平成17年第3回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十七年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましてはご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。


 この度の衆議院議員選挙は、戦後六十年を迎えた時代の転換期にあって、政策を中心とした我が国政治の流れを変えるような選挙となり、豊島区においても、大きな関心の高まりから、現行制度になってから最高の六五%を超える投票率となったのであります。議員各位におかれましては、先月の衆議院解散以来、夏空の下、区内を奔走され、並々ならぬご労苦を重ねられたことと推察いたします。ここに深くご慰労申し上げる次第であります。


 初めに、危機管理対策の強化について申し上げます。


 今月四日、台風十四号に伴う豪雨の影響により、隣接する杉並区、中野区において、一千五百世帯を超える床上浸水が発生し、災害救助法の適用を受ける戦後三番目の水害となりました。神田川も、上流の杉並区で氾濫し、区内でも警戒水位を大きく越え、まさに危機一髪の状況でした。区では、復旧活動を支援するため、即座に杉並区と中野区に職員と清掃車を派遣いたしましたが、その被害は想像以上のものであり、想定を大きく超えた一時間に百十ミリという豪雨とはいえ、改めて「まさか」に備える危機管理対策の重要性を強く認識したところであります。最近では、半地下構造のマンション等が増加してきており、浸水の水圧によりドアが開かなくなるなど、集中豪雨による新たな課題も浮かび上がってきております。区では、平成十六年度に洪水ハザードマップを作成し区民の皆様にお配りしておりますが、この機会に改めてその周知を呼びかけるとともに、水害対策を徹底してまいります。


 また、現在、東京では直下型地震の切迫性が指摘されております。七月には足立区で震度五強を記録する地震がありましたが、各地でエレベーターが停止するなどの混乱が相次いだことは記憶に新しいところでございます。私自身もそうですが、豊島区では多くの区民が中高層のマンションに住んでおります。地震発生時におけるエレベーターの機能停止は、緊急の避難、応急活動にとって非常に深刻な問題であると感じました。


 さらに、現在、アスベストによる健康被害が大きな社会問題となっております。区では、アスベストに関するわかりやすい相談体制を立ち上げるとともに、すべての区有施設について緊急に調査等を行っているところであります。十一月までにはその結果を取りまとめ、万全を期して対策を実施してまいります。


 こうした台風や集中豪雨。地震等の自然災害はもちろん、テロや感染症等の緊急事態など、区民の生命と財産を守るための危機への対策は、行政が担う最も重要な使命であり、責任であります。あらゆる危機の発生を想定しながら、組織と初動手順、情報収集と意思決定、そして災害弱者対策など、区の総合的な危機管理体制を改めて点検し、その強化に努めてまいります。


 昨年十月の新潟県中越地震から、間もなく一年が経過いたします。私は、これを機に、本区と防災協定を結ぶ十一の市と町の相互連携をさらに強化していくため、十一月一日に防災サミットを開催することにいたしました。当日は、被災地の行政のトップとして、魚沼市の星野市長さんから、復興に向けたこれまでの取組みや現時点における課題等について、真に迫るお話をいただく予定であります。今回のサミットでは、行政の危機管理対策を大きく取り上げるとともに、区民一人一人の意識と日頃からの備えこそが何にも勝る危機管理対策であることを改めて呼びかけ、行政と地域が一体となった危機管理対策の重要性について話し合いたいと考えております。


 次に、平成十六年度決算について申し上げます。


 平成十六年度一般会計決算額は、歳入が九百七十九億四千六百万円で収入率九八・六%、歳出が九百五十億七千五百万円で執行率九五・七%となり、前年度に比べ、収入率が二・四ポイント、執行率が〇・六ポイント高い、三年振りのプラスとなりました。歳入は、対前年度決算比で百八億七千六百万円、率では一二・五%と大きく伸びましたが、過去に発行した減税補てん債の借換え分五十八億一千万円を除いた実質ベースでは、五十億六千五百万円、五・八%の伸びとなっております。歳入の増要因は、堅調に推移する企業収益等を反映した都区財政調整交付金や地方消費税交付金、そして土地の売払収入などによるものであり、特別区民税については、個人所得の落込みなどにより、前年度比で四億五千万円の減少となっています。また、歳出も、前年度決算比で九十億九百万円、一〇・五%と大きく伸びておりますが、減税補てん債の借換え分を除いた実質ベースでは、三十一億九千九百万円、三・七%の伸びとなります。歳出の増要因は、人件費が十億三千百万円減少する一方、扶助費や公債費、投資的経費が伸びたことによるものでありますが、減税補てん債の借換え分のほか、三十億円の義務教育施設整備基金への積立てといったものが含まれており、これを除きますと、実質的には僅かに前年度比二億円の微増にとどまっております。歳入歳出の差引きである形式収支は二十八億七千万円、実質収支は二十八億三千四百万円となりました。


