平成20年第3回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成20年第3回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。


 今年の夏は、8月から9月にかけて、北京オリンピック、そしてパラリンピックが開催されました。競技に臨む選手の鼓動、最後まであきらめずに戦い続ける姿、そして全力を出し切った後の涙と笑顔は、私たちの心の中に、そして子どもたちの瞳の奧に、数多くの勇気と感動を届けてくれました。パラリンピックの柔道に出場した区内在住の初瀬勇輔選手は、6月にお会いした際、障害は決して人生の障害ではないと話されていました。今回は惜しくも入賞はなりませんでしたが、これからも広く活躍を続けられ、多くの人々を勇気付けていただきたいと思います。


 また、今年の夏は、大気の不安定な状態が続いたことから、局地的な集中豪雨が立て続けに発生し、東京の8月雨量も平年の2.5倍に達しました。区内でも、7月末から8月初めにかけて、床上・床下浸水の被害が数多く発生し、雑司が谷では下水道工事現場において痛ましい死亡事故が発生しました。今回の災害により亡くなられた方々に、謹んで哀悼の意を表するとともに、浸水被害を受けた皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。


 それでは、初めに平成19年度決算について申し上げます。


 平成19年度一般会計決算額は、歳入が952億4,400万円で、収入率99.0%、歳出は915億2、300万円であり、執行率は95.2%となりました。前年度と比較いたしますと、歳入は32億9,200万円の大幅増で3.6%のプラス、歳出についても20億1,100万円の増で2.2%のプラスであります。歳入では、昨年度の好景気や人口増加が一層顕著に反映される結果となりました。特別区税は定率減税の廃止などの税制改正や、課税人口の増加等による特別区民税の増収等により、対前年度比17億1,900万円の増、6.6%のプラスとなりました。特別区交付金についても、堅調な企業業績による法人住民税の増収を反映するとともに、調整税の配分割合が52%から55%に変更されたことから、対前年度比25億9,800万円の大幅増、8.9%のプラスとなっております。一方、特別区債は、新中央図書館や舞台芸術交流センターの建設が重なったことから、対前年度比20億1,700万円の増となり、その結果、歳入全体を占める起債依存度は、前年度の1.5%から3.6%に拡大いたしました。


 次に、歳出ですが、扶助費を中心とした義務的経費の増加を主な要因として、歳出規模が増加する結果となりました。扶助費は、生活保護費、児童手当などの伸びにより14億4,600万円の増、9.0%のプラスとなっています。


 投資的経費については、ほぼ前年度並みの約154億円となりましたが、旧池袋保健所用地を25億200万円でとしま未来文化財団から買い戻し、また、土地開発公社に3億300万円の繰上償還を行い、長年の懸案であった負の遺産の解消に第一歩を記すことができました。また、人件費については、施設の民営化や職員定数の見直し等により職員給料が減となったものの、退職手当が増加したことによりほぼ横ばいになりました。一般行政経費については、前年度の283億円をわずかに超える286億円となりましたが、この経費には、新中央図書館及び舞台芸術交流センターの維持管理経費や柿落とし公演等の諸経費4億円、さらに熊谷守―美術館を区立美術館として開設した経費が含まれており、文化芸術施策を大きく充実する内容となっています。


 こうしたことから、歳入から歳出を差し引いた形式収支は37億2,100万円となり、実質収支も31億3,600万円の黒字。さらに、実質単年度収支についても12億4,600万円となり、4年連続の黒字となりました。経常収支比率は、経常的な歳入が大幅に伸びる一方、その割合以上に経常的経費が増加したことから、前年度より1.8ポイント上昇して77.7%となり、また、公債費比率も前年度から0.9ポイント上昇して9.7%となりました。そして、平成19年度決算からは、いわゆる財政健全化法に基づく4つの指標について、監査委員の審査に付した上で公表することが義務付けられました。このうち、実質赤字比率と連結実質赤字比率については、一般会計、特別会計の実質収支がいずれも黒字であることから、当該指標の数値は設定されません。また、地方債の元利償還金に一部事務組合等への補助金・負担金や、土地開発公社分割償還金等を加えて算出する実質公債費比率は10.0%であり、国が定める早期健全化団体の基準であります25%とは乖離しておりますが、区長会の調査では、23区中下から2番目という結果であります。また、地方債残高や土地開発公社への支出予定額、退職手当負担見込額など、将来の負担総額から現時点で充当可能な基金等を差し引いて算出する将来負担率についても、早期健全化団体の基準である350%からは大きく下回る8.9%ですが、23区の中では最下位の水準であります。


