平成23年第1回区議会定例会招集あいさつ・所信表明

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 本日、ここに平成23年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。


 今定例会は、私にとりましても、また議員の皆様におかれましても、任期満了を迎える前の、節目の定例会であります。これまでを振り返りますと、厳しく険しい道のりの連続でありましたが、今、やっと財政危機を克服することができ、明るい展望をつかみつつあるところまでくることができました。この間、区民の皆様のご理解を得ながら、かつてない改革を進めることができましたのも、区議会の皆様から、時には厳しいご指摘も交えながらも、一貫していただいてまいりましたご協力があったからこそと考えております。ここに改めて深くお礼を申し上げます。また、任期満了に望み、今、5人の議員の方々がご勇退のご決意を表明されております。遠竹よしこ議員、小峰博議員、小林俊史議員、日野克彰議員、そして水谷泉議員であります。私が申し上げるまでもなく、お一人お一人が心から豊島区を愛され、地域の発展と区民の皆様の安寧のために区政を支えてこられました。また、価値観が多様化するとともに社会経済の不透明さが増していく中にあっても、議会人として卓越した政治手腕と先見性を持って、議会の舵取りをされ、財政危機からの脱却から新たな展望が拓けてきた今日まで、私どもとともに区政運営を担っていただいたのであります。今、お一人お一人が歩んでこられた足跡を振り返りますと、誠に愛惜の念を禁じ得ません。長きにわたる区政へのご尽力に対しまして深甚なる敬意を表するとともに、区民を代表し、衷心より感謝を申し上げる次第であります。私といたしましても、ご勇退される皆様の、その志を深く胸に刻み、4月の区長選挙に臨んでまいりたいと考えております。


 それでは、今定例会の開会に当たりまして、区政に当たる私の所信の一端を申し上げ、議員各位並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。


 初めに、平成23年度の施政方針について申し上げます。


 日本経済は、力強い回復が期待できないながらも、踊り場局面から次第に脱却し、低成長ながら回復軌道に戻ると、多くの民間シンクタンクでは見通しを立てております。こうした中、東京都は、当初予算における都税収入が、平成21年度は率・額ともに都政史上過去最大の下げ幅を記録し、翌22年度でも前年度に引き続く大幅な落ち込みを想定しておりましたが、23年度では、小幅ながら1.7%の増とする編成を行いました。経済状況は最悪期を脱しつつあるとはいえ、失業率も依然として高水準にあり、円高の急速な進行や長期化するデフレの影響などにより、景気の回復を実感するには程遠く、先行きへの懸念も広がり、区民の皆様が抱えている不安や閉塞感が高まりつつあることを強く感じております。


 区財政におきましては、行財政改革の推進、さらに土地開発公社借入金の繰上償還による長期負債の完済などによりまして、安定的な運営が可能となる状況まで改善してまいりました。しかし、経済環境が依然として足踏み状態にあるため、特別区民税を初めとする一般財源の減収がなお見込まれるなど非常に厳しい状況となっております。一方で、今なお、高齢化の進展による将来の医療費や介護給付費の負担増、生活保護の急増に伴う扶助費の大幅な増加、老朽化した公共施設の改築・改修など多くの財政課題を抱えております。この間の社会経済状況の変動を教訓として、持続可能な財政運営を確保するため、今以上に債務を圧縮し、将来負担のさらなる軽減を図るとともに、年度間の財政調整を行う財政調整基金や、公債費負担の軽減を図る減債基金、さらには、長期間にわたる学校改築を着実に推進するための義務教育施設整備基金などの確保など、これまで推し進めてきた財政運営を、今後もこれまで以上に着実に行ってまいらなければならないと改めて決意をしたところであります。また、区を取り巻く制度的な環境に目を向けますと、次の世代に引き継ぐ国と地方の姿について、3年をかけて議論を進めてきた地方分権改革による権限移譲及び義務付け・枠付けの見直しについて、関連法案が成立すると、4月以降順次区市町村事務に移行することが見込まれます。また、都区のあり方について、平成18年から続けてきた検討がようやくひと段落して、具体化に向けた協議の場へと進んでいきます。名実ともに、真に自立した基礎的自治体が政策を競い合い、豊かな価値を創造し合うことで、日本全体の活力を生み出していく地域の時代が到来しようとしているのであります。私たち豊島区も、地域の将来と自らが進むべき道筋をしっかりと描き、新たな分権社会を切り開く地歩を確たるものにしなければなりません。


