平成19年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成19年第4回豊島区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。


 初めに、学校教育における学力向上について申し上げます。


 世界における我が国の学力水準の低下傾向や、いわゆるゆとり教育が学力低下を助長したのではないかという不安を背景として、今年4月、文部科学省は、43年ぶりに全国一斉の学力調査を実施し、その結果が10月下旬に公表されました。結果の大要は、我が国の子どもたちの学力は、基礎的知識の理解度は高水準を維持している一方、知識の活用力には課題が見られること、また都道府県ごとのばらつきは小さいことなどであります。文部科学省は、国と都道府県別の平均正答数や正答率を公表いたしましたが、区市町村別と学校別の結果発表については、慎重な対応を促しつつも、各自治体の判断に委ねております。豊島区といたしましては、今回の学力調査は、地域や学校間の競争や序列化が目的ではないと受け止めておりますので、個別の学校の結果については公表しないことといたしました。豊島区の結果を見ますと、小学校6年生では、国語・数学ともに、国や東京都の平均値を大きく超えており、区内各学校の取組みが成果を上げていることを示すものであると考えています。中学校3年生では、国語は平均を超えているものの、数学では国及び東京都の平均をわずかに下回る結果となりました。大切なのは、今回の学力調査をそれぞれの教育現場においてどのように生かしていくかであります。


 今年3月に策定した豊島区教育ビジョンでは、知識の獲得や技能の習得だけではなく、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力、そして体力までを含めた総体としての学力を成長の礎となる確かな学力として学校教育を進めております。既に各小中学校においては、今回の結果を基に、授業改善推進プランの見直しを行い、児童・生徒一人一人の課題とその克服方法を指導・助言しております。また、来年1月から、進級を控えた中学校1・2年生を対象として、土曜補習教室「としまアカデミア」をスタートするとともに、一度つまずくと学習の積上げが難しいとされる算数・数学について、習熟度に応じた少人数指導の体制を強化いたします。


 次に、区立学校の改築及び第二次適性化計画の素案について申し上げます。


 この度、さきの定例会において申し上げました区立小・中学校改築計画及び区立小・中学校の適性化第二次整備計画の素案を策定いたしました。改築計画の素案では、今後改築が必要となる小中学校28校について、30年間の計画期間を設定し、そのうち平成20年度から平成29年度の前期10年間について、具体的な内容を示しております。対象校としたのは、改築の順に、西池袋中学校、目白小学校、池袋第三小学校、そして池袋中学校と統合校としての池袋第二・文成小学校、さらに巣鴨北中学校の6校であります。また、第二次適性化計画では、保護者や地元からの強いご要望を踏まえ、池袋第二小学校と文成小学校について、平成26年度から平成30年度までの5年間における総合プロセスの具体案を示しております。改築は30年の長期にわたらざるを得ず、28校すべての改築について、現時点で財政的な裏打ちを示すことは困難であります。したがいまして、毎年度ローリングを行う未来戦略推進プランにおいて、4年程度の財政収支を見定めながら、財源を確保しつつ、着実に改築計画を進めてまいります。それぞれの計画につきましては、今定例会におきまして、詳細な計画内容等をご説明するとともに、保護者や地域の皆様にも十分ご説明し、ご意見をいただきながら進めてまいりますので、ご理解・ご協力をいただきますようお願い申し上げます。


