平成19年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成19年第2回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。


 今定例会は、議員各位におかれましても、また、私にとりましても、区民の厳粛なる信託を受け、新たな任期がスタートする節目の定例会であります。区議会におかれましては、既に、さきの臨時会において、最高人事を含む議会構成を決定され、区政の発展に向け、積極的な議会活動が展開されていることに対しまして、衷心より敬意を表するものであります。自律した基礎自治体が政策を競い合い、豊かな価値を創造し合うことで、日本全体の活力を生み出していく、まさに地域と分権の時代にあって、議会の役割はますます重く、大きなものとなっております。団体としての意思決定を行う議事機関として、また執行機関の厳正なる監視機関として、大所高所からのご意見、そして政策提言を賜りますようお願い申し上げます。


 初めに、区長3期目に臨む私の所信の一端を申し上げ、議員各位のご理解とご協力を賜りたいと存じます。


 私は、「文化と品格を誇れる価値あるまち」の実現を掲げて、さきの区長選挙に臨み、再度区民の皆様から信託をいただき、豊島区長として3期目の重責を担わせていただくことになりました。選挙期間中、区内各地域で、数多くの対話を重ね、叱咤激励をいただく中で、明確な将来のビジョンを見据え、地域活性化に向けた改革を推進すべきという、多くの声をいただきました。これまで2期8年間、一貫して取り組み続けてきた行政改革と財政健全化の成果、そして未来への改革という、私の地域再生に向けた政策に信任を与えてくださった多くの方々からの期待の大きさに、改めて責任の重さを痛感し、身の引き締まる思いであります。


 8年前、私が区長に就任した平成11年度、区財政はまさに瀕死の状態でありました。90%を超えると危険エリアといわれる経常収支比率は98.5%、予算規模に匹敵するような872億円もの借入金残高、財政調整基金は底をつき、公債費比率14.0%、人件費比率32.6%、そして区民1人当たりの実質的借金は33万6,000円にもなり、23区中最低の状況であったのであります。これまでの8年間は、こうした財政危機の克服を最重要課題として、あらゆる対策を講じ、改革の道を走り続けてきた日々でありました。しかし、今振り返れば、私にとっての初心とは、元気ある豊島区の再生に向けた、区独自の政策展開にあったのであり、財政健全化は、そのために成し遂げなければならない前提条件であったのであります。豊島区は、負の遺産の大きさ、傷の深さゆえに、財政危機を克服するために、予想していた以上に長い年月を要しました。しかし、この間の構造改革は、区民、議会の皆様の言葉には尽くせないご協力の上に確実に成果を上げ、先の見えない閉塞感を払拭し、今、しっかりと新たな方向をつかもうとしております。


 区長就任以来、提唱し続けてまいりました、文化の力で人と街を元気にしようとする文化政策も、力強く芽を出し、大きく枝を広げつつあります。また、新基本計画や自治の推進に関する基本条例を制定するなど、参加と協働を基本とした、分権社会におけるまちづくりの基本的な枠組みについても構築することができました。全国に先駆け、放置自転車等対策推進税と狭小住戸集合住宅税の2つの法定外税にも取り組みました。自転車税については、鉄道事業者からの具体的な協力が得られ、一定の目的を達成したことから昨年度廃止いたしましたが、これら2つの新税へのチャレンジは、直面する地域特有の課題解決に向けた独自の政策として、全国から注目を集め、大きな成果をもたらしました。そして、長年の懸案であった新庁舎整備についても、副都心再生の起爆剤となる価値あるプロジェクトとして、その方向を見出しつつあります。財政健全化に道をつけつつある今こそ、地域活性化に向けた魅力ある政策展開を本格化すべきときであり、未来への改革に臨み、爽快な力が全身に満ちてくるのを感じております。