 このように、平成19年度決算における主要な財政指標は、適正な水準の範囲内にあるものの、景気後退が現実味を帯びつつあることを踏まえれば、区の財政状況は決して楽観できる状況ではありません。依然として530億円にも上る借入金を1日も早く解消するためにも、決意を新たにさらなる財政健全化に取り組みたいと考えております。なお、原油やエネルギーの高騰を背景とする物価上昇が、区民生活や中小事業者に大きな影響を与え続けていることから、政府による8月末の総合経済対策の決定を踏まえ。区としての物価高騰対策として、心身障害者自動車燃料費助成及び公衆浴場経営改善費助成について、今定例会に補正予算を提案しております。今後も冬期に向けまして、引き続き区民生活への影響を見極めつつ、必要な対策を検討してまいります。


 次に、環境都市づくりについて申し上げます。


 新年度に入り、全庁挙げて取り組んだ環境モデル都市への挑戦でしたが、残念ながら最終的な選定に至ることは叶いませんでした。内閣官房によれば、本区の提案内容は高い評価を得て、第一次選考を通過した24団体の中でも上位に位置していたとのことでありました。しかし、環境都市づくり元年として取り組んだ今回の挑戦により、新たな環境政策に大きな弾みをつけることができたことは確かであります。今回の提案内容については、池袋副都心・グランドビジョンや、現在策定を進めている環境基本計画にしっかりと引き継ぎ、実現に向けて積極的に取り組んでまいります。


 今後の環境政策の指針となる環境基本計画につきましては、6月に東京工業大学准教授である蟹江憲史氏を委員長とする環境審議会を設置し、CO2の大幅な削減目標を前提として審議をお願いいたしました。CO2の削減は、家庭、業務、交通など広範囲に影響するものであり、その審議状況については、逐次わかりやすい情報提供に努めてまいります。また、省エネ法や東京都環境確保条例の改正により、業務部門への対象が強化され、事業所としての豊島区にも省エネ対策の取組みや温室効果ガス排出量等の報告義務が課せられるなど、厳しい視線が注がれることとなります。今後、区民、事業者の協力の下に、高いCO2削減目標の達成に向けて施策展開を本格化させていくためにも、区としての率先的な環境配慮行動の具体化を急ぐ必要があります。環境配慮型の公共施設への転換を促進すべく、現在策定を進めているカーボンマイナス施設づくりガイドラインもその一環であります。ガイドラインの策定は、今年度末を予定していますが、現在、改築に着手している施設についても、環境配慮枠10%を活用しつつ、可能な限りCO2排出量を抑えた施設として整備するよう努めてまいります。


 東京の年平均気温は過去100年間で3度も上昇し、他都市よりも速いスピードでヒートアイランド現象が進行しています。真夏日や熱帯夜の増加、これに伴うエネルギー消費の増大や健康への影響、さらに局地的集中豪雨との関係も指摘されるなど、ヒートアイランド対策は大都市共通の課題となっています。地域からの取組みとして、今年度は雑司ヶ谷霊園など大規模緑地の冷涼な空気を活用する、風とみどりの道構想に関するシミュレーション実験を実施するとともに、これから来年度に向け、区民を巻き込んだ新たな地域緑化のムーブメントを興していきたいと考えています。


 先週、日本を代表する植物生態学者である宮脇昭氏をお招きし、都市における緑の重要性についてお話を伺いました。宮脇氏は、今から30年以上前に、一早く地球環境問題に危機感を持たれ、命を守る森の大切さを唱え、宮脇方式と呼ばれる土地本来の森林回復・再生法を確立された方であります。世界中に3,000万本の樹を植えた男として、80歳のご高齢にもかかわらず、現在でも世界を舞台に現場で活躍を続けている、まさに緑の伝道師、エネルギッシュな信念の人であります。宮脇氏は誰もが不可能と思われている場所での森林回復の実例を数多く紹介しながら、本当の森は地震や豪雨、大火にも耐え、郷土に暮らす人々の命と心を守る存在であること、また、木を植えることは、命の尊さ、厳しさ、そしてはかなさを子どもたちに伝えることであると力説され、緑の少ない豊島区だからこそ、21世紀のアーバンフォレストを実現し、その成果を世界に発信しようと呼びかけられました。