 地域の将来と進むべき道筋ということでは、平成18年に策定した基本計画で事業量等を示した前期5年の計画期間が今年度をもって終了することを受け、平成23年度から始まる後期5年に向けた見直しを行ってまいりましたが、去る1月28日、基本構想審議会の原田会長から答申をいただきました。新たな基本計画に求められる役割は大きく2つあると考えております。―つは、新生としま改革プランや財政健全化計画、そして続く行財政改革プランにより幾重にも積み重ねてきた改革の成果として着実に財政健全化への歩みを進めてきた前期5年間の実績を踏まえ、これまで以上に慎重な財政運営を行いながらその歩みを確実なものとすることであります。また、もう一つは、未来戦略推進プランとして毎年ローリングしてきた都市経営戦略を継承した将来の豊島区の都市像を示すことであります。答申をいただいた基本計画は、まさに今後5年間で豊島区が目指す都市像とともに、地域経営の方針を明確に表したものと考えております。


 都市像に関しましては、これまで、文化創造都市、環境都市など、未来戦略推進プランでお示ししてまいりましたが、さらに、高齢の方、障害のある方を地域で見守るとともに、安心して子育てができる福祉増進都市、知性・感性・道徳心と体力を育み人間性豊かな子どもたちを育成する教育都市、そして乳幼児から高齢期まで健康づくりに取り組むことができる環境を整備する生涯健康都市、さらにこれまでの施策の集大成として、区民の皆様はもちろん、訪れるすべての方に安全と安心を実感していただける街を、安全・安心創造都市として位置付けることが基本計画上で明記されました。今後5年間の取り組みが豊島区の将来を大きく左右することは間違いありません。こうした将来展望を踏まえ、真に効果的な政策を大胆な発想をもってつくり上げる、その時であります。福祉増進都市、生涯健康都市、教育都市、文化創造都市、環境都市、都市再生、そして、それらの集大成としての安全・安心創造都市の実現に向け、私が先頭に立って、全庁を挙げて取り組んでまいりたいと思います。


 また、健全な財務体質を回復し、効率的なサービス提供体制を構築することは経営への信頼を高める重要な要素であります。本区財政は、バブル経済崩壊後、経常的歳入が減収したにもかかわらず、身の丈を超えた規模を維持するため、財政調整基金の取り崩しにとどまらず、起債を増加させ、特定の目的のために積み立てた基金の運用などによってきた結果、未曾有の財政危機に直面することになりましたが、過去12年間にわたる行財政改革により、ようやく財政健全化への道筋を見出しました。こうした経緯から、歳入環境の動向を一段と注視しつつ、財政危機を二度と招くことのないよう身の丈に合った財政運営を引き続き堅持し、健全化をさらに推進することで景気に左右されない安定・継続した盤石な財政基盤を構築し、必要な施策を推進するために十分な財政基盤を築いていくことを堅持し続けなければなりません。一方、地域社会が必要とする公共的サービスに対するニーズはさらに多様化していきますが、行政のみが主体となってサービスを提供し続けることは、財政的に限界があるばかりでなく、多様なニーズに柔軟に対応することにも限界があります。最も効率的で効果的な公共サービスの提供の仕組みを地域の中に築いていくことが必要であります。そこで、スリムで変化に強い行政経営の確立、持続可能な財政構造の構築、多様な主体との協働による新たな公共の構築を3本の柱として、特に、持続可能な財政構造の構築では、5年後のあるべき姿を財政指標で示したことで具体化に向けて邁進してまいります。また、透明性の向上は、行政組織の品格を形づくる基本でございます。今後、さらに民間とのパートナーシップによるサービス提供を広げていくためにも、情報の共有、説明責任の向上、政策形成段階への参加の促進を図ってまいりたいと思います。今後もさらなる構造改革に取り組み、揺るぎない自治体経営の信頼を確立するとともに、豊島区の将来像の実現に向け邁進してまいりますので、区議会の皆様のご理解と、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。


