平成17年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十七年第四回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。


 初めに、都区財政調整主要五課題に関する協議について申し上げます。


 先月末、これまで特別区長会として調査研究をお願いいたしていた「特別区の今後のあり方」について、大森彌氏を会長とする特別区制度調査会から報告をいただきました。「都区制度の転換」との副題が付された報告書では、二十三区における分権型社会の創造にとって、現行の都区制度が大きく立ちはだかっているとの認識を示した上で、これに代わる新たな制度設計のモデルが示されております。さらに、これまでの都区協議の先行きを懸念し、「平成十二年施行の地方自治法改正の趣旨が実現されないまま、機能不全に陥ることになるならば、長年にわたった都区制度改革の意義は失われるのであり、都区は、その解決に向け重大な責任を持っていることを自覚すべきである」との大変厳しい指摘がなされております。これは、言うまでもなく主要五課題についての都区間の協議が難航し、膠着状態に陥っていることについて指摘されたものであります。


 法改正を受けて都が行う基礎的自治体の事務の範囲を明確にするというごく当たり前の協議が難航し、遅々として進展していないことについて、法の趣旨を実現する責務を担う行政として、また協議の当事者として、その責任の重さを改めて痛感しております。平成十二年の都区制度改革は、この主要五課題が積み残されているがために、未完の改革といわれております。平成十八年度に向けて、残る時間は僅かでありますけれども、なお一層、区議会と力を合わせ、課題解決に向けて全力を尽くしてまいります。


 次に、文化創造都市づくりに向けた取組みについて申し上げます。


 去る九月二十二日、区議会の議決を基に、文化の力をもって人と街に新たな輝きを生み出そうとする姿勢を広くアピールし、区民一人一人が文化創造の担い手であることを謳った文化創造都市宣言を行いました。そして、一昨日、十一月二十三日には、今回の宣言を記念し、豊島公会堂と池袋西口公園を会場といたしまして、式典とイベントを開催いたしました。今回の催しは、これまでの文化政策の集大成であると同時に、文化創造都市に向け、新たな一歩を刻むものであります。


 記念式典では、小池百合子環境大臣、人間国宝であり名誉区民・名誉都民でもある野村萬氏、名誉区民であり文化勲章を受章された井口洋夫氏、豊島区芸術顧問である小田島雄志氏、文化フォーラムの講師代表として女優の佐久間良子氏、そして新たに図書館行政政策顧問にご就任いただく粕谷一希氏を初め、区内の大学総長・学長の方々、友好都市・交流都市の首長の皆様にもご出席いただく中、長年にわたって本区の文化振興に貢献され、大きな功績を残された方々を文化功労団体として顕彰させていただきました。文化功労表彰に続き、野村萬氏、野村万蔵氏による狂言、河合隼雄文化庁長官による「文化で日本を元気にしよう!」と題する講演とフルート演奏へと進み、野村萬氏により、文化創造都市宣言を厳かに、格調高く、力強く読み上げていただきました。そして、フィナーレでは、ジュニア・アーツ・アカデミーの子供たちや豊島区民合唱団を中心として、出席者が心を合わせて区民の歌「としま 未来へ」を合唱し、一千人の歌声が会場に響き渡りました。まさに、伝統文化と新たな息吹が融合し、文化の風薫るまちを創ろうという意気込みに満ち溢れた、未来への確かな手応えを感じさせる催しとなりました。池袋西口公園のステージにおいても、立教大学廣江ゼミナールや東京音楽大学、創形美術学校の学生の特別参加や、地元商店街のご協力により、吹奏楽や楽器演奏を中心とした盛大なイベントが繰り広げられたのであります。私は、区長に就任以来、文化を基軸とした価値ある街づくりを提唱し、政策を推進してまいりましたが、今回の記念事業を通じまして、文化には人と街の元気を引き出す力があること、個性輝く都市づくりを推進する力があることを改めて確信したところでございます。


