本日、ここに、平成21年第3回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。
さて、去る7月12日に東京都議会議員選挙が実施されました。都議会では野党の民主党が、自由民主党から都議会第1党の座を奪うという結果となったのであります。さらに、8月30日には衆議院選挙が行われましたが、こちらも事前の報道等による予想を上回る与野党の逆転が生じ、まさに時代が動く瞬間を目の当たりにしたのであります。
これからは様々な分野で施策の修正が行われることもあろうかと思いますが、国や都の動向を視野に入れ迅速な情報収集を行い、いかなる変更にも適切に対応してまいりたいと考えております。また、今後の区政運営に当たりましては、一層区民の皆様の声に真摯に耳を傾げ、これまで以上のスピード感を持って対応してまいりますので、ご協力を賜りますようお願いいたします。
それでは、初めに平成20年度決算について申し上げます。
平成20年度の一般会計決算額は、歳入が965億100万円で収入率93.4%、歳出は918億1,500万円であり、執行率は88.9%となりました。前年度と比較いたしますと、歳入は12億5,700万円の大幅増で1.3%のプラス、歳出につきましても、2億9,200万円の増であり、0.3%のプラスであります。
歳入の収入率の93.4%、歳出執行率の88.9%は、いずれも昭和50年度以降の決算では最も低い結果となっていますが、これは定額給付金給付事業や子育て応援特別手当支給事業などの繰越明許費で、約40億円の未収入特定財源等が生じたことによるものでありまして、これらの影響を除いた場合には収入率は98.2%、執行率は95.1%と、平年並みの数値となるものであります。
歳入の12億5,700万円の大幅増は、景気の回復基調が昨年度上半期までは持続していたことや、人口増加が反映されたためでございます。特別区税は課税人口の増加等による特別区民税の増収等により、対前年度比8億8,000万円の増、3.2%のプラスとなりました。一方、特別区交付金については、対前年度比2億400万円、0.6%のマイナスとなりました。特別区債は新中央図書館や舞台芸術交流センターの建設が終了したことから、対前年度比29億5,300万円、87.2%の減となり、その結果、歳入全体に占める起債依存度は前年度の3.6%から0.4%に縮小いたしました。また、財政調整基金から37億2,400万円の繰り入れを行いましたが、これは土地開発公社分割償還金の繰上償還等に充てたものでありまして、平成20年度の予算執行に当たって、特別な財源対策として講じたものではございません。これによりまして、平成18年度以降、決算においても特別な財源対策を講じずに執行することができたことになります。
次に、歳出でございますが、扶助費を中心とした義務的経費の増加を主な要因として歳出規模が増加する結果となりました。扶助費は生活保護、子どもの医療費助成などの伸びにより10億2,300万円の増、5.9%のプラスとなっています。投資的経費については、新中央図書館建設事業の終了などにより、対前年度比17億9,800万円の減となりました。また、土地開発公社に42億9,500万円の繰上償還を行い、18年度から引き続き3年にわたって負の遺産の軽減を図りました。また、人件費については、職員定数の見直し等の効果で職員給料が減となったことなどにより。対前年度比6億3,200万円、2.7%の減となりました。
一般行政経費については、前年度比約10億円の増となりましたが、これは財政調整基金への積み立て7億6,500万円、義務教育施設整備基金への積み立て12億1,900万円、公共施設再構築基金への積み立て2億7,100万円など、財政運営の健全化を大きく前進させるものとなっております。この結果、歳入から歳出を差し引いた形式収支は46億8,600万円となり、実質収支も29億8,000万円の黒字となりました。経常収支比率は、財政調整交付金を初め各種交付金などが景気の悪化により減少する一方で、扶助費などの義務的経費が増加したために、前年度より1.9ポイント上昇して79.6%となり、また、公債費比率も元金一括償還により償還元金が増加したことから前年度から0.2ポイント上昇して9.9%となりました。
地方債の元利償還金に一部事務組合等への補助金、負担金や土地開発公社の分割償還金等を加えて算出する実質公債費比率は、前年度より1.6ポイント減少して8.4%となりました。これは国が定める早期健全化団体の基準である25%とは大きく離れてはいるものの、23区の平均と考えられる3%台からは大きく水をあけられております。
