本日、ここに平成18年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。
今定例会の開会に当たりまして、区政に当たる私の所信の一端を述べさせていただきます。
初めに、平成18年度の施政方針について申し上げます。
私は、区長就任以来、「財政健全化」「価値あるまちづくり」、そして「区民に開かれた参加と協働による区政」という3つの目標を掲げ、区政の構造改革を進めてまいりました。決して平坦な道のりではありませんでしたが、これまで7年間の取組みが次第に結実し、目標の実現に向けた明るい方向が見えてきたと考えております。
特に、財政健全化については、財政健全化計画に続いて行財政改革プランを策定し、区議会、そして区民の皆様の大きなご理解・ご協力の下に、かつてない規模で思い切った改革を断行することで、着実に成果を積み重ねてまいりました。土地開発公社を含めた借入金残高については、平成11年度の872億円から18年度末の653億円へと、7年間で219億円のマイナスとなる一方、基金残高については、36億円から114億円へと、78億円増加する見込みであります。職員定数についても、平成11年の2,779人から37,9人減少し、今年4月には2,400人となる見込みであります。なお、清掃事務移管による増を除いた場合の削減数は520人、率では18.7%となります。そして、さらなる総人件費の抑制に向け、平成22年度を目途といたしまして、2,000人規模の組織体制を実現すべく努力してまいります。また、財政の弾力性を示す経常収支比率は、扶助費や特別会計への繰出金の増加が続く中でも、平成11年度の98.5%から16年度には85.7%と、13ポイントもの改善を達成しております。さらに、経常的な一般行政経費についても、この間、約65億円の抑制を図っており、平成21年度までの財源不足額も、2年前の370億円から昨年の166億円に、そして現時点での試算では90億円へと、確実に改善しつつあります。
平成18年度予算案については、後程、詳細を申し上げますが、これまでの改革の成果が積み重なり、さらに日本経済の着実な回復も加わったことで、特別な財源対策を講ずることなく編成することができたものと考えております。しかし、ここで改革の手を緩めるわけにはまいりません。健全化の道筋をより確かなものとするためにも、平成18年度こそがまさに正念場であると考えております。過去の反省を胸に刻み、改革プラン2005から2006へと、これまで以上に気を引き締めて改革に取り組むことで、過去10年にわたる財政問題を中心とした区政改革に、何としても1つの区切りをつけたいと考えております。
そして、これからは、新たな心構えを持って、価値あるまちづくりに臨む必要があると考えております。これまでは。いわば負の遺産を克服するための改革であり、過去を整理することに腐心するあまり、マイナス思考が先行し、区政全体が萎縮しがちな面もあったと思います。10年前に行き詰まっていた東池袋四丁目地区の市街地再開発事業は、積極的に交流施設と新中央図書館の整備に取り組むことで、今まさに未来に向けて、新たな魅力と価値をもたらす文化・定住・ビジネスの拠点として生まれ変わろうとしています。その業務棟には、日本を代表する社会・産業インフラ整備企業として、今年4月に合併して発足する株式会社日立プラントテクノロジーの本社が入居、進出することが決定しております。日立プラントテクノロジーは、大学生の就職希望ランキングでトヨタ自動車に次ぐ人気企業である日立製作所、その日立グループの中核を担う企業であります。資本金120億円、売上高3,500億円、そして従業員7,500人の企業であり、環境経営の取組みについても、非常に高い評価を受ける取組みをしております。こうした企業の本社の進出先として選ばれることは、今後の池袋副都心の発展にとって、大きな効果が期待できるだけではなく、価値あるまちとしてのイメージを高める大きなインパクトであると考えており、今後、様々な面で協力・連携関係を深めてまいりたいと考えております。また、過去10年間にわたり抱え続けてきた懸案である新庁舎問題についても、解決に向け決断すべきときであります。副都心活性化と区民サービス向上のため、機を逸することなく、不退転の決意を持って、早期に明確な方向を示したいと考えております。今、区政に必要なのは、将来に向かって、今を変えていこうとする力であります。これからは、明確な将来ビジョンを掲げつつ、地域の力や知恵を集めながら、改革を推し進めていくことが重要であると考えております。