 次に、平成23年度予算案について申し上げます。


 一般会計と3つの特別会計を加えた平成23年度の総予算規模は1,517億8,000万円であり、対前年度比87億4,800万円の増、6.1%のプラスとなりました。これは過去最大の予算規模となったのであります。このうち、一般会計予算は、1,029億8,900万円であり、対前年度比70億3,400万円の増、7.3%のプラスとなりました。2年連続のプラス予算であり、平成元年度以降では7番目の伸びであり、当初予算の規模が1,000億円を超えるのは、平成10年度以来13年ぶりとなるものでありまして、私か区長に就任して初めてであります。これまでの行財政改革の成果として、人件費と一括返済を除いた通常返済分の公債費が着実に減少しているにもかかわらず、予算規模が増加した主な理由は、生活保護費を初め、子ども手当の支給経費などの扶助費が35億円増加し、一括返済方式による区債が満期を迎えたことによる公債費が22億円増加するとともに、特別会計への繰出金も6億円増加したためであります。


 一般会計予算の特徴について申し上げます。まず、歳入では、特別区民税が課税人口一人当たり課税額とともに微減となるために、対前年度比2億3,000万円、1.0%のマイナスとなる240億4,600万円と、2年連続のマイナス計上となっております。また、特別区財政調整交付金については、景気後退に伴う企業収益がようやく好転に向かうことにより法人住民税は増収となる想定ではありますが、前年度の実績に基づいて区ごとに算定される経費が、本区においては大きく減少することから、対前年度比3億円の減、1.1%のマイナスとなる277億円を計上しています。一方、特別区債は、南長崎中央公園の整備などにより、対前年度比で1億3,100万円増加して、32億9,300万円の発行となりました。起債依存度は0.1ポイント減少し、3.2%となっております。


 次に、歳出の特徴でありますが、経費別では、人件費と投資的経費が減少する一方で、事業費が増加となっております。人件費の総額は、再任用職員の増があるものの、正規職員の減による給与費の減などにより、対前年度比2億6,500万円、1.2%のマイナスとなる215億5,400万円となっております。一方、事業費の総額は、対前年度比73億4,500万円、11.8%のプラスとなる698億5,500万円の計上となっています。これは主に、公債費21億9,000万円、生活保護費21億9,200万円、子ども手当支給経費10億2,500万円、特別会計繰出金6億4,100万円が、それぞれ対前年度増となっていることによるものであります。さらに、福祉、健康、子育て等の事業についても、多くの新規・拡充の経費を見込んでおります。投資的経費の総額は115億8,000万円であり、対前年度比4,600万円の減、0.4%のマイナスとなりました。これは長崎中学校跡地における(仮称)南長崎中央公園の整備、保育園の改築・改修経費、池袋本町の清掃車庫跡地の取得などの経費が増加する一方、都市計画道路175号線の整備や地域防災無線のデジタル更新の終了により経費が減少することによるものであります。また、目的別では、福祉費が生活保護費や子ども手当の増などより、対前年度比13.7%、48億100万円のプラス、また、公債費が約28億円の満期一括償還分の増などにより、対前年度比37.0%、21億9,000万円のプラスとなっています。これにより、歳出の構成比を前年度と比較いたしますと、福祉費が38.6%で2.2ポイント増、公債費が7.9%で1.7ポイント増加をしています。


 23年度予算編成におきましては、景気の回復が足踏みを続ける状況の下で、生活保護費などの扶助費が大きく伸びる一方、特別区民税や特別区財調交付金が減収し、消費や株価低迷の影響により、各種交付金も伸び悩みが想定されることから、財政調整基金を初めとする基金の活用と、起債の発行による財源対策を講じざるを得ませんでした。しかしながら、今後の景気回復の見通しが不透明な現状を踏まえて、可能な限り基金の取崩し額や起債の発行額を圧縮するよう努めたため、財制調整基金からの繰り入れを15億円程度に抑えることで、23年度末には40億円を超える基金残高を確保できるとともに、借金の残高も、21年度末の411億円から23年度末にはほぼ300億円と、着実に減少していく見込みとなっているのであります。また、扶助費や公債費を初めとして特定財源が7億円も増加しており、一般財源ペースでは3,500万円の減と3年連続マイナスとなっているのであります。このように、平成23年度予算は、十分に身の丈を踏まえた、健全で堅実な予算となっていると評価しているのであります。


