平成18年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成18年第4回豊島区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。


 初めに、いじめを原因とする自殺予告文書への対応について申し上げます。


 先月から今月にかけて、いじめを苦に小・中学生が自殺するという痛ましい事件が全国で相次いでおります。そして、既にご報告したとおり、今月6日、いじめによる自殺を予告する手紙が文部科学大臣の下に届けられました。差し迫った11日の自殺予告、そして豊島区郵便局管内で投函された可能性が高いということで、大きな衝撃が走りました。これを受け、教育委員会では臨時校長会を緊急に開催し、指導主事が全校を訪問するなど、即座に対応を講じました。いじめは、絶対に許さない、かけがえのない命を守るためには、あらゆる努力を払わなければならないとの決意の下、すべての区立小中学校において、児童・生徒一人ひとりの状況の把握と指導を徹底いたしました。また、民間の警備員や警察署員による学校周辺の巡回を強化するとともに、子どもスキップを初めとする公共施設、そして保護者、地域の皆様など、子どもの生活に関わるあらゆる関係者に呼びかけ、予告された事態を回避すべく、全庁を挙げて臨みました。11日と12日には、校長と教員が学校内を巡回するとともに、深夜から未明にかけては、警察や警備会社によるパトロールを行いました。また、10日からの3日間は、命を大切にしてほしいとのメッセージを込め、廃校になった学校を含め、すべての校舎の1階部分を終夜点灯し、事件発生の抑制に努めました。幸い、今日まで、恐れていたような事態は起きておりませんが、また14日になって届けられた同一人と思われる手紙の内容からすると、今回のケースは区内のものではないと思われます。しかし、今回の手紙の真偽がいかなるものであろうとも、子どもの自殺が全国で相次ぐという事の重大性を踏まえ、豊島区においても、いじめへの対策を強化し、教員と学校・教育委員会、そして区政全体への信頼を揺るぎないものとしていかなければなりません。対策の手始めとして、先週15日から、直接、子どもからの声を教育委員会が受け止めるいじめ相談電話を開設するとともに、教育委員会あてのメールアドレスも公開をいたしました。また、区立小中学生9,700名全員に、教育長あての葉書を配る準備も進めております。


 大切なのは、たとえ隠れて見えにくいものであっても、いち早くいじめを発見し、継続させず、決して許さないということであります。今後とも、定期的な調査により、実態の把握に努めるとともに、改めて教員の研修を徹底し、保護者や地域と協力しながら、いじめを早期に発見し、本気で子どもと向き合い、解決していく力を高めてまいります。子どもたちに対しても、命の尊さや他人への思いやり、そして、人間関係の楽しさと難しさの両面を学ぶ機会を増やしてまいります。そして、いじめを発見した場合には、学校と教育委員会、そして保護者が常に情報を共有し、子どもの立場に立って、きめ細かに対応し続けるシステムを構築してまいります。区民の生命と安全を守る危機管理こそ、行政の最も重要な使命であります。今回の対応を教訓として、危機管理体制のさらなる強化に努めてまいります。


 次に、地域の文化を活かしたまちづくりの展開について申し上げます。


 この11月から、新進気鋭の若手芸術家に活動スペースを提供する。アトリエ提供事業がスタートいたしました。この事業は、新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館構想の一環として実施されるものであり、NPO法人ゼファー池袋まちづくりが主体となって、旧大明小学校のみらい館大明の1室をアトリエとして貸し出すものであります。アトリエ提供事業は、豊島区を代表する文化資源である池袋モンパルナスを継承し、未来につなげていくための試みであり、実現に向け、区としても、積極的に支援してきたところであります。先月の選考会では、メキシコ国籍の芸術家を含む4人の若手作家が選ばれました。今後、このアトリエの創作活動から優れた作品が生み出されていくことを期待したいと思います。また、作品については、回遊美術館を初め、様々な機会を通して、多くの方々にご覧いただく予定であります。こうした新たな輝きを加えつつ、アトリエ村資料室や熊谷守―美術館など、池袋モンパルナスを軸として、点在する文化資源を結び付けることで、まちかど回遊美術館を西口地区における一大イベントとして発展させてまいります。特に、熊谷守一美術館は、長崎アトリエ村の芸術家たちにとって守護神ともいうべき存在であった画家、熊谷守一氏の住居跡に建てられたものであります。この地において、末永く、熊谷氏の作品を鑑賞できるよう、区としての協力、支援のあり方を検討したいと考えております。


 そして、南長崎のトキワ荘に象徴される漫画文化も、豊島区が誇るべき資源であります。手塚治虫を初め、藤子不二夫、石ノ森章太郎、そして横山光輝など、我が国を代表する多くの漫画家が輩出された歴史を踏まえて、来年度オープンする新中央図書館では、できる限り多くの作品や資料を収集したいと考えております。また、現在、区民の自主的なグループにより、漫画作品のキャラクターをまちの案内役とする、まんが・アニメのまちづくりの計画が進められていると聞いております。今後、こうした活動との連携も図りながら、地域活性化に向けた漫画文化の活用を図ってまいります。