昨年、区の人口は、2年振りに増加に転じました。人口減少が底を打った平成9年からは約5,500人の増加であり、今後もしばらくは緩やかな増加が続くものと予想しております。日本の人口は予想より1年早く減少に転じたと見込まれておりますが、東京でも、いずれ平成27年をピークとして、人口減少社会を迎えるといわれております。都市間競争が激しさを増す中、豊島のまちづくりにとっても、今後10年間が将来を左右する重要な期間であります。豊島が持つ魅力や長所を最大限に生かしながら、価値あるまちづくりを進めていくためにも、しっかりした将来展望と明確な政策をつくり上げることが重要であります。
去る2月9日、これまで2年半にわたる審議を踏まえ、新たな基本計画のあり方について、基本構想審議会から答申をいただきました。答申には、新たな公共の構築に向け、協働を基本に据えた、変化の激しい時代に対応した計画の姿が力強く描かれ、24の政策体系に基づく分野別計画とともに、政策全体を貫く規範として、行財政改革、施策の重点化、公共施設の再構築、そして戦略的・横断的な施策展開についての基本方針が示されております。今回の答申を踏まえ、3月には、新たな基本計画を策定いたします。そして、今定例会には、自治の推進に関する基本条例、文化芸術振興条例、商工振興条例、そして子どもの権利に関する条例など、今後の政策基盤を形づくる大変重要な条例をご提案しております。新たな基本計画の策定、そしてこれら条例の制定により、新たな10年に向けた揺るぎない政策の基盤と方向が明確になりつつあると考えております。平成18年度は、文化、健康、都市再生、環境を中心として、価値あるまちづくりに向けた政策をさらに磨き上げたいと考えております。
さらに、先月19日には、自治基本条例検討委員会から答申をいただきました。この答申は、約1年にわたる自治基本条例区民会議による検討結果を基に、区議会からのご意見等を踏まえ、条文化に向けた検討をいただいたものでございます。今回ご提案する自治の推進に関する基本条例は、約2年にわたる区民参加によってつくり上げたものであり、私が目指す「区民に開かれた参加と協働による区政」の集大成でもあると考えております。区民の信託に基づく区議会と区長の役割、まちづくりにおける区民の権利と責務、コミュニティを基盤とした参加と協働の推進など、豊島区の自治の基本理念・基本原則を定めるこの条例は、まさに区政運営の最高規範ともいうべきものであります。そして、この条例の制定は、分権社会における真の自治の実現に向け、区民と区がそれぞれ新たなスタートラインに立つことを宣言するものでもあります。分権改革の進展に合わせ、区民の豊かな暮らしを支える基礎的自治体の役割と責任は、ますます大きなものとなります。この条例が掲げる参加と協働によるまちづくりの理念と姿を広く共有し、区民一人一人がまちづくりの担い手として、主体的に地域社会との関わりを持つことができるような、魅力ある自治の仕組みを育ててまいりたいと考えております。地域区民ひろばも、この条例を具体化する重要な取組みの1つであります。平成18年度から本格実施に移行いたしますが、多くの区民に親しまれるコミュニティづくりの核となるよう運営を進めてまいります。
以上申し上げましたとおり、平成18年度は、これまで10年間にわたる区政改革の取組みを踏まえ、新たな挑戦に向けて揺るぎない足場を固める節目の年として位置付けております。「負の遺産を克服するための改革から、未来を開くための改革へ」と軸足を移し、財政健全化、政策づくり、そして自治の仕組みづくりについて、明確な道筋を定めるべく、全力を尽くしてまいります。
