本日、ここに平成19年第3回豊島区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。
初めに、未来戦略推進プランに基づく政策展開について申し上げます。先月、ビジネス・経済専門誌の草分けで、信頼性のある週刊ダイヤモンドが行っている都市ランキングにおいて、豊島区が「安心して住める街」として全国第2位に輝きました。この調査は、安全と安心をコンセプトに、老後・病気、教育、生命・財産、そして経済力の4つの要素について、15の統計指標を設定し、全国805都市を比較したものであります。そして、これらの要素についてバランスよく上位に位置する36都市がベストシティに選ばれ、豊島区が全国第2位との評価を得たのであります。もちろん、こうしたランキングは、指標選定や分析手法によって自ずとその結果が異なり、統計だけで都市全体の姿を捉えることは難しいことであると思います。しかし、今回の評価は、都市が提供する価値の基本である安全・安心について、豊島区地域の優位性と実力が客観的な統計により実証されたものであり、長い時をかけて先人が築いてきた誇るべき地域の力を示すものであることに違いはありません。全国第2位という好条件を最大限に生かし、26万区民が住んでよかったと実感できる豊島区を実現していくことこそが、私たちに課せられた使命であります。こうしたランキングの結果に一喜一憂することなく、評価結果を冷静に分析し、未来への改革に向けた政策形成に生かしてまいりたいと思います。
さて、区の人口は、今年も着実に増加を続けています。昭和40年代以降最高を記録した昨年の3,481人に続き、今年も8月末までに2,583人増加しており、今後も増加が続く見通しであります。地価についても、上昇傾向が一段と顕著になっております。8月に発表された各区の最高路線価では、東池袋一丁目1番地のグリーン大通りが、港区・表参道に次ぐ、都内第2位の35.7%の上昇となりました。一昨日発表された基準地価でも、都内商業地の上昇率ベスト10に、西池袋一丁目と東池袋一丁目の2カ所が入っております。これは、池袋副都心における都市再生の成果を象徴する数字であり、街の価値や魅力の向上が地価にも表れた結果であると考えております。
また、平成18年度決算については後程詳しく申し上げますが、その状況を見ますと、経常収支比率が75.9%まで改善し、実質単年度収支が3年連続して黒字となるなど、財政健全化の姿が明確になり、未来への改革への揺るぎない足場固めができたと確信できる内容であります。こうして今、区政が力強く新たな第一歩を踏み出すことができたのも、新たな発想を持って道を開き、区政の構造改革を着実に成し遂げることができたからであります。そして、これから先、文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向け、未来への改革を進める上でも、構造改革と同じように、従来の延長線上の修正にとどまらない、大胆な発想やプラス志向に立ち、新たな政策を生み出していくことが何より重要であります。来年度の予算編成に向けては、今後4年間の中で確実に成果を生み出すべき施策に重点を絞りつつ、そこに財源を集中しながら、積極的に新たな事業展開を図る姿勢を持って臨みたいと考えております。
こうした意味から、未来戦略推進プラン2007では、文化、健康、都市再生、環境の重点政策について、今後4年間の重点事業として32の戦略プロジェクトを設定し、財源を重点的に配分したところであります。そして、平成20年度に向けたプラン2008では、今年4月にお示しした私のマニフェストの内容を盛り込むとともに、子育て・教育、福祉・医療、安全・安心、参加・協働からなる基本政策についても、戦略プロジェクトの選定を拡大すべく、この夏から全庁を挙げて検討作業を進めているところであります。その内容につきましては、12月を予定するプラン2008(素案)の中でお示ししたいと考えております。
また、積極的に新たな事業展開にチャレンジする一方で、二度と危機を繰り返さないためにも、行政の体質改善を進め、新たな行政経営システムを構築していく必要があります。危機から学んだ教訓を生かし、今後も持続可能な財政構造の構築に努めるとともに、ビルド・アンド・スクラップの考え方に基づく事業再構築や、一定年数経過後に事業の成果と有効性を見極め、事業継続を判断する事後検証の仕組みづくりを進めてまいります。また、これまでの行政評価制度の検証を踏まえ、計画、評価、予算の各機能の連携強化を図り、より一層、決算や成果を重視した行政経営への転換を推し進めてまいります。区議会の皆様におかれましても、今後の政策展開のあり方、行政経営のあり方につきまして、大所高所からのご意見・ご提言を賜りますようお願い申し上げます。なお、2008では、区内のエリアごとに、地図や図表をもって、その地域に計画する事業の全体像が一目でわかるような地域別計画を組み込みたいと考えております。区民の皆様にまちづくりの方向や事業の内容をわかりやすくお示しすることで、区政への関心を高めるとともに、身近な地域のまちづくりへの参加・協働の輪を広げてまいります。
