平成21年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成21年第4回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。


 さて、去る11月5日、東京都主税局より平成21年度の都税収入見込みが発表され、特別区財政調整交付金の原資となる法人二税が、当初予算から約4,500億円、25.4%のマイナスとなる見込みであることが明らかになりました。区の歳入の根幹をなす今年度の財政調整交付金普通交付金は、8月の当初算定では281億円となり、豊島区の当初予算である269億円を約12億円上回る結果となっておりましたが、都側の発表を勘案いたしますと、再調整により逆に13億円を超える予算割れとなり、当初算定からは25億円を超える減収となることが想定されるのであります。また、今年7月、内閣府が発表した平成22年度の実質国内総生産の成長率試算は、民間需要の低迷により0.6%程度と大変厳しい見通しとなっているため、財政調整交付金は平成22年度においても、今年度同様大幅な減収が見込まれ、財政的に極めて憂慮すべき事態になると危惧をしております。


 さらに、このような不況下では、財政調整交付金以外の財源についても相当な減収が想定され、現時点では正確な財源不足額を把握することはできませんが、年度間の財源調整のための財政調整基金の投入を視野に入れてもなお、相当の財源が不足することを覚悟しなければならない事態にあります。財政事情が厳しさを増す中で、引き続き健全な財政運営を行うためには、身の丈に合わせて歳出の削減を行うことが不可欠となります。そのため、今年度予算の歳出抑制を図ることはもとより、平成22年度の予算編成においても、事業費や投資的経費の見直し、新定員管理計画による定数削減など、不退転の決意を持って聖域なき改革を断行しなければならないと考えております。今後、歳入見込みの詳細が明らかになり次第、財源不足額等についてご報告をいたしますが、ご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。


 まず、新型インフルエンザ対策について申し上げます。


 新型インフルエンザは、強い感染力から、通常の年では沈静化する夏季であっても、感染は拡大を続けてきました。豊島区では、定点1カ所当たりの患者数が、8月の第1週に1.14、9月第1週には2.25と増加し、10月第1週に13.75と急増、10月最終週には24.38と、3カ月間で患者数が21.4倍にまで達したのであります。新型インフルエンザの感染力はこのように強いものの、多くの感染者は軽症のまま回復しており、また、抗インフルエンザウイルス薬の治療が有効であることなど、季節性インフルエンザと類似する点が多いとされております。しかしながら、幼児や基礎疾患を有する方などにおいては重症化する可能性が高いことから、冬の到来に向けて、今後、季節性インフルエンザの感染者を大きく上回る感染者が発生し、医療現場ばかりでなく、国の社会経済に深刻な影響を与える恐れがございます。新型インフルエンザに罹患した場合でも、死亡や重症化に至ることを減らすためにはワクチンを接種しておくことが有効ですが、新型インフルエンザワクチンは医療機関で確保できる量に限りがあるため、基礎疾患を有する方、小児など、さらに65歳以上の高齢者に優先的に接種することとし、リスクの高さに応じて順位が定められ、豊島区では11月9日から接種実施医療機関において接種が開始されたところであります。また、豊島区では、新型インフルエンザワクチン接種費用を助成することにいたしました。まず、優先接種対象者の中で生活保護の受給者などには接種費用の全額を助成いたします。また、生活保護の受給者等以外で、かつ高齢者以外の優先的に接種を受けられる方には、一回接種に1,500円の助成をすることといたします。この助成事業を実施することにより、今回の新型インフルエンザの影響を最小限にしたいと考えております。関係経費につきましては補正予算を計上しておりますが、感染拡大を防ぎ、区民の皆様の健康を守るため、今後も適切な措置をとってまいりますので、区民の皆様におかれましては、なお一層のご理解とご協力をくださいますようお願いいたします。