 しかし、長いトンネルを抜け出たとはいえ、私たちの前には、初めから平坦な道が用意されているわけではありません。今後の分権改革の進展は、自己決定・自己責任の原則の下、基礎自治体に対して、これまで以上に厳しく自己変革を求めてくることは間違いありません。これからの変化が激しい社会にあっては、常に先を見据え、自らを厳しく律しながら、進むべき方向を選択し、道を開きながら進まなければならないのであります。未来への改革も、これからの4年間が実行段階として重要なときであります。戦略が確実に成果を上げ、花開かせていくよう、気を引き締めて戦略を磨き上げなければならないと考えています。そして、二度と財政危機を繰り返さないためにも、行政の効率性向上と体質改善、さらなる財政健全化に向け、先送りすることなく取り組んでまいります。また、職員の意識改革についても、「“大過なく”から“チャレンジ”へ」をスローガンとして、信頼と品格に裏打ちされた、チャレンジングな組織文化を築いてまいります。


 さきの選挙戦において、私は、今年3月の未来戦略推進プラン2007を基本としたローカル・マニフェストを作成し、4つの基本政策と4つの重点政策を推進することを区民の皆様にお約束いたしました。基本政策として掲げたのは、子育て・教育、福祉・医療、安心・安全、そして参加・協働であり、重点政策として位置付けるのは、文化、健康、都市再生、環境の4政策であります。私が目指すのは、豊島区が持つ強みを最大限に生かしながら、重点政策のエンジンを熱く回し続けることで、新たな魅力と価値を創造し、そこから生まれた活力によって、区民生活の基盤を成す基本政策の水準を押し上げていくような好循環をつくり上げることであります。そして、その好循環を生み出し続けるために大切なのが、人間力と創造力であります。大きく転換する社会経済の中で、これから先も豊島区は、従来の延長線上に立った発想では解決できない課題に直面することがあると思います。その課題解決に果敢に挑戦し、自らの道を切り開いていく力こそ、都市の活力、つまり人間力と創造力なのであります。文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向け、政策を進めることで、この2つの力をさらに大きく育てていくことこそ、未来戦略が目指すところであります。こうした私の政策に信任を与えてくださった区民の期待に応えるべく、豊島区に生まれ育った政治家として、私のすべてをかけて、これからの4年間に臨む決意であります。26万区民の一人一人が、豊かな暮らしを通して夢をかなえ、住んでよかったと誇りに思える豊島区の実現に向け、これまで以上に強い信念と情熱を持って、区政運営に渾身の力を傾けてまいりますので、議員各位におかれましても、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


 次に、今後4年間における4つの重点政策について申し上げます。


 重点政策の第1は、文化政策であります。


 私は、豊島区が目指す新たな地域再生の方向として、「文化を基軸としたまちづくり」を掲げ、取組みを進めてまいりました。今振り返れば、平成14年度の数々の区制施行70周年記念事業、そして企業メセナ協議会会長の福原義春氏を座長とする豊島区文化政策懇話会の提言が、その第一歩でありました。これに続く、東京芸術劇場との協働によるとしま文化フォーラム、地域再生計画に基づくにしすがも創造舎やみらい館大明での事業展開、新池袋モンパルナス西口まちかど回遊美術館、さらには文化ボランティア育成のためのドラマリーディングや区民参加によるアートステージ、子どもたちが芸術に親しむことができるジュニア・アーツ・アカデミーなど、いずれも内外から大きな注目を集める文化事業として定着してきております。そしていよいよ、今年度は、これまでの取組みの集大成として、7月16日に新中央図書館が、9月10日には舞台芸術交流センターあうるすぽっとがオープンいたします。さらに、12月のスタートに向け、初の区立美術館となる熊谷守―美術館の設置に関する条例を今定例会にご提案しております。


 目白と駒込で進めてきた地域ブランド創出に向けた取組みにより、地域の価値を高めるという目的に向けて、縦割りの事業目的を横に繋げ、個性的なまちづくりを展開しようとする気運が高まってきています。文化政策を進めることで、街全体に芸術文化に親しむ機会と環境が広がり、魅力ある情報を発信することができます。文化から生まれた豊かな環境と情報が人を元気にし、街の価値を高め、さらに多くの人材や企業を集める力となります。そして、その集積が個性的な価値を創造し続けることで、地域の活力と経済力が高まっていく、文化政策は、まさに、地域活性化の好循環を生み出す、未来への投資なのであります。これまでの文化拠点の整備を踏まえ、区民主体の文化芸術活動の活性化、様々なアートNPO等の誘致、そして人材育成に取り組み、全国規模で魅力ある情報発信を展開することが、これからの目標になります。そこで、今年度を文化政策の新たな展開のスタートとして位置付け、次なる展開の方針として、文化政策推進プランの策定に着手いたします。新たなプランでは、平成17年度の文化創造都市宣言の精神を改めて確認するとともに、教育、保健福祉、そして都市再生やにぎわい創出に至るまで、文化の力を横に広げるための施策展開を検討してまいります。


