本日、ここに平成25年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。
平成24年度は区制施行80周年記念としての目白押しのスケジュールが続く中、議員各位におかれましては、ご多忙中にも関わらずご参加をいただきました。謹んで御礼を申し上げます。
80周年記念として冠を付した事業は、これから年度末に向けて予定されているものを含めて、330件を超える事業がラインアップされています。このうち、区が主催あるいは、共催で行う事業は1割にも満たず、全体の約9割、300を超える事業は、区民のみなさんをはじめ民間団体のみなさんが自ら主催して実施していただいた事業であります。
改めて、区民のみなさんが、豊島区とその未来にかけていただいたお気持ちの大きさを想うと、私の責任の重さを痛感せざるを得ません。
今後の区政運営に臨むにあたっての決意を新たにしているところであります。
それでは、今定例会の開会にあたりまして、区政にあたる、私の所信のいったんを申し上げ、議員各位並びに区民のみなさんのご理解とご協力を賜わりたいと存じます。
1.平成25年度の施政方針について
まずはじめに、平成25年度の施政方針について申し上げます。
第一に、昨年のセーフコミュニティの国際認証取得を機に、さらに区民の安全・安心を創造することを区政推進の基本としてまいります。
セーフコミュニティを横糸として、全ての施策を再構築し、安全・安心創造都市を区の施策の集大成としてとらえるという豊島区ならではの試みが、区民のみなさんに浸透するとともに、そのことによって、私たちの発想が大きく変わり、未来に向けてのはずみになったと考えています。
安全・安心の創造こそ、セーフコミュニティの歩みを確実なものとし、また参加と協働によるまちづくりを進める上でもきわめて重要な要素であります。
そのため、セーフコミュニティの実現と安全・安心創造のキーステーションとなる地域区民ひろばを「自治の推進に関する基本条例」中に位置付けます。
今後、区民ひろばをさらに大きな木に育て、自信に満ちた区民から安全・安心な都市として信頼される豊島区を実現してまいります。
また、全国初となる「虐待と暴力のないまちづくり宣言」を行い、暴力を根絶し、地域全体であらゆる暴力を許さない機運の醸成を図るとともに、教育委員会との連携を強化し、いじめや体罰の撲滅に取り組みます。
一方、昨年認証を取得したインターナショナル・セーフスクールでありますが、次の世代でのセーフコミュニティの担い手である子どもたちに、みんなで協力して地域の安全を守るという意義を学んでもらう、また、将来を担う子どもたちが安全・安心な環境の中で、のびのびと自分の可能性を広げられるためにも、インターナショナル・セーフスクールの拡大を目指してまいります。
第二に、地域の防災性を向上させることと合わせ、都市構造そのものの防災性を高めてまいります。
そのために、防災対策の基本的な事項を定めた「防災対策基本条例」と、震災復興を進めるうえで、より所となる「震災復興の推進に関する条例」を制定し、総合的な災害対策への取り組みを一層強化いたします。
木密地域が4割を占めるという都市構造上の脆弱性を課題として抱える当区が、安全・安心創造都市の実現をめざすためには、厳しい財政状況の中ではありますが、高度な防災機能を備えた都市づくりは、まさに最優先で取り組まなければならない喫緊の課題であります。
地震に負けない都市づくりは、永年にわたる本区の課題であり、現在も東池袋四・五丁目地区、上池袋地区、池袋本町地区の3地区で、重点的に防災まちづくりに取り組んでいますが、首都直下地震の切迫性が高まる中で、こうした防災まちづくりを、さらに加速させる施策が都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」であります。
