本日、ここに平成20年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。
今定例会は、区長3期目として初めての予算案を、新たな構成となった区議会にご提案する定例会であります。気持ちも新たに、緊張感を持って臨みたいと考えておりますので、議員各位におかれましては、大所高所からご審議を賜わりますようお願い申し上げます。
それでは、今定例会の開会に当たりまして、区政に当たる私の所信の一端を申し上げ、ご理解とご協力を賜わりたいと存じます。
初めに、環境都市づくりについて申し上げます。
地球の環境破壊による人類存続の危機を示すものに、環境危機時計があります。大変聞き慣れない言葉であるかと思いますが、環境問題で人類の将来がどのぐらい脅かされているのかを、時刻で表示したものでありまして、旭硝子財団が16年間の継続調査から時計という指標で表したものであります。12時を地球滅亡の時とするこの世界時計は、昨年、世界平均が14分進み、過去最悪の9時31分を刻む結果となりました。日本では19分進んで9時34分となり、地球生態系の危機は一段と深刻さを増しています。気候変動枠組条約を採択し、世界の首脳が環境を守る決意を示した1992年の地球サミット、当時、環境危機時計は7時49分を指していました。しかし、その後も温室効果ガスの排出抑制が進まないことから、刻々と針が進み続け、環境被壊の情報に接しない日はありません。地球温暖化問題は、いまや環境科学の領域を出て、世界の政治や経済、貧困、そして安全保障にまで波及する地球規模の課題であります。
1997年の京都議定書から10年、EU諸国が目標達成をほぼ確実にしつつある一方、我が国のCO2排出量は年々増加を続けています。
特に、業務や家庭部門からの排出量がアップするなど、計画や意識が行動に結びついていないのが現状です。結果だけを見れば、環境対策の失われた10年と言っても過言ではありません。世界が日本と同じ生活をしたと仮定すると、地球2.5個分もの自然生態系が必要になるとの報告もあります。そして、日本でも人口密度が最も高く、商業業務機能が集積する豊島区は、必然的にエネルギーや資源の消費密度が高い都市でもあります。1ヘクタール当たりで比較いたしますと、ごみ収集と資源回収の総量や、家庭部門のCO2排出量は、23区で最も高い水準です。また、CO2排出量の推移を見ると、1990年の133万6,000トンから2004年の153万6,000トンヘと15%も増加しており、京都議定書の削減目標であるマイナス6%から大きく乖離しています。また、池袋副都心における旺盛な経済活動や消費を背景として、業務部門の排出量が大きいのが特徴であり、東京都平均の35%に対して、豊島区は45%となっています。私たちは、奇跡ともいうべき生態系バランスの恵みに依存して生きていること、そして、温暖化がもたらす危機は、遥か遠い世界の問題ではなく、まさに私たちの足元の問題であることを、改めて強く意識する必要があります。豊島区は、今後さらに人口を増やし、文化の力で新たな価値を創造し、副都心の再生を果たすことで、持続的な成長を目指しています。私たちは、都市内における、資源・エネルギーの循環と再生を最大化させると同時に、消費そのものの最小化に努め、真に豊かなライフスタイルとは何かを、改めて問い直さなければなりません。こうした行動なくして、新たな成長を望むことは、都市の品格に関わることであります。
京都議定書の第1約束期間が始まった本年は、我が国の環境政策にとって重要な節目の年であります。CO2排出枠や排出権取引の法制化など、プラスにもマイナスにもCO2が経済的な価値を持つ時代が現実のものとなりつつあります。私たち豊島区も、新たな決意の下に、これからの10年を環境都市づくりの10年、平成20年を環境都市づくり元年として位置付け、地域から世界に向けて、責任ある行動を示したいと考えています。そのスタートとなるのが、今定例会にご提案する環境基本条例であり、私自身が陣頭指揮をとる環境都市づくり推進本部の設置であります。本部では、環境配慮の視点をあらゆる政策に広げつつ、区独自の戦略を練り上げると同時に、区民や企業、NPO、大学等を巻き込んだ区民運動として、環境ムーブメントの推進にも取り組みます。