次に、平成18年度予算案について申し上げます。
平成18年度の一般会計予算規模は861億3,200万円となり、前年度当初予算に比べ3億4,400万円の減、0.4%のマイナスとなっております。これは、平成11年度以降、一貫して減り続け、8年連続のマイナスとなるものでございます。一方、国民健康保険事業会計など四特別会計の総額は583億7,000万円と過去最高の規模となっており、一般会計と合わせた財政規模は1,445億200万円で、前年度比0.1%の増となっております。一般会計の規模が年々縮小する一方、四特別会計の規模は、高齢化の進展に伴って、膨張する傾向が続いております。総額で83億9,000万円にも上る繰出金は、一般会計を圧迫する大きな要因となっており、今後の財政運営に深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。
一般会計予算の特徴でございますが、歳入については、税制改正による影響等を反映し、特別区税が対前年度比16億6,300万円の増、6.9%のプラスとなっております。特別区財政調整交付金は、企業業績の順調な回復による市町村民税法人分の大幅な増収を見込み、対前年度比で18億円の増となる274億円を計上しております。特別区債は、対前年度比23億4,000万円の減となる12億5,800万円であり、引き続き厳しく抑制しております。また、制度発足以来初めて減税補てん債を発行しないこととしたため、起債依存度は1.596という低い水準となっております。次に、歳出ですが、経費別では、人件費と事業費が減少する一方、投資的経費が増加しております。人件費の総額は237億9,200万円でございまして、対前年度比5億3,200万円の減、2.2%のマイナスとなっております。事業費は、プラン2005による事業の見直し等により、対前年度比5億1,600万円の減、1.0%のマイナスとなる498億4,200万円であり、6年連続のマイナスと、なっております。投資的経費については、東池袋四丁目地区の市街地再開発事業等により、対前年度比7億400万円の増、6.0%のプラスとなる124億9,800万円となっております。以上のとおり、平成18年度予算案は、特別な財源対策を講じることなく、繰越金も計上せず、起債への依存も極力抑制した予算であり、過去に背負った負の遺産を確実に償還して、将来に向けて安定的で健全な財政運営を目指す、緊縮型の堅実な予算と位置付けております。
なお、平成18年度予算案に関連し、主要5課題をめぐる都区財政調整協議の経過について申し上げます。平成12年の制度改正において積み残された主要5課題の協議につきましては、これまで区側の切実な需要を訴え、粘り強く協議を続けてまいりましたが、東京都は、最終提案の段階でも三位一体改革の影響を除き、配分割合の変更はないとの姿勢を崩しませんでした。その後、区長会会長と都知事との直接交渉も行いましたが、それ以上の譲歩もなかったため、1月16日、区長会の総意として都側の提案を拒否し、協議は決裂いたしました。その後、1月26日に、東京都として平成17年度の再調整について配分する義務があることから、区側に協議再開の申入れがあり、その中で主要5課題に関わる問題については平成18年度の財政調整協議に影響を与えないことが確認されたため、2月1日、区長会として平成17年度再調整の協議結果を了承いたしました。この時点においても、平成18年度の財政調整協議は調わず、都議会第1回定例会に条例改正案を提案するごとは困難な情勢でありましたが、都区間の相互協力関係が損なわれることを憂慮した都知事の強い働きかけもあり、急遽、区長会会長と副知事の会談が行われ、平成18年度協議と平成19年度以降の協議を切り離して対応する方向で調整が行われました。その結果、2月10日の臨時区長会総会におきまして、平成18年度財政調整協議については、都の提案どおり、200億円の特別な交付金を受け入れることを決定し、本日開催されました都区協議会で合意されたわけでございます。今後は、最も大きな課題となる都区間の役割分担と財源配分のあり方について、新年度から新たなステージに移行して協議が行われることになりますので、区議会の皆様には、何とぞご理解と一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
