平成23年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成23年第2回区議会定例会を招集申し上げましたところ、ご出席を賜りまして、感謝を申し上げます。


 今定例会は、議員各位におかれましても、また、私にとりましても、区民の皆さんの厳粛なる信託を受けての新たな任期がスタートする節目の定例会であります。区議会におかれましては、この度の選挙で、新たに8名の方々を議席にお迎えし、会派の構成も改まりまして、こうして一新した区議会の皆様の前に立ちますと、新しい息吹を感じ、新鮮な緊張感を覚えます。政治家として、主義主張はそれぞれ異なるとは思いますが、区民の皆さんの幸せを願う熱い気持ちは同じであろうと思います。自律した基礎自治体が政策を競い合い、豊かな価値を創造し合うことで、日本全体の活力を生み出していく分権の時代にあって、議会の役割はますます重く、大きなものとなっております。区民の皆さんの意思を区政に的確に反映させるために、ぜひとも活発な議論を展開させていただきたいと考えております。皆様のご活躍を期待を申し上げます。


 今回の選挙では、池袋副都心のあり方について、さらには豊島区積年の課題であります新庁舎建設の是非が争点として取り上げられました。新庁舎建設に関しましては、これまで5年にわたって区議会の皆様とともに検討を重ね、また、100回を超える多くの区民説明会を開催してまいりました。その間に、都市計画決定と事業の認可手続きを経る中で、地権者全員の同意も得まして、また、資金計画や庁内レイアウトを含む整備方針を策定し、その上で昨年の第4回定例会で、庁舎の位置変更条例を特別多数による議決をいただいたことで、私は新庁舎整備に関する様々な課題はすべて克服できたと考え、新庁舎問題の方向性は既に決定されたものと認識しておりました。しかし、このような選挙戦となったことを受け、私は、新庁舎整備計画を区民の皆さんに改めてご理解いただく好機と捉え、この問題を正面から受け止めることとしたのでございます。私は、これまでの3期12年にわたって取り組んできた、豊島区を再生させるという固い信念の下に進めてきた区政を、次の4年間で確実なものにし、基本計画に描かれた豊島区の将来像を実現するための集大成と位置付けていることを、選挙期間中、区内各地で、数多くの対話を重ねながら、全力を挙げて訴えてまいりました。そして、この度の投票において、区民の皆さんから厳粛な信託を賜り、引き続き重責を担わせていただくことになりました。


 私は、この選挙結果を、今までの区政運営が、そして何よりも、新庁舎整備計画を含めた池袋副都心のまちづくりの方針が、区民の皆さんから一定のご理解を得たものと受け止めております。このような選挙結果を踏まえ、自信を持って区長4期目に臨み、区政運営の集大成の実現に向かって、私の決意を改めて申し上げます。


 まず、マニフェストに掲げた、安全・安心を創造し続けるまちと、文化と品格を誇れる価値あるまちという豊島区が目指す都市像を、着実に実現してまいります。区民の皆さんは、区民生活の基盤をなす基本的な施策である福祉と教育を初め、防災・治安、健康、子育て、コミュニティの施策が総合的に適切に実施されることによって、初めて生活の安心を実感することができるのであります。一方、豊島区が持つ区再生を実現する鍵となる施策を最大限に生かすこと、即ち、文化、環境、都市再生の3本柱、課題施策に取り組むことで、新たな価値と活力を創造し、そこから生まれる経済力と財政力を持って、区民生活の基盤をなす安心戦略の水準を押し上げていくことも必要であります。このような基本施策と課題施策が好循環をつくり上げることによって、2つの将来像は必ず実現されるものと考えております。この将来ビジョンを実現するためのプロセスとして、区議会の皆様のご協力の下で、真に効果的な政策を大胆な発想でつくり上げ、区の全庁組織を挙げた総合力と、区民の皆さんとの協働により、着実に実行していくことが極めて重要であると私は考えております。このような取り組みは、今月、既に3つの事業として実を結びました。6月4日の地域防災フォーラムの開催、10日、11日のセーフコミュニティの事前審査、そして18日のがん対策基金チャリティコンサートの開催は、いずれも1,000人を超える多くの区民の皆さんの絶大なるご協力の下で実施することができました。内外の反響も大きく、一定の成果が得られたものと受け止めております。今後も新たな価値を生み出す先進的な事業の展開は、区民の皆さんとの協働を基本として取り組んでまいりたいと思います。