次に、平成18年度決算について申し上げます。
平成18年度の一般会計決算額は、歳入が919億5,200万円で、収入率98.6%、歳出は895億1,300万円であり、執行率は96.0%となりました。前年度と比較いたしますと、歳入は3億9,000万円の減で0.4%のマイナス、歳出についても8億1,700万円の減で0.9%のマイナスとなりました。
歳入の内訳では、特別区税が定率減税の縮小などの税制改正による影響や課税人口の増加による特別区民税の増収などにより、対前年度比17億9,100万円の増、7.4%のプラスとなりました。特別区交付金につきましても、堅調な企業業績による法人住民税の増収により、対前年度比3億8,200万円の増、1.3%のプラスとなっております。一方、特別区債は、制度発足以来初めてとなる減税補てん債の未発行と起債の抑制により、対前年度比21億3,900万円の減、61.0%のマイナスとなり、その結果、歳入全体に占める起債依存度は、前年度の3.7%から1.5%まで縮小いたしました。こうしたことから、将来の負担となる起債に極力依存しない歳入環境の改善が図られたものと考えております。
次に、歳出の内訳でありますが、生活保護費、児童手当などの伸びにより、扶助費が9億4,800万円の増、6.3%のプラスとなっております。また、投資的経費については、市街地再開発事業や新中央図書館建設事業などにより、対前年度比31億4,200万円の増、25.4%のプラスとなりましたが、この中には土地開発公社分割償還金の繰上償還を行った19億2,000万円が含まれておりますので、これを差し引いた実質的な伸びは9.9%にとどまっております。一方、人件費については、職員定数の見直し等により、対前年度比6億9,000万円の減、2.9%のマイナスとなったほか、公債費も7億5,800万円、10.7%のマイナスであります。一般行政経費についても、基金積立金、物件費、補助費、特別会計繰出金などがいずれも減少したことにより、対前年度比34億5,400万円の減、0.9%のマイナスとなり、構造改革による経常的経費の抑制効果が現れたものと受け止めております。
歳入から歳出を差し引いた形式収支は24億4,000万円であり、翌年度に繰り越す財源を差し引いた実質収支も19億3,400万円の黒字となっております。さらに、当該年度における財政運営の健全性を示す実質単年度収支は、17億1,400万円となり、3年連続の黒字となりました。実質単年度収支が3年連続黒字となるのは、昭和62年度以来、実に19年ぶりのことであります。経常収支比率は、経常的な歳入が大幅に伸びる一方、人件費などが減少したことを反映し、前年度からさらに1.9ポイント改善し、75.9%となりました。公債費比率についても、償還元金の減少により、前年度より、0.8ポイント改善し、8.8%となりましたが、それでも23区の中では下から4番目の数字であり、依然として635億円もの借入金を抱える状況であります。このように主要な財政指標が改善してきたことは、景気回復による歳入環境の改善もさることながら、これまでの構造改革による成果の現れであり、平成18年度決算は、財政健全化に一つの区切りをつけることができた決算であると受け止めております。
次に、文化政策について申し上げます。
7月の新中央図書館のオープンに続き、9月10日には、豊島区初の創造発信型の文化施設である舞台芸術交流センターあうるすぽっとがオープンいたしました。そして、昨晩からいよいよ柿落とし公演が始まりました。昨晩は、4つの公演のトップを飾るミュージカル「ハロルドアンドモード」の初日であり、満席の観客の皆さんとともに、新しい劇場の幕開けを飾るに相応しい、躍動感あふれる舞台を堪能いたしました。柿落とし公演のスタートのミュージカルは、議員の皆様を初め、区内各界の皆様の絶大なるご支援・ご協力によりまして、全公演がほぼ満席の状態となっております。また、9月10日の開館記念式典では、柿落とし公演に出演される佐久間良子さん、竹下景子さんを初め、演劇界や経済界から多くの方々のご出席をいただき、人間国宝であり名誉都民、そして名誉区民でもある野村萬氏には、狂言「三番叟」をご披露いただきました。