本日、ここに平成18年第3回豊島区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。
一昨日、自由民主党の総裁選挙が行われ、安倍晋三氏が新総裁に選出されました。安倍氏が掲げられた「美しい国、日本」という言葉に込められた国づくりの方向性は、「文化と品格を誇れる価値あるまちづくり」を提唱する者として、深く共感を覚えるところであります。そして、これからは、内政・外交ともに力強いリーダーシップを発揮され、年金、医療を初めとする社会保障制度改革、そして活力ある地域づくりを進めるための分権改革や地方財政の充実など、21世紀の新しい国づぐりを力強く推し進めていかれますことを強く期待しております。
それでは、初めに、未来を開くための改革の推進について申し上げます。
平成17年度の決算については、この後詳しく申し上げますが、その状況を見ますと、財政健全化計画に続き行財政改革プラン2004による改革を断行した成果が顕著に現れており、区財政は、危機的な状況を克服し、次第に安定へと向かいつつあると考えております。しかし、現時点では危機を脱したに過ぎず、真の財政健全化を成し遂げるためには、ここを道半ばとし、これまでの取組みを一つ一つ検証しながら、体質改善に向けた行政改革を継続していかなければなりません。また、今後とも、区民との協働を含めた行政サービスの民営化等を進めていく上では、外部評価を含めた実効ある行政評価制度を確立するなど、さらに透明性を高め、説明責任を果たしていく必要があります。そして、何よりも、これからは行政経営にとどまらず、広く都市経営という視点から、住みたい街、訪れたい街と評される「文化と品格を誇れる価値あるまち」に向けた取組みを本格化する必要があります。改革とは、未来に向けて重く大きな扉を押し開いていくがごときものであり、さらなる改革を推し進めていくためには、新たなエネルギーが必要となります。
これまでの負の遺産を克服するための改革では、財政の危機が改革のエネルギーとなってきました。しかし、危機は変革の大きな動機付けとはなりますが、それだけでは将来に向けた継続的な力とはなり得ません。これから取り組む未来を開くための改革にとっては、豊島区が向かおうとする目的地の姿とそこへ行く意義を明確にしたビジョンこそが持続的なエネルギーとなるのであります。また、戦略的な都市経営は、行政だけでは到底なし得るものではなく、地域全体が力を合わせて初めて可能となるものであります。そのためにも、地域の様々な主体が共有できる、そして挑戦する元気が湧き上がってくるような目標づくりが何よりも重要となるのであります。現在、新たに設置した未来戦略創出会議において、文化、健康、都市再生、環境に加え、将来展望としての人口や財政についても、目指す目標と戦略について検討を進めているところであります。そして、新庁舎の整備についても、未来戦略の大きな柱であると考えております。年度内には、現庁舎地区、日出小学校地区、それぞれについて整備基本計画を策定し、方向性を明確にしながら、整備を促進してまいりたいと考えております。
新たな10年の挑戦に向け、未来を開くための改革を推進する具体的な目標と戦略をいかに示すことができるか、そこに区政の将来がかかっております。10年後の次の世代へ文化と品格を誇れる価値あるまちを引き継ぐため、全力を尽くして戦略を鍛え上げてまいりたいと考えておりますので、議員各位におかれましても、豊島区の将来展望のあり方につきまして、大所高所から様々なご意見・ご示唆を賜りたくお願い申し上げます。
次に、平成17年度決算について申し上げます。