次に、平成18年度における7つの重点政策について申し上げます。
まず、文化政策についてでございます。
文化政策は、未来に向けて、人と街の元気を引き出し、魅力と活力ある地域社会づくりを進めることを目的とするものであります。こうした文化創造都市宣言の趣旨を区政全体に広めていくため、新たに文化芸術振興条例を制定いたします。また、文化芸術の枠を越え、健康、教育、都市再生、にぎわいなど、幅広い政策との連携強化を図るとともに、区民、文化芸術団体、大学、企業など、地域の多様な主体との協働も広げてまいります。本年3月には、池袋西口地区における個性ある文化を発信するため、NPO法人ゼファー池袋まちづくり、豊島区、立教大学、東武百貨店、そして美術専門学校や地域活動団体等との連携により、新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館を開催いたします。また、西部区民事務所のアトリエ村資料室を拠点とする区民主体の研究グループとの協働事業を積極的に展開いたします。さらに、にしすがも創造舎が実施する体育館改修について、地元金融機関等からの融資実行を支援するとともに、東京国際演劇祭の開催を初めとする芸術文化活動を推進いたします。
池袋副都心における新たな文化と情報の発信拠点である東池袋交流施設と新中央図書館のオープンまで、いよいよ1年半となりました。2つの施設が一体となって魅力ある文化空間をつくり上げ、相互に連携した個性あふれる運営を実現するため、明確なコンセプトを掲げ、具体的な準備を進めてまいります。
また、文化を基軸としたまちづくりは、にぎわいの創出や活力と深く関わる取組みであり、文化政策と商工・観光政策を一体的に進めることで、より大きな効果を生むことができると考えております。そこで、来年度から、文化担当部と商工部を統合し、新たに文化商工部を創設いたします。今後は、文化とにぎわいの両面から、地域ブランドの創出や観光情報の発信、魅力ある商店街づくりに取り組み、区内各地域の個性を生かしたまちづくりを進めてまいります。地域の産業振興につきましては、新たに制定する商工振興条例に基づき、既存産業の振興や新産業の創出など、多様な主体との協働による施策を展開いたします。池袋西口の活性化に向けたゼファー池袋まちづくりの活動や巣鴨・大塚地区において豊島にぎわい創出機構が進める事業計画の策定など、地域の主体的な取組みに対する支援を行うとともに、商店街の活性化については、環境や健康に視点を置いた活動を重点的に支援してまいります。なお、来年度から、地域ブランドの創出と環境の視点から、目白庭園内でホタルを育成し、ホタルの飛ぶ庭園を公開する「ホタルの里」事業を実施いたします。
第2番目に、健康政策について申し上げます。
一人一人の主体的な健康づくりを進めるためには、家族や学校、地域社会の中で、個人の取組みをサポートする共助の仕組みを築いていくことが重要でございます。区内の健康増進施設、スポーツ関連企業、大学等との連携を深めながら、健康づくりの環境整備を進めるとともに、新たな介護保険制度と連動した介護予防対策の充実を図ってまいります。健康づくりについては、新たに「としま健康づくり大学」を開設いたします。壮年期から高齢期に向かう年齢層を対象として、健康とスポーツに関する総合的な学習機会を提供するとともに、地域における健康増進リーダーの育成を進めます。生活習慣病の予防では、禁煙と糖尿病予防について、新たな事業展開を図るとともに、若年から更年期までの女性を対象とした健康教室を設けます。介護予防については、今年度からスタートした「75歳からの介護予防大作戦」を拡充し、自主的・継続的な予防の取組みを支援いたします。また、区立小学校を会場として、子どもと交流しながら、栄養バランスに優れた給食を食べ、体操や栄養指導などの健康学習を行う「おたっしゃ給食事業」を3校で実施いたします。このほか、食育を総合的に推進する計画の策定に向け、調査・研究を進めるとともに、健康診査センターのMRI機器更新に係る助成や池袋保健所における休日調剤薬局の開設を行います。