小池百合子元環境大臣が提唱したクールビズに倣い、区独自の環境通貨や白熱球一掃行動など、誰もが参加できるCO2削減ツールを開発するとともに、危機意識を行動に結びつける環境学習や情報戦略などを進めてまいります。折しも、先月末、福田首相が本部長を務める国の地域活性化統合本部において、環境モデル都市を全国から10カ所選定し、地域活性化予算等を通じて、支援していくことが決定されました。環境都市づくりを最重点政策として位置付ける本区としても、このモデル都市への立候補を視野に入れ、高密都市ならではの環境対策について、全力を挙げて具体化を図ってまいります。
次に、未来戦略推進プラン2008について申し上げます。
豊島区は今、区政構造改革に一つの区切りをつけて離陸し、次なる目的地に向け、次第に高度を上げつつあります。しかし、世界経済の混迷、懸念される日本経済の先行き、そして展望を見出せずにいる社会保障制度、さらには官民ともに責任感が揺らぐ世情など、私たちが進む先は常に変化し、決して気を緩めることはできません。
また、2008年は、分権改革の行程が1年前倒しされ、答申に向けた地方分権改革推進委員会の議論が山場を迎えると同時に、消費税を絡めた地方財政議論が一段と激しさを増す年となることが予想されます。
直面する変化を乗り越え、安定して飛び続けていくためには、タイムラグを含めて社会経済の影響を見極めるとともに、エンジンと機体の性能を高め、明確な航路図を描きながら、地域全体が力を合わせていく必要があります。その航路図としての役割を担うのが未来戦略推進プランであります。未来への改革を本格化する上で、プラン08には、ビジョンや政策の実行計画としての役割が強く求められます。ニーズの変化に応えながら、限られた財源を最大限に生かし、確実に成果を上げていくためには、重点と目標を明確にし、財源を集中して配分する必要があります。
こうした視点から、プラン08では、私がマニフェストとして掲げた4つの基本政策と4つの重点政策を基に、今後4年間において重点的に取り組む施策を選択し、戦略プロジェクトとして位置付けたところであります。重点政策である文化、健康、都市再生、環境に加え、基本政策として位置付けた子育て・教育、福祉、安心・安全、そして参加・協働について、全部で50のプロジェクトを選定いたしました。全庁が一丸となってプロジェクトの策定に取り組むことで、職員一人一人が未来への改革の意義とビジョンを共有し、政策本位の予算編成に取り組むことができたものと考えています。
さて、平成19年度は、新劇場あうるすぽっとがスタートし、続く柿落とし公演も大きな成功を収めることができました。公演期間中には、区民の皆さんを初め1万2,700人が訪れ、開設準備が進む6月以降、数多くのメディアにも報じられ、演劇の街・池袋の存在感を内外に強く印象付けることができたと考えています。今後、大規模改修が予定される東京芸術劇場との連携も、ますます魅力的な展開を予感させます。
新中央図書館についても、既に来館者が60万人を数え、地域研究ゼミナールやビジネス支援についても大変好評であります。区立とした熊谷守一美術館では、長崎アトリエ村の象徴である熊谷氏の作品を、豊島区が誇る資源として大切に引き継ぐことができました。
これまでの取組みにより、豊島区の文化政策は、新たな風を興し、価値あるまちに向けて、力強い一歩を踏み出すことができたと考えています。区の人口も、一昨年に続き、2年連続して3,000人を超える増加となり、子どもの人口も、昨年に引き続き300人増加しています。そして、今、文化と品格を誇れる価値あるまちに向けて、もう一つの確かな流れを生み出すべく、環境都市づくりに挑戦したいと考えています。これから先、池袋副都心の再生を本格化させる上でも、都市開発や産業振興と、環境政策との調和が大きなテーマとなります。品格を掲げる都市として、未来への責任を果たすためにも、大きな意義を感じています。環境に集中的に取り組むことで、政策相互間の効果的な融合と広がりを生むような展開を目指してまいりますので、区議会の皆様の、今まで以上のご理解・ご協力をお願い申し上げます。