また、昨年6月には、首都直下地震により、広域な火災被害が想定される木造住宅密集(木密)地域で、延焼を防ぐ効果が期待できる都市計画道路、すなわち「特定整備路線」の候補区間に、豊島区で、5路線、7区間、6kmが選定されたのに続き、8月には、「東池袋四・五丁目地区」が、「不燃化特区制度」の先行実施地域として指定されました。
こうした10年プロジェクトの柱となる制度を最大限に活用して、期間を限定した集中的な施策を展開することにより、震災に対して強靭であり、そして魅力ある都市を築いていかなければなりません。
東京都が実施する特定整備路線の整備と密接に連携して、豊島区は沿道まちづくりを積極的に進めることで、道路と沿道市街地が一体となった延焼遮断機能を持つ、魅力ある街並みを形成し、また、不燃化特区により、これまでにない新たな制度を適用して、木密地域の面的な改善を加速させます。
第三に、昨年制定した「豊島区マンション管理推進条例」が7月から施行されますので、この条例の実効性を確保し良好なマンション管理を積極的に後押しすることで、住宅ストックの安全・安心基盤の形成に努めてまいります。
第四に、都市としての魅力と価値を高める施策を、いわば横糸として各施策の連携を図りながら、福祉、子育て・教育、防災・治安などの区民生活の基盤をなす基本的な施策の水準を押し上げていきます。
高度な防災機能を備え、地域に守られた安全・安心創造都市としての本区のブランド力を高めることにより、10年後の90周年、20年後の100周年を迎える豊島区の姿は、東京の中で大きな存在感を持ち、文化による賑わいに溢れた、人と環境に優しいまちの姿を現していると考えています。
今後の豊島区は、街の姿を一変させ、魅力と賑わいある街並みを形成することで、都市再生のモデルになるような、大きな飛躍をし、これまでの豊島区80年の歴史のなかでも、特筆すべき期間になるものと確信しておりまして、今年は、将来への確かな展望を示してまいります。
また、まちづくりを強力に推進していくために、トップマネジメントを交えた政策論議を活発に行うとともに、まちづくりの総合的な施策を効果的に展開するため、組織横断的な体制を構築するための柔軟な組織体制を構築することにいたしました。
第五に、盤石な財政基盤を構築することは、就任以来の最重要課題の一つであり、今年も更なる努力をしてまいります。とりわけ、先ほど来、申し上げてまいりました、10年、20年の未来を展望し、為すべき課題を着実に実行していくためには、その裏付けとしての健全財政の維持が不可欠であります。
本区では、これまでも、経済状況の変化に対応するため、区民のみなさんのご理解をいただき、行財政改革に取り組んでまいりました。
しかしながら、リーマンショックにはじまる、日本経済の落ち込みは、バブル崩壊以後の経済不振の中でも、区財政に極めて深刻な影響を及ぼしており、本区の二大財源である特別区民税と特別区財政調整交付金の合計額は、平成25年度予算では、520億円と、20年度決算額の565億円に比べ、未だ約45億円もの低い水準で停滞しています。
また、年度間の財源調整機能を担う財政調整基金の平成25年度末の残高は、58億円と見込んでいますが、目標額の半分に過ぎません。
依然として本区の財政調整基金の残高は決して十分ではなく、未だ先行き不透明な歳入状況を鑑みますと、将来に向けて、中長期的に安定した施策の展開を可能とする行財政システムをしっかりと構築する必要があります。
そのため、昨年より、全ての事業に渡って聖域ない総点検を行い、施策の一つずつについて徹底的に精査をいたしました。
さらに、不透明な経済状況を踏まえますと、今後も引き続き施策のビルドアンドスクラップを徹底することが不可欠であります。それによって、将来への備えとしての財政調整基金をはじめとする各種基金の残額の確保を可能な限り行い、持続可能な財政基盤の確保に努めてまいる所存であります。
2.平成25年度予算案について
次に、平成25年度予算案について申し上げます。
一般会計と3つの特別会計を加えた平成25年度の総予算規模は、1,549億6,800万円であり、前年度比43億6,900万円、2.9%のプラスとなりました。