さらに、介護保険法の改正や障害者自立支援法の制定に対応した介護や福祉の基盤整備についても着実に進めてまいります。地域ケアの拠点として、区内8カ所に地域包括支援センターを設置するとともに、このセンターを核として、認知症高齢者に対する虐待の早期発見・防止体制の充実を図ります。また、地域密着型サービスや介護予防の基盤整備を促進するため、民間事業者による小規模多機能型居宅介護や認知症グループホームの整備等を助成いたします。障害者の自立支援についても、障害者就労支援センタ-に就労支援員を配置するとともに、精神障害者の雇用促進に向け、就労支援の相談機能を拡充いたします。
第3番目は、都市再生についてであります。
この度、今後の副都心再生の鍵を握る環状5の1号線について、大変明るいご報告ができるようになりました。地下通過道路が実現に向けて大きく進展したのであります。現在、グリーン大通りから千登世橋の区間で地上部の道路整備が進んでおりますが、地上部だけでは、雑司が谷、目白地区の交通問題の解決が図れないばかりでなく、明治通りの恒常的な渋滞改善が期待できないのは明らかであります。平成8年に地下通過道路の構想が示された以降、その実現に向けた計画が進展しないため、区議会のご協力をいただきながら、私自ら東京都に出向き、再三再四、構想の具体化を強く要望してまいりました。こうした取組みが実り、この度、東京都から、地下鉄13号線と地上部の道路整備に引き続き、地下通過道路を整備するという方針が決定したとの報告を受けました。これまで構想に過ぎなかった地下通過道路がいよいよ実現の運びとなり、池袋副都心の再生に確かな展望が開けたと思っております。今後、整備内容が固まるまでには様々な手続きが必要となりますが、都と協力しながら、円滑な事業実施に向けて取り組んでまいります。
平成18年度における副都心再生の取組みですが、池袋駅周辺や主要道路沿道を対象とした地区計画の範囲をさらに広げ、緩和措置を含むより詳細な地区計画の導入を図り、老朽化したビルの建替えを誘導したいと考えております。南池袋二丁目地区については、Aゾーンにおける市街地再開発の事業化に向け、新庁舎整備の方針を明確にしつつ、都市計画等の手続きを進めてまいります。池袋西口地区の再生にも力を入れて取り組みます。商業の活性化と安心・安全な環境づくりを目指し、ゼファー池袋まちづくりが取り組む事業を支援するとともに、街の顔である駅前広場について、ユニバーサルデザインに配慮した歩道や街路灯などめ改修に着手すべく、計画を策定いたします。大塚駅の駅前広場についても、南北自由通路や駐輪場の螫備に合わせ、バスバースやタクシーペイの再編を含む全面的な再整備に向け、計画づくりを進めます。このほか、平成20年度の完成に向け、東長崎駅の自由通路等の整備を進めるとともに、椎名町駅周辺では、環状6号線拡幅工事に伴う椎名橋下空間の整備に着手いたします。
駅周辺の放置自転車対策については、3月末に予定されている自転車等駐車対策協議会の答申を踏まえ、今年6月を目途に総合計画を策定いたします。また、総合計画に基づく鉄道事業者の協力を踏まえ、2年連続して都内の放置自転車が第1位、第2位となっている池袋駅、大塚駅において、新たな駐輪場の整備を進めるとともに、規模と機能の両面から自転車保管所を拡充いたします。
また、密集市街地の防災性強化については、東池袋地区における補助81号線沿道のまちづくりを促進するとともに、池袋本町地区の居住環境総合整備事業を展開する中で、清掃車庫跡地の先行取得を行います。さらに、既存建築物の耐震化を促進するため、木造住宅を対象とする耐震改修工事の助成をスタートするとともに、平成18年度中には、耐震改修促進計画を策定いたします。