 財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、対前年度比で一・五ポイント改善して八五・七%となりましたが、依然として二十三区平均の八二・〇%を三・七ポイント上回っております。また、公債費比率は、千登世橋中学校建替えの元金償還が始まったことなどにより、前年度より〇・五ポイント上昇し、九・〇%となりました。


 このように、平成十六年度の一般会計決算は、三年振りに実質単年度収支がプラスに転じましたが、これは都区財政調整交付金等の伸びや人件費の抑制が主な要因であり、到底、楽観視できる結果とは言えません。さらに、平成十六年度当初予算が約三十五億円の財源対策として土地の売払収入を見込んでいたことを考えれば、むしろ薄氷を踏むがごとき決算であったと考えております。


 次に、平成十八年度予算編成に向けた行財政改革の取組みについて申し上げます。


 我が国の経済は、原油価格の異常な高騰などの不安要因はあるものの、長引く不況から徐々に脱しつつあり、堅調な企業収益や失業率の低下など、景気回復の確かな兆候が現れております。このような影響から、平成十八年度の歳入につきましては、都区財政調整交付金等において、今年度予算よりも若干の増加が見込まれます。しかし、歳出の面では、東池袋交流施設や新中央図書館等の整備が本格化することに伴う投資的経費の増加が見込まれるとともに、義務的な経費である扶助費も引き続き増となる見込みであります。


 今年二月に策定した行財政改革プラン二〇〇四では、区議会、そして区民の皆様のご理解の下、これまでにない大胆な改革を積み上げ、平成十七年度以降の五カ年で二百十九億円もの財政効果を生み出し、平成十七年度予算を編成することができました。しかし、依然として、十八年度に四十九億円、今後四年間で百六十六億円の財源不足が見込まれております。平成十六年度決算では約二十八億円の余剰金が出ておりますが、財政の構造改革を成し遂げるためには、極力、好景気による収入増や余剰金に頼らない財政運営を図ることが必要であります。平成十三年度決算においても一時的な景気浮揚等により約二十七億円の余剰金が出ましたが、その後の財政運営では、景気の落込みにもかかわらず、基金に依存しつつ歳出改革の手を緩めるなど、結局は一時的な延命策に終わり、財政健全化を達成できなかったのであります。


 こうした反省を基に、一層気を引き締め、さらなる改革を推し進めるプラン二〇〇五の検討作業を進めているところであります。これまでに、施設建設需要の分散等を中心として、約十二億円程度、平成十八年度における財源不足を圧縮する見通しが立ちつつありますが、残る約三十七億円につきましては、昨年以上に厳しい目で内部管理コストの節減や施策全体の見直しを進めているところでございます。また、今年度の検討では、中長期的な視点から、公共施設の再構築と人件費の抑制について、さらなる具体的な改革の推進に取り組みたいと考えております。


 豊島区は、現在、百九十一カ所、床面積約四十三万平方メートルもの公共施設を有しております。これら公共施設関連のサービスには、人件費を含めて約三百四十億円、実に歳出規模の四割に当たる経費を充てております。施設を適切に維持するためには計画的な修繕・改修が必要ですが、現下の厳しい財政状況の下では、これらすべての施設について、必要かつ十分な改修経費の予算を計上することは困難な状況であります。そして、さらに今後は、高度成長期に建設した施設を中心に、多くの施設が更新期を迎え、確実に新たな財政負担となってまいります。改革プラン二〇〇四が掲げる「身の丈に合った持続可能な財政構造」を実現するためには、十年後の人口減少社会の到来をにらみつつ、公共施設関連経費の抜本的な改革に取り組み、計画的に施設の再構築を進めていく必要があるのであります。今年度は、平成十五年十月に策定した公共施設の再構築・区有財産の活用本部案に必要な見直しを加えつつ、改革のスピードを加速し、学校跡地の本格活用に向けたプランの検討を進めてまいりたいと考えております。