これは、これまでで最大の規模となるものであります。
このうち、一般会計予算は、前年度比30億5,800万円、3.1%のプラスとなる1,022億4,800万円となりました。この規模は、平成元年度以降では上から5番目となる規模です。3つの特別会計は、それぞれ、これまでで最大の規模となっています。
予算規模が拡大した主な理由は、投資的経費が前年度比18億2,700万円と大きく増加するとともに、基金積立金の増加などにより事業費が14億6,400万円増加することによるものです。
一般会計予算について申し上げますと、まず主な歳入では、特別区民税については、人口の増加等による増収が見込まれ、前年度比2億2,300万円、0.9%のプラスとなる244億1,900万円、2年連続で対前年度プラス予算を計上しています。
また、特別区財政調整交付金については、調整3税のうち固定資産税を微増と見込み、また法人住民税も、東日本大震災からの復興需要などで企業収益が持ち直すことに伴って前年度比12.2%の増を見込んだことにより、フレーム全体の伸びを4.3%のプラスと見込んでいます。一方で、本区においては、前年度の実績に基づいて各区別に算定される経費が5億5千万円余り減少することなどから、前年度比1億円減の276億円を計上したところであります。
特別区債は、27億5千万円の発行を予定しています。これは前年度よりも4億9千万円低い規模であり、また予算総額が前年度より増加したこともあり、起債依存度は、0.6ポイント減少し、4年ぶりに3%を切り2.7%となりました。これにより、来年度末の特別区債の残高見込みは、今年度末より25億1,400万円減少して、255億6千万円になり、平成12年度から連続して14年間、特別区債残高を減少させています。いま思い起こせば、過去最大の14年前の872億円の借金を抱えていた時からすれば夢のようです。
次に、歳出ですが、まず経費別区分では、人件費が減少し、事業費と投資的経費が増加しました。
人件費の総額は、再任用職員、正規職員がともに減少したことによる給与費の減などにより、前年度比2億3,300万円、1.1%のマイナスとなる205億6,800万円であります。
事業費のうち、生活保護費などの扶助費が、前年度比で5億8,800万円、2.2%増加したものの、区債の元利償還金等の公債費が9億1,000万円減少したことなどにより、先の人件費の減と合わせ、義務的経費は、前年度比5億5,600万円の減、1%マイナスとなる525億円余となり、予算に占める割合は51.3%となりました。また、26年度以降に増加が見込まれる投資的経費に対する負担軽減を図るため、基金積立金を、前年度比12億9,400万円増となる19億1,500万円計上しました。
さらには、防災対策をはじめ「安全・安心創造都市」の実現を目指した様々な施策の拡充などにより、一般行政サービスに係る経費は、前年度比7億600万円、3.1%のプラスとなりました。その結果、事業費総計では、前年度比14億6,400万円、2.2%のプラスとなる、680億2,500万円の計上となりました。
投資的経費は、目白小学校をはじめとする学校改築に加え、南池袋二丁目A地区市街地再開発事業、西部地域複合施設整備事業、さらには二か所の特別養護老人ホームなどの建設が佳境に入ることなどに伴い、前年度比18億2,700万円、15.5%のプラスとなる、136億5,500万円となりました。
一方、平成25年度予算編成におきましては、最終的な財源不足である9億8,800万円を、財政調整基金を取り崩すことによって、収支のバランスをとっております。
あるいは、19億円余の基金積立金の計上を取り止めれば、この財源対策も必要なく予算が組めるという見方もできなくはありません。しかしながら、財政調整基金からの繰入という財源対策をしながらも、将来の需要や負担増に的確に備えるために、計画的に基金を積立て、健全財政の道筋をつけているということが、複数年度をきちんとにらんだ今回の予算編成の特徴でもあります。