 第2番目は、健康政策であります。


 医療制度改革における柱の1つは、予防の重視であり、いわゆるメタボリック・シンドロームに着目した生活習慣病予防の重要性が指摘されています。今年で2年目となるとしま健康づくり大学も、こうした動向を踏まえ、壮年期の健康増進をテーマとして、90名の方々の参加を得て、6月から開講いたしました。私にも経験がございますが、運動や食事など、1人で日々の実践を続けることは、大変難しいのが現実です。これはよく、大きなボールを押しながら坂道を登る姿に例えられますが、1人では難しくとも、家族の協力や地域での交流、そして専門家のアドバイス等の後押しがあれば、長い坂道も楽しく登り続けることができます。幼児期から、高齢期の介護予防に至るまで、区民の主体的な健康づくりをサポートする共助の仕組みやネットワークが地域社会の中にしっかりと根付いている、それが私の目指す生涯健康都市の姿であります。今後も、保健福祉との連携をさらに深めながら健康政策を展開するとともに、平成20年度を目途に、食育推進プランを策定いたします。また、保健・健診・医療の拠点となる健康センター構想の検討を進めたいと考えております。


 健康危機への対応も、行政の重要な責務であります。今年は全国的にはしかが大流行し、区内においても、4月下旬以降、10歳代から20歳代を中心に集団感染が広がりました。これまでに確認した区内の患者数は170人を超え、6月に入りやや収束の兆しは見られるものの、依然、予断を許さない状況が続いております。区では、集団予防接種を行うなど、迅速に対応いたしましたが、その後、さらなる感染の広がりが懸念されたため、5月17日、緊急対策として、8歳から18歳までの児童・生徒1万5,000人を対象に、過去の接種歴を問わず、公費負担による任意予防接種を決定し、医師会の協力の下、6月から実施いたしました。また、新型インフルエンザ出現の可能性についても、WHO・世界保健機構が警鐘を鳴らしております。ひとたび流行を許せば、社会機能の破綻にもつながりかねない新たな脅威に対する危機管理として、5月には新型インフルエンザ対策行動計画と同対応マニュアルを策定し、普及啓発に努めているところでございます。


 そして、スポーツ振興についても、健康政策の柱として位置付け、取組みを強化いたします。豊島体育館の全面改修、総合体育場の人工芝の張替えとスタンドの設置など、施設の整備を進めつつ、区民が広くスポーツ、レクリエーションに親しめる環境づくりを進めてまいります。


 第3といたしまして、都市再生について申し上げます。


 今年1月に完成した東池袋四丁目の再開発地区一帯は、ビジネスマンが闘歩する品格あるオフィス街、緑と活気に満ちあふれる街並みに変貌し、東池袋駅の1日当たりの乗降客も、昨年と比べ、ゆうに3,000人を超えて増加しております。今後、新中央図書館と舞台芸術交流センターあうるすぽっとが加わることで、副都心の新たな1ページを飾るにぎわい拠点が確実に生まれてきます。こうした輝く拠点、質の高い情報発信スポットを加えることで、新たな風が起こり、その波及効果が街全体を変え、都市再生を進めていく原動力となるのであります。


 今、池袋副都心では、ドラスティックな都市再生に向け、多くのプロジェクトが進みつつあります。東池袋四丁目と南池袋二丁目における再開発、都市計画道路の整備、商業業務エリア全体への地区計画の拡大、西口駅前広場の改修、東西デッキ構想、そして大手百貨店の大改装計画や東京メトロによる地下ショッピングモール計画、帝京平成大学の進出、さらには環状5の1号線地下通過道路計画や路面電車等の新交通システム構想の動きもあります。副都心再生の起爆剤として進めている新庁舎整備と現庁舎の跡地活用もその1つであり、早期に整備方針を決定したいと考えております。


