用門のオートロック化に向けた検討も進めてまいります。子供の安全対策に、これで終わりということはありません。この六月には学校安全対策推進計画を策定するための検討組織を立ち上げ、保護者、地域、警察等との連携を強めながら、学校や通学路の安全対策を推進してまいりたいと思います。


 最後に、自治基本条例の制定に向けた取組みについて申し上げます。


 これからの街づくりにとって重要となるのは、地域の多様な主体との協働を基本とする区政の展開であります。ただいま申し上げました文化政策から治安対策に至るまで、地域の活動団体、大学、企業、NPO、そして区民一人一人の区政への参加と協力があればこそ、課題解決に向け新たな展開を開くことが可能となるのであります。自己決定・自己責任が求められる分権社会において、また施策の選択と集中が求められる時代であればこそ、区政運営の根本である住民自治の確立は、ますますその重要性を増しております。


 自治基本条例は、こうした住民自治に基づく区政運営を行うために、区民の信託に基づく基本的なルールを定めるものであり、基本構想とともに、区政の最も重要な規範として、地域社会の発展を牽引する役割を担うものであると考えております。今年三月末には、区民の皆さんが主体となる自治基本条例区民会議から、約一年間にわたる議論の成果として、報告書を頂きました。そして、この六月二十日には、条例案の策定に向け、学識経験者と区民の皆様から構成する自治基本条例検討委員会を設置したところであります。今後、区議会の皆様との間で十分に意見交換を行うとともに、さらに広く区民の皆様のご意見も伺いながら、今年十一月を目途に、具体的な条例案の検討を進めてまいります。


 古代中国の書である「葡子」の中に、「質的張りて、弓矢至る」という言葉があります。的を張って、そこに初めて矢が射込まれるように、夢を持ち、目標に向かって前進しなければ何事も始まらず、変化も起こらないという意味であります。試練を乗り越える勇気も知恵も、明確な目的を持って一つ一つ困難を克服する中で、初めて生まれ、成長していくものと考えております。未来に向けた進路をしっかりと見据えながら、一つ一つの改革を着実に進め、文化の風が人と街の輝きを育て、その輝きがさらに新しい文化を生み出していく、そんな豊島区を、議員の皆様、そして区民の皆様とともに築いてまいりたいと思います。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例七件、予算二件、その他三件、合わせて十二件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。