この舞には五穀豊穣の地固めという意味が込められており、力強い足拍子が、まさに新劇場のスタートを祝福するように響き渡りました。また、ご子息の9世野村万蔵氏から大変熱心にご指導いただき、私自身も「梟山伏」の太郎役を演じさせていただくという、素晴らしい経験をさせていただきました。そして、翌11日、12日の2日間にわたり、講演会、コンサート、落語会など、多彩なプログラムによる開館記念イベントを開催し、あうるすぽっとと新中央図書館の誕生を広く内外にアピールいたしました。新劇場の前評判も非常に高く、既に来年、平成20年12月まで、公演の予約がほぼいっぱいの状態であります。あうるすぽっとは、東京でも屈指の新劇場として、今まさに注目され、個性ある輝きを放ちながら、順調にスタートすることができたと考えております。
新中央図書館も大盛況であります。オープンからの2カ月で、来館者数が既に20万人を突破し、1日平均3,500人もの方々にご利用いただいております。これは都内3カ所の都立図書館の利用者に匹敵する数字であり、23区の図書館の中ではもちろんトップクラスであります。地の利も抜群である上に、平日の夜10時まで開館したことやICタグの装備による自動貸出機の採用、さらには落語やトキワ荘コーナーなど、特色ある資料収集を行ったことなど、東京で1番の図書館を目指し、思い切った施設運営を行ったことが、予想以上の反響となって現れたものと考えております。都内を初め、全国には個性的な図書館が魅力ある活動を繰り広げております。こうした図書館が一堂に会し、情報を交換しながら新たな展開を生み出していくため、豊島区から呼びかけて、来年度には図書館サミットを開催したいと考えております。
さて、こうしてあうるすぽっとがオープンしたことによりまして、東池袋四丁目第1地区の市街地再開発事業は、名実ともに完成をみたことになります。振り返りますと、この地に再開発協議会が発足したのが昭和63年7月であり、それから20年になります。私が区長に就任した当時も先行きが定まらない状況でありましたが、地権者を初め、関係者のご努力が大きく実り、今日を迎えることができたことは、まさに感無量であります。この再開発事業は、いわば副都心再生の試金石であったわけでありまして、もしこの事業が頓挫したままであれば、第2地区や南池袋二丁目など、周辺の開発は今より10年以上も遅れ、現在のようなにぎわいや将来展望もなく、旧日出小地区における新庁舎整備の選択肢も到底あり得なかったのではないかと思います。あうるすぽっとと新中央図書館についても、10年後には、この文化拠点があればこそ、今日の発展があったと評されるよう、広く区民の皆様に愛される運営に努めてまいります。新たな文化拠点が完成した今、豊島区の文化政策は新たなステージに立つことになります。そのステージに相応しい新たな文化政策の方針を示すため、来年度に向け、文化政策推進プランの策定を進めてまいります。
さて、区の西部地域においても、新たな文化の拠点が生まれようとしています。11月5日には熊谷守―美術館を区立美術館としてスタートさせるべく準備を進めており、今定例会に指定管理者の承認についての議案をご提案しております。また、平成22年度に竣工予定の旧平和小複合施設では、アトリエ村資料室を拡充・整備する計画であり、池袋モンパルナスの名付け親である小熊秀雄作品の収集についても鋭意検討を進めております。このほかにも、長崎・千早・要町地区には、池袋モンパルナスを今に伝える数々の文化資源が集積しております。そこで、目白や駒込に続き、この地区においても地域ブランド創出プロジェクトを展開し、西口まちかど回遊美術館や、マンガとアニメのまちづくりなど、地域の皆様との協働を進めながら、まちづくりと連動したイメージアップ戦略を進めてまいります。また、この地区の玄関口となります椎名町駅につきましても、東長崎駅に続き、駅・まち一体改善事業を活用した、魅力ある駅周辺整備が実現するよう、地域の皆様のご意見・ご要望をお聞きしながら、国や東京都との協議を進めてまいります。
次に、新たな地域公共交通施策の検討について申し上げます。