平成17年度一般会計決算額は、歳入が923億4,200万円で収入率97.7%、歳出が903億2,900万円で執行率95.6%であり、前年度決算と比較いたしますと、歳入は56億円の減で5.7%のマイナス、歳出につきましても47億5,000万円の減で5%のマイナスとなりました。歳入の特徴といたしましては、企業収益の大幅な伸びを反映する形で、財政調整交付金が対前年度比33億6,000万円、13.2%のプラスとなりました。また、特別区税は、個人所得の伸びと課税人口の増加による特別区民税の増及び狭小住戸集合住宅税の伸びなどにより、対前年度比4億6,000万円、2%のプラスとなっております。一般財源の歳入で比較いたしますと、時習小学校跡地の売却などで68億3,000万円の財産収入があった前年度よりも、約6億円、0.9%のプラスとなりました。一方、歳出の特徴といたしましては、市街地再開発事業、明豊中学校建設事業、都市計画道路整備事業などで、投資的経費が対前年度比41億3,000万円、50.3%のプラスとなりました。また、人件費については、職員定数の削減やかつて踏み込んだことのない臨時特例的な給与カットなどにより、17億4,000万円、6.8%のマイナスとなり、公債費は、56億8,000万円、44.6%のマイナス、そして物件費が31億8,000万円、20.9%のマイナスとなるなど、改革による経常的経費の削減効果が顕著に現れております。歳入から歳出を差し引いた形式収支は20億1,300万円であり、翌年度に繰り越す財源を差し引いた実質収支も14億5,400万円の黒字となっております。さらに、当該年度における財政運営の健全性を示す実質単年度収支も23億4,600万円で2年連続の黒字となりましたが、これは平成元年度以降初めてのことであります。
財政指標では、財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、財政調整交付金や特別区税などの経常的歳入が大幅に伸びる一方、人件費などの経常的歳出が減少したことを反映して、前年度より7.9ポイントも大幅に改善し、77.8%となりました。また、公債費比率は、前年度より0.6ポイント上昇して9.6%となりましたが、これは、特別養護老人ホームの民営化に伴い、その起債償還経費が公営企業会計の位置付けから普通会計に移行したことによるものであります。このように、平成17年度決算は、我が国の経済の回復基調の追い風を受けつつ、行財政改革の効果により、堅実な財政運営に向かっていることが明確に現れた決算であると受け止めております。
区長就任以来、危機的な財政状況からの脱却に向けて走り続けた日々は、本当に長く厳しい道のりでありました。区議会の協力、区民の理解を得て、今こうした決算状況を前に、深く胸をなで下ろすとともに、さらなる健全化に向け、決意を新たにしているところであります。
次に、文化政策について申し上げます。
いよいよ、東池袋交流施設として整備を進めてまいりました舞台芸術交流センターあうるすぽっとの開設まで1年となりました。来年のオープン、9月10日を予定しております。来年7月にオープンする新中央図書館とともに、池袋副都心に新たな文化芸術・情報発信の拠点が生まれ、文化政策に力強い一歩を踏み出すことになるのであります。優れた舞台芸術の公演や創造、そして地域が育んできた歴史や伝統の情報発信など、魅力ある文化拠点の誕生は、新たな人の流れを生み、街全体の価値を高めていく力を持っています。池袋が育んできた文化的イメージの向上や区民の芸術文化活動の活性化にとどまらず、来街者の増加、魅力ある商業施設の進出、さらには都市再生の進展など、まさに文化施設の整備は未来への先行投資なのであります。
ちょうど1年前の9月22日、豊島区は、文化の力をもって大と街に新たな輝きを生み出そうとする姿勢を広くアピールし、区民一人一人が文化創造の担い手であることを謳った文化創造都市宣言を行いました。「人々に“元気”を、街にはにぎわい”を!」との言葉どおり、劇場と図書館から成るこの施設は、まさに文化創造都市宣言の理念を具現化するものであります。多くの区民や来街者に愛される施設として、魅力あふれる運営に力を注いでまいりたいと考えております。
さて、301席の舞台芸術交流センターあうるすぽっとでありますが、臨場感あふれる空間レイアウト、ゆったりとした客席配置など、舞台の息遣いを肌で感じるような素降らしいホールに仕上がりつつあります。事業運営としては、創造事業、育成事業、施設提供事業の3つを柱とし、年間集客数は10万人を目標としております。創造事業としてはオリジナル作品の制作・上演を初め、演劇を中心に、内外の優れた劇団や文化芸術団体と提携し、舞台芸術を創造する場として、魅力あふれる活動を展開してまいります。2つ目の育成事業についでは、子どもたちや区民の皆さんが文化芸術に親しめるよう、各種のワークショップや講座を開催するとともに、文化芸術を広げるボランティアを育成いたします。また、3つ目の施設提供事業では、質の高い優れた舞台芸術作品を鑑賞する機会を数多く提供するとともに、区民自身による舞台芸術活動め拠点としても広く活用していただきたいと考えております。