 次に、保育園改築と待機児対策について申し上げます。


 今日、保育園の待機児童数の増加が全国的な問題となっておりますが、本区でも平成20年度当初58人だった待機児童数が平成21年当初には122人になるなど、待機児解消の問題は待ったなしの課題になったと認識しております。この喫緊の課題である待機児問題を解消するためには、新たに保育施設をつくることが困難な中にあっては、老朽化した保育園を改築・改修し、同時に園児受け入れ数の拡大を図ることが重要で、かつ急務であります。区立保育園は、現在、築後40年以上経過した園が10園、30年以上の園が12園あるなど、改築・改修の計画的実施が求められていました。しかし、保育園では常に園児を保育しているため長期休業ができないことから、これまでは主に部分改修を行うにとどまり、抜本的な改築・改修を行うことが困難な状況にありました。そこで、改築・改修を進める上で、どうしても必要となる工事中の仮園舎の確保は近隣区有施設との調整を進めることとし、5カ年で私立保育園を含めた10園程度の改築・改修を実施し、相当程度の受け入れ定員の増を確保したいと考えております。また、待機児の解消を目指し、このほかにも認証保育園・認可保育園の誘致を図るとともに、改築等を行わない施設でも受け入れ数の拡充に工夫を凝らしてまいります。これらの計画は、平成22年度保育計画の素案として今後お示しいたしますが、パブリックコメントを行った後、年度内には策定をしたいと考えております。なお、保育料の適正化についても検討を進めておりますので、併せてご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。


 次に、まんが文化を機軸としたまちづくりについて申し上げます。


 豊島区には、各地域に豊かな歴史と文化資源があります。地域ごとの個性あるまちづくりを進める上で鍵となるのが、その地域だけが持つ歴史と文化資源であります。手塚治虫さんを中心に著名な漫画家が青春時代を過ごしたトキワ荘を機軸としたまちづくりを推進するために、南長崎一丁目から四丁目界隈のまちづくりの推進を話し合う場として「トキワ荘通り・協働プロジェクト」懇談会を開催しています。そうした中、10月24日から郷土資料館において、「トキワ荘のヒーローたちマンガにかけた青春」展を開催し、手塚プロダクションの協力の下、再現した当時の部屋などが展示されております。去る11月14日には、川端文部科学大臣、鈴木副大臣が視察にお見えになりました。「トキワ荘のヒーローたちイベント実行委員会」を構成する地元の方々から、トキワ荘は日本のまんがの原点であり、まんがの聖地と呼ばれていることなどの説明をお受けになると、地域を挙げて文化資源を維持しようとする地域の思いに心を動かされ、取り組みを高く評価してくださいました。また、展覧会の開催に当たっては、西武鉄道さんから多大なご協力をいただいております。展覧会開催中は西武池袋線をトキワ荘ゆかりの漫画家たちがデザインしたヘッドマーク付きの電車が運行しております。さらに、周知ポスターを車内に掲示していただいているほか、22日からは展覧会の記念乗車券が発売されております。トキワ荘跡地の周辺では、赤塚不二夫さんが住んでいた紫雲荘の赤塚さんが借りていた部屋に、当時を再現して展示するなど、地元の方々が中心となった関連イベントが開かれております。さらに、当時の少年雑誌の挿絵やプラモデルの箱絵を描いていた小松崎茂さんの作品展が、駒込地域文化創造館において、染井よしの桜の里駒込協議会ととしま未来文化財団との共催で開催されるなど、豊島区の各地から文化に関する情報が次々に発信されたのであります。私は、これらの展覧会に足を運び、これらの作品が掲載されていた当時に雑誌を手にしてページをめくるときの期待感や喜びを思い出し、感動となって蘇ってまいりました。文化にはまさに困難に立ち向かう勇気を呼び起こす力があることを改めて実感いたしました。まんが文化を機軸とした豊島区の文化施策が様々に注目を集めている今こそ、さらに強力に発信を重ねていかなければなりません。