 次に、区内6大学との連携・協働について申し上げます。


 今週11月19日、あうるすぽっとにおいて、豊島区と区内6大学との間で、連携・協働に関する包括協定を締結いたしました。協定の調印式では、学習院大学の福井憲彦学長、女子栄養大学の香川芳子学長、大正大学の小峰彌彦学長、東京音楽大学の海野義雄学長、そして立教大学の大橋英五総長、さらには来年4月から池袋にお迎えする帝京平成大学の沖永寛子学長にもご出席いただき、街全体をキャンパスとして、地域と大学の連携を深めることの意義について、積極的なメッセージをいただきました。また、大学を代表して自らの大学を紹介する学生の皆さんの姿も、大変凛々しく、頼もしいものでした。個性豊かな知的資源と人材を有する大学は、教育と文化のシンボルであり、都市の財産であります。そして、文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向けた都市経営を戦略的に進めていく上での大切なパートナーであります。豊島区では、学校教育や生涯学習を初めとして、文化やスポーツ、まちづくり、健康、産業、防災など、様々な側面で個々の大学との連携・協働を積み重ねてまいります。今回の包括協定は、これまでの連携を踏まえ、新たな協働に向けた共通の基礎を構築するものであると同時に、これまでの区と各大学の関係を、1対1の線的なものから、相互につながる輪の関係へと大きく飛躍させることを目指すものであります。地域の力との協働を基本とした政策展開に新たな1ページを加えるべく、区民の皆様にはそれぞれの特色ある大学の存在をより身近に感じていただけるよう、また学生の皆さんには、地域や他大学の学生、区内企業との交流を体験しながら、街全体をフィールドとして学習・研究活動ができるよう、豊島区が積極的にコーディネーターとしての役割を果たしてまいりたいと考えております。


 そして、今回の包括協定に基づく第1号の事業として、としまコミュニティ大学を新たに開校いたしました。としまコミュニティ大学は、人づくり、活動づくり、地域づくりの3つをコンセプトとして、地域のまちづくりの原動力となるリーダーの育成を目指した、各大学との協働による総合的な公開講座であります。今年度は、それぞれの大学の特徴を知っていただくため、各大学を会場とした大学紹介講座を実施するとともに、まず人づくりに焦点を当て、地域課題を素材として、コミュニケーションや話し合いの技法等を習得するプログラムを準備いたしました。そして、来年度からは、人づくりをさらに活動づくり・地域づくりにつなげていくための実践的な講座を展開することで、まちづぐりの推進役となる人材の育成を進めてまいりたいと考えております。


 次に、子育て支援の充実について申し上げます。


 身近な地域において、休日や夜間における小児救急診療を充実することは、子育て家庭にとって大きな安心となります。これまでの休日診療に加え、今年度の新規事業として、平日準夜間の小児救急診療について、医師会や地域医療機関と協議を進めてまいりましたが、12月3日から、都立大塚病院内において、豊島こども平日準夜間救急クリニックとしてスタートすることになりました。診療日は、当面、月・水・金曜日の午後8時から11時ですが、来年度からは平日毎日の実施に向け、医師会との協議・調整をさらに進めてまいります。小児救急医療の特徴は、軽症の患者が8割から9割と圧倒的に多いこと、そして一見軽い症状が急速に重症化する場合があるということであります。当初は池袋保健所内での開設を検討いたしましたが、緊急の事態にも対応できるよう、高度の医療機能を備えた二次医療機関である大塚病院内に開設することにいたしました。今回の救急クリニックの開設は、軽症の患者が圧倒的に多く、初期段階での振分けが重要となる小児救急医療にとって、大きな役割を果たすものと期待しております。また、これに加え、乳幼児の症状に適した緊急の対処方法を相談できる東京都の小児救急電話「#8000番」の活用を広く周知してまいります。なお、11月20日の広報紙では、今回の小児救急医療の拡充を初め、子育てに役立つ情報を便利帳的にまとめた


 「乳幼児・子育て支援マップ」を特集として掲載いたしました。そして、虐待やいじめに苦しむ子どもの相談窓口として、東部子ども家庭支援センターの相談機能を拡充いたしました。深刻な悩みを抱える子どもが少しでも相談しやすい環境とするため、家庭支援センターとは別に相談室への入口を確保するなど、施設の改修・改装を行いました。さらに来年度からは、学校や教育委員会への相談がためらわれるようないじめについても、専門の知識と経験を有する専門相談員を配置し、これまでの虐待相談や家庭支援を含め、安心して相談できる体制を強化してまいります。


 内閣府では、11月の第3日曜日、今年は11月18日を「家族の日」として位置付け、家族・地域のきずなの再生を呼びかけています。家庭の子育て・教育力に関する問題の根底には、核家族化や近隣関係の希薄化、さらには親の規範意識や価値観の多様化などが背景としてあり、個々の家庭だけの問題ではないと考えております。豊島区といたしましても、教育、子育て・家庭、地域コミュニティなど、各分野の政策の連携をとりながら、心身ともに子どもが健康に育つ環境づくりに向け、さらに力を注いでまいります。