 また一方で、このような将来の課題を着実に実行していくためには、その推進力として、盤石な財政基盤を構築することが不可欠でございます。何よりも、健全な財務体質を維持し、効率的なサービスの提供体制を整えることは、安定的で持続可能な行財政運営を構築するための重要な要素であります。区財政を振り返りますと、バブル経済崩壊後、経常的歳入が減少したにもかかわらず、身の丈を超えた規模を維持するため、財政調整基金の取り崩しにとどまらず、特定の目的のために積み立てた基金を運用と称して消費するほか、起債を大幅に増加させるなど、あってはならない乱脈経営に陥った結果、引き起こされた深刻な財政危機を脱するのに、12年間にわたります血のにじむような苦労を必要としたわけでございます。こうした経験から、歳入環境の動向を一段と注視しつつ、財政危機を二度と招くことのないよう、身の丈に合った財政運営を引き続き堅持し、財政の健全化をさらに推進することで、景気に大きく左右されない安定・継続した盤石な財政基盤を構築してまいります。


 しかしながら、長いトンネルを抜け出たとは言え、私たちの目の前には、必ずしも平坦な道が用意されているわけではございません。現在進行している地方分権改革では、基礎自治体に対して、これまで以上に厳しく自己変革を行うことが求められております。さらに、この度の東日本大震災は、その災害の大きさから、我が国の経済に大きな影を投げかけているばかりではなく、今なお終息しない原発事故の問題によって、これまでの日本エネルギー政策の是非が大きく問われており、その影響は、私たちの日常生活のあり方に大きな変容を迫るほどの問題を投げかけております。これらの影響によりまして、経済情勢が激しく変化し、社会の構造そのものが大きな転換を迎える時期にあっては、自治体の経営も常に先を見据え、自ら厳しく律しながら進むべき方向を選択して、道を切り開きながら進まなければならないのであります。したがいまして、これからの区政運営は、従来の延長線上に立った発想では決して解決できない、多くの課題に直面することになると思います。しかし、私は決してこれまでの区政の流れを止めることなく、その課題の解決に積極果敢に挑戦し、自らの道を切り開くためにも、今後もさらなる構造改革に取り組み、揺るぎない自治体経営の信頼を確立するとともに、豊島区の将来像の実現に向けて、確実な一歩を踏み出してまいりたいと思います。


 次に、池袋副都心における都市再生の今後の展開について申し上げます。


 池袋は、首都東京の多様な機能集積の一翼を担う副都心として、区民の皆さんはもとより、東京北西部や埼玉方面へ広がる地域に暮らす人々の生活や交流を支える拠点としての役割を担っております。これまで池袋では、昭和53年にサンシャインシティが竣工して以来、駅西口では東京芸術劇場やメトロポリタンプラザビルなどの開発が行われ、東口では東池袋四丁目地区の再開発により、区立中央図書館とあうるすぽっとを含むライズシティとアウルタワーが完成しております。しかし、まだ副都心の役割を担うには十分とは言えない状況にあります。都心部の街並みが急速に変貌していく中、池袋のまちづくりは大きく遅れをとったと受け取られているのが現状であります。その一方で、生活感があり、気安さでイメージされる人間的な生きた魅力が残ったことで、次の時代に向けた価値ある都市づくりをこれから本格的に行うことができる、いわばチャンスを得ているものと考えております。こうした中、先日の6月20日には、斬新なデザインと、目に見える形で治安の強化を訴える池袋駅西口交番も開設されました。日本の人口減少と超高齢化社会、地球環境問題への対応、さらには社会経済情勢の急激な変化の中での価値ある都市づくりとは、安全・快適で活力ある街を築くとともに、文化や環境、健康などのソフト面の政策課題も積極的に解決していくものでなければならないわけであります。そのため、地域の知恵ややる気を生かし、さらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。