 雑司が谷地域におきましても、手塚治虫さんゆかりの地である並木ハウスを中心とした文化資源の意義を再確認しながら、街の個性を大きく響かせるまちづくりのあり方を語り合う場として、「雑司が谷歴史と文化のまちづくり懇談会」を今年6月に立ち上げ、毎月懇談を重ねております。その中で、様々なアイデアが提案され、具体化に向けた検討を進めているところであります。文化の力によって個性あるまちづくりを展開し、心豊かに生きることができる街として、今住んでいる方々が地域への愛着を高め、景観や街並みなどの住環境が改善され、さらにそれが街への誇りを高めるような好循環を生み出すことができるよう、様々な挑戦を続けてまいります。


 いよいよ12月12日には、東京芸術劇場大ホールを会場として、文化庁長官表彰受賞記念式典を開催いたします。豊島区民合唱団、ジュニア・アーツ・アカデミーの歌声とともに、「心の学校」として次の世代の育成活動に取り組んでいらっしゃる谷村新司さんが、素晴らしいステージを見せてくださるはずであります。ご来場くださいますようお願いいたします。


 次に、教育について申し上げます。


 児童・生徒の体力の低下や健康問題が懸念される現在、学校教育においても、自分自身の健康を大切にし、健康を保持・増進できる実践力を育むことが重要となっております。そこで、区立小・中学校では、「生涯の健康の基礎をつくる」という大きな目標を設定し、全校で飲料水の検査結果や教室の換気・加湿状況などの情報共有を校内放送を用いて図るなど、学校が一丸となって学校保健や学校給食の指導・運営を通じて保健教育の推進に取り組んでまいりました。こうした日頃の活動の成果が認められ、このほど、東京都教育委員会から学校保健の分野で、区立要小学校が健康づくり優秀学校、椎名町小学校が健康づくり優良学校として、また学校給食分野において、西巣鴨小学校が健康づくり優秀学校として、健康づくり表彰を受賞いたしました。今回、東京都全体で10校が受賞対象となったうちの3校を豊島区が占めることとなったのであります。さらに、平成21年度文部科学大臣表彰「学校給食表彰」には、知・徳・体の基礎となる食に関する指導を計画的に実施してきたことが高い評価を受け、区立千登世橋中学校に受賞が決定し、昨日11月26日に滋賀県において開催された全国学校給食協議大会において表彰を受けてまいりました。いずれも、これまで組織的・計画的に取り組んできた実績が、全都的さらには全国的に評価され、表彰につながったものと考えております。


 また、学力向上においても大きな成果を上げている豊島区の子どもたちですが、学習以外の分野でも大いに活躍しております。千登世橋中学校では、11月8日に行われた東京都中学校駅伝競走大会で入賞し、関東大会への切符を手にいたしました。参加140校中第4位という大変素晴らしい成績であり、都心部の中学校としてはまさに快挙であります。また、同じく千登世橋中学校のロボット部が、創造アイデアロボットコンテスト東京都大会において優秀な成績を収め、7年連続で関東甲信越大会に出場することになりました。「心と体の健康づくり」は、学校教育において非常に重要なテーマであります。これらの成果を励みとして、今後とも学力向上と併せて、知・徳・体のバランスの取れた教育を推進してまいります。


