本日、ここに平成22年第4回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして感謝申し上げます。
始めに、第4回定例会に上程する条例案のうちから、概略等について申し上げたいと存じます。
それでは、初めに、豊島区役所の位置に関する条例の一部を改正する条例について申し上げます。
これは、区政の長年の懸案でありました新庁舎の建て替え地について、現在地から南池袋二丁目への移転を内容とするものでございます。庁舎整備に関するこれまでの経緯につきましては、様々な機会に申し上げてまいりましたので、改めて触れることはいたしませんが、新庁舎計画は、庁舎等建設基金はゼロという極めて厳しい前提条件の中、財政危機を克服した構造改革の教訓、新たな成長戦略への挑戦の中から学んだ創意と知恵を集め、段階的に方針案を作成しながら、その都度、区議会を初め区民の皆様のご意見を踏まえながら練り上げてまいったわけであります。
新庁舎の全体像をお示しする新庁舎整備推進計画は、9月に案を公表した後、精力的に区民の皆様への説明に取り組んできました。12地区での区民説明会を初め、区政連絡会、また関係団体、さらにはご要望をいただいた場合には地域に赴いての出張説明会を実施してまいりましたが、最終的には70回に達する予定であります。それぞれの会場で、また11月2日まで実施いたしましたパブリックコメントにおきましては、区民の皆様から様々な忌憚のないご意見を多数ちょうだいいたしました。一部には厳しい内容もございましたが、大部分は庁舎の整備を歓迎し、あるいは庁舎の整備を前提とした上で、区政の将来に建設的な提案をしようとする内容でありました。
これまで、豊島区役所の位置に関する条例の改正条例を区議会にご提案する機会を図ってまいりましたが、南池袋二丁目A地区市街地再開発事業の権利変換計画もまとまり、また、先程申し上げた説明会やパブリックコメント等でのご意見を総合的に勘案した結果、いよいよ提出できる段階に至ったと判断をし、今定例会にご提案をしたものでございます。度々申し上げてまいりましたが、この整備計画は区民の皆様に新たな負担をお願いすることなく、新しい庁舎を整備することを可能とする唯一の方策であると考えております。
計画地の旧日出小学校跡地は、新庁舎という財産に形を変えて将来に引き継がれ、また、現庁舎地等の土地も定期借地権方式での活用でありますので、次の世代が区民共通の財産として再びこの土地を活用することも可能であります。さらに、新庁舎は、防災の拠点として区民生活の安全を守り、また、質の高い区民サービスを提供する拠点としての機能を担うことはもちろんのこと、文化創造都市、環境都市、生涯健康都市、教育都市など、未来の都市づくりをリードする自治のシンボルとなるものであります。
昭和7年、5郡82町村が東京市に編入された際に長崎町、高田町、西巣鴨町、巣鴨町の4町を合わせて豊島区が誕生し、東池袋の現在地に区役所が設置されました。戦災による仮庁舎に移転していたわずかな期間を除くと80年に及ぼうとする豊島区の歴史は、現庁舎地とともにあったと申し上げても過言ではあるまいと思います。私にとりましても特別な場所という思いを抱き続けてまいりました。また、区民の皆様の現在地に対する強い愛着もいかばかりかと拝察しております。それでもなお、庁舎自体を南池袋に移転させ、また、現庁舎地の民間活用を図ることで、池袋副都心の再生に向けた起爆剤となることを期待し、豊島区の将来のためにも庁舎位置の変更は大きな意義を持つものであると確信をしているのであります。
ご提案した、豊島区役所の位置に関する条例の改正案は、新庁舎の整備に向けてさらに確実な道筋をつけるものであります。ぜひともご賛同くださいますようお願いいたします。
次に、豊島区がん対策推進条例について申し上げます。
がん対策については、昨年度より本区の最重要課題として位置付け、本区独自の子宮頸がんワクチンの公費接種を開始するなど取り組みを進めてまいりましたが、本日、対象の皆様に費用助成を受けるための予診票を郵送いたしました。到着し次第、無料で子宮頸がんワクチンを接種いただくことができます。一方、有識者の知見をがん対策の推進に活用するため、都立駒込病院鶴田副院長を会長とするがん対策推進会議を設置しましたが、様々な議論を経て豊島区独自のがん対策推進条例(案)としてこれまでの努力が結実されました。既に、他の自治体では、10県2市において、がん対策推進の条例を制定しておりますが、豊島区がん対策推進条例(案)には他の自治体にはない特徴がございます。具体的に申し上げますと、教育委員会との協働による小中学生を対象としたがん予防の普及啓発、がん検診の受診率の向上、受動喫煙の防止による健康被害の予防、区内企業との連携の4項目の規定を設けたことであります。