今後の本格的な高齢社会において、ユニバーサルデザインの考え方に基づく快適な地域内移動手段を確保することは、住みたい街、訪れたい街を実現する上で重要な要素であると考えております。交通利便性の高い豊島区にとりまして、交通不便地域の解消という側面からは導入が難しいと判断してきたコミュニティバスでございますが、最近では、高齢者や障害者等の外出支援、病院や商店街等へのアクセス、そして公共施設や文化・観光施設を結ぶ回遊性の向上など、様々な面から高齢社会に対応した地域内移動手段を確保する必要性が高まっております。また、コミュニティバスが地域の中をきめ細かく動き回ることで、新たな移動ニーズが掘り起こされ、街の活性化やにぎわいの創出にも大きな効果が期待できます。この夏に実施いたしました区民意識調査の中で、コミュニティバスの導入についても意向を調査したところ、約7割がコミュニティバスの必要性を感じているとの結果が出ており、区議会からのご要望も踏まえまして、導入に向けた調査を実施することといたしました。コンセプトの明確化、地域ニーズを踏まえた運行路線と停留所のあり方、事業採算性、そして環境に優しい魅力あるバス車両等について、十分に検討を進め、来年の5月にはコミュニティバス導入方針を策定したいと考えております。そして、その結果を見た上で、最終的に導入路線等を判断し、早ければ平成20年度中の運行開始を目指してまいります。
また、今回のコミュニティバスの検討と並行して、池袋副都心におけるLRTの導入についても、これまでの検討結果を踏まえ、区としての整備構想を取りまとめるべく、検討を進めたいと考えております。今月初め、富山市を訪問し、平成18年4月に我が国初の本格的LRTとして整備された富山ライトレール、愛称「ポートラム」を視察してまいりました。当日は、富山市の森雅志市長自らが市内を案内してくださいました。一緒にライトレールに乗車しながら、決定からわずか3年の短期間で実現に漕ぎ着けるまでのご苦労や広く市民からの賛同を得るための秘策など、貴重なお話を伺うことができました。富山ライトレールは、地域の公共交通であると同時に、公共交通を軸としたコンパクトシティを目指す都市再生のシンボルでもあります。市民や産業に将来への夢と活力をもたらし、富山の魅力を強くアピールするそのデザインの中に、まさに私が目指す都市再生の姿を見る思いであり、大変有意義な視察となりました。この度策定いたしました池袋副都心交通ビジョン(案)では、アクセス交通の質的充実を図るため、都電荒川線との連携を図った新たな軌道系システムの必要性を打ち出しています。また、環状5の1号線については、これから先、地下通過道路の構造や出入口の位置、グリーン大通りとの交差点の検討が本格化する時期を迎えることになります。こうしたことから、これまでの検討を踏まえ、LRT整備構想を策定することで、より具体的に関係機関との調整・協議を進め、実現の可能性を高めてまいりたいと考えております。
次に、環境まちづくりの推進について申し上げます。
今年で3回目を迎える打ち水大会inとしまは、去る7月25日、日之出町第二公園を会場に、約250人もの方々にご参加いただきまして、盛況のうちに実施することができました。今回は、近隣の企業から100名を超える社員の皆さんの参加があり、企業も一区民として地域の環境対策に積極的に参加しようとする意識の高まりを強く感じたところ分あります。こうした意識を具体的に行動に結びつけ、環境まちづくりを推進するため、丸の内や大崎地区などに続き、国の新規事業であるクールシティ中枢街区パイロット事業を池袋副都心に適用することを計画しております。この事業は、ヒートアイランド現象が顕著な都市の中枢部分の中でも注目度が高いモデル街区を国が選定し、民間事業者が取り組むCO2削減対策やヒートアイランド対策について、経費の2分の1を補助する制度であります。サンシャインシティ周辺から立教大学を含む地区をモデル街区として想定し、事業の推進母体となる池袋クールシティ推進協議会の設立について、大規模事業者等に打診したところ、多くの理解・賛同が得られ、民間事業者10社の代表などと区から構成する協議会をスタートさせるべく準備を進めております。現在は国へ地区選定を申請している段階でありますけれども、官民が一体となった環境配慮型の都市づくりに向け、積極的に取組みを進めてまいります。
そして、今後の環境政策の展開に当たって、あらゆる施策に環境配慮の視点を広げていくため、新たに環境基本条例を制定したいと考えております。このため、10月には有識者から構成する会議体を設置し、来年の第1回区議会定例会へのご提案を目指し、地域特性を踏まえた環境政策の理念や基本指針、区民や事業者等の役割の明確化などについて、検討を進めてまいります。さらに、今月から、第3期となるリサイクル・清掃審議会をスタートし、平成21年度を初年度とする新たな一般廃棄物処理基本計画を策定いたします。また、今年7月から3,300世帯を対象として試行モデルを実施している廃プラスチック・サーマルリサイクルでありますが、分別の徹底状況、収集作業への影響、周知方法などの検証を行った上で、10月からは約10%に当たる1万3,200世帯を対象とした本格モデルへ移行いたします。今後、対象世帯も広がり、一人一人の区民の理解と協力を得ることがより一層重要となってまいります。試行モデルで検証してきたノウハウを生かしながら、きめ細かな対応を行ってまいります。