今後も、これまでの10年で築いた健全財政の道筋をしっかりとふまえた、先を見据えた万全の財政計画を立てて臨んでまいる所存であります。
3.平成25年度の事業展開について
次に、平成25年度の事業展開について、申し上げます。
(1)防災、震災対策
まず、防災、震災対策について申し上げます。
昨年3月「総合的な震災対策の推進に向けた基本方針」を策定しました。
当面3か年の重点施策について定めるもので、震災対策の強化に向けた具体的な取り組みを10の柱に区分し、全体として40の取り組み項目を位置づけたこの基本方針を着実に実施してまいります。
昨年11月、池袋とその周辺地区において、発災から安全確保後の帰宅支援まで一連の帰宅困難者対策訓練を行いました。併せてこの訓練では、全国63の自治体の中から本区の提案が総務省消防庁で採用された、多様な手段を活用した滞留者への情報提供を行う実証実験訓練も実施しました。
大都市であるがゆえに防災無線だけでは災害情報を有効に提供しきれない、という問題点のカバーなど、今後、想定できる全ての伝達手段を活用した多様化の有効性についての検証を踏まえ、震災時の司令塔となる新庁舎の竣工に向けて、災害情報の収集、整理・分析を迅速かつ正確に行い、適時適切に情報を伝達する機能を備えた総合的な災害情報システムを着実に整備してまいります。
また、防災対策の基本的な事項を定めた「防災対策基本条例」と、復興施策の根拠となる「震災復興の推進に関する条例」を有効に活用できるよう、総合的な災害対策への取り組みを一層強化していきます。
また、共同住宅管理の側面から震災に強いまちづくりをより一層推進するために、特定緊急輸送道路の沿道建築物について、昨年から耐震関係費用の助成を行っていますが、耐震改修費用の助成額を拡充します。
自助共助力の育成では、地域防災組織の育成強化を図るほか、災害弱者と呼ばれる高齢者や障害者が、安全に避難でき、安否の確認ができるよう要援護者名簿の整備を進め、地域防災組織等に情報を提供していきます。
適切な初動対応では、多数の負傷者が発生した場合に対応する医療救護態勢を確立するため、資器材などの整備を充実させるとともに、帰宅困難者対策協議会の充実強化、一時滞在施設の整備を行います。
(2)子育て
次に、子育てについて申し上げます。
保育需要については、現在、急増期を過ぎたものの、依然として増加傾向が続いており、待機児童の解消は、優先的に取り組むべき喫緊の課題であります。
区立や私立保育所の改築・改修などの施設整備事業を着実に進めるとともに、その他の施策を積極的かつ機動的に展開するなど、保育計画を着実に遂行し、待機児童の解消に努めてまいります。
まず、巣鴨第一保育園の分園の新設、駒込第一保育園の新築、池袋第五保育園の改修に加え、池袋本町臨時保育事業や、改築事業補助を行った私立の認可保育所であるみのり保育園としいの実保育園の定員増や歳児構成の見直しを行います。
また、山手線沿線で初めてとなる駅直結型の認可保育所である大塚駅南口ビル内「りとる・ぱんぷきんず」の新規開設に対して運営費等の補助を行うとともに、「すくすくルーム」の増員を図ってまいります。
これらの措置により、平成25年度当初には30人の受入枠を拡大します。
さらに、今回の予算措置によりまして、25年度中にさらに94人、26年度中に30人の定員増を図ることができるものであります。
また、人口の転出入による流動性が高く、また、核家族化の割合が高いという本区の特性から、親の孤立感や負担感が大きくなっていることが、子どもの虐待や健全な発達に影響することが懸念されています。こうした課題を踏まえながら、「新子どもプラン」及び「子ども・子育て支援事業計画」の策定に着手します。
子どもの居場所づくりに関しては、区立池袋小学校校舎内に「子どもスキップ池袋」を、区立豊成小学校校舎内に「子どもスキップ豊成」を開設します。残る区立千早小学校についても平成26年度以降早期に実施します。これにより、すべての小学校でスキップが完成します。