第4番目は、環境政策であります。
豊島区は自然環境という面では資源が少ない地域ですが、「地球規模で考え、地域から行動する」との言葉どおり、資源循環型社会の構築に向けた取組みを中心として、「人と環境にやさしいまち」を目指した環境政策を展開してまいりたいと考えております。平成18年度は、家庭ごみの有料化と廃食油のリサイクルに向けそれぞれモデル事業を実施するとともに、粗大ごみ収集の民間委託を本格的に実施し、日曜収集や収集時間の延長など、サービス向上を図ってまいります。また、新たな環境政策の取組みといたしまして、環境に配慮した活動を実践する企業との連携や区立学校における「緑のカーテン」等を行う地域エコ事業を実施するとともに、環境省が推奨する環境地域モデルの検討の場として、各種団体で構成する地域協議会づくりに取り組みます。
さらに、現在、豊島にぎわい創出機構が主体となり、環境と商業振興、そして日本の伝統文化を結び付けた取組みとして、環境ふろしきの製品化に向けた企画が進められております。この環境ふろしきは、小池環境大臣がクールビズ、ウォームビズに続いて提唱されているものであり、大臣自らのアイデアを基に、リサイクル素材の活用や消費者団体などとの連携を図り、レジ袋や紙袋に代わるものとして、豊島区から全国へ普及を目指すものであります。区が進める環境政策に呼応した取組みであり、積極的に支援・協力を進めていきたいと考えております。
また、都市の緑は、ヒートアイランド現象の緩和や防災、景観など、都市環境を形成する重要な資源であり、大規模な近隣公園を確保しつつ、民間施設を含め、街全体で緑豊かな環境をつくり上げていく必要があると考えております。こうした視点から、癌研跡地における防災公園の整備に加え、高田小学校跡地における近隣公園の整備に向けた検討を本格化するとともに、地域緑化の取組みをさらに強化するため、みどりと広場の基本計画の見直しに着手いたします。
第5番目は、区民生活の安心・安全の確保でございます。
子どもに対する凶悪犯罪や高齢者等への振り込め詐欺など、弱者を狙った卑劣な犯罪が深刻化し、さらに集中豪雨や直下型地震、新型インフルエンザなど、暮らしの基盤である安心・安全を脅かす要因が多様化しております。安心・安全を確保することは、都市繁栄の基本であるとの認識の下、より一層、施策相互間の連携を図り、効果的な取組みを進めてまいります。子どもの安全を確保するため、これまでに区立小中学校を初めとする41施設に防犯カメラを設置いたしましたが、平成18年度は、区立保育園、子どもスキップなど、新たに39施設に設置対象を広げる計画です。なお、今年3月までには、すべての小中学校を初め、区内84カ所の施設にAEDの設置を行います。今年度からスタートした事件情報のメール配信システムについては、既に登録数が4,600件を超えるとともに、地域主体の防犯パトロール支援機材の貸出しも順調に増えております。今後とも、地域における自主的な見守り活動を支援するとともに、環境浄化対策と連携したパトロール活動の充実を図ってまいります。繁華街池袋の安心確保に向けては、風俗案内所等における違法看板の規制に向けた生活安全条例の改正を行うとともに、4月には、風俗営業の出店規制を含む地区計画を決定する予定であります。また、有事に対応した国民保護計画を策定するとともに、これまで派遣を受けている警視庁職員に加え、東京消防庁からも職員の派遣を受け、対応能力の強化を図ってまいります。
第6番目に、子育て環境の整備について申し上げます。