 また、今月五日には、西部区民事務所にアトリエ村資料室を開設いたしました。この資料室は、池袋モンパルナスについて熱心に調査研究活動を続けてこられた区民団体の皆様との協働事業として実現したものでございます。毎週土曜、日曜に限っての開設となりますが、オープン初日から四十人もの方々が訪れ、アトリエ村に住んだ芸術家の消息や大正末期の町会の地図など、様々な情報を寄せていただきました。こうした郷土の歴史を愛する皆さんのご協力をいただきながら、アトリエ村を中心とした池袋モンパルナスに関する資料を収集・展示することで、地域の歴史や文化、さらには人材の掘り起こしにつなげていきたいと考えております。そして、新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館構想との連携も図りながら、池袋西口地区における文化創造の取組みを進めてまいります。


 さらに、今月二十一日には、池袋東口に整備を進めてまいりました豊島区観光情報センターがオープンいたしました。来街者への案内、観光スポットや文化芸術行事に関する情報提供はもとより、街の安全を守る治安機能も兼ね備えた「街のホットステーション」を目指し、多くの方々に親しまれる運営を心掛けてまいりたいと思います。


 文化政策は、生涯学習やスポーツ、健康、福祉、教育、そして都市再生に至るまで、様々な分野に大きな効果をもたらす取組みであります。こうした文化の力を区政全体に生かしていくため、新たに文化政策に関する基本理念や重点目標等を盛り込んだ文化芸術振興条例を制定したいと考えております。


 次に、健康政策における食育の推進について申し上げます。


 今年七月、国民一人一人の心身の健康だけでなく、社会全体の活力にとっても食育が緊急かつ重要な課題であるとの認識の下、食育基本法が施行されました。その背景には、食の安全性や海外依存の問題を初め、不規則で乱れた食生活に起因する肥満や生活習慣病の増加、そして一人で食事をする子供や高齢者の心の問題など、様々な要因があると思いますが、私自身の生活を振り返ってみても、健康にとっていかに食生活が大切なものか、大きく共感するところであります。


 先日、区が推進する健康政策へのご協力をお願いするため、駒込にある女子栄養大学の香川芳子学長を訪問いたしました。生活習慣病等による医療費の増大や正しい食生活の効果などについて意見を交換するとともに、香川学長からは、健康政策への協力関係の構築について、快くご賛同をいただきました。また、小学校の給食を活用した一人暮らし高齢者の介護予防についてもヒントをいただきました。目的を持って外に出て、小学校まで歩き、児童や高齢者と会話しながら、栄養バランスに優れた給食を食べることで健康を維持するというものであり、早速、事業化に向け具体的な検討を始めたところであります。


 食を考えることは、生きる力を育てることでもあります。私は、区の健康政策の柱の一つとして食育を位置付け、保健福祉、子育て、コミュニティ、そして教育に至るまで、横断的な連携を強化し、区民主体の健康づくりを積極的に支援してまいります。


 次に、環境政策への取組みについて申し上げます。


 私は、魅力ある豊島区を次の世代へと引き継いでいくため、文化、健康、都市再生の三つを経営戦略の柱として位置付けてまいりましたが、その方向をさらに明確に打ち出していくためには、新たに環境政策を加える必要があると考えております。二十一世紀は環境の世紀といわれております。また、今後の少子高齢社会においては、環境はもちろん、社会的にも経済的にも、持続可能性という考え方を重視した制度設計が重要となります。将来に向けて持続可能な発展を目指すという意味において、環境政策は、文化や健康、都市再生と並ぶ重要な政策であります。先進的な企業では、経営者はもちろん、組織全体が地球環境に対する高い意識を持って活動しております。環境に優しい商品を開発し、環境に配慮した行動をとることが市場で生き残る条件であります。