 来年6月に開通する東京メトロ副都心線は、池袋、新宿、渋谷の交通利便性に飛躍的な向上をもたらす一方、来街者の選択肢が広がることにより、少なからず池袋の商業機能に影響を与えることが予想されます。こうした危機を池袋再生のチャンスとして生かすためにも、人への優しさと文化を基軸とした個性ある再生戦略を急ぐ必要があると考えております。そのためには、池袋を構成する百貨店、商店街、鉄道事業者、地域団体、そして行政が、将来ビジョンを共有しながら、再生に向けて内なる力を合わせるとともに、魅力的な戦略をアピールし、外から新たな民間開発投資を呼び込むことが重要であります。戦略プラン2007はその第一歩として策定したものですが、さらに新ルネサンス構想ともいうべき、西口・東口の総合的な整備構想の完成に向け、戦略プランをバージョンアップしてまいります。そして、より効果的な民間開発の誘導を図るため、池袋副都心において、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域の指定を受けるべく、国や東京都との協議を進めております。


 また、東長崎駅、椎名町駅、大塚駅など、住宅地の玄関口となる、魅力ある地域拠点の整備についても、引き続き積極的に取り組んでまいります。


 第4は、環境政策であります。


 今、国の内外で、環境をめぐる大きな流れが生まれつつあります。国際的には、気候変動に関する政府間パネルに基づき、地球温暖化に対する危機感が共有され、今月ドイツで開催されたハイリゲンダム・サミットでは、国際社会が一致して、温室効果ガスの排出量を2050年までに半減させることを真剣に検討することが宣言されました。国内でも、環境面での国際的なリーダーシップを発揮するため、国は、21世紀環境立国戦略を今月発表し、東京都も、昨年12月の「10年後の東京」において、「世界で最も環境負荷の少ない都市を実現する」という目標を示し、2020年までに二酸化炭素などを25%削減するとしております。これらのことは、将来の社会経済システム、都市政策、区民の生活スタイルを考える上で、環境政策が大きなウエートを占めることの証であり、私が環境を重点政策の1つとして掲げた方向と合致するものであります。戦略プランに掲げたプロジェクトの展開に当たりましては、区民に最も身近な基礎自治体としての特性を生かしながら、国や都と連携しつつ、これまでの意識や行動様式の転換、環境に配慮された活動の定着を図ります。また、環境面において優れた施設づくりや商店街などと一体となったレジ袋削減対策、モデル実施の準備を進めている新資源回収事業の円滑な実施に努め、資源循環型のコンパクトタウンを目指してまいります。


 ヒートアイランド現象の緩和や治水対策、アメニティの向上など、豊かな緑の存在は、街の価値を左右する重要な要素であります。地域ブランドの向上につながるような、まとまりのある公園整備を進めるとともに、今年度創設したみどりの基金を活用しながら、民間施設や住宅の緑化を促進してまいります。また、幹線道路の街路樹により、公園や大学、霊園等の緑地を結ぶ、緑の道づくり構想を推進し、街全体の緑被率の向上に取り組んでまいります。


 次に、4つの基本政策について申し上げます。


 その第1は、子育て環境と教育の充実であります。


 豊島区は、これまでも子育てと教育については力を入れてサービスの充実に努めてまいりました。高水準の保育サービスを初め、放課後対策としての子どもスキップ、中高生センターの開設、子どもの医療費助成の拡充、ファミリー・サポート・センター事業、そして子ども家庭支援センターを核とした育児支援家庭訪問事業など、すべての家庭を対象とした子育て支援策の充実に努めてまいりましたが、これからも、こうした方針をしっかりと堅持し、積極的な取組みを続けてまいります。


 先月、区内のごみ集積場に新生児が放置される事件が起きました。命は、何よりも尊いものであります。保護された赤ちゃんが健やかに育つことを心から願うとともに、区としても、子どもの権利擁護の観点も踏まえ、児童虐待の防止に全力を挙げて取り組んでまいります。


 教育力の再生も喫緊の課題であります。子どもたちが社会の中で自己実現していくためには、美しい心と健康な体、豊かな人間性、そして自ら学び考える能力、他者を思いやる心など、生きる力を身に付けていかなければなりません。家庭、学校、地域の連携強化はもちろん、保健福祉、健康、スポーツ、そして文化など、関連施策相互との連携を深めながら、地域ぐるみで教育力の再生に取り組む体制づくりを進めてまいります。今年3月、新たな学校教育の指針として、豊島区教育ビジョンを策定したところであります。「夢に向かって未来を切り拓くとしまの子」を目標に掲げ、教育としまの名に相応しい学校運営に努めてまいります。