少子化問題は国家的課題となっており、子育ての社会化という観点から、すべての家庭を対象とした子育て支援策を着実に展開する必要があると考えております。平成18年度は、在宅の子育て家庭に対する支援策として、新たに訪問事業をスタートするほか、子ども家庭支援センターで実施してきた一時保育の対象年齢を満10カ月まで拡大いたします。また、子育ての経済的負担の軽減を図るため、入院に関する子どもの医療費助成の対象を小学校6年生まで拡大いたします。区立保育所の民営化につきましては、今年4月、南池袋保育園と駒込第三保育園の2園を民間に移行いたします。この2園を含め、平成18年度から21年度までの4年間で、8園について取り組んでまいります。南池袋保育園は、民設民営の同援さくら保育園となり、延長保育を初め休日保育や病後児保育、そして一時保育など、様々な面で保育サービスが充実されます。社会福祉事業団に委託する駒込第三保育園についても、延長保育が拡大されます。子どもの放課後対策である子どもスキップにつきましては、今年度の6小学校区に加え、新たに朋有、池袋第二、高南、富士見台の4校を加え、10校で展開いたします。
さて、今定例会には、平成11年の青少年問題協議会から約7年にわたる議論を踏まえ、子どもの権利に関する条例をご提案しております。私は、区長2期目の選挙公約の中で、「未来を担う子どもたちのために」というスローガンを掲げ、区民の皆様の信託をいただきました。しかし、近年、子どもたちを取り巻く社会環境は、いじめや虐待の増加、商業主義による子どもの商品化、さらには残虐な殺人事件の多発など、誠に憂慮すべき状況にあると考えております。こうした社会状況を少しでも変えていくためにも、子どもの権利を明らかにし、家庭や地域における権利保障を定めるこの条例は、大変重要な意味を持つものであると考えております。また、この条例は、青少年問題協議会はもちろん、区民参加による子どもの権利条例検討委員会での議論、そして子どもや保護者、学校関係者、地域団体等のご意見を聞き、子どもに対する数多くの区民の思いを踏まえて生まれたものであると考えております。豊島区は、平和と人権の尊重を基本としてまちづくりを進めてきた街であります。この条例の制定に対し、子どもを一層わがままにする、大人と子どもの関係をさらに悪化させることにつながるなど、ご心配の声も寄せられておりますが、私は、子どもの人権を守るために条例を制定するものでありまして、こうしたご懸念が問題化しないよう最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。今後も、この条例の趣旨について、広く区民の皆様にご理解いただくよう努めてまいりますので、十分なるご審議の上、ご協賛くださいますようお願い申し上げます。
第7番目として、学校教育について申し上げます。
今、学力低下への懸念や学習意欲、学習習慣の欠如などの課題が指摘され、学校教育の役割が改めて問われております。また、昨年10月の中央教育審議会の答申が「子どもの人間力を豊かに育てることが改革の目標である」と指摘しているとおり、豊島区においても、新しい時代を自ら切り開くことのできる、心豊かで逞しい人づくりを進めていく必要があると考えております。こうした中、義務教育の場である区立小・中学校には、基礎的な学力と体力、豊かな人間性と社会性、そして他人への思いやりや道徳心などを育成する、教育力の向上が求められております。本区においては、これまでも学校教育を豊かで魅力あるものとするための取組みを進めてまいりましたが、平成18年度は、小・中学校の連携をより一層重視した取組みを進めてまいります。区内3地区において、小・中学校連携モデル校を指定し、連続性のあるカリキュラムの開発や児童・生徒の相互交流、教員同士の共同研究などを行うことで、小・中9年間の学習面、生活面の連続性を確保し、一人一人に応じた効果的な指導を進めてまいります。今年度から小学校5・6年生を対象として実施している英語教育についても、区独自の英語カリキュラムを開発し、来年度からは、対象を3年生以上に拡大するとともに、小・中学校の連続性を確保し、実践的なコミュニケーション能力の育成を図っでまいります。また、地域の人材を活用した多彩な教育活動を展開し、地域ぐるみで学校を支え、子どもを育てる土壌づくりを進めてまいります。さらに、平成19年度から予定されている特別支援教育の本格実施に向け、区立小学校2校をモデル校として支援体制づくりを進めるとともに、千川中学校に情緒障害通級指導学級を設置いたします。なお、今年3月末をもって58年の歴史を持つ長崎中学校が閉校し、3月19日に新校舎の落成を予定している明豊中学校と統合します。これで、平成9年から進めてまいりました第一次区立小・中学校適正化計画は、すべて終了することになります。