 次に、安心・安全なまちづくりについて申し上げます。


 世界保健機構では、安心・安全なまちづくりについて国際基準をつくっており、基準に合致する団体には認証が与えられるという、セーフコミュニティという制度をつくっております。これは、転倒や交通事故など不慮の事故、暴力・虐待など犯罪行為、そして自殺などの自傷行為は偶然の結果ではなく、住民、学校、警察、消防、行政など、地域のあらゆる大や組織が協働で取り組むことによってその原因を取り除き、その発生を抑制していこうというものです。区民の皆様とともに力を合わせて、豊島区を安全で、安心して、心豊かに暮らせる街にすることが、私の目指す最終的な街の姿であります。私は、安心・安全を基本政策の1つに位置付け、災害時要援護者対策や地域安全対策事業など、防災・防犯対策に積極的に取り組んでまいりました。これまで所管別に実施されてきた事業を総合的かつ横断的に連携させるとともに、地域との連携によって、事件・事故の発生を抑制しようとするセーフコミュニティの考え方を聞いて、非常に強い共感を覚え、現在、各地で開催されております地域ビジョン懇談会でも、地域の皆様にご紹介してきました。日本一の過密都市である豊島区の地域特性に合致した豊島区独自のセーフコミュニティのあり方について、現在、検討を進めております。まとまり次第ご報告をいたしますので、ご協力を賜りますようお願いいたします。


 最後に、ふくし健康まつりについて申し上げます。


 安全で安心なまちづくりには、区民一人一人が心身ともに健康であることを実感できることが非常に重要なことであると考えます。心身ともに健やかに生活するためには、健康的な食生活や運動習慣を身に付け、実践することが第一であります。区は、多くの区民が健康的な生活スタイルを獲得できるよう、地域や企業、関係団体などと協働し、気軽に行うことができる健康への取り組みを普及させるとともに、疾病を予防・早期発見するための検診の受診勧奨などに力を入れていく必要があります。こうした取り組みの一環として、20回にわたって多くの区民の皆様にご参加いただいてきました「ふくしまつり」を、第21回目となる本年は、健康に関する部分を充実させて、12月6日に「ふくし健康まつり」としてリニューアル開催いたします。


 具体的な内容といたしましては、「あきらめない がん治療も2アウトから」と題した特別講演会を、元巨人軍投手横山忠夫氏を講師に開催いたします。また、豊島区医師会による健康相談コーナーと補聴器相談コーナー、豊島区歯科医師会による口腔衛生コーナー、豊島区薬剤師会による健康展など、健康をテーマにした出展をこれまで以上に充実して、区民の皆様に健康の大切さをお伝えしてまいります。今回のふくし健康まつりには、福祉施設、支援団体など41の団体が参加して、祭りを盛り上げていきます。中でも、日本チャリティ協会の協力による障害者の美術展に関するワークショップは、福祉と文化の融合を図った新たな試みであります。また、友好都市秩父市からいただいた苗木の植樹式、池袋路面電車とまちづくりの会によるLRTのPRコーナーなど、区の未来の方向性を示すブースも新設してまいります。また、行政相談コーナーや友好都市物産展など、多くの皆様に楽しんでいただける催しを用意しております。さらに、豊島公会堂では福祉と文化を融合する取り組みとして、第7回ミュージックフェスティバルを開催いたします。今後ますます、安心・安全なまちづくりの礎として、福祉と健康施策を充実させていく所存でございますが、それぞれの会場に足をお運びくださいますようお願いいたします。


 「この世を動かす力は希望である。やがて成長して果実が得られるという希望がなければ、農夫は畑に種をまかない。」マルティン・ルターの言葉であります。私の目標は、豊島区を、区民の皆様とともに、文化と品格を誇れる価値あるまちにすることであります。文化を機軸としながら、環境を初め、副都心再生、地域福祉、そして次代を担う子どもたちを育てる学校教育に至るまで、やがて成長して果実がたわわに実ることを夢見て、農夫が畑に種をまくように様々な施策を展開してまいりました。それらは芽を吹き、花を咲かせ、実を結び始めていますが、すべてが豊かに実りを結ぶためにはさらに丹精を続ける必要があります。これからも、未来の豊島区の素晴らしさを信じながら、強い信念を持って挑戦を続けてまいりますので、議員各位のご協力を心からお願い申し上げます。


 本日ご提案する案件は、条例12件、補正予算1件、その他10件、合わせて23件であります。


 各案件につきましては、後程、日程に従いまして副区長からご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。