行政経営においても、持続可能な自治体経営を確立すべく、引き続き改革を進めてまいります。これまでの改革の成果と堅調な歳入の推移により、区の財政状況は大きな改善を達成いたしました。平成11年度末に872億円だった借入金総額は、今年度末には586億円、平成20年度末には522億円まで減少し、9年間で350億円もの削減を達成する見込みであります。
一方、基金も着実に増加し、今年度未には176億円となり、さらに平成20年度末までには200億円台まで積み立てたいと考えています。財政調整基金についても、90億円程度を目標といたします。借入金から基金を差し引いた実質的な債務残高を、区民1人当たりに換算いたしますと、平成20年度末では12万5,000円となり、23区最下位であった平成11年度の33万6,000円から、実に6割もの減少を達成する予定であります。
さらに、プラン08の財政フレームでは、平成23年度末時点において、借入金残高を388億円、基金を169億円とすることで、区民1人当たりの債務を8万1,000円まで減少させる見通しを立てているところであります。
また、職員数については、清掃事業が移管された平成12年の2,908人から692人減少し、今年4月には2,216人となる見込みであります。人件費比率についても一歩ずつ改善し、平成20年度末には26.1%となる見込みですが、依然として23区平均以下の水準であり、今後とも、平成22年度に2,000人体制という目標の達成に向け、努力してまいります。
なお、組織改正として、文化政策との一体性を確保し、既成概念を越えた、情報創造拠点としての図書館機能を高めていくため、図書館に関する事務を、区長部局において補助執行することといたしました。さらに、区民サービスの向上と事務処理の効率化に向け、これまで遅れてきた行政情報化も加速させます。パソコンの職員1人1台体制やセキュリティ基盤の構築を踏まえ、平成21年度には文書管理システム、平成22年度には財務会計システムを稼働させるとともに、今後の新庁舎整備を見据え、総合窓口受付システム、テレビ電話相談サービス等の検討にも着手いたします。
次に、平成20年度予算案について申し上げます。
一般会計に各特別会計を加えた平成20年度の総予算規模は、1,396億4.600万円であり、対前年度比110億1,700万円の減、7.3%の大幅なマイナスとなりました。これは、新たに後期高齢者医療事業会計を創設する一方、保険料の決定や医療給付については、都内62区市町村で構成する、東京都後期高齢者医療広域連合が運営主体となることで、従来の老人保健医療会計の医療給付費が大幅に削減されることによるものであります。一般会計予算は895億7,800万円であり、前年度当初予算に比べ、1億2,400万円の微増となりました。これは、舞台芸術交流センターと新中央図書館の建設事業が終了したことにより、投資的経費が大幅に減少する一方、扶助費などの事業費が大幅に増加しているためであり、平成20年度予算の実質的な内容は、2年連続の積極型予算であります。
一般会計予算の特徴について申し上げますと、歳入では、特別区民税が最近の課税人口の顕著な伸びを反映し、対前年度比12億9,100万円、5.5%のプラスとなる、246億8,800万円を計上しています。また、特別区財政調整交付金については、法人住民税の大幅な増加により、特別区への配分額が初めて1兆円を超える規模に達することから、対前年度比14億円、4.8%のプラスとなる、308億円を計上しています。一方、特別区債は、新中央図書館の建設事業が終了したことにより、対前年度比30億1,200万円、85.8%のマイナスとなる5億円の発行であり、起債への依存度も0.6%と過去最低となりました。
