本日、ここに平成27年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。
本議場は、現総合庁舎が昭和36年(1961年)7月に開設され、爾来53年と7か月の長きに亘り、豊島区政の発展と完成に幾多の区長、議長、議員が身命を賭してご活躍された場であります。
今定例会は、こうした伝統ある議場での最後の議会となります。私の招集挨拶・所信表明もこの議場で行うのは本日が最後となり、新庁舎建設に向けたこれまでの長い道のりを思い起こすと感慨もひとしおであります。区民の皆さんが待ち望んできた新庁舎の完成が、いよいよ目前に迫ってきたという実感が湧いてまいりまして、一層感無量の思いを抱きながら、今、この場に立っております。
また、今定例会は、私にとりまして、また、議員の皆さまにおかれましても、任期満了を迎える直前の、節目の定例会ともなります。
任期満了に臨み、河野たえ子議員、此島澄子議員のお二方が、ご勇退されるとの意向を表明されておられます。
お二方が区議会で歩んでこられた輝かしい足跡に思いを馳せるとき、誠に惜別の情を禁じ得ません。長きにわたる豊島区政へのご尽力・ご貢献に対しまして、深甚なる敬意を表しますとともに、区民を代表し、衷心より感謝を申し上げます。
それでは、今定例会の開会にあたりまして、区政に当たる私の所信の一端を申し上げ、議員各位並びに区民の皆さまのご理解とご協力を賜わりたいと存じます。
1 平成27年度の施政方針
はじめに、平成27年度の施政方針について申し上げます。
今年は、戦後70年を迎え、歴史の節目の年であります。
70年前の戦禍の中で今日の国家隆昌を予見し得た人は多くはないと考えますが、日本人の優秀さ、勤勉さが今日の繁栄をもたらしたのであり、これは私たちの誇りであります。
一方で、本区は23区で初めて非核都市宣言を行った自治体としてその宣言の原点に立ち戻り、恒久平和の大切さを訴える責務を負っており、今後も区民の皆さんと共に世界平和の実現に向けて努力してまいります。
また、平成27年度は、待ちに待った新庁舎への移転がいよいよ実現する年であり、新庁舎での業務開始を契機に、豊島区の新しい歴史が始まるその扉を開く年であります。
新しい庁舎での新しい歴史の始まりには、新しい発想がなければなりません。
昨年は、池袋が「住みたい街ランキング」で第3位に躍進するなど、明るいニュースで始まりましたが、昨年5月には、日本創成会議によって23区で唯一の消滅可能性都市であると発表され、大変な衝撃を受けました。
私は、その時、この危機的な将来予測を、むしろ区政を刷新し、持続発展都市に向けて大いなる前進を勝ち取るチャンスにしてみせるという信念をもって迅速果断に対応いたしました。その結果、後ほど改めて触れますが、「女性にやさしいまちづくり」、「地方との共生」、「日本の推進力」という3本柱の持続発展都市政策を打ち出しました。これらの政策は、豊島区の発展に向けた確かな道筋をつけることができるものと考えております。
とりわけ、これらの政策を包含する「国際アート・カルチャー都市構想」は、これまで本区が進めてきた“文化創造都市”、“安全・安心創造都市”をさらに発展させ、日本の外にも目を向けて国際的な事業展開を図るという点で、これまでの政策と一線を画した豊島区の鮮明な都市像を示すもので、平成27年度は、この国際アート・カルチャー都市構想の具体化を最大のテーマとして区政を推進してまいります。
また、平成27年度は、子ども・子育て支援新制度、介護保険制度など、区民の皆さんの生活に密接に関係する様々な制度改正が予定されている年でもあります。
公平・公正で利便性の高い行政サービスを実現する基盤となる社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度がいよいよ10月を目途に始まります。
そのほか、鬼子母神プロジェクト、リノベーションまちづくりなど、女性や若者たちが主人公となるまちづくりも着々と進行中でありまして、27年度は、区民の皆さんが安心感をもって暮らせる、住みやすい街づくりの推進も区政の重要な柱としてまいります。
そして、平成27年度の、またそれ以降の財政運営に深く関わります、現庁舎地の跡地活用についてでありますが、昨年3月、定期借地権者として開発を担う民間事業者をプロポーザル方式で公募し、大手のデベロッパー・ゼネコン、8グループから参加表明を受けておりました。
先月14日、最終的に6グループから提案書の提出を受けまして、現在、審査委員会に優先交渉権者の決定に向けて審査をお願いしているところであります。
着実に新庁舎の整備が進むなか、現庁舎地の活用による141億円の財源確保が最大の懸案でありました。3月2日には、一時的に財政調整基金等を活用して保留床の代金を支払いますが、早期の地代確保が至上命題であることに変わりはありません。
100年に一度と言われたリーマンショックの影響もあり、区議会の皆さま、そして区民の皆さまに、ご心配をおかけしてまいりましたが、今回、民間事業者の皆さんからは、池袋の将来性を非常に高く評価していただきました。
その結果、ほとんどの提案において、目標として掲げた141億円を上回る地代をご提示いただきました。まだ、気を緩めることはできせんが、「財政に負担をかけず、また新たな借金もせずに新庁舎を整備する」という所期の目標達成に向け、確かな見通しを立てることができたと考えているところであります。
3月中には審査結果を踏まえ、優先交渉権者の選定を決断してまいる予定であります。選定結果につきましては、改めてご報告したいと考えております。