 また、駒込地区の居住環境総合整備事業によって取得した旧丹羽邸についても、駒込のブランドと価値を高めるプロジェクトの1つとして位置付け、積極的に活用してまいります。染井吉野発祥の地として知られる染井・駒込界隈は、植木の里としての面影を残すまちであり、旧丹羽邸は、江戸時代の著名な植木職人であった丹羽茂右衛門が住んだゆかりの地であります。こうしたことから、敷地内に残る藤堂家のものと伝わる長屋門と、昭和初期につくられた蔵を活用し、染井の歴史と文化を発信するような広場づくりに取り組むことといたしました。特に、蔵については、お蔵ギャラリーとして改修し、駒込の新たなブランド資源としたいと考えております。ギャラリーの整備や管理運営等に当たっては、地域の皆さんに当初からご参画いただき、染井にゆかりの深い文化財の展示や、地域の祭りと連動したイベントを開催したいと考えております。


 さらに、先月には巣鴨地蔵通り商店街において、遠くは島根県松江市の天神町商店街や、香川県善通寺市の赤門筋商店街など、巣鴨と同様、門前町的な特徴を活かした商店街からのお客様を迎え、巣鴨フォーラム2006おかげまいりのまちづくりが開かれました。当日は、商店街を中心としたまちづくりについての講演やシンポジウムに続き、すがも街づくり宣言や、地蔵通り門前仲見世会街づくり協定も披露されました。このイベントの中で、巣鴨は、人と人との交流を活かしたまちづくりに成功した商店街として紹介され、全国各地の商店街が巣鴨を目標として活性化を競っているとの報告がありました。文化と品格を誇れる価値あるまちを実現していくためには、長い時間をかけて地域が培ってきたそのまちらしさ、つまり、まちのアイデンティティを大切に活かすことが何より重要であります。今後とも、郷土を愛する人々による地域の文化を活かしたまちづくりの取組みをしっかりと支援し、広げてまいります。


 次に、地域区民ひろばと子どもスキップの展開について申し上げます。


 平成15年度に打ち出した地域区民ひろば構想は、施設のあり方を根本から問い直す取組みであったこともあり、区民の皆様に説明を始めた当初は、わかりにくいといったご指摘や不安の声が数多く寄せられました。しかし、現在では区民ひろば、子どもスキップとともに、その目的や効果をご理解いただき、次第に定着しつつあるものと考えております。地域区民ひろばについては、今年度8地区でスタートしております。既に、各地区では事業や施設の自主運営を目標とした準備会が組織され、運営協議会づくりに向けた活発な議論が進んでおります。この準備会には、町会や高齢者クラブ、民生・児童委員、そして青少年育成委員やPTAを初め、意欲ある個人の方々もご参加いただき、地域における様々な課題についての意見交換や、各団体相互の情報交換も行われており、次第に、新しいコミュニティをつくっていこうという気運が生まれてきております。そして、こうした準備期間を経て、先月28日には高松地区、今月11日には朝日地区において、運営協議会の設立総会が開催されました。それぞれの総会には、100名前後の方々が参加されていましたが、話し合いを重ね、力を合わせて、苦労の末に設置に漕ぎ着けたという自信と喜びが感じられる、熱気あふれる会合でした。地域区民ひろばは、私が目指す地域の力との協働を基本とした区政を具体化する重要施策であり、来年度は、清和地区を始め、6地区において新たに展開する準備を進めているところであります。今後とも、コミュニティ政策としてのひろばが目指す意義や効果について、先程は、議員協議会でも多くのご指摘もいただきましたが、施設利用者の皆様、そして地域の皆様に十分にご理解いただけるよう、これまで以上に丁寧な説明を心掛け、意見交換を積み重ねて進めてまいります。


 また、平成16年度にモデル実施をスタートした子どもスキップも3年目を迎え、今年度中には10カ所の小学校区で開設することになります。学校施設を活用する子どもスキップの展開に当たっては、厚生労働省の学童クラブに取り組むとともに、文部科学省の地域子ども教室との連携を図り、豊島区独自の方式で推進してまいりました。そして、こうした豊島区の取組みをモデルとするかのように、今年5月に、国は学童クラブと地域子ども教室を一体的に実施する放課後子どもプランの創設を発表いたしました。7月と10月には4スキップ南池袋とスキップ巣鴨を国の担当官が相次いで視察し、その成果を確認するなど、本区の先駆的な試みは全国に注目され、各地から視察を受けるようになりました。子どもスキップを併設した小学校では、毎日体を動かして遊ぶ子どもたちの姿で溢れ、ゲームなどの1人遊びから集団遊びへと生活を転換し、人間関係を築く能力の発達にとって大きな効果を上げていると考えております。平成19年度には新たに2カ所、平成20年度には3カ所を新設し、15の小学校区で子どもスキップを実施する計画でありますが、残る8つの小学校については、学校施設等の制約から、平成21年度以降になる見込みであります。今後、地域区民ひろばとともに、できる限り早期に、すべての地区で事業展開ができるよう、学校施設も含めた再構築の検討を進め、整備計画の具体化を図ってまいります。