 次に、後期高齢者医療制度について申し上げます。


 現役世代の減少と75歳以上の高齢者世代の増加が同時に進むという、世界でも例を見ない急速な高齢化を目前に控え、将来にわたって安定的で持続可能な医療保険制度をつくり上げることが急務となっております。こうした意味から、現役世代との負担割合を明確にし、高齢者にも保険料の負担をお願いする後期高齢者医療制度は、大変重要な制度であると認識しております。平成20年4月の施行が目前に迫る中、その保険者として東京都後期高齢者医療広域連合が今年3月に発足し、様々な検討を進めているところであります。一昨日、11月20日には、広域連合議会におきまして、東京都広域連合後期高齢者医療に関する条例が可決され、保険料についてもこの条例の中で定められております。保険料については、可能な限り被保険者への負担を軽減するため、広域連合を構成する一員として、区としても繰り返し意見表明を行ってきたところであります。その結果、広域連合はいくつかの保険料軽減策を実施することとなり、東京都内62区市町村で103億円の一般財源の投入を決め、本区も一定の財政負担を負うこととなります。今後、来年の第1回定例会に向けまして、新たな特別会計の設置を含む予算案や保険料の徴収に関わる条例の制定、そして広域連合規約の改正等め議案をご提案すべく、準備を進めてまいります。後期高齢者医療制度は、超高齢化社会に向けて必要不可欠な制度でありますが、区民にとりましては、介護保険制度と同様に、大きな変化でもあります。円滑な導入を図るため、低所得者対策や国及び東京都からの財政支援要求について、引き続き広域連合に働きかけるとともに、さらにわかりやすく制度を周知し、区民の皆様の理解を得るよう努めてまいります。


 次に、新たな地域防災計画の策定について申し上げます。


 今後、豊島区の人口は27万人を超え、日本一人口密度の高い都市になることが予想されます、また、マグニチュード6.9の首都直下地震が起きた場合の被害想定にも的確に対応しなければなりません。高密でありながらも安心で住みやすい街の実現に向け、今年度、地域防災計画の抜本的な見直しに取り組んでまいりましたが、この度、その案を取りまとめたところでございます。見直しの内容は広範かつ多岐にわたっておりますが、特に、災害時要援護者対策、応急医療体制、帰宅困難者対策、そして中高層マンション対策など、本区の地域特性を踏まえるとともに、これまで以上に実効性を高めることを主眼として検討いたしました。まず、要援護者対策につきましては、11月中に手挙げ方式で作成した448人の名簿を地域防災組織である各町会に配付し、説明会を行った上で、避難支援プランの作成に取り組んでいただく予定であります。応急医療体制については、地震発生直後の外科、次に内科やメンタルケア、長期的には健康維持と、時とともに変化する医療ニーズを想定した検討を行いました。特に多くの死傷者が予想される発災直後には、数箇所に重傷者対応のトリアージセンターを設置し、患者の振分けや外科的処置を重点に、必要な人材と資器材を投入する計画といたしております。また、一日の乗降客が260万人を超える池袋駅では、8万5,000人もの帰宅困難者が発生することが見込まれ、3日程度は池袋周辺に滞留することが予測されます。新たな計画では、池袋はもちろん、大塚・巣鴨など、順次、鉄道駅ごとにターミナル駅周辺混乱防止協議会を設置し、具体的な帰宅困難者対策の検討や合同訓練の実施に取り組むこととしております。さらに、増え続ける高層マンションについては、新たな建設に際して、一定の階層を単位とした備蓄倉庫や非常用発電装置を設置することについて、条例等に基づく義務化を検討いたします。今後、12月にはパブリックコメントを実施し、2月には策定したいと考えておりますので、計画案に対するご意見・ご指摘をいただきたくお願い申し上げます。


 なお、新たな治安対策といたしまして、青色回転灯装備車両、いわゆる青色パトカーによる巡回を歳末12月の警戒からスタートさせます。その車両の導入に当たりましては、東京目白ライオンズクラブからのご寄附を基に、環境に優しいLPG車を採用しております。青色回転灯は、目に付くと申しますか、大変印象的であります。街をくまなく巡回しながら防犯行動の実践を拡声器で呼びかけることで、大きな効果が期待できると考えております。