 このことは、自治体や地域経営についても通じるところがあります。豊島区は、資源回収パイロットプランを初めとして、資源循環型社会の構築に向けた先進的な取組みを展開してきており、高い評価を得るとともに、イメージアップにつながっております。また、副都心の再生に関しましても、環境を強く意識して取り組むことが新たな展望を開く鍵であると考えております。これまで将来構想でしかなかった環状五の一号線の地下通過道路を確実に実現することで、駅前から通過交通を排除し、歩行者中心の広々とした歩道や緑あふれる広場の実現に道を開くことができます。LRT構想も、人と環境に優しい街づくりのシンボルとして重要な役割を担う存在であります。これに加えて、地区計画による街並みの改善や風俗営業の抑制、治安・環境浄化対策や放置自転車対策などに取り組むことで、東京で一番と言われるような健全な繁華街を実現し、池袋副都心の個性ある再生を進めてまいりたいと考えております。


 さらに、今月十六日には、これまで東京都と国に強く働きかけてきた東池袋四・五丁目地区を通る補助八一号線の事業が認可されました。この事業は、単なる道路事業ではなく、沿道の街づくりを同時に進めるものであり、密集市街地の抜本的な改善や防災性の向上に加え、都電敷の芝生化と緑地整備など、環境面に大きく配慮した事業であります。


 豊島区は自然環境という面では資源が少ない地域でありますけれども、大都市東京の中心に位置すればこそ、地球温暖化など、グローバルな視点に立って、環境負荷の低減に向けて地域からの行動を起こしていくことに意義があると考えております。今後は、リサイクル・ごみ減量、省エネルギーなどの施策を中心としながらも、都市再生や緑など、地域づくりのあらゆる場面において環境配慮の視点を取り入れ、循環と共生の考え方に基づく施策を総合的に展開してまいります。


 次に、平成十八年度に向けた行財政改革の取組みについて申し上げます。


 今年二月に策定いたしました改革プラン二〇〇四による大きな改革の成果を確実に生み出し、さらなる区政の構造改革を推し進めていくために、現在、改革プラン二〇〇五の策定を進めております。今月初めの「事務事業の見直し」に続きまして、本日は「公共施設の再構築・活用」についての素案を公表いたしました。今年二月時点では平成十八年度に四十八億円程度の財源不足が見込まれておりましたが、こうした取組みによって、平成十八年度の予算編成に向け、一定の見通しが立ちつつある状況であります。改革プラン二〇〇四では、人件費の抑制を初め、事務事業の見直し、業務の委託や施設の民営化など、スリムで変化に強い行政経営を目指し、かつてない規模で改革に取り組みましたが、今年の二〇〇五では、公共施設の再構築・活用に重点を置き、強い決意を持って改革を推し進めたいと考えております。今後とも大きな歳入増を見込むことが難しい中、老朽化した施設を区民の皆さんにとって安全で使いやすい施設として再整備していくためには、ニーズの変化を踏まえた施設配置の適正化を進めつつ、効果的な土地活用を図る必要があります。そして、そのためには所有から活用へと発想を転換しつつ、地域の活性化と区民サービスのために、むしろ積極的に区有財産等を活用し、施設の再構築を進めていくことが重要であります。


 今回の素案では、平和小学校跡地の本格活用に向けた具体的なプランなど、新たな整備計画をお示しする一方、地域の中で慣れ親しまれてきた施設の転用や廃止についても踏み込んだ内容が含まれております。検討に当たっては、全体的に効率化を図りつつ、できる限りビルド・アンド・スクラップという考え方に立ち、従前の機能を大きく損なわない形で、慎重に検討いたしましたが、プランの実施段階では少なからず変化や痛みを伴う内容であると認識しております。しかし、歳出の四割を充てる公共施設関連経費の改革なくして、持続可能な財政構造の展望を開くことはできません。従来の行財政改革が一時的な延命策に終わったのは、この点に踏み込むことができなかったことに大きな要因があるのであります。大きな改革を成し遂げるときこそ、強い決意とともに慎重な姿勢と対応が不可欠であります。一つ一つ、改革の必要性について、わかりやすく丁寧にご説明し、区民の皆様のご理解を得るべく全力を尽くしてまいります。議員各位におかれましても、何とぞ改革の必要性にご理解をいただき、次世代を見据えた中長期的な視点から、ご意見・ご指導を賜りますよう心からお願い申し上げる次第であります。