すべての子どもが健康でいきいきと育ち、また、親は、安心して子どもを産み育て、子育ての喜びを共有できるように、地域や民間団体等との連携や協働を図りながら、これらの施策を推進してまいります。
(3)健康
次に、健康について申し上げます。
予防接種、健診事業、成人保健、母子保健、在宅医療、がん対策事業を推進するとともに、環境衛生や食品衛生の向上に努めてまいります。
がんは、区民の死亡原因の約30%、第一位ではありますが、早期に発見し、適切な治療を行えば生存率を大きく上昇させることができます。検診未受診者への受診勧奨の強化や検診申し込みの簡素化を図ることで、受診率の向上を図るとともに、基礎自治体では全国初の取り組みとなる先進医療費利子補給事業を創設することで、治療効果が高いものの保険診療の対象外である先進医療技術による治療を安心して受けられる環境を整備いたします。
歯と口腔の健康づくりは生活習慣病、認知症の予防に繋がるなど、全生涯を通じて健康を維持するためには、欠かせることができないことから、昨年、歯と口腔の健康づくり推進条例を制定したところですが、計画的・総合的な施策展開が図れるよう「豊島区歯と口腔の健康づくり推進計画」の策定に着手いたします。また、節目に実施している無料の歯周疾患検診の対象年齢に65歳を追加し、60歳以上については5歳ごとに受診いただけるようにするとともに、検診実施期間を拡大することで、受診率の向上を図ります。
区民のみなさんの安全・安心を健康面で向上させるために、予防接種やがん対策、在宅医療の推進を健康施策の柱として積極的に取り組んでまいります。
(4)教育
次に、教育について申し上げます。
平成22年3月に策定した「教育ビジョン2010」の最重要課題である学力向上は、「豊島区未来戦略推進プラン」にも位置づけ、国や東京都及び区独自の学力テストの結果、小中学校共に3年連続の高水準を維持する成果を上げてまいりました。
教育委員会は学力向上と授業改善の施策を一層充実させようと、去る1月19日、齋藤 滋宣(さいとう しげのぶ)能代市長と須藤 幸紀(すとう ゆきのり)教育長を招聘して、学力向上シンポジウムを豊島公会堂で開催しました。席上、両教育委員会が「教育連携協定書」を取り交わし、私と齋籐市長が自治体の後見人として調印に立ち会いました。自治体間の教育連携協定は全国的にも注目を集め、マスコミでも大きく紹介されました。全国学力テスト4年連続第1位を占める秋田県能代市とは、昨年11月に10名の教員を派遣して、能代市内の小・中学校の訪問やシンポジウムの参加などの交流を行ってまいりました。当日は、能代市への視察団から報告があり、教員の指導力や授業レベルの高さに学んだことや家庭教育の重要性などについて報告され、600名を超える教育関係者や保護者に大きな感動を与えました。
包括協定の締結によって、教職員の相互交流・訪問が実現し、学力向上のため相互の良さに学ぶ機会を得て、授業や教育活動の改善・充実が図られることにより、着実な学力向上が期待されるところです。
次に、ICTなど教育の情報化に関する環境整備につきましては、千川中学校で実施した「21世紀型スキル」の育成プロジェクトでの教訓から、校内有線ランからどの教室でも使える校内無線ラン化を推進するとともに、学習用パソコンのリース替え時期に合わせて順次タブレット型パソコンの導入を行ってまいります。さらに、重点となる学校図書館司書の配置につきましては、蔵書の整理が進み、図書の貸し出しも増えるなどの成果が確認されたことから、全小中学校31校に配置します。これにより、児童・生徒の読書力や調査力が高まり、学力が向上するものと期待しています。
また、目白小学校の改築工事につきましては、旧校舎の解体が終わり本格的な躯体の建設工事が進んでいます。池袋第三小学校及び池袋本町地区校舎併設型小中連携校につきましては基本設計がほぼ終わり、今後、実施設計に移行してまいります。21世紀の知識基盤社会、国際化・情報化社会の荒波の中をたくましく生き抜く子どもたちにふさわしい学習環境の整備を支援してまいります。