そして、新たな劇場を世に印象付ける上で最も重要となるのが、こけら落としの公演であります。現在、優れた演出と本格的なキャストをもって、新たな劇場の運営方針を強く印象付ける記念公演とすべく、野村萬氏、野村万蔵氏による狂言や著名な俳優によるミュージカルなど、区の芸術顧問である小田島雄志氏を中心に、検討を進めているところであります。
一方、新中央図書館についても、図書館行政政策顧問である粕谷一希氏のアドバイスをいただきながら、地域文化に関する情報発信機能やビジネス支援機能を強化すべく、準備作業を進めております。1つ目の地域文化の情報発信機能といたしましては、映画、演劇、美術、そして落語など、文化・芸術関係の資料の充実を図り、特に地域固有の分野については力を入れてまいります。池袋モンパルナスや東京裁判に関する図書を初め、トキワ荘に関連する手塚治虫や石ノ森章太郎、千早の地において執筆活動を行った横山光輝の作品につきましては、可能な限り全作品を収集したいと考えております。さらに、舞台芸術交流センターにおける演目に合わせた特別展示も予定しております。2つ目のビジネス支援機能は、課題解決支援型図書館としての機能を強化するものであります。商業・経営関係の図書については、現在の約3倍に当たる1,000冊以上を目標とし、ビジネス支援に関する様々なご質問・ご要望に対応するレファレンス機能の向上を図ります。また、インターネット等の利用が可能なIT席の増設やパソコンの持込みによるIT接続可能席の新設、さらに民間有料データベースの検索も可能といたします。新中央図書館は、市区町村の図書館としては他に例のない、最長午後10時までの開館を予定しております。多忙なビジネスマンの知恵袋として、区民はもちろん、広く都民や他県の方々にもご利用いただけるものと期待しております。
次に、池袋西口駅前広場の改修について申し上げます。
既にご案内のとおり、平成20年6月には、東京メトロ・地下鉄13号線が開通いたします。新宿、渋谷方面と東上線、西武線の相互乗入れが実現し、このままでは間違いなく池袋は通過駅となり、来街者が減少してしまう可能性があります。こうした事態を食い止めるためにも、豊島区の顔である池袋、特に池袋西口駅前広場の魅力ある再整備は、新庁舎整備や東池袋四丁目市街地開発事業と並び、副都心の再生にとって大変重要な課題であると認識しております。西口の駅前広場は、戦災復興による土地区画整理事業によって整備されてから既に約40年が経過しております。これまで部分的な改善等は行ってまいりましたが、街路灯や歩道、植栽など、広場全体について抜本的なリニューアルが必要な時期を迎えております。その実現に向けて、今年度からワークショップを開催し、現状の課題整理に着手いたしました。ワークショップでは、繁華街の治安向上や地下街の回遊性、地上部とのエスカレーターでのアクセス、街路灯の照明設備、タクシープール、そしてバスバースのあり方など、様々な観点からご意見をいただいております。特に、東京芸術劇場や立教大学の存在を生かしながら、個性ある文化を発信する街として、いかなる整備を進めるべきか、十分に検討を加えていく必要があります。今後とも、広く西口方面の皆さんのご意見を踏まえ、関係機関との調整を図りながら、今年度末には最終的な改修計画の案を取りまとめ、平成21年度の完成を目指して事業を進めてまいります。
そして、こうした事業を進める中で、治安のシンボルとしての西口駅前交番の移転と機能拡充についても実現したいと考えております。現在の交番は、昭和46年に設置されたものでありますが、位置、スペースともに改善が必要であり、犯罪への迅速な対応を可能とするハイテクを駆使した設備も不可欠であります。今後、区議会からのご意見もいただき、地元や警視庁との調整を図りながら、実現に向け。さらに検討を加えてまいります。