 お話をお聞きした翌日、防災の関係で東京消防庁のヘリコプターに乗り、上空から豊島区の街を視察する機会がありました。コンクリートが広がる街の姿を見つめながら、改めて宮脇氏の言葉が思い出され、都市の安全と人の成長を支える緑の大切さを再認識すると同時に、5月に取り組んだ環境モデル都市の提案における都市緑化の弱さを痛感したところであります。大規模な緑地や公園が少なく、緑被率も十分ではない豊島区ですが、学校等の公共施設を初め、改めて街を見渡せば、緑を植えるスペースや方策は数多くあると思います。改めて都市緑化を環境政策の柱として明確に位置付け、区民や事業者の幅広い協力を得ながら、これまでとは一線を画すような緑倍増に向けたプロジェクトを区民運動として盛り上げ、展開していきたいと思います。こうした新たな緑化政策に大きな弾みをつけるため、来年度には宮脇氏のご協力をいただきながら、子どもたちに命の尊さを伝える植樹祭や、緑と命の大切さを再認識する一大区民イベントの実施を検討してまいります。そもそも、かつての染井が園芸の地として名を馳せた江戸時代、緑はこの地の文化でもありました。我が国を代表する桜のブランドである染井吉野発祥の地であることは、自信を持って全国に発信すべき地域ブランドであります。


 そこで、今年度、興銀社宅跡地で整備を進めている染井よしの桜の里公園の一角に、染井吉野の苗床をつくりたいと考えています。隣接する西福寺や駒込小学校、丹羽邸跡地の門と蔵のある広場一帯を桜の回廊で結ぶとともに、西福寺の木から接木をした苗を大切に育て、全国に向けて配布することで、染井吉野のブランドを、地域のまちづくりや観光、産業振興に生かしてまいります。


 次に、池袋副都心・グランドビジョンの推進について申し上げます。


 9月に入り、副都心線の開業から3カ月が経過いたしました。


 鉄道事業者によりますと、池袋駅のJR乗車人員は、1日当たり6万人から7万人の減少となっており、このことは副都心線開通により、駅で乗り換えることなく池袋を通過してしまう旅客数が増えたことを意味しています。さらに10月には定期券の更新時期を迎えるため、その影響も注視していく必要があります。また、民間シンクタンクの調査によれば、和光市以遠の東武東上線沿線では、約4割弱が新宿へ出掛ける際に副都心線を利用しており、これまで池袋を訪れていた客層の約3割が、これまでよりも頻繁に新宿へ出かけるようになると回答しています。一方、西武百貨店、東武百貨店の来店者数については、前年同期との比較で同水準であり、むしろ西早稲田や東新宿周辺からの新規来店者が増加する傾向も見られるとのことであります。副都心線開業前には、池袋・新宿・渋谷の百貨店競争など、熾烈な都市間競争を予感される報道が続きましたが、現時点では、当初危惧されたような影響は見られていません。しかし、池袋への来街者の動きは確実に変化の兆しを見せ始めており、今後とも強く危機感を持ち続け、池袋副都心・グランドビジョンに位置付けたプロジェクトを着実に推進し、都市再生を急ぐ必要があると考えています。


 その第一弾として、2年間にわたり地域の皆さんとともに検討を続けてきた、池袋西口駅前ひろばの大改修に着手いたします。今回の整備では、タクシープールを東京芸術劇場側へ移設するほか、路線バスの運行ルートの変更を行うことで、駅前ひろばの通過交通を抑制するとともに、これまで以上に緑をふんだんに配慮し、バリアフリーにも配慮した歩行者空間を大きく拡充いたします。駅前交番についても、拡幅した歩道内に移設することで、安心・安全を守る機能が高まります。年内には工事に着手し、品格ある西口駅前の顔として、1日も早く生まれ変わった姿をお見せできるよう整備を進めてまいります。そして、環境と観光のシンボルであるLRTについても、これまでの調査研究を踏まえ、構想から計画へと着実に進めてまいります。