また、いじめ対策や児童・生徒の安定した人間関係を構築するために、区内小学校5・6年生と全中学生を対象に、「ハイパーQ-U」という心理検査を実施できるよう準備をしているところです。学校での人間関係や学級満足度を分析把握することで、早い段階からいじめを予知・発見し、解決に導いていけるよう支援してまいります。
今後とも、「豊島区の学校で教育を受けたい、子どもを育てたい。」と思える魅力のある「教育都市としま」の実現に向けて、教育委員会と連携を密にしてまいります。
(5)福祉
次に、福祉について申し上げます。
福祉については、「個人の尊厳が守られ、すべての人が地域でともに支え合い、心豊かに暮らせるまち」の実現を基本理念に、高齢化の進展などに対応した福祉基盤を整備するとともに、セーフコミュニティの観点から高齢者や障害者の安全・安心の確保に区民のみなさんとの協働により全力で取り組んでまいります。
コミュニティ・ソーシャル・ワーク事業は、豊島区社会福祉協議会と連携し、地域で活動されている民生・児童委員や町会のみなさんとともに、支援を必要とする人々を、地域の絆で支え合うための事業として、これまで3圏域で展開してきましたが、来年度は、4圏域に拡大し、区民のみなさんにとって、身近な存在であり、セーフコミュニティのキーステーションでもある、区民ひろばを拠点として展開してまいります。
今後は、この事業を本格的に展開し、27年度までには区内8圏域に拡大し「区民だれもが必要とする、多様できめ細かい福祉サービスを受けられ、地域の中で孤立することなくつながりをもって生活できる」ようにするための地域保健福祉システムの構築を目指してまいります。
あわせて、一人暮らしの高齢者が4割を占める豊島区では、熱中症を予防するためにも孤立化を防ぐ必要があります。見守り訪問事業により戸別訪問を行うとともに、より精度の高い情報を調査・共有することで高齢者アウトリーチ事業の充実を図ります。
また、住み慣れた地域で暮らし続けるためにも、増え続ける特養入所待機者への対応が必要です。旧中央図書館跡地では、特別養護老人ホームを、千川小学校跡地では特養、都市型軽費老人ホームに加え保育所等を整備し、平成27年春頃の開設を目指してまいります。
一方、生活保護受給世帯の増加の伸びは鈍くなってきているものの、引き続き適切に対応する必要があることから、地域の実情に合わせた適切な対応を行うためにも、地域に密着した展開を行っていきます。さらに、ケースワーカーをはじめ環境整備についても拡充させていきたいと思います。また、自立支援についても、引き続き充実を図ります。
(6)新庁舎等の整備
次に、新庁舎等の整備について申し上げます。
新庁舎は、質の高いサービスを提供する拠点として、また、区民生活の安全を守る防災の拠点として機能するとともに、文化創造都市、環境都市、福祉増進都市、生涯健康都市、教育都市のシンボルとして将来の都市づくりの先導役を果たします。
新庁舎が入る再開発建物の建設工事は、昨年の2月に着工し、9月には杭工事も終了し、現在は、高層直下部分の2階部分の柱や床などの躯体の工事を行っています。いよいよ、地上部分に工事工程が進んだことで、一部とはいえ建物の姿を目にすることができるようになり、着実に工事が進んでいることを実感しています。
6月までには高層直下10階までの躯体工事が進み、本年末には、ほぼ30階までの骨組みが姿を現します。
一方で、総合窓口や案内システムの構築、「環境都市・文化創造都市のシンボル」にふさわしい「豊島の森」や「区民交流スペース」の活用計画をはじめ、災害情報システムの構築などを全庁的に進めます。また、27年の移転に向け、新庁舎室内実施レイアウトをはじめ、OA設備工事などの設計、什器転用などの引越し計画の作成など、庁舎整備と移転プロジェクト全般の調整を図りながらプランの具体化に取り組んでまいります。
また、(仮称)西部地域複合施設については、地域のみなさんともきめ細かに調整しつつ、解体工事に取り掛かっていますが、いよいよ6月から着工いたします。