 今後の都市づくりを、池袋副都心の交通環境から見渡しますと、かつてない大きな変化が訪れます。それは平成31年に予定される環状5の1号線地下道の開通であります。これを機に、池袋副都心周辺の大きな交通ネットワークができ上がり、東口駅前に流入していた通過交通が激減することが予想されます。この変化を都市再生のチャンスに転換しなければ、もう二度と池袋は立ち上がれないとさえ感じております。去る6月15日に開会されました豊島副都心開発調査特別委員会で報告させていただきました池袋副都心交通戦略は、新庁舎整備が軌道に乗り、現庁舎周辺地区のまちづくりが動き始め、そして造幣局周辺のまちづくりが事業化に向けた新たな局面を迎え、さらに環状5の1号線の開通による交通環境の変化によって都市再生が実現する姿を取りまとめたものでございます。


 私は、このような池袋の交通環境の変化を千載一遇のチャンスと捉え、何としても都市としての新たな発展への道筋をつくり、この池袋副都心を、人と環境に優しく、東京の発展の一翼を担う安全で快適な都市空間として再生させ、そして、私にはこれを次の世代へ引き継いでいく責務があるわけであります。豊島区の中心である池袋が輝きを増すことによって、目白、雑司が谷、高田、そして東部地区では大塚、巣鴨、駒込、西部地区では長崎、椎名町、千川など、区内の様々な地域の価値と魅力が大きく底上げされ、地域文化を大切にしながら、特色あるまちづくりが生かされていくものと考えております。また、池袋副都心の都市再生を実行する前提として、池袋のグランドデザインを描く上では、それぞれのプロジェクトを総合的にコーディネートしていただく外部の有識者がぜひとも必要であると考えまして、今までにない、全く新しい発想から提言等をいただくために、海外の機能的な組織の形成や、歴史や文化を取り入れた都市のデザインなどにご造詣の深い、建築家の隅研吾先生に参与として加わっていただくことに至りました。これまで、参与として区政に参画していただいておりますのは、文化政策の分野では、評論家の小田島雄志先生と粕谷一希先生かいらっしゃいますが、様々な貴重なご提言をいただき、それが功を奏して文化創造都市として文化庁長官表彰につながったものと受け止めております。今回も、隅研吾先生には、池袋の持つ魅力、その歴史性や将来性など、様々な角度から貴重な提言や斬新なアイデアをいただけるものと期待しております。


 次に、新庁舎等の整備について申し上げます。


 新庁舎整備を含む南池袋二丁目A地区市街地再開発事業は、これまで順調に進んで、今月より既存建物の解体工事に入り、来春には新築工事に着手する予定であります。再開発事業が建設工事の段階に進んで、いよいよ新庁舎の完成が確実なものとなってまいりました。この度の東日本の大震災では、多くの建物が被害を受けましたが、果たして、これから建設される新庁舎は本当に大丈夫か、区民の皆さんからご心配をいただきました。早速、建物の設計を統括する、日本設計社長、六鹿正治氏をお呼びし、技術的なお話を伺いました。その内容は、先日の広報としま6月5日号で区民の皆さんにもお知らせいたしましたが、今回のような巨大地震も想定して耐震設計を進めており、安心してほしいとの力強い太鼓判をいただきました。しかしながら、この度の大震災の発生を踏まえ、細部については様々な検討や見直しも必要と考えております。その一つとして、建物の管理規約の中に、防災に関する事項を盛り込むことも必要と考えておりまして、近々組合と協議をしてまいります。また、新庁舎整備を契機として、あらゆる分野において、豊島区が頼れる行政としての質を飛躍的に高めることができるよう努めてまいりますが。新庁舎と同時に竣工を予定しております西部複合施設では、文化の拠点としての機能を充実させることのみならず、西部地区の皆さんにとって、本庁舎と同様の、今まで以上に身近な地域における行政サービス機能が果たせる施設として、一層充実をしてまいります。