次に、歳出の特徴ですが、経費別では、人件費と投資的経費が減少する一方で、事業費が大幅な増加となっています。人件費の総額は、対前年度比3億2,400万円、1.4%のマイナスとなる233億3,500万円であり、投資的経費の総額は、対前年度比23億5,100万円、18.9%のマイナスとなる101億100万円の計上となっています。一方、事業費の総額は561億4,200万円であり、対前年度比28億円、5.2%のプラスとなりました。これは、生活保護費や障害者自立支援給付費などの扶助費の大幅な増加を見込むとともに、区民生活に密着した福祉施策を初め、子育てや教育、安心・安全などの新規・拡充事業に積極的に対応したほか、義務教育施設整備基金に12億円を積み立てたことによるものです。
以上のような、平成20年度予算案の特徴を総じて申し上げますと、予算規模では前年度より微増ではありますが、区民生活に密着した事業を含め、数多くの新規事業に取り組む積極型の予算であると同時に、3年連続して特別な財源対策を全く講じることなく、また、起債への依存度も極力抑制し、さらには、先行き不透明な景気動向を見据えて、基金の充実にも努めた堅実な予算であると考えています。
次に、平成20年度の事業展開について申し上げます。
まず、重点政策の第1番目として、文化政策について申し上げます。
平成20年度は、東京都がオリンピック招致活動を本格化させる年でもあり、こうした流れの中で文化・芸術事業を展開することで、全国、そして国際社会に向け、演劇の街・池袋を発信してまいります。これまで、にしすがも創造舎のNPO法人アートネットワーク・ジャパンが、文化庁の支援を受けて開催してきた東京国際芸術祭ですが、来年度からは、新劇場あうるすぽっとや東京芸術劇場などとも連携する形で、国際舞台芸術フェスティバルとして、大きく発展させて開催する予定であります。区としても、アートネットワーク・ジャパンとともに、積極的にフェスティバルの成功に向けて力を尽くしたいと考えています。今年20周年を迎える池袋演劇祭では、あうるすぽっと開館1周年を記念して、ジェームズ三木氏の脚本・演出による「池袋わが町」を上演いたします。将来的には、豊島区からのオリジナル作品として、友好関係にある市町村との提携公演が実現できるよう、検討を進めてまいります。
また、文化を機軸としたまちづくりに向け、地域ブランド創出支援事業を引き続き展開いたします。目白地区では、4年目を迎える、目白バ・ロック音楽祭との連携を一層深めるとともに、学習院椿の坂の電線地中化や、ライトの小路の景観整備に向け、設計に着手いたします。駒込地区では、旧丹羽邸と興銀社宅跡地に整備する広場を桜の回廊で結ぶとともに、マップの作成やフォトコンテストを行い、地域の皆さんとともに、染井吉野発祥の地であることをアピールしてまいります。そして、来年度からは、1日長崎町地区についても取組みを広げたいと考えています。熊谷守一美術館やアトリエ村資料室、峯孝作品展示室、さらにはトキワ荘など、固有の文化圏を形成してきた経緯を踏まえ、美術文化資源を活用したブランドづくりの方向を検討いたします。合わせて、池袋モンパルナスの命名者であり、詩人一画家としても名高い小熊秀雄作品の収集を進めてまいります。優れた芸術に触れる機会を提供する子どものための文化体験プログラムでは、江戸川乱歩の代表作「少年探偵団」を戯曲化し、演劇の上演やワークショップ等を実施いたします。
なお、旧平和小学校における新複合施設の整備ですが、池袋駅西口の郷土資料館の移転を含め、西部地域における文化施設の拠点として、さらに1年をかけ、担うべき機能のあり方について検討を深めたいと考えています。
また、今年11月には、全国でユニークな活動を続けている図書館や博物館などに呼びかけ、日本の図書館を元気づけるための図書館サミットを開催いたします。国立国会図書館を初め、各方面との連携を図りながら、活字文化の維持・発展のために、自治体や図書館に何かできるかを議論したいと考えています。
次に、健康政策について申し上げます。
今年4月から、後期高齢者医療制度とともに、生活習慣病の予防に重点を置いた特定健診・特定保健指導がスタートいたします。これまでの健診制度が大きく変更になりますので、制度導入の意義を初め、新たな仕組みの全体像、そして保険料やサービス内容など、わかりやすいご説明を心がけ、円滑な導入と移行を進めてまいります。がんは、早期発見と治療が大変重要ですが、本区の検診受診率は、23区の中でも低い状況であります。これを高めていくため、子宮頚部がんと乳がんの検診期間を2カ月延長し、5カ月間といたします。また、平成20年度の緊急対策として、区内の医療機関における無料の肝炎検査を実施するとともに、新型インフルエンザ対策として、防護服等の備蓄を進め、健康危機管理の強化を図ります。