また、がん対策推進条例(案)の提出にあわせて、がん対策基金条例(案)も今定例会に提案をいたしました。このがん対策基金は、今後増大するであろうがん検診経費などの財政負担を軽減するために計画的な積み立てを行うほか、民間から寄附をいただき、がん対策事業の推進に活用するための受け皿とするために創設するものでございます。既に来年度、豊島区観光協会が計画しているマラソン大会において、がん撲滅のチャリティ募金を行いたい旨のお申し出もいただいております。また、がん対策関連事業では、9月18日から帝京平成大学で開催している、連続5回にわたる豊島コミュニティ大学の特別企画「家庭の医学~専門医から聞くがん最前線」のシリーズ第2回目を実施いたしましたところ、台風が接近する中でありましたが、多くの皆さんのご参加をいただき、講義の後には真剣な質疑が行われました。区民の皆様のがんに対する悩み、ご心配、思いの深さを目の当たりにいたしまして、改めてがん対策に取り組む決意を新たにいたしました、この23区初となるがん対策推進条例の制定とがん対策基金の創設に続き、今年度中にはがん対策推進計画も策定し、区の総力を挙げ、総合的、計画的ながん対策の推進に取り組んでまいります。
次に、空き缶等の投げ捨て防止に関する条例の一部を改正する条例について申し上げます。
豊島区は平成9年、23区に率先して空き缶等の投げ捨て防止に関する条例を施行しました。「歩きたばこはしないように」という区民の努力義務を条例の中に定めました。明確に歩きたばこを禁止したものではございませんが、当時としては画期的なことであったと認識しております。その後、喫煙に対する社会状況の変化を受けて、平成16年からは、としま喫煙マナーのキャンペーンも行ってまいりました。このキャンペーンは、「歩きたばこはしない」「たばこは灰皿のある場所で」「吸う人は周りの人への配慮を」という3つのマナーアップを呼びかけるものであります。しかし、健康づくりへの関心が高まっている中、喫煙に対する社会の見方はさらに厳しさを増し、「マナーからルールへ」の転換を求める機運が高まってきました。これらの状況の下、区民の皆さんの安全・安心を守り、たばこを吸う方も吸われない方も共存できるような喫煙についてのルールづくりを目指し検討を進めてまいりましたが、本区独自の条例の一部改正を提案するものでございます。
改正条例案では、「区内全域で路上喫煙を禁止する」という規定を設けましたが、「吸い殼入れのある場所を除く」とすることによりまして、区民の皆さんの様々な利益に配慮しながら、地域のこれまでの事情や特性を生かすことができるように配慮したということが大きな特徴であると考えております。
次に、高齢者福祉施策について申し上げます。
急速に高齢化が進む中、とりわけ孤立化するおそれのある高齢者への支援は、セーフコミュニティの世界認証取得を目指す本区にとって重要かつ喫緊の課題であります。このため、現在、ひとり暮らし高齢者世帯や高齢者のみ世帯を対象に、その生活状況や健康状態を把握するため、ひとり暮らし高齢者等の実態調査を実施しておりますが、これまでに郵送調査や民生・児童委員による訪問調査により、あわせて1万4,000件あまりの世帯の調査が終了し、年度内には対象者すべての調査を完了させたいと考えております。また、この実態調査のデータを基に、福祉サービス等の支援を必要とする高齢者を掘り起こし、高齢者総合相談センターの職員が訪問し、必要なサービス提供につげるとともに、閉じこもりや孤立化の防止を図るアウトリーチ事業を展開してまいります。既にこれまで、生活リスクが高く、見守りが必要な180名の高齢の方々に対し、それぞれの状況に応じたサービスを提供することにつなげてまいりました。今後は、このアウトリーチ事業の本格化に合わせあわせまして、高齢者相談に対する専門職を要するなど、まさに高齢者施策の中核を担う高齢者総合相談センターの機能強化を図り、高齢者が安全・安心に暮らせる地域づくりを積極的に推進してまいる所存でございます。
次に、教育について申し上げます。
まず、インターナショナルセーフスクールの取り組みについて申し上げます。
11月16日に行われました第3回セーフコミュニティ推進協議会におきまして、豊島区立朋有小学校、田淵校長より、平成24年度セーフスクール認証取得を目指した宣言文が力強く読み上げられました。同校は、我が区屈指の高密地域、東池袋再開発地区に位置する総合校として、広い学区域から504名の子どもたちが通う大規模校であります。在学する子どもたちにとって、学校内でのけがを防ぎ、登下校時の交通事故の予防によって、安全で安心な環境で学ぶことは緊急かつ重要な課題であります。また、すべての小中学校の願いでもあります。豊島区教育委員会は、「教育ビジョン2010」におきまして、予防に重点を置いた安全と健康の質を高めるセーフコミュニティの取り組みと同一の視点に立って、高密都市、都心型のセーフスクールのあり方を追求しております。豊島区といたしましては、認証取得へ向けた取り組みの成果が、広く区内の各教育施設や子どもたちに波及効果をもたらすよう、教育委員会と連携して支援をしてまいりたいと思います。