 先月26日ですが、池袋副都心グランドビジョン懇談会のメンバーや、区議会議員有志の方々とともに、総勢46名で池袋の路線電車と街づくりの会主催による、岡山・兵庫のLRT視察に参加いたしました。岡山駅周辺には2.1キロと3.1キロの路面電車があり、一部の車両にMOMOというLRT車両が導入されております。岡山市では路面電車の運行会社から直接経営面や運行上の課題などをお聞きするとともに、高谷市長ともお会いし、都市づくりの鍵となるLRTの効果や必要性についてのご意見を交わすことができました。そして、兵庫の川崎重工業播磨工場では、開発中の電池駆動路面電車SWIMOに試乗し、その実用化に向けた技術的課題などを調査してまいりました。実際に運行されているLRTを視察し、架線の要らない新型の車両に触れることで、参加された地域の方々や商業事業者の皆さんとともに、LRT整備に向け、歩調を合わせ、新たなスタートラインに立つことができたものと考えております。この先、LRTの実現に至るまでには数多くの困難な課題があると思いますが、その壁を打ち破る力となるのが副都心再生に向けた結集した地域の力であります。早急に池袋副都心の総合的な交通戦略と、LRT整備計画の策定に着手し、さらに多くの方々とLRTを核とした再生戦略を共有することで、導入に向けた機運を大きく盛り上げてまいります。


 また、コミュニティバスにつきましても、これまでの調査・検討を踏まえ、西部地域から池袋副都心にかけての地域を想定し手続きを進めることといたしました。コミュニティバスを高齢社会における動く公共施設として位置付けるとともに、観光や地域活性化、そしてLRTとの連携も視野に入れながら、平成22年度の導入を目指していきたいと考えています。年内には、バス事業者や交通管理者、地域関係者等の参画を得た、地域公共交通会議を設置し、運行経路や事業主体、バス車両、そして補助のあり方などについて、具体的な検討を進めてまいります。


 新庁舎の整備につきましては、5月にお示しをいたしました整備方針案を基に、説明会、パブリックコメントを実施し、この度、新庁舎整備方針を策定いたしました。今後は、この整備方針に沿って、区民の立場に立った便利な窓口機能や、効率的なレイアウトのあり方等を検討し、旧日出小地区案に基づく具体的な計画づくりを進めてまいります。また、市街地再開発事業に関する都市計画についても、今年11月頃から手続きに入りたいと考えております。新庁舎の整備は、施設整備の面だけではなく、あらゆる事務事業やサービス体制を見直し、職員の意識改革を図る絶好の機会でもあります。新庁舎の整備を契機として、さらに満足度の高いサービスと信頼度の高い区政を実現すべく、全力で取り組んでまいります。


 現在、東京都は2016年を目指して、オリンピックの招致運動を展開しています。招致運動は世界4つの立候補都市の一つとして選定された段階ですが、オリンピックには、多くの人々に希望をもたらし、都市の姿を大きく変える力があります。また、世界都市東京全体の都市づくりを考えるとき、個性ある池袋副都心の再生は、私たちの願いであると同時に、東京の繁栄を担う一員としての責務でもあります。そこで、東京初のLRTを初め、池袋西口駅前ひろば整備と西口の再開発計画、池袋駅東西を結ぶデッキ構想、環状5の1号線地下通過道路、造幣局周辺の東池袋まちづくり、そして現庁舎の跡地活用についても2016年の東京オリンピック招致実現を念頭に置き、今後8年の中で確実にプロジェクトを実現させることを目標として、池袋副都心の再生に取り組んでまいります。


 次に、文化政策について申し上げます。


 今年は池袋演劇祭が20周年を迎えます。地域に根差したユニークな演劇祭として、多くの人々に親しまれている池袋演劇祭の歩みは、まさに舞台芸術を愛する、演劇の街・池袋の歴史にほかなりません。豊島区舞台芸術振興会を初め、数多くの演劇関係者のご尽力に対しまして、心から敬意を表したいと思います。


 そして、いよいよ今晩から、あうるすぽっと開館1周年と併せ、ジェームズ三木氏の作・演出による池袋演劇祭20周年記念作品、「池袋 わが町」の公演がスタートいたします。豊島区出身の俳優である寺田農氏を進行役として、人生の本当の意味は、平凡な日常の中に隠されているという主題を、笑いと涙でほのぼのと描いた心温まる作品に仕上がっております。「池袋 わが町」は、早くから評判を呼び、既に5日間6公演の客席はすべて満席とのことであります。今後、豊島区から生まれたオリジナル作品を、さらに多くの方々にご覧いただけるよう、追加公演や友好都市等における公演についても実現したいと考えています。