昨年の食品偽装問題に続き、先月から今月にかけて、中国産冷凍餃子が原因と思われる健康被害が発生し、食の安全が大きく揺らいでいます。池袋保健所では、事件発覚の直後から、区民への注意喚起や相談、店舗への立入り指導のほか、医師会に対しても、有機リン中毒の疑いのある患者を診察した際の通報依頼を行ったところであります。こうした状況を踏まえ、来年度の食の安全推進事業では、新たに小中学校の児童・生徒や保護者を対象とした啓発活動にも力を入れたいと考えています。2年目となるとしま健康づくり大学では、今年度も90名の方々が卒業し、地域の健康づくり活動における活躍が期待されます。3年目を迎えた「75歳からの介護予防大作戦!」では、運動プログラムへの参加者の9割に、体力の維持・改善効果が現れており、今後とも、区民が主体的に取り組む健康づくりと介護予防を、積極的に支援してまいります。昨年12月から都立大塚病院内でスタートした豊島こども救急クリニックには、2カ月で80名もの外来患者があり、来年度からは、現在の平日3日を平日すべてに拡充できるよう、医師会との協議を進めてまいります。さらに、池袋保健所と一体的な連携を図りつつ、区民の健康を守り、保健・健診・医療の拠点となる健康センター構想の実現に向け、具体的な検討に着手したいと考えています。
スポーツや運動は、子どもから高齢者まで、誰もが楽しみながら参加できる、健康づくり活動であります。来年度は、子どもがスポーツに触れる機会を増やし、正しい運動の知識を広げていくため、新たにジュニア・スポーツリーダー育成事業を実施するとともに、区のスポーツ施設の整備・改修を重点的に進めてまいります。
次に、都市再生について申し上げます。
サンシャイン・シティが誕生してから30年、東京芸術劇場は18年、そして今年6月14日には東京メトロ副都心線が開業し、池袋副都心は、新たな都市づくりの展開を強く求められています。池袋副都心の再生が目指すところ、それは、自らの個性を生かすことで、東京における存在感を発揮するものでなくてはなりません。都心部や新宿・渋谷などに追いつくという、今までの発想ではなく、人が住む副都心、駅を中心とした比較的コンパクトな姿、みどり豊かなグリーン大通り、大学や専門学校等の教育機能や個性ある劇場の集積など、自らの強みと可能性を伸ばし、人と環境への優しさを追求することで、他の副都心には真似できないような都市再生を進めてまいります。そして、そのトータルビジョンと今後10年における戦略を描くのが、副都心再生の「新・ルネサンス構想」であります。新たな構想では、東西南北の一体性確保を基本として、デッキを含む駅空間の再生、駅前街区の再開発、造幣局の開発、新庁舎整備、そして通過交通を排除した歩行者空間とLRTの整備など、再生の鍵を握るプロジェクトの姿を示すとともに、CO2削減やヒートアイランド対策、さらにエネルギー供給の側面からも、環境と共生した都市再生の全体像について、お示ししたいと考えています。そして、懸案となっている都市再生緊急整備地域の指定を得ることで、民間投資を呼び込み、民間事業者との協力による総力戦の体制を築いてまいります。東西デッキについても、秋頃には具体的な整備計画を策定し、シンポジウムを開催いたします。
大塚駅周辺整備については、若干工事が遅れているものの、南北自由通路の完成まであと2年となり、次なる課題として、南口の地下駐輪場や、南・北駅前広場の改修計画に取り組んでまいります。さらに、向原で補助81号線とつながる都電沿線について、魅力ある緑化と景観づくりを検討いたします。
椎名町駅周辺整備についても、国の「駅・まち一体改善事業」を活用しながら、駅舎改善を初め、鉄道を横断する自由通路、椎名橋下空間を活用した駅前広場、駐輪場などについて、平成23年度の完成に向けて整備を進めてまいります。