 一般財源ペースで中身を見てみますと、これまでの財政健全化の成果が随所に現れていることがおわかりいただけると思います。まず、人件費で5億円、公債費で9億円のマイナスとなっています。同時に、投資的経費においても、土地開発公社の分割償還金を全額返済したことによりまして、前年度まで計上しておりました通常返済分の約7億円を計上する必要がなくなりました。したがいまして、平成23年度予算は、これまでの改革の果実を区民の皆様に還元した予算でもあると考えております。そして、平成23年度予算では、そのような改革から生まれた成果を十分に活用して、区民の皆様の生活にとっての喫緊の課題である福祉・保健・子育て等の施策の充実に、そして、これまでの施策の集大成としての安全・安心創造都市の実現に対処するために、157項目、18億6,000万円に及ぶ新規・拡充事業を盛り込んでおりまして、新たな区民要望に、可能な限り応えることができた予算となったと考えております。


 次に、平成23年度の事業展開について申し上げます。


 区は、基礎自治体として区民の生活・財産そして命を守る責務があります。間もなく超高齢社会に入る豊島区にとっては、増加し続ける高齢者への対処など、まさに区民生活の基盤をなす基本である福祉を初め、教育、子育て、健康などの施策が総合的に適切に実施されることによって、区民の皆様は生活が支えられていることを確信し、安心を実感することができます。そこで、これらの基本的な使命である施策について、持続可能性に配慮しつつ、サービスの質的向上に努めることによって、区民の皆様が安全に暮らせることを確信し、安心を実感できる街を着実に築いていきたいと考えています。これらの施策の中で、特に福祉と教育については重点的な展開を図ってまいります。


 まず、福祉について申し上げます。福祉については、すべての人が地域でともに支え合い、心豊かに暮らせるまちを基本理念に、薄れつつある地域のコミュニティの中で、新たな支え合いの仕組みを再構築してまいります。65歳以上の高齢者のうち、ひとり暮らしの方々の割合が他区に比べて高い本区においては、高齢の方の孤立を防ぐことは大きな課題であります。本年度は、ひとり暮らし高齢者や高齢者のみの世帯、約2万7,000世帯を対象に、民生・児童委員の皆様方のお力を借りて、生活実態の把握に努めてまいりました。来年度は、この調査の結果を踏まえて、アウトリーチ事業を本格的に展開し、支援が必要な高齢者の皆様に適切なサービスを提供するとともに、地域の皆様との支え合いによる、きめ細かな見守り活動につなげてまいります。また、これまで慢性疾患がある場合など、条件を付して実施しておりました高齢者緊急通報システムを、高齢でひとり暮らしの方が希望すればどなたでも利用できるように拡充するなど、安心して日常生活を送っていただけるように施策の充実を図ります。さらに、高齢者の方の長寿をお祝いする記念品の内容と対象者を拡充することで、これまでのご貢献に友する感謝と敬意の気持ちを表すとともに、いきいきとした生活が送れるよう応援をします。また、金婚・ダイヤモンド婚を迎えられるご夫婦にお祝いの気持ちをお届けしたいと考えております。一方、視覚障害者や高齢者が安全・安心に外出できる環境を整備し、社会参加の促進を図ることが重要と考えます。このため、23年度には区施設への道案内の音声データを作成し、ホームページで活用するとともに、今後のデータ保守に協力するボランティアの育成を図ってまいります。生活保護受給世帯は、21年4月の4,842世帯から22年4月の5,763世帯になり、その差は921世帯、19%もの増となっております。増加の伸びは鈍くなってきているものの、今なお増加傾向にあることから、適正に対応する必要性を痛感しております。本年度は、西部生活福祉課を新たに設けましたが、来年度は職員のさらなる増員を図るなど、生活福祉部門の体制を整備するほか、被保険者の実態等を分析するとともに、自立支援の強化についても一層重点を置いて取り組んでまいりたいと考えております。


 次に、教育について申し上げます。


 教育ビジョン2010の目指す、教育都市としまの実現に向けて、着実に諸事業を推進することが重要であります。昨年、発表された国際学習到達度調査によりますと、これまで中位にあった上海や韓国など、アジア諸国が上位に進出し独占する一方、欧米諸国や日本は中位へと転落し、逆転されてしまいました。これは、アジア諸国ではITシステムが教育に効果的に活用されてきたことによるものだと言われております。情報を制する者教育を制すの言葉どおり、急速な国際化、高度情報化の波は、学校教育の場へも待ったなしで押し寄せています。平成23年4月から、小学校新学習指導要領が完全実施されるこの機会に、時代の変化に応じた教育の情報化や安全・安心な学校づくり、次代を拓く学校改築などの重点事業を積極的に支援してまいります。まず、学校図書の蔵書数のアップ、学校図書館のデータベース化、図書館司書を配置したモデル事業などを進め、児童・生徒の読書力や学力の向上を支援してまいります。また、全校に設置したデジタルテレビや電子黒板、全教員に配付した校務用パソコン、校内LANなど既存のシステムを活用して、情報通信ネットワークを効率的・効果的に生かす学校ICT環境整備事業の拡充を支援してまいります。