このように、平成20年度の決算における主要な財政指標は改善されつつあるとは言えるものの、23区との比較の上ではさらなる改善が必要であります。加えて景気後退による影響が深刻さを増していることを踏まえれば、区の財政状況は決して楽観できる状況ではございません。
未来戦略推進プラン2010では、これまでの行財政改革を検証しながら今後の方向性をお示ししたいと考えておりますが、土地開発公社借入金を含め、依然として478億円にも上る借入金を1日も早く解消するためにも、改めて区長に就任した当時の、破綻寸前まで追い込まれていた財政状況を思い起こしながら、今後、さらなる行財政改革の断行に向けて不退転の決意で臨んでまいります。
次に、新型インフルエンザ対策について申し上げます。
新型インフルエンザは、強い感染力から、通常の年では沈静化する夏季であっても感染拡大が継続しております。特に夏休みが終盤を迎える頃から各地で重症例や死亡例の報告が相次いでおります。豊島区では、8月の第1週は定点1カ所当たりの患者数が1.14となり、流行開始の目安とされている1を超えました。現状では9月下旬から10月初旬に流行のピークを迎えることが想定されておりまして、今後区内では新型インフルエンザ患者数が急速に増加することが懸念されます。
区では、私を本部長とする豊島区新型インフルエンザ対策本部において、職員に感染者が多数発生した場合であっても、区民生活への影響を最小限に抑え、業務を継続できるように基本的な考え方を整理した、新型インフルエンザ業務継続計画を策定したところであります。現在の状況では、学校で集団感染が発生・拡大すると地域社会での感染拡大に拍車をかける危険性が大きく、医療現場に混乱か生じることも予想されます。そこで、教育委員会と各学校では、体制整備を行うとともに感染拡大を防止するために臨時休業の措置を行っております。感染拡大を防ぎ区民の皆様の健康を守るため、今後も適切な措置をとってまいりますので、区民の皆様におかれましては、なお一層のご理解とご協力をくださいますよう、よろしくお願いいたします。
秩父市との協定について申し上げます。
来る11月14日には、姉妹都市である秩父市との間で新たな友好協定を締結したいと考えております。姉妹都市となった昭和58年以降。数多くの交流を積み重ねることで、両都市の絆は深く確かなものとなりましたが、四半世紀が経過して豊島区の都市間交流も、防災を含め20都市を超える中、新たな展開の必要性を考えていたところであります。7月には、今年5月に新たに秩父市長に就任された久喜邦康市長とお会いをし、文化、産業、環境、そして教育を中心として、これからの交流の方向性について話し合い、確認をいたしました。池袋のシンボル的存在である梟と秩父神社の北辰の梟にちなみ、協定の名称を仮称「ふくろう協定」と銘打ち、両都市を結ぶ西武鉄道・後藤高志社長のご協力もいただきながら、現在、事務レベルでの準備を進めているところであります。11月には観光・産業を初め、豊島区の関係団体の皆様とともに秩父市を訪問し。新たな友好協定を締結したいと考えておりますので、議員各位からもご協力を賜りますようお願い申し上げます。
次に、文化政策について申し上げます。
先週、私は札幌市で開催された創造都市交流シンポジウムに参加してまいりました。このシンポジウムは、今年1月、文化芸術創造都市部門において文化庁長官表彰を受賞した札幌市、兵庫県篠山市、山口県萩市、そして豊島区の4都市が改めて一堂に会し、それぞれの都市の取り組みを踏まえて、文化芸術が持つ創造性とこれからの都市政策のあり方について話し合うことを目的として、札幌市の上田文雄市長の提案により実現をしたものでございます。
豊島区からは、文化政策とは個性ある地域再生への取り組みであり、文化が人々を元気にし、元気な人々が街をつくり出していくことで、豊かなコミュニティの再生にも結びつけられること、文化と福祉など、文化を中心とした政策融合に取り組んでいること、そして、今回の受賞の根底には、区民、企業、大学、NPOなどとの連携による多彩な文化活動の総合力があることなどを報告をしてまいりました。そして、その実例の1つとして、にしすがも創造舎の運営をお願いしております、アート・ネットワーク・ジャパン代表の蓮池奈緒子氏にもシンポジウムにご参加いただき、豊島区の文化政策におけるアートNPOの役割や行政との協働のあり方について、具体的な経験談をお話しいただきました。シンポジウムでは様々な都市の個性あふれる実践活動が紹介されましたが、私がその中から強い共感を覚えたのは、それぞれの都市が、文化芸術やアートの力を劇場や美術館に限ることなく、地域固有の社会的課題を解決するために活用しようとしているということでございます。文化政策を総合的な都市政策として位置付け、教育、福祉、医療、さらには産業、環境、都市再生など、幅広く政策融合を図りながら、地域の課題解決に活用するとともに、区民、大学、企業、NPO等との大胆な連携・協働を広げつつ、新たな価値と活力を生み出し続ける姿こそ豊島区が目指す文化創造都市づくりであると、改めて確信を深めることができました。今回の札幌市のシンポジウムは、こうした文化政策や創造都市の方向性を広く社会にアピールすることが大切な目的であったと思います。豊島区においても、1人でも多くの区民の皆様とともに、こうした文化創造都市づくりの意義と必要性を伝え、共有していくための努力が重要であります。