最後に、新庁舎の整備について申し上げます。
昨年12月、私は、すべての区政連絡会に出向き、新庁舎整備の必要性についてご説明するとともに、新年名刺交換会を初め様々な地域の会合等においても、新庁舎にかける決意を述べてまいりました。その際、町会、区民の皆様からは、数多くのご意見、ご質問をいただき、新庁舎への関心の高さを改めて強く感じております。
この4月で、平成8年4月に新庁舎の着工延期を決定してから10年が経過いたします。一時は192億円あった庁舎等建設基金は、バブル崩壊後の財源対策に充てることで、既に底をつき、この間も庁舎の老朽化は確実に進んでおります。昨年12月にも、本庁舎正面の壁面の一部が剥離して落下するという事故があったばかりであります。今回の新庁舎整備の案は、直面する困難な現状と正面から向き合い、「資産の所有から活用へ」と発想を転換し、これまでにない打開策を見出そうとするものであります。区有財産を最大限に活用することで、極力新たな負担を少なくすると同時に、新庁舎の整備を副都心再生の千載一遇のチャンスとして生かすため、跡地活用についても、中途半端なものではなく、思い切ったプランを検討する必要があると考えております。新庁舎の位置については、現庁舎地か日出小学校跡地への移転の2つに絞られてきておりますが、いずれの地にしても、文化、商業、業務、そして行政サービス向上の視点から、副都心全体、さらに豊島区全体の機能を高める計画とすべく、今後も精力的に検討を進めてまいります。
また、新たな庁舎に求められる基本コンセプトは、防災、IT、環境の3つであると考えております。自然エネルギーの利用を初め、省資源、省エネルギーなど、地球環境に配慮した先駆的な施設として、また区民サービスを飛躍的に向上させる電子自治体の拠点としての整備を図るとともに、特に防災拠点としでの機能を重視した整備が必要であると考えております。先日、阪神大震災を経験した神戸市において開催された災害対策トップフォーラムに参加する機会を得ました。その際、矢田立郎神戸市長ともお会いし、震災を含む災害対策について意見を交換する中で、現在の庁舎では震災時において防災拠点としての機能を果たすことは到底困難であり、区民の安全を確保するためにも、できる限り早期の整備が必要であるとの思いを強くしたところでございます。
冒頭の施政方針において申し上げましたとおり、過去10年にわたる区政改革に一つの区切りをつけるためにも、新庁舎問題の解決に向け、明確な方向を見出してまいりたいと考えております。今後、さらに検討を深め、広く区民の皆様のご意見を伺いながら、6月には整備方針を決定したいと考えておりますので、将来を見据えた大所高所の視点からご意見をいただきますようお願い申し上げます。
室町時代の能役者世阿弥の教えに、「時節感当」という言葉がございます。観客の注目や期待が高まったその瞬間に声を出すべきこと、即ち、何事にも潮時があり、その潮を捉えてこそ志を達することができるとの意味であります。また、「年々去来の花を忘るべからず」ともあり、これは、人生のそれぞれの時期に身に付けた芸は生涯これを忘れてはならないとの意味であります。これまでの7年間、全庁が一丸となって行財政改革、組織改革に取り組む中で、私たちは、改めて自らを問い直し、迷い、壁に突き当たり、それでも勇気を持って変革を進めながら、多くの教訓を学ぶことができました。そして、やっと今、次第に潮が満ち、新たな夢と目標をつかもうとしています。これから先、未来を開くための改革に挑戦する中でも、これまでの改革の中から得たかけがえのない経験をしっかりと胸に刻み、決して忘れてはならない、そう思っております。
本日ご提案申し上げる案件は、条例31件、予算7件、その他6件、合わせて44件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。