 次に、区が進めるセーフコミュニティ認証取得と同時期に、インターナショナルセーフスクールの認証取得を、朋有小学校と学校関係者、地域が一体となって実現できるよう支援してまいります。さらに、学校改築計画に基づく西池袋中学校の改築工事に続き、目白小学校の基本設計も大詰めを迎えていることから、最新の設備を備えたエコスクール、地域防災の拠点としての学校改築事業を着実に進めてまいります。今後、池袋第三小学校の改築を考える会に続いて、(仮称)池袋本町地区小中連携校の改築を考える会からの提言をいただき、児童・生徒の9年間の学びの連続性に配慮した教育環境を整えてまいります。豊島区の学校で教育を受けたい、子どもを育てたいと思う、魅力ある教育都市としまの実現に向けて、教育委員会と連携してまいりますので、地域・学校関係者の皆様のご支援とご協力をお願いする次第であります。


 次に、子育てについて申し上げます。


 近年の社会経済環境を反映し急増する保育需要に対し、多様な施策を集中的に的確に実施することで、待機児童の速やかな解消を図っていくことが課題となっております。あわせて、少子化への基本的な対策として、仕事と子育ての両立支援のための施策展開が求められております。また、近隣関係が希薄化し、核家族化した子育て家庭では、親の孤立感や負担感が大きくなっていることが、子どもの虐待や健全な発達に影響することが懸念されていることから、こうした親の孤立感や負担感を解消していくことも、また大きな課題となっております。まず、待機児童対策については、昨年策定した保育計画を着実に遂行いたします。新年度に向けては、池袋第一保育園の増築・改修によって定員を拡充します。また、認証保育所3所の新規開設に対し、運営費等の補助を行うとともに、区民住宅の空き室等を利用して、すくすくルーム2カ所を新規に開設するほか、自宅型保育ママの増員を図ります。また、認可保育所への入園を待機しながら認証保育所を利用されている保護者の認可保育所との保育料の差額に応じて、保育料の一定額を補助する制度を新たに設けることといたしました。これらの措置により、平成23年5月中には、159人の受入枠の拡大を図ってまいります。待機児童対策は、23年度も引き続き認可保育所の改築・改修による受入枠の拡大等、着実に進めてまいります。子育て支援の充実強化策等といたしましては、子ども家庭支援センターの相談員による訪問相談事業について、子どもの1歳の誕生日に合わせて家庭を訪問し、絵本をプレゼントするとともに、子育てに関する悩みを伺い、助言を行う取り組みを新たに開始いたします。また、西部子ども家庭支援センターの発達支援事業の需要増に対応して、臨床心理士を増員いたします。子どもの居場所づくりに関しましては、旧長崎第二児童館の施設を活用し、西部地区中高生センター(仮称)ジャンプ長崎の開設に向け、また、区立要小学校敷地内へ、子どもスキップ要の開設に向けそれぞれ準備を進めます。これらの施策の実施に当たっては、地域や民間団体等との連携や協働を図ることにより、すべての子どもが健康でいきいきと自分らしく育ち、また親が安心して子どもを産み育て、子育ての喜びを共有できる地域づくりを推進してまいります。