 なお、十一月二十二日、構造改革特区として申請していた「豊島区外出支援サービス特区」、そして地域再生計画として申請した「文化芸術創造都市の形成『としまアートキャンバス』計画」についての認定を受けることができました。外出支援サービス特区は、障害者等の移動支援サービスの拡大に向け、社会福祉協議会やNPO法人等による一般車両を使った有料送迎を可能とするものであります。また、地域再生計画については、旧朝日中学校に続き、補助金で整備した廃校校舎の転用を弾力化するものであり、大明小学校跡施設に十月にオープンしました「みらい館大明」における、地域の方々の積極的な取組みを全国に発信していくものであります。今後とも、こうした国の制度を積極的に活用しながら、区民サービスの向上に努めてまいります。


 次に、粗大ごみ収集の民間委託について申し上げます。


 粗大ごみの収集については、改革プラン二〇〇四で民間委託の方向を打ち出しましたが、これまでに関係者との協議が整い、来年二月からモデル事業をスタートする運びとなりました。二月の実施に向けまして、区民の皆様にその内容を十分お知らせし、三月までのモデル実施を踏まえて、四月からは本格的に開始する予定であります。今回の粗大ごみ収集の民間委託は、東京の清掃事業の歴史において、豊島区が二十三区で初めて実現するものであります。行政職員がすべて行ってきた清掃事業の形態を転換し、民間活力を生かしたごみ収集に道を開くものであります。民間委託により、日曜日の収集が可能となることに加え、申込みから収集までの期間が十日前後から三日以内へと大幅に短縮され、経費面においても大きな効果が見込まれます。平成十二年四月の清掃事業の移管から六年が経過する中、今後とも、区民のニーズに応える効果的な清掃事業の展開に努めてまいります。


 最後に、新庁舎整備の検討状況について申し上げます。


 新庁舎につきましては、さきの第三回定例会において、十年という中長期的な視点に立ち、副都心池袋全体の活性化につながる計画として、将来を見据えた整備のあり方を検討することを表明したところでございます。この十月から専管組織を設置し、多岐にわたる課題について検討を進めており、十年後に向けた計画とはいえ、具体的な資金計画を含め、確実に実行可能なプランとするよう、あらゆる角度から調査研究を尽くしております。新庁舎の候補地については、歴史的経緯や地理的条件を踏まえ、現庁舎地区と旧日出小地区を含め、池袋駅周辺を中心に検討しております。また、庁舎等建設基金が底をついている現状では、新庁舎の整備経費については極力一般財源に負担を求めず、現本庁舎の用地を初め、区有財産を最大限有効に活用することが必要であります。


 こうしたことから、定期借地権や土地信託など、あらゆる土地活用の手法を検討しておりますが、ここで最も大切なことは、単なる財源対策ではなく、新庁舎の整備やそれに伴う区有財産の活用がいかに区民サービスの向上につながり、豊島区の発展に貢献するかということであると考えております。今後さらに調査研究を進め、十二月には、中間のまとめとして、検討結果をお示ししたいと考えておりますので、区政の将来を見据えた大所高所からのご意見をいただきますようお願い申し上げる次第であります。


 古代中国の経典「易経」に、「事をなすに始めをはかる」という言葉があります。また、「立ちて方をかえず」ともあります。極めて重要な課題に取り組む際には、たとえ時間を費やしてでも最初に明確な方針を打ち立て、一旦事を起こした後は信念を持って初心を貫くべきであるという意味であります。区長就任以来、地域の発展に向けて様々な道筋を探り、明確な方向の下に区政の構造改革を進めてまいりましたが、文化を基軸とした価値ある街づくりについても、そして区政の構造改革についても、これからがその真価を問われる、まさに正念場であります。先程の議員協議会でも、議員各位から大変厳しいご示唆をいただきました。豊島区の将来を開くために、初心を忘れずに、強い信念を持って改革の取組みを進めてまいりたいと思います。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例十件、その他四件、合わせて十四件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。