 次に、教育について申し上げます。


 東日本大震災からの復興と日本の国力の再生を目指す上で、今後の教育の果たす役割は重要でございます。未来を担う子どもたちに確かな学力を身につけさせ、豊かな人間性を育み、そして健やかな心と体を育てる、活力と魅力ある教育を推進し、誰もが子どもを豊島区で育てたい、学ばせたいと願う教育都市としまの実現に向けて、防災教育や地域防災の拠点としての学校のあり方も含め、教育内容の充実強化と、教育環境の整備を支援してまいります。まず、本年4月から、としま土曜公開授業が始まりました。新学習指導要領の趣旨を具体化するための授業時数の確保と、学校教育を広く保護者や地域に開く、新たな展開であります。学力の向上につきましては、本年度、文部科学省は全国学力テストを中止いたしましたが、本区では、OECD(経済協力開発機構)が提唱する学習到達度調査、いわゆるPISAを参考として、独自の学力・学習状況調査を引き続き実施することとして、去る4月12日には全中学校の全学年で、4月26日には全小学校の3年生から6年生の全児童で実施いたしました。今月末には結果が児童生徒に伝えられ、また、8月末には学びの連続性を目指した各小・中学校の授業改善計画が作成されることになっておりまして、この事業が児童・生徒の学力向上につながるものと期待しております。また、これからの知識基盤社会や高度情報化社会に対応した教育環境の整備として進めております学校改築につきましては、前期計画に基づき、西池袋中学校の新校舎が平成24年8月の開校を目指して順調に工事が進められているほか、目白小学校では、つくる会の提言を基に基本設計を終え、実施設計の段階に入っております。また、池袋第三小学校や池袋本町地区の小中連携校につきましては、それぞれ地元で考える会が組織され、いよいよ基本構想づくりがスタートいたします。省エネ効果の高い最新の設備を備えたエコスクールの実現と、地域防災の拠点づくりも兼ねて学校改築事業を着実に進めるとともに、今後は平成30年度以降の改築計画も策定してまいります。さらには、全校に設置したデジタルテレビや電子黒板、全教員向けの校務用パソコン、校内LANなど、ICT機器等を効果的、効率的に活用するため、情報通信ネットワーク及びデータベースの一元化を図るなど、学校ICT環境整備事業の拡充を支援してまいりたいと思います。


 次に、電力需給制限への対応と環境都市づくりについて申し上げます。


 福島第一原子力発電所の事故に伴いまして、この夏の電力不足への対応について、政府は、国民・産業界が一丸となって取り組む夏の節電方針を打ち出しました。特別区の多くは、電力需要の極めて多いにもかかわらず、重要施設が多いとの理由から、これまでは計画停電の対象から外されてきました。したがって、この夏、計画停電の再開や大規模停電の発生を回避するためにも、特別区は、他の自治体に率先して、より一層の取り組みを行う姿勢を示す必要があります。そこで、豊島区では、区全体として、政府の方針である15%を上回る削減目標を設定することとし、過日、電力不足への対応方針と、それに基づく電力削減アクションプログラムを策定しまして、全庁が一丸となって取り組む節電対策を取りまとめたところであります。業務の縮小などの措置を講じながら、一方で必要な区民サービスを維持すべく、様々な工夫を講じてまいりますが、目標の達成のためには、必要に応じて、公の施設の輪番による休館や、新たな休館日の設定などに踏み込まざるを得ないものと考えております。また、安全・安心の観点から、街路灯・防犯灯は新たな規制は行わないとするほか、高齢者や幼児の命を守る施設については、運営に支障のない程度にとどめることとし、不足する部分を他の公的施設全体で補うことといたしました。しかしながら、節電は行政だけでなし得るものではございません。家庭や事業所での取り組みが非常に重要でありますので、民間部門の省エネ・節電への啓発に、一層力を入れる必要があります。本区では、これまでも産官学連携による家庭の省エネ診断や中小企業への支援策として、都内中小クレジットを活用したスキームを立ち上げるなど、他の自治体にはない先駆的な取り組みを行ってまいりました。また、先般の臨時議会での補正予算では、エコ住宅普及事業や、集合住宅向けCO2削減対策、太陽光発電システム設置助成事業などの拡大を図ってまいりました。これに加えまして、小・中学校の子どもたちが環境問題について考えるきっかけとするために、また、この夏に家族ぐるみで取り組む節電のムーブメントを広げるために、子どもたちから家庭の節電アイデアを募集するなど、教育委員会とも連携して、取り組みのすそ野を広げていきたいと考えております。今回の電力危機は、決してこの夏だけの一過性のものではございません。原発事故をきっかけに、国のエネルギー施策そのものの転換が叫ばれている今、この電力危機問題をエネルギー消費のあり方や、一人一人の暮らし方を見詰め直す好機と捉え、官民の連携を強化し、これまでの「グリーンとしま」再生プロジェクトやクールシティ推進事業、エコアクション21取得などの事業のさらなる充実を図るほか、都市の熱エネルギーの転換を図る環境配慮型の副都心の形成など、首都東京のモデルとなるような、持続可能な環境都市づくりに努めてまいります。