次に、健康政策について申し上げます。
今週、敬老の日にちなみ、新たに100歳を迎えられたお2人を訪問し、長寿のお祝いを申し上げてまいりました。今年100歳を迎えられた方は36人であり、豊島区においても年々長寿化が進んでおります。今年7月の厚生労働省の発表によれば、我が国の平均寿命は、男性が78.5歳、女性が85.5歳であります。これに対しまして、認知症や寝たきりにならない状態で自律して生活できる期間を見る指標として健康寿命があり、平成15年のWHOの報告では、男性が72.3歳、女性が77.7歳となっております。平均寿命、健康寿命ともに世界一を維持する我が国でありますが、今後は、平均寿命と健康寿命の差である男性6.2歳、女性7.8歳を少しでも小さくしていくことが本区の健康政策においても重要な課題であると考えております。そのためには、これまでの早期発見、早期治療という2次予防を中心とした取組みに加え、疾病の発生そのものを予防しようとする1次予防に一層重点を置いていく必要があると考えております。
こうした観点から、今年度の新規事業として、としま健康づくり大学を9月から開校いたしました。この事業は、40代からの壮年期を対象として、運動の実践と健康づくりの知識の習得を組み合わせた連続講座でございます。募集の段階では、50万人の定員に対して、100人を超えるご応募をいただき、改めて健康に対するニーズの高さを実感いたしました。学長には、体操競技で元オリンピック代表として活躍された小野喬氏にご就任いただきました。また、講師陣には、ミミ・スイミングクラブ代表の木原光知子氏、女子栄養大学学長の香川芳子氏を初め、スポーツや健康の分野でご活躍されている方々をお願いしております。半年間にわたる講座では、「アンチエイジング」をテーマとして、単なる病気予防だけではなく、積極志向の人生観など、健康の原点を学んでいただき、地域における健康づくりのリーダー的人材を育成してまいりたいと考えております。
また、学校教育においても、食育の推進と体力向上を重点とした「体いきいき心うきうきプロジェクト」を展開してまいります。豊島区では、小学校3校が東京都教育委員会健康づくり功労表彰を受けるなど、学校における保健、給食の指導はかねてより高い評価を受けておりますが、今後は、さらに食育リーダーの育成や食育に関する研修に取り組んでまいります。最近のキレる子の原因は、食事、睡眠など、生活習慣や家庭環境が大きく影響しているといわれております。区立学校の保護者に行った調査によれば、朝食を摂る割合は。小学生が89%、中学生が83%という結果でした。現在、教育委員会ホームページに「かんたん朝ごはんレシピ」を掲載し、手軽にできる朝食づくりを紹介しておりますが、さらなる普及啓発を図るため、食育推進パンフレットを作成し、学校と家庭との連携による食育を推進してまいります。
また、区立小学校3校を会場として、高齢者に給食と健康づくりの機会を提供する
「おたっしゃ給食事業」もスタートいたしました。5月から7月の第1期では、延べ320人の参加があり、大変ご好評をいただいております。現在、第2期目を実施しており、参加者の状況を見ながら、来年度はさらに実施校を増やしていきたいと考えております。
次に、清掃リサイクル事業について申し上げます。本定例会へ提案いたしました一般会計補正予算には、東京二十三区清掃一部事務組合が設立する新会社への出資に充てる分担金の追加支出を計上しております。ご案内のとおり、清掃事業は平成12年に都から移管されましたが、一方で、安定的な地域処理のあり方など、23区が共同して対処しなければならない課題が山積しておりました。そのため、区長会に設けられた自治研究会第2分科会を中心として、集中的に検討を進め、清掃事業に関する諸課題を24の事項に整理し、それぞれ一定の方向等を確認してきたのでございます。このような経過を振り返りますと、平成12年から17年までの6年間は、清掃事業の主体となるべき特別区が、社会経済情勢の変化を踏まえ、自らの意思と責任において、清掃事業の新たな方向性を模索し続けた時期であったと受け止めております。今般の清掃一組新会社の設立につきましても、今後、経費の増大が見込まれる中、効率的で安定した中間処理の実現、効率的な運営という目的のために取り組まれるものであり、23区が清掃事業の主体としての責任を果たすために必要な仕組みであると考えております。また、現在、先行する4区でモデルとして実施されております廃プラスチックサーマルリサイクルにつきましても、埋立処分場の延命と環境改善、資源の有効利用という視点から、区長会の確認に基づき、23区が同一歩調をとって取り組むものでありまして、中間処理のみならず、収集運搬体制を含めて、清掃リサイクル事業へ大きな影響を及ぼすものであります。