次に、としま土曜公開授業日の実施について申し上げます。
本区では、平成23年度に小学校、平成24年度に中学校の新たな教育課程が完全に実施されますが、区内小学校では新しく採択された教科書に基づく指導計画の作成や授業時数の増加への対応など様々な課題がある中においても万全の体制を整え、教育都市としまの実現に向けて取り組んでいます。教育委員会では、授業時数増加に加えまして25%増量となった教科内容への対応として、既に平成22年度には1学期1回程度の土曜授業を実施してまいりましたが、平成23年4月から月1回を原則にとしま土曜公開授業日を設定し、新たな教育課程に応える体制づくりが予定されています。実施に当たり、義務教育9年間の確かな学びの連続性が確保されるとともに、保護者や関係団体の皆様のご理解とご協力の下で、学校・家庭・地域が連携して成果を上げられることを期待しております。
次に、子どもたちの体力向上について申し上げます。
健康や体力は、すべての活動の根源であるとともに、意欲や根気、集中力を支える重要な要素であります。しかしながら、子どもたちの体力や運動能力は、昭和50年代より全国的に長期低落傾向にあります。その背景には、運動に親しむ時間や場所、機会が減少しているほかに、生活習慣や遊びの変化などに起因するところもあると考えられております。去る11月2日に、豊島区教育研究奨励校として、研究を発表した巣鴨小学校の報告によりますと、「運動が大好きな子どもを育成すると、体力はもちろん、生活習慣や健康意識を大きく変容されることができる」という注目に値する提案がなされております。来年3月には、味の素スタジアムで、第2回中学校東京駅伝大会が予定されております。本区は、中学校体育連盟が公立・私立の合同チームで編成された「オール豊島」として参加する体制を整えると聞いております。その際には、チームの一体感をつくるための応援を区としても積極的に行ってまいります。こうした競技をきっかけに、区内に運動大好きな子どもたちの輪が広がり、体力と健康の増進が図られますよう、大いに期待しております。
次に、まちづくりについて申し上げます。
私は、都市再生とは、区民の皆さんの生活の視点に立った価値ある都市を築き、これまで培われた歴史や文化を、世代を超えて大切に引き継いでいく仕組みをつくっていくことであると考えております。こうした観点から、豊島区が取り組んでいるまちづくりについて申し上げたいと存じます。
まず、都市計画補助172号線についてですが、平成6年から事業に入り、地元の町会やまちづくり協議会の皆さんとともに、地域の防災性の向上や居住環境の向上を目指してまいりました。いよいよ来年3月には事業が完了いたします。また、同時期に西口駅前にモザイカルチャー、エレベーター、交番も完成いたしますので、それぞれお披露目記念のイベントを企画し、新たな道路ネットワークと新しい西口駅前のシンボルの完成を地域の皆様とともにお祝いしたいと考えております。
次に、環状5の1号線地下道路についてでございます。副都心線の建設にあわせ、地上部の用地の取得はほぼ終了しておりましたが、地下道路については事業着手の時期等について東京都から示されておりませんでした。しかし、今年6月に都市計画変更手続きに入り、いよいよ池袋駅周辺の自動車混雑の解消と緑豊かな地上道路の整備により、雑司が谷地区の生活環境を守るための環境整備に向けて本格的に動き出すことになりました。
次に、椎名町駅周辺のまちづくりについてでございます。既に、東長崎駅では区と西武鉄道が共同して駅舎を含めた駅周辺の整備を行い、明るく広々とした駅前空間が生まれております。この事業は国庫補助と財調によりまして、ほとんど区の負担がなく実現したものでございます。このノウハウを生かし、椎名町駅でも同じ事業スキームで、昨年12月に工事に着工することができました。椎名町では、駅前だけではなく椎名橋や橋下空間に駐輪場と広場を整備することに加えまして、駅周辺には、トキワ荘やアトリエ村など地域の文化資源を取り入れる工夫も現在検討しております。また、地域の皆様にご心配をおかけしております交番の移転につきましては、粘り強くお願いを続けた結果、西武鉄道のご協力をいただき、北口に存置できる可能性が高まってまいりました。今、大詰めの調査をしているところでございますが、引き続き安全・安心はもとより、魅力と活力あるまちづくりの展開に努めてまいります。