 次に、放射線量の測定について申し上げます。


 福島第一原子力発電所事故が、チェルノブイリ原発事故に匹敵する事故と報じられる中で、放射能による汚染について、様々な憶測情報が流れてきました。放射能は直接に目で見、肌で感じることができず、また、その汚染による健康被害が数十年後に現れる可能性もあることから、様々な風評等も先行し、混乱する情報の中で、大変不安な思いをされた区民の皆さんからは、区の対応を求める多くの声が寄せられておりました。これまで、放射線量の測定は東京都が行うものと位置付けられてきましたが、都の測定は測定箇所が少ない上に、最も被害を受けやすい子どもたちの身近な場所での測定ではなかったために、区民の皆さんの不安を解消する対応としては十分ではありませんでした。また、区民の皆さんに安心して生活していただくためには、区といたしましても、独自に測定して、一日も早く正確な情報を公表し、放射能汚染にまつわる誤解や混乱を解消して、皆さんの健康被害に対する不安を払拭することが急務でありました。この度、ようやく放射線測定機を入手することができ、今月上旬から朋有小学校での測定値を公表したところでありますが、多くの区民の皆さんのご要望にお応えして、測定箇所をすべての保育園、幼稚園、小・中学校と区内5カ所の主要な公園に拡大することに加えまして定期的に土壌と砂場、そしてプールの放射線量についての分析を専門の業者に委託いたします。測定結果は迅速にホームページや広報、さらには、安全・安心メールによる配信などで区民の皆さんにお知らせするほか、区といたしましても、測定で得られた数値を多様な角度から比較検討を加えまして、区民の健康に被害を及ぼすおそれがあると判断された場合には、ただちに安全な措置を講じることができるように、危機管理体制の強化に努めてまいります。今後とも、区民の安全と安心を守るという区の基本的な使命を果たすために、迅速に必要な方策を講じてまいりたいと考えております。


 次に、セーフコミュニティについて申し上げます。


 6月10日、11日には、これまで1年にわたる取り組みの中間報告として、WHO認証センターの海外審査員が来日し、事前調査が実施され、いよいよ本区の取り組みが国際的な評価を受ける段階に入りました。昨年12月から、10項目の重点テーマに即して対策委員会を設置し、地域の皆さんとともに検討を重ね、取り組んできた成果をそれぞれの対策委員会に参画されている区民代表の皆さんに発表していただきました。2日間にわたる事前審査を終えた後の審査員の講評では、様々な外傷事故のデータを収集し、予防のために詳細な分析を加えている点、今回の東日本大震災を踏まえて地震に備えた本区の防災対策が他の国々に比べて進んでいる点、障害者が主体的に参画したバリアフリー対策などが高く評価されました。とりわけ、審査員に最も強い印象を与えたのは、区民ひろばでの活動でありました。地域の皆さんが主体的に地域の課題に向き合い、互いに協力し合って地域の安全に取り組む拠点としての区民ひろばは、世界のセーフコミュニティ活動の一つのモデルになってほしいと、大変力強いエールをいただきました。まさに、今まで私たちが進めてきた区民ひろばが、セーフコミュニティの拠点として位置付けられたのでございます。また、個別の重点テーマでは、委員の方々から様々な指摘事項や貴重なアドバイスもいただいておりますので、これらを参考といたしまして、本区の取り組みに一層磨きをかけ、来年1月に予定されております本審査までに改善を図ってまいりたいと考えております。私は、この度の事前審査を通じて、セーフコミュニティの取り組むことが、いかに大きな意義を有しているかということを、改めて実感いたしました。この取り組みは、誰もが願う共通の価値である安全・安心をキーワードとして、地域で暮らす人々が、自ら地域の現状を様々な角度から分析し、その中から地域の課題を抽出して行政とともに解決策に取り組み、その成果を正しく検証していくといった科学的な手法がプログラムとして組み込まれております。そして、5年ごとの認証取得という国際基準に基づく審査を経ることによって、地域の安全・安心の質が一層高まると同時に、区民ひろばを中心として、地域の人々による支え合いのネットワークが、さらに一段と強化されることになるのであります。世界でも有数の大都市東京の中で、日本一の高密都市である本区が、少子高齢化時代にあって、複雑多岐にわたる多くの課題を抱えている大都市だからこそ、このセーフコミュニティに挑戦する意義は、治安・防災から健康や福祉に至る地域の問題を克服できる仕組みとして、地域で暮らす人々の強い絆と支え合いの輪を再生させ地域力を高めることにあるわけであります。即ち、セーフコミュニティの取り組みは、無縁社会と言われる都会の病理現象を克服するための大いなる挑戦なのであります。今、本庁舎の1階ロビーにおきましては、区民ひろばから広がるセーフコミュニティの輪と題して、パネル展を開催しております。私は、来年の区政施行80周年という節目の年に、セーフコミュニティの認証取得に合わせてセーフスクールの認証取得も果たし、それを契機といたしまして、本区の取り組みが世界のモデルと言われるように、さらなる安全・安心創造都市の実現に向けて、皆様とともに全力を傾注してまいります。