 また、改革プランでは、もう一つの目標として、「スリムで変化に強い行政経営」を掲げております。現在、豊島区の職員定数は二千四百九十一人であり、総人件費である二百五十八億一千七百万円は、歳出総額の二七・二%を占めております。この総人件費の抑制についても、将来に向けた区政改革の本丸であると認識しております。プラン二〇〇四では、職員給料のカットに踏み込むとともに、平成十七・十八年度の職員採用ゼロによる四百人の削減を掲げましたが、その目標をさらに上積みし、将来的には二千人のスリムな体制を実現したいと考えております。


 また、今年度から実施いたしました外部評価委員会報告に基づく施策の見直しや職員提案に基づく歳入確保についての多種多様なアイデアの具体化など、新たな取組みを加えつつ改革を進めております。こうしたプラン二〇〇五に向けた施策の見直しや歳入確保の検討を踏まえ、さらに三位一体の改革による区財政への影響にも注視しながら、平成十八年度予算編成を進めてまいりたいと考えております。なお、プラン二〇〇五の素案につきましては、今会期中にお示しする予定で検討を進めておりますので、議員各位におかれましては、次世代を見据えた中長期的な視点から、行財政改革に対するご意見をいただきますようお願い申し上げます。


 さらに、今年度は、プラン二〇〇五と並行して、新たな基本計画の策定に向け、基本構想審議会においてご議論いただいているところであります。新たな基本計画では、「地域の力との協働」を地域経営の基本方針として掲げるとともに、今後の重点施策を明らかにしながら、計画、予算、決算、そして評価までを一貫して管理する行政経営システムを確立したいと考えております。また、ただいま申し上げました公共施設の再構築につきましても、新たな基本計画の中で、今後の方向を明らかにすべく検討してまいります。そしてさらに、「としま未来への経営戦略」という形で、文化政策、都市再生、健康政策を中心とする魅力と価値ある街づくりに向けた今後の取組みについて、しっかりと位置付けてまいりたいと考えております。


 次に、文化創造都市宣言について申し上げます。


 私は、区長に就任以来、「文化は人を元気にし、元気な人が街の活力を生み出す」という考えの下、文化を機軸とした価値ある街づくりを提唱してまいりました。今年度で五期目に入ったとしま文化フォーラム、平成十六年度の文化政策懇話会提言や、にしすがも創造舎の活動を中心とした地域再生計画の認定、そして東池袋交流施設の開設準備など、豊島区ゆかりの文化人各位のご協力を得ながら、一つ一つ文化の風を興す取組みを進めてまいりました。


 そして、この度、文化の力をもって新たな輝きを生み出そうとする豊島区の姿勢を広くアピールすることを目的として、文化創造都市宣言を行うことといたしました。文化とは、街や暮らしをより良いものにしようとする営みや活動の積重ねであり、そこから生まれる輝きであります。文化創造都市宣言は、区民一人一人がこうした文化の担い手であることを確認し、文化活動の気運を醸成していくために実施するものであり、その宣言文につきましては、今回、議案としてご提案申し上げているところであります。


 また、十一月二十三日には、豊島公会堂や池袋西口公園等において記念の式典とイベントの開催を予定しております。式典には、河合隼雄文化庁長官を初め、名誉区民、そしてこの度名誉都民となられた人間国宝の野村萬氏と、ご子息の九世野村万蔵氏にご出席いただくほか、ジュニア・アーツ・アカデミーの子供たちや豊島区管弦楽団、吹奏楽団等による音楽イベント、さらには交流都市による物産展など、多彩な催しの準備を進めております。議員各位におかれましても、何とぞご列席いただきますようお願い申し上げます。