 さらに今年度は、これまで東京国際芸術祭を展開してきたNPO法人アートネットワーク・ジャパンとともに、豊島区、としま未来文化財団が新たに実行委員会を組織し、東京都、東京都歴史文化財団と共催する形で、総事業規模3億円にも及ぶフェスティバルトーキョーを、来年2月から3月に開催いたします。そのメインステージは豊島区であります。ドイツ、イタリア、フランスなど世界からの作品を初め、蜷川幸雄氏、平田オリザ氏など、現代日本を代表する作品まで、約20演目の上演が予定されており、多彩なプログラムが約1カ月間にわたり華やかに展開されます。


 7月には新中央図書館も1周年を迎え、来館者が100万人に達しました。現在でも毎日3,000人を超える来館者があり、新たなにぎわいを生む文化発信の拠点としてフル稼働しています。今月27日には、大規模改修工事のため、約1年間にわたって休館しておりました目白図書館がリニューアルオープンいたしますが、こうした地域図書館や区内6大学の図書館との連携を深めることで、区民に愛される情報ステーションとして、これからも機能の充実に努めてまいります。そして、11月12日、13日には、あうるすぽっとと自由学園明日館を会場として、「時代を変える 図書館サミット」を開催いたします。サミットでは、公立図書館が直面する数々の課題をテーマとして、読書・活字離れに一石を投じ、全国の図書館関係者を元気付けるようなメッセージを発信したいと考えております。当日は、国立国会図書館長の長尾真氏の基調講演を初め、区の文化政策に大きなご支援をいただいております文字・活字文化推進機構会長で、資生堂名誉会長でもあります福原義春氏、前国立西洋美術館館長で印刷博物館館長でもある樺山紘一氏、そして作家で日本ペンクラブ会長の阿刀田高氏など、我が国を代表する錚々たる知識人の皆さんにお集まりいただきまして、迫力ある議論を展開していただく予定であります。議員の皆様におかれましても、ぜひ、ご参加いただきたくお願い申し上げます。


 次に、地域福祉の再構築について申し上げます。


 少子・高齢化の進展は地域社会の支援ニーズを拡大・多様化させ、行政の力だけできめ細かなサービスを提供し続けることを困難にしています。地域住民の相互支援を広げつつ、いかにして新たな支え合いの仕組みを再構築していくことができるか、まさに自治体の力量が問われる時代であります。現在、日本社会事業大学学長大橋謙策氏に委員長をお願いし、第4次となる地域保健福祉計画策定に向けた議論をお願いしておりますが、地域ケアや介護、障害、保健・医療に至るまで、今後の福祉施策の展開の基盤として、福祉コミュニティの再生が大きな課題として取り上げられております。単身世帯の割合が高く、マンション居住者が多い本区では、かつてのようなコミュニティを取り戻すことは困難であるかもしれません。しかし、区民の意識調査からは、何かあったときには助け合う関係が求められており、地域の豊かなコミュニティこそが安心・安全を支える基盤であることに、多くの区民が気付いているのだと思います。こうした、新たな地域ケアの仕組みづくりの1つとして、委員会ではコミュニティ・ソーシャルワーカーの設置が議論されています。これは、専門のワーカーが現場に出向き、関係機関、事業者やボランティア等の相互連携を図りつつ、困難なケースを総合的に支援ずるとともに、福祉活動に関わるネットワークづくりのコーディネータ一としても期待されるものであります。


 さきの定例会におきまして、私は福祉と文化の連携について申し上げましたが、地域福祉の再構築を図るためには、行政の縦割りを廃し、生活者の視点から、防災、教育、子育て、そしてコミュニティに至るまで、あらゆる政策を横につなぎ、融合させる必要があると考えております。大変難しい課題でありますけれども、大橋委員長のもとに、新たな地域の支え合いの再構築のあり方について徹底したご議論をいただき、今年度中には、委員会からの答申を踏まえ、新たな地域保健福祉計画を策定したいと考えています。