 次に、政策発信力の強化について申し上げます。


 さきにも述べましたとおり、私はこれからの4年間をこれまでの政策の集大成として、文化と品格を誇れる価値あるまちと、安全・安心を創造し続けるまちの2つの将来像を実現するための基盤となる具体的な政策をこの4年間で仕上げ、これを次の世代に引き継いでいかなければならないと考えております。そのためには、さらに一層、政策形成力を高めて、これまでにない発想力に富んだ政策を練り上げて、それらを大いに内外に発信して、その当否について区民の皆さんの論議を呼び起こす端緒となるような政策発言力の強化が必要なのであります。この度の選挙戦を通じまして、政策の意図や私の真意がなかなかマスコミに伝わらないことを痛感した経験を踏まえまして、これからは、私自身自らの言葉で積極的に政策を語り、私の考えを行動で示してまいりたいと思っております。そこで、まず初めに、今期から月例の記者会見を行うことといたしました。堅苦しい形式的な会見にならず、記者の皆さんと自由闊達な意見交換ができることを重視いたしまして、来月から毎月実施してまいります。さらに、政策の意図や私の考えが端的に区民の皆さんに伝わるように、また、私の日々の行動も明らかになるように、区長室ホームページの充実を図ります。このような発言力強化の前提といたしまして、例えば、現場の第一戦で従事する若手職員の問題意識から、あるいは女性のしなやかな感性から、今までにない全く新しい政策が生まれてくるような、自由度のある調査研究が進む職場風土を醸成し、未来志向の人材の育成に努めてまいります。


 「最善のものを希望せよ、しかし最悪のものに備えよ」と西洋のことわざにあります。私は、この言葉をこれからの4年間の私の信念として胸に刻み、区政の舵取りを積極果敢に推進してまいります。新庁舎の整備を含む池袋副都心の再生や、安全・安心のまちづくりなど、区政は今、新たな挑戦に向けて、スタートラインに立っています。この豊島区が日本一の高密都市でありながらも、安全と安心が確保され、価値ある都市に生まれ変わり、歴史と文化を大切にしながら将来の世代に引き継がれていくためには、これから10年の都市づくりにおいて、内外の英知を結集し、まさに最善のものを求めて将来ビジョンを描く必要があります。私はこのビジョンを、10年後の都市像として区民の皆さんに明確にお示しできるよう、最善の努力をしてまいります。


 一方で、東日本大震災の教訓は、この大都会が抱える多くの課題を浮き彫りにして、帰宅困難者の問題を初め、都市の耐震性の向上や不燃化の促進など、今後の防災対策上、常に最悪のものを想定しなければならないことを学びました。区民の皆さんの生命・財産など、生活のすべてを守る、責務のある行政の舵取りをお預かりする立場として、最悪のものに備える心構えを肝に銘じてまいる所存でおります。改めて、本日の所信表明のまとめの決意として、26万7,800人の区民の皆さん一人一人が、安全・安心を肌で感じて、住んでよかったと誇りに思える豊島区の実現に向けて、これまで以上に強い信念と情熱を持って、そして強力なリーダーシップを発揮して、区政運営に渾身の力を傾けてまいりますので、議員各位におかれましては、ぜひともご協力をくださいますよう、お願い申し上げる次第でございます。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例6件、補正予算2件、その他3件、合わせて11件であります。各案件につきましては、後程、日程に従いまして副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。