 さて、こうした区の動きに呼応するかのように、池袋西口地区において、また一つ新たな文化の風が生まれつつあります。それは、新池袋モンパルナスまちかど回遊美術館構想であります。大正の半ばから戦後の一時期まで、現在の池袋から要町、千早、そして長崎にかけての地域では、幾多のアトリエ群が形成され、若き芸術家たちが集い、作品を世に送り出したという誇るべき歴史を持っております。この度のまちかど回遊美術館構想は、こうした歴史を踏まえつつ、NPO法人ゼファー池袋まちづくりが主体となり、立教大学や関係団体等と協働しながら、文化を通じた地域再生や新たな商店街振興活動の展開につなげていこうとする取組みであります。今後、関係団体等による協議会を組織し、事業内容等の構想を具体化しながら、関連資料や美術作品の調査を実施してまいります。その上で、来年の三月を目途に、東武百貨店や立教大学、郷土資料館、熊谷守一美術館等において作品展示を行い、街を回遊しながら池袋モンパルナスの歴史や芸術作品に触れることができる機会を創出してまいりたいと考えております。また、この十月から、アトリエ村に関する調査研究を行っている区民団体との協働により、西部区民事務所の一部にアトリエ村資料室を開設する予定であります。池袋モンパルナスやアトリエ村に関する資料等を収集、展示するとともに、ここを拠点として、まち歩きイベントや調査活動等を展開してまいりたいと考えております。


 さらに、平成十九年七月に向け整備を進めている新中央図書館につきましても、交流施設との連携を深め、一体となって文化的な機能を発揮する運営を図りたいと考えております。そのためには、今後の準備期間が大変重要であると考えまして、この度、新中央図書館有識者懇話会を立ち上げ、常世田良氏、水谷千尋氏、今村成夫氏の三名の有識者の方々にご参加いただき、専門的な見地からご議論をいただくことにいたしました。年内には文化発信拠点としての図書館運営のあり方についてご提言をいただく予定であり、これを基に明確な運営方針を定め、さらに準備を進めてまいります。


 次に、池袋副都心の再生に向けた取組みについて申し上げます。


 今、これまで遅れていた池袋副都心周辺における都市計画道路の整備が集中的に進められようとしております。中央環状新宿線、環状四号線、環状五の一号線、そして補助一七二・一七三・八一号線などが今後十年間に次々と完成し、交通環境が大きく変化してまいります。これら道路整備の進展は、豊島区、特に池袋の再生にとって大きなインパクトとなり、魅力ある都市の再生が期待できるとともに、駅前空間から通過交通を排除し、他の副都心にはないような広々とした歩道や緑溢れる広場の拡大にも道を開くことになるのであります。さらに、歩行者中心の空間に人と環境にやさしいLRTの乗入れを実現することで、池袋にしかない独自の価値がつくられ、東京における池袋の位置付けを明確にすることができると考えております。


 こうした道路整備を副都心全体の再生に結び付けていくため、この九月には、学識者、国、東京都で構成する池袋副都心交通ビジョン検討委員会を設置いたしました。スムーズな自動車交通の処理と駅周辺の歩行者空間の拡大など、交通体系のあり方を検討し、平成十八年度末を目途にビジョンの策定を行う予定であります。そして、このビジョンの策定はもとより、今後の池袋再生の生命線となるのが環状五の一号線の地下通過道路であります。以前は将来構想でしかなかった地下通過道路ですが、現在、東京都における検討が最終段階を迎えるに至っております。これまで以上に強く働きかけを行い、早期の地下通過道路の実現を図ってまいります。池袋西口地区の再生につきましても、新たな展開を進めてまいります。この九月には、庁内に横断的なプロジェクトチームを設置し、地域再生手法の検討をスタートいたしました。文化と都市再生、そして防犯対策、さらには商店街振興など、総合的な視点から、池袋西口地区にスポットを当て、NPOや大学等と協働しながら、確かな再生の方向を探ってまいります。


 さらに、安全・安心の繁華街池袋を実現することも重要な課題であります。最近の無料風俗案内所の増加は、街並みや景観を損なうだけではなく、池袋の大きなイメージダウンにつながっております。八月には、池袋地区風俗無料案内所撤去推進協議会が発足し、地元住民と警察が連携して、自粛を要請する活動がスタートいたしました。区といたしましても、こうした迷惑施設や違法看板の撲滅に向け、断固とした姿勢で、警察と連携した取締り強化を図るため、豊島区生活安全条例の改正に向けた検討を急いでいるところであります。また、池袋駅周辺における地区計画につきましては、街並みの改善、性風俗営業の抑制などの観点から準備を進めてまいりましたが、来年早々にも都市計画決定を行いたいと考えております。


 安全・安心に加え、街並み景観、緑や広場づくり、そして環境美化や放置自転車対策に至るまで、これまで以上に環境に重きを置いた池袋副都心の再生を積極的に進めてまいりたいと思います。今回の衆議院議員選挙で豊島区から当選された小池環境大臣におかれましても、選挙期間中、街頭を歩きながら、池袋副都心における環境問題の取組みを強化したいとの意向を話されたとお伺いしております。