 次に、健康について申し上げます。


 健康施策は、区民の皆様の暮らしと生命を守るという安心戦略の中に、福祉、子育てと並んで重点的に取り組むべき課題であると位置付けております。特に、区民の死因の3割を超えるがんに対しては正面から取り組み、本年度中に策定するがん対策推進計画に基づき、区民の皆様のがん検診受診率の向上を目指し、がん予防知識の普及啓発、受診勧奨を行うとともに、検診を実施し、がんの早期発見、早期治療を促進してまいります。がん検診などの様々な予防施策や普及啓発に要する経費に充てるため、豊島区がん対策基金を設置しましたが、この基金を活用し、区民の皆様ががんに対する正しい知識を持ち、生活習慣の改善などのがん予防に努め、検診を積極的に受診する風土の創出に取り組みます。がん検診については、来年度は、まず子宮頸がん、乳がんの受診勧奨を重点的に行い、受診率向上を図ります。また、男性特有のがんで、高齢化に伴い発症が増加している前立腺がん検診を新たに実施いたします。昨年、国から日本脳炎ワクチン及び麻しん予防のためのMRワクチン接種に関する勧奨などへの取り扱いが示されました。そこで、来年度は対象の方に日本脳炎ワクチン及びMRワクチン接種を強く奨励いたします。また、妊婦検診検査の項目にヒト白血病ウイルス1型の検査を加えるとともに、経済的負担の軽減を図ります。また、来年度は肺炎球菌ワクチン接種の助成を開始いたします。保健衛生関係事業について、来年度は総額約2億8,000万円の新規拡充予算を措置し、予防接種やがん対策を健康施策の柱として積極的に取り組んでまいります。


 次に、新庁舎について申し上げます。


 昨年の第4回定例会におきまして、庁舎の位置変更条例を可決していただきました。庁舎の改築については、遠く昭和57年に作成された豊島区基本計画に、既に課題として取り上げられていました。平成元年度以降は全庁を挙げた検討が進められているとともに、建設資金を充てるための基金積立額も、平成5年度末には191億円にまで達したものでありました。しかし、財政状況の急激な悪化と基金の運用により、平成9年度に予定されていた新庁舎の建設着工は断念され、今日に至ったのであります。このように、積年の課題であった新庁舎建設は、位置変更条例が可決されたことにより、大きな第一歩を踏み出すことができたのであります。これまでご指導くださいました議員各位に対しまして、心よりお礼を申し上げます。


 一方、これまでの間、区民の皆様のご理解をいただくべく、あらゆる機会を捉えて説明の場を設けてまいりました。昨年9月に新庁舎整備推進計画案をお示しをして以降でも、その数は70回を数えたのであります。さらに2月2日には、再開発組合により、建築によって影響を受ける地域の住民の方々への説明会が開催されました。区といたしましても、新庁舎の建設に当たり、お一人でも多くの区民の皆様にご理解をいただくために、今月下旬に、東・西・中央において、報告会を開催することにいたしました。一方、新庁舎の整備に関しましては、区民自治の拠点機能の確立、防災拠点機能の強化、区民サービスの向上、環境保全・自然エネルギーの利用を基本方針として、整備推進計画の実現に向けて全庁挙げて取り組んでまいります。また、新庁舎整備を契機として、飛躍的なサービスの向上を図るためには、これまで開発が遅れていた情報システムを着実に整備するとともに、ホスピタリティあふれる窓口の実現には、何よりも職員一人一人の意識改革と、接遇のスキルアップを図る必要があります。しかし、これらは一朝一夕に実現し、身に付くものではありません。直ちに実践してまいりたいと考えております。また、区民事務所においても、新庁舎と同様のサービスを提供することができるようにするなど、区民の皆様にとって、身近な地域における行政サービス機能の充実についても検討を進めてまいります。


 次に、環境について申し上げます。


 日本一人口密度が高く、商業業務などの様々な機能が集積する豊島区は、エネルギーや資源の大量消費地であり、同時に大量のCO2を排出する都市でもあります。この街で今を生きる私たちにとっての将来の世代に対する責務として、環境への負荷を最大限減らす努力を続けてまいります。太陽エネルギー機器及び高効率給湯器に関する家庭への助成件数は順調に増加していますが、さらに家庭を対象とする省エネ診断を実施し、CO2削減行動を促進させたいと考えております。この産学官連携による家庭の省エネ診断事業は、大正大学と協定を締結し、23年度からカリキュラムの一環に取り入れて、学生のサポーターを養成し、区民ひろば等の施設を拠点に集団診断を実施するものであります。24年度には産業界へ連携を拡大してまいりたいと考えております。3年目を迎えたグリーンとしま再生プロジェクトは、学校、区施設に続き、区立公園・児童遊園で、引き続き1万本の植樹を実施いたします。メイン会場となる南長崎はらっぱ公園での植樹式を、国際生物多様性の日であります5月22日に開催いたします。この開催に当たっては毎日新聞社にもご協力をいただき、生態系保全への関心を豊島区から全国へと発信するようなイベントにしたいと考えております。