 最後に、区政に関する情報発信の拡充について申し上げます。


 ただいま申し上げました大学との連携・協働を初め、地域の力との協働を基本とした政策形成や施策展開を進めるためには、区民への説明責任と情報提供、そして情報共有を進めることが必要不可欠であります。今年5月に実施した区民と区長との対話集会において、区民の皆様の信頼こそが区政の基盤であるとの思いを新たにし、財政状況からやむなく月2回の発行とした広報紙や利用が飛躍的に増え続けるホームページ等のあり方について検討してまいりましたが、来年度から、広報としまの発行回数を月3回に増やすことにいたしました。紙面の企画・編集についても、子育てや介護など、特定のテーマを掘り下げた特集を増やし、地域活動の紹介や区民が取材するコーナーを拡充・新設するなど、より親しまれる紙面づくりに取り組んでまいります。


 先日、民間シンクタンクが実施した全国自治体のホームページ調査において、豊島区のホームページが、使いやすさの指標であるアクセシビリティにおいて、全国第2位、23区では第1位となり、大変高い評価を受けました。今後とも、障害者や高齢者にも優しい、さらに利用しやすいホームページを目指し、来年度には、平成12年度の開設以来となる全面的なリニューアルを行いたいと考えております。また、8月に実施した区民意識調査において、電子メールや郵送等の手段により政策形成に関するアンケートを行う政策eモニターを募集したところ、定員200人のところ501人ものご応募をいただきました。今年度はモデル実施ですが、場所や時間を限定しない新たな区民参加の手法として期待しているところであります。さらに、来年1月からは、現在の安全安心メールに加え、子育てや図書館など特定のテーマに関する区政情報を、希望する区民のパソコンや携帯電話に直接配信するメールマガジンをスタートすべく準備を進めております。今後とも、区政の透明性を高め、区民とのコミュニケーションを広げながら、自治の推進に関する基本条例に基づき、参加と協働のまちづくりを進めてまいります。


 文化の力をもって人と街に新たな輝きを生み出そうとする姿勢を謳った文化創造都市宣言から2年が経過する中で、文化政策の取組みは一つ一つ花を開かせ、未来に大きく枝を伸ばしつつあります。そしてこれからは、豊島区が東京全体の中でいかなる個性を発揮すべきか、そのコンセプトを明確にしつつ、存在感をアピールしていく必要があります。私は、そのコンセプトこそ、演劇の街・池袋にほかならないと考えております。来年で20周年を迎える池袋演劇祭と東京国際芸術祭、そして戦後から数多くの演劇人を輩出してきた舞台芸術学院や個性ある輝きを放つ小劇場の数々など、区内で活動する幾多の人々の情熱と努力の上に培ってきた誇るべき価値こそが、演劇の街・池袋なのであります。また、オリンピックの招致活動においても、都市の歴史と文化が大きく評価される時代であります。来年は、東京芸術劇場やにしすかも創造舎、そして新劇場あうるすぽっとなど、演劇関係者との総力を結集し、国際社会から注目されるような演劇の街・池袋を発信すべく、豊島区から大きな文化芸術の風を興してまいりたいと考えております。


 2年前、11月23日に開催した文化創造都市宣言の記念式典では、臨床心理学の第一人者であり文化庁長官でもあった、故河合隼雄氏にもご出席をいただいたことが思い出されます。力強くも温かい言葉で語られた「文化で日本を元気にしよう!」との講演、そして心癒されるような美しいフルートの演奏をされた時の姿が、私の頭の中に、今も鮮やかに蘇ってまいります。河合隼雄氏は、その著作「生と死の接点」の中で、「現在を過去の結果として見るのではなく、未来への準備として見る」と記し、未来から現在を見るという積極的な姿勢を持ち続けてこそ、今を大切に生きることができると述べておられます。文化、健康、都市再生、そして環境政策など、私たちが目指す都市づくりは、今が到達点ではなく、これからが正念場であります。次の世代に価値ある街を引き継いでいくため、明確な将来のビジョンに立ちながら、今、何を成すべきかを見極め、区民の信頼に応えるべく全力を尽くしてまいります。


 本日ご提案する案件は、条例5件、補正予算1件、その他3件、合わせて9件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。