次に、大塚駅周辺のまちづくりについてでございます。長年の懸案であった南北自由通路の開通を昨年10月に果たし、引き続き、駅から街へとつながる歩行者優先のまちづくりを展開しております。23年度には駐輪場工事に先駆けて、南口での支障物移設工事に着手し、地下駐輪場と駅前広場の整備を27年度に完了した上で28年度から北口駅前広場整備に着手する予定となっております。また、造幣局周辺のまちづくりでございますが、豊島区の誇りとなるような広大な防災公園の整備に向け、また、東池袋の新しい顔となるまちづくりに向けて現在関係者との協議を積極的に進めております。来年には計画案を区民の皆様にお示しできるよう、今後も一層努力をしてまいりたいと考えております。
次に、情報基盤整備について申し上げます。
本区における情報化に関しましては、平成12年の豊島区行政情報化推進計画、平成18年の豊島区行政情報化実施計画に従い、ネットワークの整備やパソコン等情報機器の整備、業務システムの見直しなどを推進してまいりました。これらの計画推進によりまして、庁内の情報化は着実に進捗してまいってはいるものの、情報セキュリティに対する脅威は形を変えつつ発生しており決して安閑としてはいられません。また、行政事務のさらなる効率化と、なによりも区民の皆様の利便性向上を図るために、他区と比較しても大きく遅れをとっている行政情報化を一層推進していく必要を痛感してまいりました。しかしながら、現在の庁舎の使用を移転まで継続せざるを得ないという条件の下では、新たなシステムを導入しようにも電気容量の増設が困難であること、加えて庁舎が狭あいなため新たな情報システムを設けるスペースがないことなど、物理的な制約が大きいことから断念せざるを得ない状況でありました。さらに、庁舎が複数の建物に分かれているため、ネットワークの設定だけでもイニシャルコストが増大する、マシンルームに耐震性がなく緊急時にシステムが使えなくなる可能性が高い、発電設備がないため電気供給が止まるとシステムを停止せざるを得ないなど、現在の庁舎には、現状の区民サービスを維持する上でも大きな課題があります。一方で、地域コミュニティの活性化、地域医療・福祉の充実及び防犯・防災対策等を求める区民の皆様からの声は大きく強くなっておりまして、対応に遅滞が許されない状況であることを痛感しております。その要請に対して、本区が効果的・効率的に対応していくためには、ITの活用により地域情報化を推進していく必要がございます。そこで、この度の新庁舎の整備を大きな契機として、総合窓口システムやコールセンターの機能など新たなサービス提供、災害情報システムの導入や子育て支援や福祉の情報共有の仕組みづくりなど、区民の皆様の利便性を飛躍的に向上させるとともに、ITを活用した地域社会の活性化に努めてまいりたいと考えております。
現在、区では平成23年度から平成27年度までの5年間を計画期間とした次期情報化計画の策定に着手いたしました。これまでの行政情報化実施計画が行政事業の効率化に力点を置いていたことに対しまして、新たに策定する次期情報化計画では区民の皆様の利便性向上と地域社会の活性化を大きな柱といたします。新庁舎の整備に合わせて展開する21世紀に相応しい地域サービスの提供を支えるためにも、計画の策定とその着実な実現を目指して取り組んでまいる所存でございます。
「それはできる、それをやる、と決断せよ。それから、その方法を見つけるのだ。」これはアメリカ大統領リンカーンの言葉でございます。アラビアのことわざにも穿った表現でございますが、「何かをしたい者は手段を見つけ、何もしたくない者は言い訳を見つける」とあります。私は、区長就任以来、職員と課題の検討を行う際に、「できない理由を考える必要はない。どうしたら実現することができるかを考えてくれ」と常に語り続けてまいったわけでございます。豊島区を、住みたい街として選ばれ続ける街にするのだという強い決意が揺るがなかったからこそ、皆様からのご理解とご協力をいただきながら解決策を編み出し、これまでに至ったものと考えております。なお、様々な困難な課題は目前に横たわっております。しかし、豊島区を価値ある街にするという強い情熱を持ち続け、不退転の決意を持って解泱してまいりたいと考えておりますので、議員各位のご協力を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
本日、ご提案申し上げます案件は、条例14件、補正予算1件、その他8件、あわせて23件であります。各案件につきましては、後程日程に従いまして副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。