このように清掃リサイクル事業は大きな転換期を迎えているわけでありますが、清掃事業は、すべての区民に密着した事業として、日々実施されているものであり、区民の皆様のご理解とご支持が不可欠な事業でもあります。この間、豊島区では、他区に先駆け、8品目12分別という高いレベルの資源・分別回収を構築してまいりましたが、これも区民の皆様のご協力を基盤としているものであります。今、清掃事業は様々な面で変化を迫られておりますが、区民の皆様とともに築き上げてきた成果と個性を大切にし、また23区が連携して取り組むことの重要性にも配慮しながら、より効率的で安定した清掃リサイクル事業を目指していきたいと思っております。
次に、障害者福祉について申し上げます。
平成18年4月に施行されました障害者自立支援法は、身体・知的・精神といった障害の種類にかかわらず、地域での生活と就労を進め、障害者の自立を支援することを目的とするものであります。これにより、国の財政責任が明確化され、公平なサービス利用のための手続きや基準が全国的に統一されることになりました。豊島区においても、法の趣旨に基づき、早速、障害認定審査会及び障害福祉計画策定委員会を立ち上げたところでございます。
新たな制度では、介護保険サービスと同様、制度を維持するために広く浅く負担を求める趣旨から、利用者に対し、食費等の実費負担やサービス費用の1割負担を求める内容となっております。こうした負担については、低所得者に対する軽減措置がとられているものの、区といたしましては、急激な変化を緩和するため、さらに区独自の軽減措置をとることにいたしました。その1つは、ホームヘルプサービスについて、低所得者を対象として、1割負担を3年間、3%に軽減するものであります。また、通所施設利用者の食費負担についても、3年間、一定の軽減を行います。さらに、重度の身体障害者の訪問入浴事業や身体障害者デイサービス事業、視覚障害者に対するガイドヘルパーの派遣事業などの地域生活支援事業についてでありますが、今年10月から平成21年3月まで、原則無料にしたいと考えております。また、今年度の新規事業として、障害者の一般企業への就職を促進するために開始したジョブ・コーチを就労支援センターに配置いたしましたが、8月末までに9名の方々が一般企業へ就職することができました。さらに、一般就労の難しい障害者を支援していくために、区内の共同作業所、授産施設において検討会を設置し、豊島区統一ブランドの自主生産品や販売方法等の検討を始めておりまして、早ければ年度内に新規事業を立ち上げたいと考えております。
次に、新教育ビジョンの策定について申し上げます。
近年、児童・生徒の学ぶ意欲の低下、社会性や規範意識、自律心の不足、さらには安全・安心な学校づくりなど、学校教育が抱える課題は一層困難なものとなっております。また、これまでは考えられなかったような青少年による重大な事件が頻発するなど、誠に憂慮すべき事態であると考えております。本区においては、これまで、教育としま改革プラン21により、豊かな心の育成、学力の向上、そして不登校対策等に精力的に取り組んでまいりました、しかし、こうした社会状況であればこそ、夢や希望を抱きその実現のために努力していく人間、他者を認める幅広い心を持った人間、そして社会の一員としての自覚を持つ心身ともに健全な人間を育成していくために、今後、学校と教育委員会としてどのように取り組んでいくべきか、その基本姿勢を新教育ビジョンとして示す意義があると考えております。来年2月の策定に向け、「夢に向かって未来を切り拓くとしまの子」を目指す子ども像として掲げ、自ら学び、考え、豊かに表現できる子ども、自他を認め合い、思いやりのある心豊かな子ども、そして地域社会に貢献し、健康でたくましく生きる子どもの育成に向けた取組みの方向を検討してまいりたいと考えております。また、ビジョンでは、目指す学校像、教師像、そして地域像についてもその姿を明確に描き、学校と教師、地域が一体となった教育活動を推進してまいります。