 次に、健康政策の展開について申し上げます。


 先日、十六日、敬老の日にちなみ、年齢百歳以上の五人の方々を訪問し、長寿のお祝いを申し上げてまいりました。今後の長寿社会において、元気で暮らし続けることができる健康寿命を延ばすことは、区民の充実した生活のためにも、そして高齢社会における医療費や社会保障費の抑制を図るためにも、大変重要な課題であると考えております。こうした認識の下、今年六月には健康対策・介護予防推進本部を設置し、区民一人一人の主体的な健康づくりを喚起するような環境整備に向けた施策の全体像について、積極的に検討を進めているところであります。


 そして、こうした健康づくり施策をより効果的に展開していくためには、地域の中でリーダーシップを発揮しつつ、広く健康づくりの実践を動機付ける能力を有する人材の育成が何より重要であります。そのため、来年度に向けまして、としま健康づくり大学の設立を進めることにいたしました。そして、各地域の区民ひろばを拠点として位置付けるとともに、新たに育成した人材をそこに派遣し、健康づくりや介護予防に取り組む高齢者を社会全体で支援するネットワーク体制を整備したいと考えております。ネットワーク体制の構築に当たりましては、民生委員、町会はもとより、介護サービス事業者やボランティア団体等との幅広い連携が不可欠であり、地域福祉活動の担い手である豊島区社会福祉協議会との役割分担を明確化しつつ、積極的な展開を図ってまいります。


 次に、新たなごみ減量対策について申し上げます。


 今月一日、リサイクル・清掃審議会から「ごみ処理手数料について」の答申を頂きました。地球規模での温暖化が進む中、社会全体として環境負荷の低減に取り組むことが重要な課題となっております。国の中央環境審議会においても、ごみ減量や埋立処分場の延命化に向けた家庭ごみやレジ袋の有料化などの議論が進められております。本区におきましても、ごみ減量と資源の有効活用の視点に立ち、平成十四年度から八品目十二分別という先進的な新パイロットプランを区内全域で展開するとともに、平成十六年度には時間帯収集を実施するなど、リサイクル事業と連携した独自の清掃事業を積極的に進めてまいりました。


 しかし、環境問題への対応をさらに強化するためには、さらなるごみの排出抑制に取り組むことに加え、負担のあり方をも含めた新たなごみ減量対策の展開が必要であると考えております。今回の答申では、事業系ごみ、粗大ごみについてはごみ処理コストとの乖離が生じており手数料の改定が必要であること、また家庭ごみの減量を推進する上で有料化が有効な手法であることが提言されております。一方、有料化の導入に伴う不法投棄対策、具体的な手法の比較検討、区民の負担感など、多くの課題も合わせて指摘されております。家庭ごみ有料化の導入は、新たな経済的負担を伴うものであり、答申でご指摘いただきましたように、モデル実施等による検証を踏まえ、区議会、そして区民の皆様のご意見を十分お聞きしながら、慎重に検討を進めてまいります。


 次に、新しい時代に向けた義務教育改革について申し上げます。


 今後の義務教育改革のあり方につきましては、これまで国の中央教育審議会において審議が進められていましたが、過日、その審議経過がまとめられました。その中では、国際的に知の大競争時代を迎えた今日、諸外国に遅れをとることなく、人材育成の基盤である義務教育の質の向上に、国家戦略として取り組む必要があることなどが述べられております。


 こうした中、豊島区では、今年度から、文部科学省の委託事業である英語活動地域サポート事業を活用し、すべての小学校で英語教育を推進しております。現在、五・六年生の全クラスに、一週間に一回程度、外国人指導者を派遣し、担任とともに授業を行っております。また、今年度は、次世代文化の担い手育成事業を新たにスタートいたします。これは、旧朝日中学校を利用して活動しているNPO法人から、新進気鋭の芸術家を巣鴨北中学校と西巣鴨中学校に派遣し、子供たちに本物の芸術を肌で感じてもらう取組みであります。各学校では、この秋の文化祭を目指し、こうした専門家からのアドバイスを受けながら、演劇や創作ダンスなどの練習を始めているところであります。このように、小学生の段階から、英語に慣れ親しみ、プロの芸術家から指導を受けることは、人と積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や能力、創造力や表現力などの育成に大きな効果があると考えております。豊島区の中から、日本の文化を発信し、日本を支える人材を輩出していくため、今後とも、国際社会を生きていく上で必要となる力を育むことに重点を置いた教育改革を進めてまいりたいと考えております。