 豊島区路上喫煙及びポイ捨て防止に関する条例が、5月30日のゴミゼロデーに施行されるのにあわせて、キャンペーン実施や看板設置、シール貼付などにより、路上分煙の徹底を図ります。また、池袋駅北口の指定喫煙所の移設整備を行うとともに、指定喫煙所周辺での迷惑喫煙防止に取り組み、安全と美観の確保を図ってまいります。日本一の高密都市であり、緑が少ない豊島区であればこそ、グリーンとしまの再生に向けて挑戦を続けてまいります。議員各位におかれましても、これら事業の成功に向けてご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。


 次に、文化政策と産業振興について申し上げます。


 文化政策の分野では、あらゆる政策にわたり地域の総合力を結集して、さらなる文化活動を進めてまいります。そして、文化の力で街のイメージを大きく変えようとする取り組みを展開していきたいと考えております。豊島区ゆかりのまんが文化を観光資源として、来街者や区民の皆様がまんが文化に触れる機会を増やすことにより、街の魅力を高め、活性化につなげてまいります。南長崎では、トキワ荘通り・協働プロジェクトと協働し、赤塚不二夫氏が仕事場とした紫雲荘を拠点に、地域イベントや漫画家を志望する若者への支援に活用するなど、新たな事業展開をいたします。また、椎名町駅の駅舎改修に伴い、駅舎入口近辺に文化資源等の案内板の設置、ギャラリー展示やトキワ荘に関する壁画の設置などにより、新たな地域の文化を発信していきます。旧大明小学校に生涯学習センターを整備するに当たり、モデル事業として、NPOと協働して若者支援プログラムを実施いたします。ニート、引きこもり等の若者の状況が社会問題化している中で、先駆的な取り組みとなるものと考えております。一方で、不況が長引く中、消費不振による価格の引き下げなどの影響が、中小企業、商店街に大きくのしかかっております。今後とも中小企業並びに商店街施策の積極的な展開により、地域経済の基盤強化に取り組んでまいります。景気の先行きが不透明な中、中小企業の資金繰りを支援するため、緊急の経済対策として拡充してまいりました小規模零細企業者を対象とする利子補給や信用保証料に関する補助を、来年度においても継続してまいります。また、商店街連合会主催の商人まつりの事業補助を増額するとともに、商店街連合会、観光協会それぞれの周年事業の開催を応援いたします。中小企業からの相談に加え、販路拡大、新商品・サービスブランドの構築などを支援するとともに、としまビジネスサポートセンターの需要増に対応するため、ブースを拡充するとともに、相談機能強化のため、巣鴨信用金庫からのビジネスコーディネーターに加え、東京信用金庫、東京税理士会豊島支部などから、相談員の派遣を受け、より充実してまいります。このように、様々な角度から地域ぐるみ区内産業の活性化を推進してまいります。


 次に、都市再生について申し上げます。


 先日の2月2日、東池袋四丁目第二地区市街地再開発事業の竣工記念の式典が開かれました。平成19年に先行して竣工したライズシティ池袋とともに、豊島区で初めての再開発事業は、22年余の歳月を経てここに完成したのであります。事業の実現に力を注がれた関係者の皆様には衷心より敬意を表したいと存じます。同地区は、今後の池袋副都心の都市再生をリードするものであると考えます。また、この事業で開通した地下通路は、東池袋駅から2つの再開発地区、そしてサンシャインシティまでつながるもので、やがては豊島区の新庁舎を含む南池袋二丁目A地区市街地再開発事業へと接続することになります。新たな歩行者ネットワークは、今後、新庁舎、現庁舎地周辺を結ぶことで、これまで池袋駅とサンシャインとの往復であった人の流れが大きく回遊性を持つことになり、大きなにぎわいの第一歩が記されました。昨年6月に策定した池袋副都心ガイドプランに沿って個別プロジェクトを推進し、あうるすぽっと、アウルタワーのような拠点を魅力ある線でつなぎ、面として池袋副都心のまちづくりに取り組んでまいりたいと考えております。