敷地北側の緑が豊かな粟島神社側と南側の千早公園を自由に通り抜けられる建物内のフォーラムでつなぐことで、地域の交流や活動を活発にするとともに、地域防災の拠点としての機能も充実させるなどの行政機能の他に、ミュージアム、図書館、地域文化創造館など、新たな地域文化の創造発信の拠点としても、地域のシンボルとなるような親しみの持てる施設に整備してまいります。
(7)文化・産業振興
次に、文化政策と産業振興について申し上げます。
「文化政策」の分野では、地域の総合力を結集し、あらゆる政策にわたり文化活動を進め、文化の力で街のイメージを大きく変えるような取り組みを展開することで、オンリーワンの文化都市を実現してまいります。
豊島区にはトキワ荘以外にも横山光輝さんの仕事場があり、トキワ荘から転居した手塚治虫さんが暮らし、鉄腕アトムが生まれた並木ハウスなども現存しています。このように豊島区は、昭和初期から現在に至るまで、多くの著名な漫画家が一時代を過ごし、現在も読み継がれている様々な作品が生み出された地でありまして、区の歴史はマンガの歴史も背負って今日まで来たと申し上げても過言ではないと考えています。
昨年11月、池袋保健所の隣に「アニメイト池袋本店」がオープンしましたが、豊島区には、トキワ荘から始まり、最先端のアニメにまで脈々とつながるマンガ文化の伝統が息づいています。
トキワ荘は、時として郷愁の中の風景として取り上げられることも少なくありませんが、豊島区のマンガの歴史を新しいアニメという文化と融合させながら、若い方たちに浸透させることで、多くの世代に愛される文化として根付かせたいと考えています。
先日の2月1日、2日、80周年記念事業の一つである「東京マンガ・アニメカーニバルinとしま」に参加されたマンガによるまちづくりを進めている各自治体の方々、基調講演をいただいた牧野圭一教授などのみなさんから、トキワ荘はマンガの総本山であり、奥の院であるとの認識をいただきました。
豊島区のマンガ文化をこれからの世代と共に創り出し、全国に発信していくためにも、トキワ荘ゆかりの南長崎に「トキワ荘通りお休み処」を整備し、情報発信など観光の拠点となるよう期待しています。
また、フランス文学研究の第一人者であった故鈴木信太郎氏の旧邸の公開に向けた整備に着手するなど、地域独自の文化資源の活用を進めてまいります。
池袋は埼玉方面の玄関口としての役割を担ってきましたが、池袋でとどまることなく、より広域的な人の流れを作っていきたいと考え、昨年5月西武線サミットを開催し、西武線沿線地域の活性化に関する相互協定を秩父市、飯能市そして西武鉄道と締結しました。
その際、それぞれの文化・観光資源をアピールできるなどの相乗効果が得られているとご報告をいたしましたが、来月16日には東急東横線と副都心線の直通運転が始まります。
これにより神奈川方面から西武池袋線・飯能、東武東上線・森林公園まで一本でつながることになります。
直通化で通過駅になるのではないかと心配される声も伺いますが、私は、むしろ新たな人の流れを呼び込み、人が動くことによって経済の活性化にも繋がる好機と捉えています。
そこで、来年度は、西武線サミットに加え、東上線サミットも開催したいとの強い要請があり、先日、川越市、東松山市、寄居町の市長・町長さんと今後の方向性について話し合いをいたしました。その際、池袋は、西武、東武両線の起点であり、池袋の発展こそ、両線沿線の振興に繋がるとの熱い期待をいただき、「池袋の輝きなくして私たちの発展はあり得ない。」とまでの言葉をいただいたのであります。
池袋を核に両線沿線自治体とタッグを組み、文化でまちと人を繋ぐ事業にも力を注ぐことで、神奈川方面から人を呼び込めるよう取り組んでまいりたいと考えています。
一方で、不況が長引く中、消費不振による価格の引き下げなどの影響が中小企業、商店街に大きくのしかかっています。今後とも、中小企業並びに商店街振興施策の積極的な展開により、地域経済の基盤強化に取り組んでまいります。