また、いよいよ3月20日から3日間、サンシャイン・シティの展示ホールにおいて、第1回としまものづくりメッセを開催いたします。印刷・機械金属などの主力産業、戦前から続く知る人ぞ知る老舗企業、職人の技と心意気を受け継ぐ伝統工芸、未来へ伸びるIT産業など、区と産業関連団体が力を合わせ、1年をかけて構想を練った成果を、ぜひともご覧いただきたいと思います。区内の産業は、驚くほど多彩でエネルギッシュであります。このメッセが、ものづくり産業とまちづくりとの新たな共存を考える契機となるよう期待しています。
次に、環境政策について申し上げます。
冒頭で申し上げましたとおり、平成20年度を環境都市づくり元年と位置付け、10年を見据えた環境政策の基盤づくりに取り組んでまいります。その基盤づくりの第一歩として、今定例会にご提案する環境基本条例に基づき、平成20年度には、今後の環境政策の羅針盤となる環境基本計画を策定いたします。策定に当たっては、区としての温室効果ガスの削減目標を新たに設定するとともに、都市再生と環境の調和を目指した、環境まちづくり方針、CO2削減に向けた低炭素地域社会実現推進計画、そして区自身の環境配慮率先行動計画という3つの大きな柱を設定いたします。特にCO2削減については、国や東京都において、一定規模以上の事業者に対する排出量の削減義務化の検討が進められており、区民、事業者、行政が一体となって取り組むべき、大きな課題であると考えています。
平成20年度においては、昨年度からの省エネ機器導入支援事業に加え、太陽エネルギー機器の導入支援事業を新たに実施するとともに、中小事業者によるエコアクション21の認証取得を支援いたします。3月中旬には、巣鴨駅前商店街のアーケードに、188枚のソーラーパネルから成る太陽光発電システムが完成します。来年度からは、高輝度LED型の商店街灯への転換を促進する補助事業を実施し、環境に優しく、にぎわいのある商店街づくりをさらに進めてまいります。
また、今後の学校改築や旧平和小の複合施設、新庁舎整備など、新たな施設整備に当たっては、来年度策定する環境配慮ガイドラインに基づき、環境配慮の10%枠を創設し、温暖化対策のモデルとなるような整備を率先して行ってまいります。このほか、巣鴨北中学校と清和小学校において、順次、校庭の芝生化を実施するとともに、池袋副都心のヒートアイランド現象対策としてのクールシティ推進事業や、風とみどりの道構想、さらに、区立施設から集めた生ごみから、発電と熱利用を行う生ごみ発電モデル事業などを実施いたします。
次に、基本政策の第1番目として、子育て・教育について申し上げます。
子育て環境は、住みたいまちとなる重要な要素であり、子育ての社会化という視点に立ち、来年度も、すべての家庭を対象とした支援策を推進してまいります。まず、ここ1、2年増加傾向にある保育所の待機児童への対応策として、これまで休止していた保育ママ制度を再開いたします。今回は、家庭福祉員が自宅を提供する従来の方式に加え、区が設置する施設において、3名程度の家庭福祉員を配置する施設提供型を実施することで、保育ママ制度を着実に展開し、広げたいと考えています。また、子育ての不安や育児のストレス、情報不足など、1人で悩みを抱える子育て世代を支援することも重要な課題であります。来年度の新規事業として、子ども家庭支援センターでは初産の妊婦を対象とするウエルカム赤ちゃん事業を、そして池袋保健所では生後4カ月までの乳児を対象としたこんにちは赤ちゃん事業を展開し、地域社会として、子育てをしっかりとサポートしてまいります。また、児童虐待やいじめの相談機能を強化するため、東部子ども家庭支援センターに専門相談員を配置するとともに、相談内容と窓口を記載した周知用カードを、区立小学校4年生以上の児童・生徒、保護者等に配付いたします。子育てに関する問題の背景には、いわゆる家庭教育力の低下があると考えられます。そこには、個々の家庭だけでは解決できない様々な要因があり、社会全体で家庭教育をバックアップすることが大切であります。大変難しい取組みではありますが、来年度の政策課題として位置付け、具体的な対策の検討を進めてまいります。