そこで平成20年度の文化庁長官表彰を記念して、今年12月には東京芸術劇場大ホールを会場として、としま未来文化財団との共同により、区民参加型の一大記念イベント「いっぽ、イッポみ・ら・い・ヘフェスティバルコンサート文化庁長官表彰受賞記念」を開催いたします。「としま 未来へ」を作曲してくださったさだまさしさんはどうしてもご都合がつきませんでしたが、谷村新司さんが応援に駆けつけてくださるとのことであります。このイベントを、平成17年度に開催した文化創造都市宣言記念式典に続く、文化政策の大きな節目として位置付け、区内各地域で活動する区民の皆様にも幅広くご参加をいただき、豊島区の特性である多彩な文化活動の総合力を、さらに高めていきたいと考えております。
次に、教育について申し上げます。
平成21年度から新しい学習指導要領への移行が始まりました。8月下旬には3回目の全国学力・学習状況調査の結果が発表されました。豊島区の成績は、小学校、中学校ともに、全国と東京都の平均を上回り、学力向上の成果を示す結果となっています。特に小学校では、国語と算数において知識を活用する力が全国平均を高く上回り、都道府県別正答率で最も高い秋田県に匹敵するような数値を示しています。また、中学校では数学の知識を活用する力が高い伸びを見せ、着実に力をつけていることがわかりました。区立小中学校では学力調査の結果を分析し、各学校の授業改善推進プランを作成するとともに、全教職員が一丸となって、放課後や休業中の補習授業、読書活動の推進、校内研究による授業改善等について取り組んでおります。今年も7月、8月には教育長自らが全小中学校の授業改善推進プランのヒアリングを行い、各校の学力向上の取り組みを指導いたしました。今後も一人一人の学習状況に応じたきめ細かな指導を進めるとともに、知・徳・体の調和のとれた教育の充実を図ってまいります。また、区独自に開発した国語力向上キットや、今年度中に全校に配付するデジタルテレビや電子黒板などの教育機器を積極的に活用するなど、あらゆる機会を捉えて子どもたちの確かな学力の向上を推進してまいります。
さて、9月12日には、区立富士見台小学校が環境教育優良校として、東京都教育委員会から表彰されました。同校は「学校の森」植樹祭での児童一人一人による植樹や、「めざせ!環境にやさしい暮らし大作戦」を総合的な学習の時間の指導計画に位置付けたことなどが評価されたものです。このように、地域と連携しながら、自ら考え実践できる児童の育成に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、健康対策について申し上げます。
豊島区では、本年5月に豊島区健康プランを策定いたしました。生涯を通じた健康づくりが大きな課題となる中、個人の力と合わせて健康づくりを行政が支援し、健康づくりの拠点、地域医療の拠点とするため、健康センターの設立に向け検討を重ねているところであります。健康寿命を延伸させるためには、生活習慣病を予防するとともに、成人病を早期に発見し対処することが必要であります。我が国では、国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで命を落としております。65歳以上では2人に1人ががんで亡くなっております。がんは昭和56年以来、日本人の死亡原因の第1位となっており、今や日本は世界有数のがん大国と言えます。豊島区におきましても、平成20年度のがんによる死亡者は668人であり、死亡総数の31%になっております。健康のありがたさは失って初めてわかるものとよく言われますが、これからの活躍が期待される方が、がんによって闘病生活を強いられるなど活動を断たれてしまうことは、本人や家族のみならず社会全体にとっても大きな損失であります。がんは決して不治の病ではありません。早期発見、早期治療で完治の可能性も高くなると言われております。本区では今年度の新規事業である「健康チャレンジ!」の一環として、10月10日土曜日、サンシャインシティ噴水広場において、乳がん予防に関する普及啓発を目的としたピンクリボンキャンペーン、「山田邦子さんトーク&スター混声合唱団コンサート」を企画しておりましたが、この事業に着目した厚生労働省から強い要請があり、今回キャンペーンイベントを共同実施する運びとなりました。