 南池袋二丁目A地区市街地再開発事業については、再開発組合に対する支援及び指導を行うことにより、平成26年度の工事完了に向けて権利変換計画の認可に続き、建物等除去工事を経て建物本体工事に着手するなど、再開発事業を推進してまいります。歴史を刻んだ現庁舎地周辺の自治の記憶と文化を後世に伝え、さらに魅力あるまちづくりを進めるため、地元商店街などが参加する検討会を設立し、ワークショップの開催により、地元の意向を把握しながら現庁舎周辺地区のまちづくり方針を策定いたします。一方、大塚駅では、南北自由通路の完成に続きまして、駅から街へとつながる歩行者優先のまちづくりを展開いたします。南口地下自転車駐輪場整備計画と連携してバス・バースやタクシー・プールの再編、都電との連絡など、南口駅前広場整備に向けた実施設計を行います。去る1月29日、目白地域みちとまちの会主催による目白・まちづくりフォーラムが開催されました。目白地区のすべての町会や有志の皆様が主体となって、コミュニティ道路づくりなど生活道路の安全・安心と住環境の改善に向け積極的に取り組む姿は、豊島区が目指すセーフコミュニティの精神に通じるものであります。この地区では、平成24年8月から、目白小学校の子どもたちが、旧真和中学校の仮校舎に通う予定でありますので、この機会を捉えまして、目白地区の生活道路の安全確保を手始めといたしまして、コミュニティ道路として積極的に取り組んでまいりたいと考えております。また、廃止される予定でありました江古田二又と池袋西口間の路線バスの運行経費の補助を行うことで、既存路線を延伸し、区西部地域からサンシャイン・東池袋方面をつなぐ路線バスを実施いたします。人と環境に優しい交通のあり方については、引き続き、LRTを中心とした新たな地域公共交通システムの導入の検討をあわせて進めてまいります。池袋副都心と各地域を一体として捉え、バランスよくきめ細かなまちづくりを推進し、池袋副都心の再生と魅力ある地域拠点を整備することにより、商業・業務、住宅、ものづくりなど、区全体の質的な生活環境の向上を図ってまいります。


 最後に、セーフコミュニティについて申し上げます。


 昨年2月に取組宣言を行って以降、5月には地域活動団体の皆様などからなる推進協議会を設置するとともに、徹底したデータ分析を行い、けがや事故等の実態を明らかにしてまいりました。来年度は、認証取得に向け、まさに正念場を迎えることになります。昨年11月に取りまとめたセーフコミュニティ認証に向けた基本方針で設定をした10項目の重点テーマを中心とする取り組みを進め、セーフコミュニティの認証を取得することで、世界に誇れる安全・安心創造都市の実現につなげていきたいと考えております。事故やけがは偶然の結果ではなく、原因を究明することで予防できるというセーフコミュニティの理念を推進力として、安全の向上を担う様々な団体、組織などによる、分野の垣根を超えた横断的な連携・協働を広げながら、安全と健康の質を高めるまちづくりを継続的に展開いたします。セーフコミュニティはコミュニティ・地域の絆の回復という豊島区にとっての最も基本的な課題に対応するまちづくり活動であります。コミュニティ政策との連携を強化するとともにセーフコミュニティ活動を通じて、政策相互間の横の連携を深めてまいりたいと思います。地域を愛する人々が一致結束して助け合う。豊かな人の絆が暮らしの安心を支えているような、そんな街をセーフコミュニティの取り組みを通じて、区民の皆様とともにつくり上げていきたいと考えております。議員各位におかれましても、より一層のお力添えをくださいますよう、お願い申し上げます。


 いよいよ、この壇上で、議員の皆様の前でお話をすることは、今期最後の機会となってしまいました。感無量であります。「未来は自分の夢の素晴らしさを信じる人のものである」という言葉があります。自らが信じる目標の達成を信じて立ち向かうことが大切であります。不退転の決意で臨んだ者だけが夢を叶えることができるのであります。豊島区は、さらなる成長の可能性を持つ都市であります。しかし、社会経済の先行きに閉塞感が漂っているから、不透明感が深まっているからと、萎縮し立ち止まってしまったのでは、夢を実現する可能性を自ら摘み取ってしまうことになってしまうのではないでしょうか。立ち止まることなく、豊島区が持つ大きな可能性を伸ばすことに邁進を続けることでしか、輝かしい未来を手にすることはできないと確信しております。私は身命を賭して、今後も挑戦を続けてまいる覚悟でございます。この思いを胸に深く抱きながら3期12年を全うし、新たなる気概をもって、4月の区長選に臨んでまいりたいと考えております。議員の皆様お一人お一人に、心から厚く感謝とお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例14件、予算7件、その他6件、合わせて27件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。