学校教育についても、教育ビジョンに基づき、授業内容や学習活動をより豊かなものとしながら、学力向上への取組みを進めてまいります。この1月から、進級を前に学力の課題や不安を抱える中学1・2年生を対象とする土曜補習、としまアカデミーを開講いたしました。初日には、中学1年生41名が参加し、2月下旬からは中学2年生37名が参加を予定するなど、順調にスタートしたところであります。また、平成19年度から小学校全学年で実施している英語活動に加え、平成20年度からは、すべての教科の基礎、考える力の基本となる読解力の向上に向け、全国でも先進的な取組みとなる、独自の国語力指導教材の開発を進めるとともに、算数・数学の習熟度別学習を、中学校全校と一部の小学校において実施いたします。地球温暖化などの環境教育についても、環境月間を設定して重点的に取り組むとともに、自然の大切さを学ぶ体験学習の時間を積極的に導入いたします。さらに区立幼稚園においては、規範意識や道徳性の育成を幼児教育の重点課題として位置付け、あいさつや言葉遣いなどを指導するため、すべての区立幼稚園に専任の非常勤教諭を配置し、家庭や地域と連携した取組みを実施いたします。
次に、福祉についてですが、来年度も、誰もが自分らしく暮らし続けることができる社会を目指し、地域保健福祉計画に基づく事業を着実に推進してまいります。今後10年間、団塊の世代が高齢期を迎え、急速に高齢化が進展する一方、高齢者の8割は元気であり、その多くは経済的に自立しているといわれています。豊島区では、こうした高齢者の健康を維持するため、介護予防事業を積極的に展開してきましたが、平成20年度には、新たに高齢者元気あとおし事業をスタートいたします。これは、高齢者の方々に、福祉施設などの介護支援活動等にご参加いただき、その活動をポイントとして還元することで、介護保険料などに使える仕組みであります。社会参加や地域貢献活動を通して、介護予防の重要性を感じていただきながら、健康増進に取り組んでいただくことを目指してまいります。
障害者の就労支援にも、これまでの実績を踏まえ、さらに力を注いでまいります。昨年11月から巣鴨地蔵通りの縁日の日に設置している、共同販売所「はあとの木」では、オリジナル商品の販売が好調であります。また、今年度中には、オリジナルクッキーを共同開発するとともに、共通のロゴマークを使った包装紙も製作する予定であります。来年度には、工賃アップに向けて、新たな民間授産施設の経営支援事業を実施するとともに、就労支援関係機関のネットワークにおいて、区が橋渡し役としての機能を積極的に発揮しながら、就労機会の拡大に努めてまいります。
ここ数年、介護サービス事業所の増加とともに、悪質な事業者の存在が問題となっています。強化された区の権限を生かし、積極的に指導・監督に当たっていますが、今後はさらに監査体制を強化し、介護サービスの信頼を確保すべく、毅然とした態度で給付適正化に努めてまいります。
次に、安心・安全について申し上げます。
区民や来街者の安心・安全を確保することは、環境とは別の意味で、高密都市の信頼を形づくる基盤であります。特に、1日の乗降客数が263万人にも上る巨大ターミナル池袋では、首都直下地震が発生した場合、昼間の滞留者16万6,000人のうち、約半数の8万5,000人が帰宅困難者となると想定されており、危機管理体制の構築が課題となっています。このため、来年度は鉄道事業者や百貨店、大学、商店街等と協力して、大掛かりなターミナル駅前滞留者対策訓練を実施することで、課題を明確化し、池袋駅周辺全体の災害対策とまちづくりに生かしてまいります。また、今後の大規模マンションの建設に当たっては、中高層集合住宅建築物の建築に関する条例により、防災対策への配慮を義務付ける必要があると考えています。一定階層ごとの備蓄倉庫やエレベーターの閉じ込め防止策など、マンション自身の防災対策はもちろんですが、地域貢献としての防災備蓄倉庫の設置や、町会連合会から強いご要望をいただいている町会への加入促進についても、一定のルール化を図るべく、第2回定例会に向けて、条例改正の準備を進めてまいります。
さらに、大震災が発生した際の都市復興と生活復興の両面にわたるマスタープランとして、地域防災計画と連携して機能を発揮する都市復興マニュアルの策定に着手するとともに、3月に策定する耐震改修促進計画に基づき、平成27年度までに住宅の耐震化率を90%まで高めることを目標として、木造住宅や分譲マンション等の耐震診断を促進してまいります。