本区主催のイベントに先立ち、厚生労働省主催で第1回がん検診50%推進全国大会が開催されます。ここでは厚生労働大臣メッセージを初め、キャッチフレーズ、ポスター等の最優秀賞の表彰、公開シンポジウムが行われます。当日はがん検診車によります検診擬似体験、池袋保健所による乳がん検診受診啓発、自己検査紹介ブース、豊島区医師会によるがん相談コーナーなどのブースも出展されます。本区といたしましては、これまでも豊島区医師会と連携しながらがん対策に取り組んでまいりましたが、今後はがん対策を区政の最重要課題と位置付け、全力を傾注してまいる考えであります。去る9月9日には、都立駒込病院前副院長、東京都多摩がん検診センター前所長の岡本篤武先生をお招きいたしまして、管理職研修、がん基本講演会を開催し、議員各位におかれましても、お忙しい中ご出席を賜りました。まずは職員自らが健康に関する知識と理解を深め意識を高めていくことが大切であると考えておりまして、こうした研修をシリーズで開催してまいります。また、がん対策を強力に推進するため、今年度中に私を本部長とするがん対策推進本部を立ち上げるとともに、来年度にはがん予防計画の策定など、本格的な対策に取り組んでまいりたいと思います。
最後に、都市再生と価値あるまちづくりについて申し上げます。
私は、区長就任以来、地域の知恵と力を結集させながら、明確な将来ビジョンを描きつつ、地域の顔が見えるまちづくりを推進してまいりました。先日、ある住宅情報のサイトによる、首都圏で住みたい街のランキングでは、池袋は吉祥寺に続いて第2位に位置付けられていました。そこでは池袋を、複数の路線が走りあらゆる施設が立ち並ぶ繁華街だが、少し歩くとその印象がガラリと変わり、高級感漂う住宅街、あるいはお寺の多い下町の風情も感じられる。都心の便利さと静かな住宅街の暮らしやすさの双方を兼ね備えた魅力的なエリアであるとして紹介されております。まさに私が思い描く池袋像でありまして、そのイメージが外部から認知され始めたのでございます。豊島区のまちづくりは、ようやく弾み車が回り始めたところであります。手を緩めることなく、さらに勢いをつけてまいりたいと考えております。池袋が持つ魅力や長所を最大限に生かしながら、地域の顔が見えるまちづくりを推進していくためには、地域の核となる鉄道駅の存在は重要でございます。東長崎駅に続き椎名町駅、巣鴨駅、大塚駅での整備が進んでいますが、いよいよ10月17日には大塚駅南北自由通路が開通いたします。大塚駅では、本年6月には自転車放置禁止区域を指定し、放置自転車の撤去を開始したことにより、長年の懸案であった放置自転車問題が大きく改善いたしました。そして、この南北自由通路の全面開通、さらに大塚駅南口地下駐輪場の整備や南口駅前広場の再整備など様々な動きがある中で、大塚駅周辺のさらなる魅力的なまちづくりが進むことと考えております。
豊島区の人口は4年連続で増え続けて、人口減少が底を打った平成9年と比較いたしますと約1万4,000人の増加となっております。マンション建設状況からすると、今後も穏やかな増加が続くものと考えております。日本二の高密都市でありながら、住みたい街として選ばれ続ける街の創造に向けて、今後とも邁進してまいります。
「現状維持では後退するばかりである」とウォルト・ディズニーは言っております。同じく彼が生涯をかけて建設し、彼の名前を冠した有名な遊園地については、彼は「いつまでも、未完成である」と語っております。このことは、私たちが取り組む都市づくりにも大いに通じることがございます。これで完成したと新たな目標を失い現状維持を始めた途端、都市づくりは衰退し、街は荒廃に向かうものだと思います。環境を初め、副都心再生、文化、芸術、地域福祉、そして次代を担う子どもたちを育てる学校教育に至るまで、私たちが手がけている事業には完成はあり得ません。現状をよしとして充足することをせずに、さらによりよいものを志向し、そのための努力と研鑚を欠かさないことが重要であります。その姿勢を貫き続けることで、初めて区民の皆様から付託される使命を果たすととができると考えております。
今後とも、文化と品格を誇れる価値あるまちの実現に向け、強い信念を持って挑戦を続けてまいりますので、議員各位におかれましては今まで以上のご協力を、心からお願い申し上げる次第でございます。
本日ご提案する案件は、条例5件、決算認定6件、補正予算5件、その他6件、合わせて22件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして副区長からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。