なお、一昨日、豊島清掃工場におきまして、炉内圧力急上昇によるプラント緊急停止が発生いたしました。現在、清掃一部事務組合におきまして、原因究明に向けた調査を進めておりますけれども、再発防止と安全確保に向けた万全な対策を講ずるべく取り組んでおります。しばらくの間、プラントの操業を停止することになります。日常の収集業務や併設する区民施設の運営には特段の支障はございませんが、議員の皆様、区民の皆様には大変なご心配をおかけいたします。よろしくお願い申し上げます。
最後に、区立学校の改築計画と適正配置について申し上げます。
区立の小中学校については、これまで、計画的に耐震補強工事を実施して、すべての学校について施設の安全性を確保してまいりました。しかし、新築した3校を除けば、残る28校が今後次々と築50年を迎えるなど、確実に老朽化が進んでおります。児童・生徒の学習・生活の場として、新たな教育ニーズに対応しつつ、安全で快適な環境を確保することはもちろんですが、多くの区民にとっても身近な存在である学校施設の改築整備は、防災機能の確保や周辺のまちづくりとも深く関わる重要な課題であると認識しております。しかし、学校の改築整備には大きな財政負担を要し、同時に複数の改築工事を進めることには限界があります。このため、校舎の状況や児童・生徒の推移、仮校舎確保の可能性、さらには子どもスキップを初めとする地域全体の施設再構築などとの関係を慎重に見極め、長期的な展望と計画を持って、可能なところから着実に進めていかなければならないと考えております。既にプラン2007において、西池袋中学校の建替計画をお示ししたところでありますが、この計画を含めまして、今後10年間程度の区立小中学校改築計画を年度内に策定すべく、本格的な検討を進めているところであります。
また、改築計画の検討と並行いたしまして、小中学校の適正化に関する第二次整備計画についても、検討に着手したところであります。区立小中学校の適正配置については、平成18年4月の長崎中学校と明豊中学校との統合をもって、第一次整備計画を終了したところであります。しかし、平成4年4月の区立小中学校の適正規模及び適正配置に関する答申において示された考え方に照らして、現在の学級数と児童・生徒数の状況を見ますと、6つの小学校と2つの中学校において、適正規模に満たない学校があるのが実情であります。保護者や地元からの強い要望もあり、平成4年の答申の趣旨を実現するためには、もう一段の適正化を進める必要があると考えております。しかし、適正化を必要とする学校であっても、学校の位置や通学区域、通学距離などの問題から、現実的に統合が困難な地域があることも事実であります。したがいまして、改築計画との整合性を図りながら、統合の実現性の高い地域を対象に慎重に検討を進め、年度内には適正化に関する第二次整備計画を策定したいと考えております。
前漢時代の説話集である戦国策に、「未萌に見る」という言葉がございます。日々全国から発信される情報の中に、そして日常の暮らしや見慣れた街角の景色の中にも、私たちは未来への萌芽を感じ取ることができます。次の世代に豊かで活力ある豊島区を引き継いでいくためには、今の社会潮流の中に、未だ形となっていない萌しを見出し、将来に向けた構想を組み立てていく必要があるのではないかと思います。未来への改革とは、こうした未来への萌芽を育てることで、地域の活性化と豊かな区民生活の姿を描く未来への構想であります。文化を機軸とした都市再生を進めることで、新たな価値を創造し、そこから生まれる活力をもって、より豊かな区民生活を実現していくような好循環、いわばベストサイクルをつくり上げることが、私が目指す改革の姿であります。未来への改革にとって、財政の健全化は一つの重要な通過点であり、新たな挑戦に向けて取組みを本格化するこれからが正念場であります。文化と品格を誇れる価値あるまちを実現するため、区民や事業者の皆さんと手を携えながら、信念と情熱を持って果敢に挑戦し、新たな政策の扉を開いてまいりますので、議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げる次第であります。
本日ご提案する案件は、条例7件、決算認定5件、補正予算3件、その他4件、合わせて19件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。