次に、基本政策の4つ目として、参加と協働について申し上げます。
公共施設再構築のシンボルとして、平成18年度から9地区でスタートした地域区民ひろばも、まもなく3年目を迎えます。平成20年度には、22地区中18地区で展開することになり、自主的な運営協議会の活動も、今年度末で7地区となります。この間、様々な議論もあり、多方面からご意見もいただきましたが、区民の皆様のご理解をいただきながら進めることで、独自のコミュニティ施策として定着し、これからの成長に確かな手応えを感じています。運営協議会が設立された地区では、手づくりの区民ひろば祭りや交通安全教室、救命救急講習会、さらには地域の歴史をご高齢の方から聞く会など、活発な活動が展開されており、従来の枠にとらわれない、コミュニティが広がりつつあります。昨年実施したアンケートでは、利用者の約30%から、区民ひろばになって良かったという評価をいただく一方、悪くなったとの回答も3%いただいておりますので、今後とも丁寧にご説明し、ご意見を伺いながら、多くの区民から愛される区民ひろばづくりを進めてまいります。また、現在、自治推進委員会において2つの部会を設け、地域の力の向上に向けた参加と協働に関する基本施策について、ご審議をお願いしています。部会では、町会を初め幅広い区民参加を得て、分野別の政策を地域を軸として総合化し、まちづくりについて協議する地域協議会を初め、区民活動に対する効果的な支援策、区民活動センターの活性化などを中心に議論が展開されています。3月には中間報告を取りまとめていただき、2年次目となる来年度には、具体的な制度設計やモデル事業のあり方について、ご提案をいただく予定であります。6大学との包括協定に基づき、昨年11月に開校したとしまコミュニティ大学についても、来年度の本格実施に向け準備を急いでいます。オープニング企画として実施した大学紹介講座には、定員を超える多数の応募をいただき、来年の展開についても期待の声が寄せられています。今後、地域と大学の連携推進協議会において、地域課題の発見から活動へとつながる実践的なプログラムを企画してまいります。
最後に、新庁舎整備について申し上げます。
候補地の一つである旧日出小地区案は、市街地再開発事業による整備を前提としたプランであります。事業を円滑に進めるためには、区域内の地権者全員から事前に承諾をいただくことが重要であり、一昨年の夏から、その合意形成に全力で取り組んでいるところであります。さらに、これと並行して、新庁舎のフロア構成や総合窓口のあり方、災害時の防災センター機能、そして環境都市づくりの象徴となるような環境性能、さらには、現庁舎地の跡地活用と公会堂の基本的方向の検討など、いつ合意形成の方向が明確になっても、即座に次のステップに移れるよう、一つ一つ準備を進めてまいりました。関係権利者との合意が整い次第、これまでの検討内容を踏まえた、2つの候補地における整備プランの比較をお示しし、新庁舎の整備地を絞り込みたいと考えています。いよいよ、新庁舎の方針決定も最終段階を迎えていると申し上げてよいかと思います。
古い道歌に、「いまというときいまはなし」という言葉があります。移り変わる時代、流れゆく時の中で、常に一瞬一瞬が新しく、過ぎた時間は二度と帰らないからこそ、未来に向けてこの瞬間をしっかりと刻まなければなりません。しかし、最初に申し上げた環境危機時計は、私たちの意識と行動の力で、その時間を戻すことができるのであります。100年後の未来から、今に生きる私たちの姿に、真剣な眼差しを向けている子どもたちのために、持続可能な社会への変革をリードし、日本一高密な都市である豊島区から、区民の皆さんを初め、議会の皆さんのご理解とご協力をいただきながら、全力を挙げて環境都市づくりに挑戦していきたいと思います。
本日、ご提案申し上げる案件は、条例27件、予算9件、その他6件、合わせて42件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。