 6月4日には、区内6大学のトップにお集まりいただき、さらなる地域連携の展開に向けた懇談会を開催いたしました。6大学とは、学習院大学、女子栄養大学、大正大学、東京音楽大学、立教大学、そして平成20年4月に開校する帝京平成大学であります。懇談会では、地域と大学との連携の意義について話し合うとともに、定期的な意見交換のテーブルづくり、今年11月の地域連携に関する包括協定の締結や協働事業の実施に向けた事務レベルでの協議会の設置等について確認いたしました。日本を代表する個性的な6つの大学は、豊島区の教育と文化のシンボルであり、都市の財産でもあります。街全体をキャンパスに、学生と区民との交流が積極的に展開され、新たな地域の力の創造につながるよう、これまで以上に相互の連携を深めてまいります。


 老朽化が進む小中学校の改築についても、財政負担を含め、明確にその方向を打ち出す必要があり、5月から本格的な検討を開始したところであります。困難かつ大きな課題でありますが、年度内を目途に、区立小・中学校改築計画を策定したいと考えております。


 基本政策の第2は、福祉と医療の充実であります。


 本格的な高齢社会が到来し、区の65歳以上人口は、今年初めて20%に達しました。年齢、障害の有無等にかかわらず、自立した生活を営み、持てる力を発揮しながら主体的に社会参加ができる街を目指し、地域・事業者・行政がしっかりとスクラムを組み、安心のネットワークを強化してまいります。


 今年4月、第八出張所跡地に、社会福祉法人フロンティア豊島が事業主体となり、知的障害者グループホームと認知症高齢者デイサービスを合わせ持つ施設として、長崎いずみの郷が開設いたしました。今年度中に、さらに3つの施設が開設される予定であります。今後も、住み慣れた地域、少人数の家庭的な雰囲気の中で生活ができる地域密着型サービス施設の誘致・整備を積極的に推進してまいります。また、数年来の課題となっております特別養護老人ホームについても、待機者の解消に向け、区有地の活用も含め、100床程度の整備プランを検討してまいります。


 障害者の自立支援としては、就労の促進をさらに進めてまいります。昨年度、ジョブコーチを導入した障害者就労支援センターでは、13名の障害者が一般企業へ就労し、職場に定着することができました。今後、さらに就労支援のネットワークを充実させ、企業の特例子会社制度の誘導など、様々な手法を活用しながら、安定的な就労の場を広げてまいります。


 今年度の新規事業である、おとしよりホッと相談、社会福祉協議会が主体となる高齢者困りごと援助サービスも、5月から順調にスタートしております。弁護士や精神科医、警察関係者の参画を得て、迅速な対応を判断する高齢者虐待対応決定会議では、今月既に、重大な危険を判断したケースについて、高齢者虐待防止法に基づく保護措置を行ったところであります。また、平日夜間の小児初期救急診療事業については、この4月に、区、医師会、大塚病院をメンバーとする協議会を立ち上げたところであります。協議では、小児科医の確保と具体的な実施方法が大きな論点となっていますが、早期の実施に向け検討を進めてまいります。


 第3は、安心・安全の確保であります。


 住みたい街、住み続けたい街の根底にあるもの、それは、犯罪や災害から生命と財産を守る、安心・安全の確保であります。また、地域を見守る生活者の目や、区民一人一人の警戒や災害に対する備えこそが、地域の安心・安全を支える基盤であると考えております。