 最後に、新庁舎整備の検討について申し上げます。


 区の本庁舎は、既に築後四十四年が経過し、二十三区の中で最も古くなっております。分庁舎についても、それ以上、築後五十一年が経過し、著しく老朽化が進んでおりまして、外観上は問題なく見える庁舎ですが、人で言えば血管に当たる給排水や空調等の設備は既に限界に近づいております。また、庁舎機能が七カ所に分散し、かつスペースも狭隘なことから、十分な窓口や客待ちスペースを確保することができず、時代の要請であるIT化にも対応できない状況であります。冒頭で申し上げました危機管理対策に関しましても、庁舎機能が分散し、本庁舎を除き建物の耐震性を確保できていない現状では、震災等の災害時における防災拠点、さらには災害復興の拠点としての役割を果たせるかどうか、大きな不安を抱えているのであります。また、公会堂や区民センターなども同じく老朽化が進んでおり、これら施設を今後十年、二十年と使い続けていくためには、抜本的な改修に多大な経費を見込まざるを得ない状況なのであります。


 新庁舎の整備には、企画段階から工事完了まで、約十年を要することが想定され、将来を見据え、計画的な対応を図るためには、今から具体的な検討を始める必要があるのであります。こうした中、現在、南池袋二丁目の旧日出小学校周辺において市街地再開発事業の気運が高まっており、区も地権者として、来年六月頃までには学校跡地についての土地活用の方針を明確化する必要に迫られております。旧日出小学校は、現在事業中である環状五の一号線に面しており、現庁舎と同様、地の利に恵まれた場所であります。市街地再開発事業に参画し、区が所有する土地・建物を活用することで、新庁舎にかかる整備経費を大きく軽減できるメリットもあり、この機会に十分に調査・検討を尽くし、結論を出す必要があると考えております。


 かつてない規模の行財政改革に取り組む今、新庁舎の検討を区政の課題として取り上げることは、区民の皆様からの大変厳しい目があることは十分承知しております。しかしながら、いずれは避けて通れない庁舎や公会堂等の建替え需要を見通し、長期的な視点から計画的な財政運営を図るためにも、今こそ正面から検討すべき課題であると認識しております。この機会を捉え、多大な経費を想定した過去の庁舎建設計画の反省に立ち、多岐にわたる課題について集中的な検討を進めるため、この十月から専管組織を設置することといたしました。そして、現庁舎地区と旧日出小地区を対象として、様々な整備手法について慎重に検討を加え、本庁舎等の跡地活用を含めた資金計画の具体的な試算をお示ししたいと思います。その上で、区議会、そして区民の皆様のご意見等を十分に伺いながら、来年六月を目途に、今後の新庁舎整備の方向性を明らかにしてまいりたいと考えております。


 一昨日、平成十七年の基準地価が発表され、二十三区全体では、住宅地、商業地ともに、平成二年以来、十五年振りに地価が上昇する結果となっております。豊島区でも、住宅地については十五年振りに上昇に転じました。しかし、商業地について各区の状況を見ますと、上昇に転じる区が増える一方、本区を含む十区については依然として下落を続けており、都市開発が進む地域とそうでない地域の二極化がますます鮮明となってきております。私たちの次の世代へと魅力と活力ある豊島区を引き継いでいくため、過去と未来をしっかりと見据え、確固たる決意を持って、今このときに成すべき区政改革、そして価値ある街づくりに向け、全身全霊、取り組んでまいります。


 シェークスピアの戯曲「尺には尺を」の中の名句として、「とうてい無理だと思う心が われわれを裏切る」という言葉が出てまいります。また、「リチャード三世」の中の名句として、「正しい希望はツバメの翼に乗って 矢のように天翔ける」という言葉もございます。いずれも、豊島区芸術顧問であります小田島雄志氏の訳であります。私は、行財政改革についても、そして新庁舎整備につきましても、過去の過ちを率直に受け止め、明日への教訓として生かすことこそ、今、最も必要なことではないかと考えております。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例三件、決算認定五件、予算二件、その他四件、合わせて十四件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役並びに収入役からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。