最後に、参加と協働のまちづくりについて申し上げます。
来月29日、目白と高田地区を結ぶ「学習院椿の坂」において植樹祭が行われます。これは、目白ブランドの向上に向け、地域資源としての坂を中心として展開した協働のプロジェクトであります。地域の皆さんが坂に名前を付け、学習院には景観づくりのために万年塀をフェンスに改修していただき、区は椿の植樹や坂の由来を紹介する案内板を設置するなど、共通の目標に向けて力を合わせることで、新たな展開が生まれたのであります。7月には、波多野敬雄学習院長にもお会いし、フェンス改修のお礼を申し上げるとともに、今後とも地域と学習院との連携をさらに深める方向について話し合ったところであります。
豊島区は、今年4月、住民自治を起点とする参加と協働を基本理念として掲げる自治の推進に関する基本条例を施行いたしました。今後の少子高齢社会にあって、豊かな暮らし、そして文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向けて、持続的な発展を成し遂げていこうとするとき、最も大切なことは、郷土を愛する人々に支えられた地域の力を培っていくことであると考えております。そして、その土台となるのは、ほかでもない、地域における多様な主体の活動やコミュニティの存在であり、こうした協働の取組みを広げていくような魅力ある仕組みづくりであります。
区では、これまでも様々な形で参加と協働に取り組んでまいりましたが、自治推進条例の施行を機に、改めて参加と協働に関する基本施策の全体像を構築する必要があると考えております。全国の自治体の中では、地域における主体的な公益的活動を活性化するため、税の1%を地域活動支援や協働事業に充てるシステム、協働事業に関する提案・補助制度、さらには都市内分権を進める地域自治区の設置など、様々なチャレンジが進められております。また、地域の力を生み出していく上では、自治の中心的な役割を担う町会活動の振興はもちろん、地縁型の町会活動と、NPOや企業、大学など、知縁型の活動との効果的な連携のあり方も大切なテーマであります。こうした観点から、様々な地域の活動主体がまちづくりについて話し合う場として、地域における協議会のあり方についても議論をする必要があると考えております。そのため、年内には、自治推進条例に基づく自治推進委員会を設置し、町会を初め、地域で活動する区民の皆様のご参画をいただきながら、豊島区に相応しい参加と協働に関する基本施策について、幅広いご議論をいただきたいと考えております。そして、委員会での議論を踏まえ、豊島区独自の参加と協働の仕組みをつくり上げてまいりたいと考えております。
かのゲーテも、「人間は、努力をする限り、迷うものだ」と言っているように、改革の具体的な目標と指針を示すことは、決して容易なことではありません。しかし、一方でゲーテは、「いつかはゴールに達するという歩き方ではだめだ。一歩一歩がゴールに向けて価値を持たなくてはだめだ」という言葉も残しております。改革を確実に進めていくためには、まさにそんな姿勢と決意が必要なのだと思います。確かに、未来への扉は重く大きいものであり、私一人の力では動かすことはできませんが、郷土豊島を愛する議会、そして区民の皆様と力を合わせながら、私たちが今立っているこの場所から一歩たりとも退くことなく、全力で未来への扉を押し開いていく決意であります。
本日ご提案する案件は、条例10件、決算認定5件、予算4件、その他3件、合わせて22件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役並びに収入役からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。