 公共施設の再構築は、持続可能な財政構造を構築する上で避けて通ることのできない課題であり、その基本方針と全体像を新たな基本計画に位置付け、毎年度、改革プランをローリングする中で、その具体化を図ってまいりました。今後は、旧平和小学校を初めとする学校跡地の本格活用や、学校施設の計画的改築について、中長期的な見通しを立てながら検討を加え、計画化を進めなければならないと考えております。また、地域の生活支援施設やコミュニティ施設についても、老朽化に対応した効果的な改築や適正配置の推進に向け、地域のエリアを単位とした、総合的な施設再構築を検討してまいります。


 最後に、としま未来への戦略プランについて申し上げます。


 早いもので、平成18年の区議会も第4回定例会を迎えました。区長として2期目の任期も、残すところ5カ月であります。今、これまでを振り返りますと、まさに、激動という言葉が相応しい7年7月であったと思います。1期目の4年間は、政策の種を蒔き、財政、施設、人事等の現状分析を踏まえ、改革をスタートさせた時期でありました。また、財政が逼迫する中でも、雑司が谷小学校跡地を活用した福祉基盤整備に着手するとともに、法定外税の創設に向けたチャレンジをスタートさせ、東池袋四丁目市街地再開発についても大きな決断をいたしました。2期目に入ってからは、地域区民ひろば構想や2つの新税構想など、新たな政策を推進するとともに、財政危機の克服に向けて、プラン2004による改革を断行いたしました。また、旧時習小学校の売却と帝京平成大学の誘致を進めるとともに、懸案であった新庁舎整備にも取り組み、新基本計画や自治の推進に関する基本条例など、分権社会に対応した区政の枠組みづくりを進めました。そして、平成18年度に入り、第1期目からの取組みも含め、次第に7年間の改革の成果が現れ始め、財政健全化に展望が見えてきたのであります。


 区長就任以来、提唱してまいりました文化政策につきましても、文化創造都市宣言、そして舞台芸術交流センターと新中央図書館の実現などにより、新たな段階を迎えようとしております。かつてない改革を断行し、新たな政策に取り組む過程では、様々な反対・賛成意見があり、数多くの厳しいご指摘もいただきました。しかし、今、振り返れば、一歩一歩進むべき方向に区政を導くことができたものと、確かな手応えを感じております。そして、こうした改革と政策に挑戦し、明るい展望を切り開くことができましたのも、区議会の皆様からいただきました数々のご意見やご提言、そして力強いご支援があればこそであります。ここに改めて深く御礼を申し上げます。


 さて、さきの定例会で申し上げましたが、負の遺産を克服するための改革に続く、未来を開くための改革の道筋を明らかにすべく、現在、としま未来への戦略プランの取りまとめを急いでおります。これは、文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向け、文化、健康、都市再生、環境について、10年後の将来ビジョンと取組みを示すものであります。区民生活を支える福祉と教育、子育て、そして安心・安全は、区政にとって基本的な使命であり、今後も、基本計画に基づき、サービスの質的向上に努めてまいります。そして、その使命を果たし続けるためにも、新たな成長と活力を生み出す未来戦略が必要なのであります。


 昨年度のプラン2005に続き、今後、新たに策定するプランでは、行財政改革だけではなく、将来に向けた都市経営の指針であることを明確に打ち出すため、行財政改革プランの名称を、未来戦略推進プランに改めることといたしました。年次についても、基本計画の実施計画としての位置付けも踏まえまして、2006を1年進め、2007といたします。未来戦略については、この2007の中に位置付け、12月中旬にはその素案をお示しする予定であります。今、最も大切なのは、これまでの改革の成果として見え始めた財政健全化の道筋、そして新たな政策展開の道筋を、より確かで、より力強いものにしていくことであります。豊島区が進むべき道筋を明らかにするため、改革の総仕上げに全力で取り組んでまいりますので、議員各位におかれましても、将来を見据えたご意見・ご提言を賜りますよう、お願い申し上げます。


 既にお気付きかもしれませんが、区長室の来客用スペースに、先日、ある著名な書道家からいただいた額が架けてあります。見事な書体で、声無きに聴くと書かれたもので、為政者の心構えを述べた、唐、太宗の時代における言葉だそうであります。私は、先日、職員に向けた庁内放送でもこの言葉を紹介し、いじめや児童虐待は、いつどこで発生しても不思議ではない。子どもと接するときは、どんな小さな疑問でもないがしろにすることなく、聞く耳を立てて、ベストを尽くしてもらいたいと呼びかけました。今、私は、改めてこの言葉を自らに言い聞かせております。区政に携わる者として、全てを見通し、全てを聞き知ることは極めて困難なことでありますが、常に謙虚な気持ちを忘れずに、どんな小さな声にも耳を傾けながら、区政を進めてまいりたいと考えております。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例13件、予算2件、その他5件、合わせて20件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。