 今年3月、区東側の大塚駅周辺地域が、都内5地域の1つとして、地域防犯モデル事業の指定を受けました。この事業は、防犯ボランティア活動、マンション等への防犯設備の設置、街路灯の整備など、ハード・ソフトの両面から防犯対策を進めるものでありますが、より大きな効果を上げるため、都の補助に合わせ、区としても積極的に補助を行います。一方、西側の目白警察署管内では、青色回転灯パトカーの導入に向けた検討を始めております。今年4月から区内4カ所に設置された地域安全センターとの連携を含め、具体的な運用方法を検討した上で、なるべく早く、青パトの勇姿をお目にかけたいと考えております。そして、区の中央、池袋駅周辺の繁華街については、生活安全条例の改正や地区計画の導入、そして環境浄化パトロールの皆さんの献身的なご尽力により、着々と環境浄化が進んでおります。今後とも、地域と警察、行政が力を合わせることで、日本一安心・安全な街を目指し、取組みを進めてまいります。


 豊島区は、4年後には人口が27万人を超え、日本一人口密度の高い都市になることが見込まれています。高密でありながらも、安心・快適な都市環境を確保するため、防災対策の充実が急務であると考えております。そこで、国や東京都の動向を踏まえ、地域防災計画の抜本的な改正を行うことといたしました。新たな計画では、直下地震が発生した場合、帰宅困難者やいわゆる高層難民への対応を含め、発生が予想される事態を具体的に想定し、区民や事業者、区、消防・警察の役割や行動を時間の経過に即して明らかにいたします。また、これまで取り組んでまいりました災害時要援護者対策についても、障害者や高齢者一人一人の状況に対応した避難支援プランを作成し、前進させてまいります。


 そして第4は、区民の参加・協働の拡充であります。


 参加と協働は、行政と区民とのコミュニケーションを初め、公共的サービスの担い手の多様化、地域のまちづくりや政策形成への参画、ひいては地域のコミュニティを基盤とする住民自治の充実につながる重要なテーマであります。今後とも、町会を初め、大学、NPO、企業、そして一人一人の区民など、地域の主体や人材を横につなぎ、地域区民ひろばの全区展開を図りながら、地域の力を高める取組みを進めてまいります。


 私は、先月3回にわたり、区民と区長との対話集会を開催し、300人近い方々にご参加をいただきました。いずれの回も、会場は熱気にあふれ、身近な問題からまちづくりの将来に至るまで、予定された時間を延長して、活発な意見が出されました。熱心なご意見、厳しいご指摘や要望を受ける中で、私は、区民の信頼こそが区政の基盤であり、透明性ナンバーワンの自治体を目指し、情報公開と説明責任をさらに徹底しなければならないとの思いを新たにいたしました。情報共有を参加と協働の基本原則として位置付けた自治推進条例を具体化するためにも、これを機に、広報紙やホームページ等のあり方を含め、区政情報の提供全体に関するルールの再構築を指示したところであります。また、今年夏に区民意識調査を実施いたしますが、その対象者を3年前の3,000人から5,000人に増やして実施し、区民が感じている生活環境の変化、満足度、今後の優先度を分析した上で、重点施策の設定等に反映してまいります。そして、これからの参加と協働に関する基本施策を打ち出すべく、現在、立教大学の磯部力教授を委員長とする自治推進委員会を発足させ、調査・審議をお願いしているところであります。2月に発足した委員会では、2つの部会が設置され、平成20年度中の答申に向け、積極的な議論が展開されております。


 1980年代にアメリカの政治学者ジョン・キングダンが唱えた政策決定のタイミングに関する理論に、「政策の窓を開く」という考え方があります。社会には、問題、政策、政治という独立した3つの流れがあり、それぞれは容易に合流することはないが、情勢を見極め、決定的な時期を捉えて働きかけることで、雲間から太陽が差し込むように窓が開き、その窓めがけて大きな流れが生まれ、一気に政策を進めることができるというものであります。負の遺産を克服するための改革を乗り越えた今こそ、時節到来、政策の窓を開き、未来に向けた政策をダイナミックに推し進めるときであります。新庁舎の整備についても、明確な展望を示し、大きな流れをつくりながら進めるときであります。新庁舎は、副都心再生のシンボルであると同時に、負の遺産を克服し、新たな挑戦へ向けて進もうとする、区政全体のシンボルでもあると考えるからであります。


 区政は今、新たな挑戦に向けて、スタートラインに立っております。これからの4年間、豊島区の未来への扉を押し開くべく、全力を尽くしてまいりますので、区議会の皆様のご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げる次第であります。


 本日ご提案申し上げる案件は、条例8件、補正予算1件、その他6件、合わせて15件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。