 また、近年、自閉症やアスベルガー症候群など。発達障害児への支援が社会的課題としてクローズアップされておりますが、この度、発達障害に関する厚生労働省のモデル事業として、豊島区が先駆的支援事業に関する地区指定を受け、補正予算に関連経費を提案しているところであります。周囲から理解されない、適切な支援が受けられないなど、集団生活の適用に困難を抱える発達障害については、本人、家族ともに、地域での安心した生活が続けられるよう、早期発見、早期療育に取り組み、就学前の段階からの支援を強化するなど、積極的に取り組まなければならない課題であります。このモデル地区の指定を受けることにより、これまで、西部子ども家庭支援センターで行ってきた乳幼児の発達支援プログラムをさらに充実するとともに、その成果を踏まえ、特別支援教育を担う教育委員会、母子保健活動を行っている保健所などとの連携を図ることで支援体制のさらなる強化に努めてまいります。


 最後に、学校教育の充実と推進について申し上げます。


 多くの子どもたちに大きな夢と感動を届けてくれたオリンピックでしたが、今年の夏は、豊島の子どもたちの活躍が大きく輝いた夏でもありました。駒込中学校の3年生、川邉晃さんが、8月に栃木県で開催された第32回関東中学校水泳大会において、女子100メートル自由型で1分0秒10の大会新記録で優勝し、同じく200メートル自由型でも優勝いたしました。吹奏楽部の活躍も見事でした。第48回東京都中学校吹奏楽コンクールにおいて、駒込中学校、池袋中学校、そして千登世橋中学校の3校が金賞に輝き、そのほか銀賁2校、銅賞2校という成績を残しました。池袋中学校は、10月に行われる東日本吹奏楽大会への出場も決定しています。豊島の吹奏楽は、以前より全国大会の常連として、全国にその名を轟かせていた時期もあり、生徒たちの努力が伝統復活を成し遂げるかもしれません。今後とも力のある外部指導員を確保したり、専門家による指導を受けたりするなど、部活動の活性化を進め、文化・芸術・スポーツ等において、一層の活躍を目指す児童・生徒の育成に努めてまいります。


 学力向上についても、大きな成果が見られております。文部科学省は、今年で2回目となる全国一斉の学力調査の結果を8月下旬に発表しましたが、豊島区では、小学校の国語・算数、中学校の国語・数学のすべての項目において、全国と東京都の平均をともに超える結果となりました。これまで各学校では児童・生徒一人一人の学習状況を分析し、指導法の改善や補習などの工夫を進めるとともに、この夏休みにおいても、すべての学校で補習教室やサマースクール等を実施し、基礎的学力と学ぶ意欲の向上、そして学習習慣の定着に取り組んでまいりました。さらに、今年度は、新たな学力向上推進事業として、すべての中学校に少人数指導教員を配置するとともに、小学校でも3校をモデル校として指定し、算数・数学における少人数指導に力を入れております。今回の結果は、全国的に学力向上に向けた取組みが進められる中で、区の教育委員会と学校現場が一体となって、学習指導に取り組んだ結果であると受けとめています。


 また、今年3月には、新しい学習指導要領が告示されました。生きる力を育むという理念を継承し、知識と技能、思考力、判断力、表現力の育成をバランス良く伸ばしていくために、各教科の授業時間数を増やし、教育内容を改善する内容であります。教育委員会では、新たな学習指導要領の重点課題である、言語力の育成に一早く対応し、全国に先駆けて、現在豊島区オリジナルの国語力向上キットの開発にも取り組んでいるところであります。今後とも、豊島の子どもたちが、教育としまの伝統を引き継ぎ、確かな学力と豊かな人間性、そして体力を身に付け、夢に向かって未来を切り拓く人材として成長できるよう、学校教育の充実に努めてまいります。


 今回の「池袋わが町」の制作に当たり、ジェームズ三木氏は、「人はみな歴史を走る中継ランナーである。先祖が残した生命、文化、知識のバトンを、私たちは子孫に引き継がなければならない」とのメッセージを込めたと話されていました。このことは、私たちが取り組む都市づくりにも通じるところ大であります。先人から受け継ぎ、今暮らしているこの街の姿こそ、次世代へ引き継ぐバトンの姿なのだと思います。環境を初め、副都心再生、文化芸術、地域福祉、そして将来を担うランナーを育てる学校教育に至るまで、今私たちの手に託されている大事なバトンを、より豊かで価値ある姿へと高めていくことは、中継ランナーとしての責務であります。今後とも、明確なビジョンの下に、地域が持てる力を充分引き出し、文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向け、強い信念を持って挑戦を続けてまいりますので、議員各位のご協力を心からお願い申し上げます。


 本日提案する案件は、条例5件、決算認定5件、補正予算3件、その他2件、合わせて15件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。