景気の先行きが不透明な中、中小企業の資金繰りを支援するために緊急の経済対策として拡充してまいりました小規模零細企業者を対象とする利子補給や、信用保証料に関する補助を来年度においても継続いたします。
(8)まちづくり
最後に、まちづくりについて申し上げます。
池袋副都心では、環状5の1号線、補助81号線、補助173号線など都市計画道路の整備が大きく進みつつあります。新庁舎の着工をはじめ、現庁舎周辺地区や造幣局周辺地区のまちづくり、東西デッキの整備、LRT構想など、池袋副都心は今後大きく生まれ変わる可能性を秘めています。
区庁舎移転後の現庁舎跡地活用についてアンケート調査を行ったところ、回答以外にも事業者からの問い合わせが予想以上に多く寄せられ、高い関心を示していただいています。現庁舎跡地の活用は資金計画上重要な位置づけであるばかりでなく、東池袋、のみならず池袋全体のまちづくりの鍵を握る重要な開発であると考えています。条件等については、今後検討していくことになりますが、まちの将来像を見据えながら、万全をつくしてまいります。
日本一の高密都市の中で、これからの超高齢社会に備え、価値ある都市を築き、培われた「歴史や文化」を、世代を超えて大切に引き継いでいく仕組みをつくっていきます。そのために、東日本大震災の教訓と経験を活かした総合的な震災対策を実践しつつ、切迫性が高まる首都直下地震への備えとして、東京都の木密地域不燃化10年プロジェクトに位置付ける特定整備路線の整備と不燃化特区制度を最大に活用し、早急な対策を講じていきます。そして、地域の繋がりである地域コミュニティの形成を基本としたうえで、生涯健康都市、環境都市、文化創造都市を築きながら、集大成である「安全・安心」を確実なものとしていきます。
豊島区は、区内の各地域に豊かな歴史と文化資源を持つまちです。首都機能の一翼を担う池袋副都心の再生と、区内の地域ごとに個性ある「地域ビジョンづくり」を進め、もてる個性と魅力を引き出すことで、「住みたいまち、訪れたいまち」を実現していきます。
アップル社が、経営不振に陥った同社再建の切り札として、一旦は解雇したスティーブ・ジョブズ氏を招聘した際に、氏は「アップル社再建の妙薬は、費用を削減することではない。現在の苦境から抜け出す斬新な方法を編み出すことだ。」
また、別の機会に「我々は、自らのビジョンに賭けているんだ。我々にとっていつも大事なのは、次の夢なんだ。」と話しています。
最小の経費で最大の効果をあげることは、全ての経営の基本です。
特に自治体にとって、あらゆる無駄を排除することは、税金を納めていただいた方に対する永遠の義務であり、無駄を排する観点からの改革を続けることは、これからも、決して変ずることなく、邁進して行く覚悟であります。
しかし、一方で、社会経済の先行きに閉塞感が漂っているからとか、不透明感が深まっているからと、経営者が萎縮し、経費削減のみを金科玉条に掲げるだけでは、自ら好機を逸することになります。
区民のみなさんをはじめ、議員各位そして職員とも共有できるビジョンがなければ、未来に胸を張って歩みを進めることはできません。
昨年の80周年にあたり、区民のみなさんのご協力をいただいて、安全・安心創造都市の実現こそ、としま百年に向けたまちづくりであるとの想いを一つにできたと考えていることについては、先ほど申し上げました。
これこそ、私たちが、次の世代に引き継ぐ、このまちのビジョンであります。
さらなる成長の可能性を持つ都市である豊島区がビジョンに向かって可能性を大きく伸ばしていくために、あらゆる課題を想定し、知恵を振り絞って打開の道を探すことが、私たちに課せられた区民のみなさんの信託に応えることになります。
私は、この想いを深く胸に抱きながら、豊島区が輝かしい未来を手にするために、粉骨砕身してまいる覚悟であります。
議員各位のより一層のご協力を賜りますようお願い申し上げます。
本日、ご提案申し上げる案件は、条例19件、予算5件、その他3件、合わせて27件であります。
各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。