以下、これらを踏まえたうえで、27年度の主要政策について申し上げます。
(1)新庁舎整備
まず、新庁舎の整備について申し上げます。
新庁舎のオープンまで、あと83日となりました。
去る1月28日、通算176回目、25年間にわたり続けてまいりました、現庁舎最後のロビーコンサート「ひびけ!ソプラノの歌声」が開催されました。
来庁された多くの皆さんが立ち止まって聞き惚れておられましたが、多くの方々と共に美しい歌声とピアノの音色に彩られた、豊かな昼休みのひと時を過ごしました。
ロビーコンサートはしばらくお休みし、新庁舎移転後、としまセンタースクエアで再開いたしますが、生の音に身近に触れ合える機会として、今後もこのコンサートを継続したいと考えております。
さて、3月23日の新庁舎落成式まではあと38日となりました。今定例会が終了いたしますと、その翌週には落成式を挙行することが予定されております。
落成式は、新庁舎1階のとしまセンタースクエアにおいて、午前1回、午後2回の3回、各回350人、合計1,000人を超える皆さんにご参加いただくことを予定しておりまして、昨日、ご案内状を発送させていただきました。
落成式に続いて、24日の火曜日から29日の日曜日までの一週間は、区民の皆さん向けの新庁舎見学会を行います。
職員一同挙げて、見学対応に務めますので、皆様積極的にご参加いただきたいと思っております。
期間中、週末の28日、29日には、「区民で祝う新庁舎落成記念イベント」として、としまセンタースクエアにおいて区民の皆さんによる歌や踊りなどを披露していただく予定であります。祝賀ムードは大いに盛り上がりを見せておりまして、私も当日を心待ちにしているところであります。
また、この度、消滅可能性都市への緊急対策を検討する組織として、大きな注目を浴びた「としまF1会議」からの提言を活かして、新庁舎を“子育ての拠点”として位置付けることといたしました。これを契機に、子育てしやすいまちとして選ばれるまちづくりを目指し、子育て支援策の更なる充実強化に積極的に取り組んでまいります。
新庁舎4階の福祉総合フロアには、男女それぞれに授乳室を確保するほか、保育課の前にはキッズコーナーを設け、さらに、子育て支援課前には「子育てインフォーメーション」という情報コーナーを設置して、子育ての悩みなどに幅広く対応する専門相談員「子育てナビゲーター」を配置することといたしました。同じフロアには、池袋保健所の出張窓口を設けて、新庁舎においても母子手帳の交付を可能とするなど、子育ての拠点にふさわしい庁舎として整備することといたしました。
また、新庁舎には、区内の子どもたちから寄せられたアイディアが生かされ、数多くの中から選ばれた作品も活用されています。1階のとしまセンタースクエアの命名は、高南小学校1年生の意見を採用したものであることはよくご存じのとおりです。3階に設置する「ふくろうの塔」には、西巣鴨小学校の5年生、さくら小学校の6年生が作った詩が刻まれることになっています。
このほか、豊島の森の環境教育プログラムは、区内7,000人の小学生の皆さんの意見を採り入れて作られたものでありまして、新庁舎は、まさに次代を担う子どもたちが参加した未来に引き継ぐ庁舎となっています。
このほか、新庁舎では、としまセンタースクエアを中心として、ほぼ毎日、会議、式典、発表会、展示会など、区主催又は区が後援等を行う事業が活発に繰り広げられると考えておりますが、様々な催しが区民の皆さん向けの報道機関として親しまれている「としまテレビ」によって、随時報道される体制が整うと聞いております。としまテレビが、新庁舎のオープンに合わせてエコミューゼタウンの1階に、サテライトスタジオを整備するのであります。
サテライトスタジオが設置されることは、区にとりましても、区政の最前線のニュースや区内のイベントなどを生放送で発信することができ、また、非常時の災害情報を区民の皆さんに提供する拠点となるなど、としまテレビとこれまで以上に密接に連携がとれるようになりますので、今後その活用方法について協議を進めてまいりたいと考えております。
(2)国際アート・カルチャー都市
次に、国際アート・カルチャー都市構想について申し上げます。
本日の議員協議会でご報告申し上げたとおり、豊島区国際アート・カルチャー都市構想の取りまとめが終わりました。
この構想は、ともすると車優先、効率優先となってきた都市空間の整備を、人間優先の空間整備に改めるものであります。そして、国家戦略特区による規制緩和を活用し、この都市空間を表現の舞台としてアーティストたちに開放し、豊島区を「まち全体が舞台の、誰もが主役の劇場都市」にしていく構想であります。
さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックとその後の東京の発展を視野に、豊島区が誇る数々の芸術文化資源を、世界に通用するアート・カルチャーとして位置づけ、その魅力を積極的に発信することで、世界から人や産業を惹きつけるという、豊島区の持続的な発展を牽引する原動力ともする構想であります。
平成27年度には、この構想を具体化すべく、マンガの聖地「トキワ荘」の復元に向けた調査を開始し、ソメイヨシノ発祥の地、未来遺産登録された雑司が谷などのオンリーワンブランドに磨きをかける事業を展開してまいります。
また、国際アート・カルチャー都市懇話会を設置して、当面の東京オリンピック・パラリンピックに向けた文化プログラムの具体的な検討に着手いたします。本区は、区内に競技会場などはありませんが、文化プログラムでは主役となれるように、区民、事業者、行政が一体となってオール豊島で盛り上げてまいりたいと考えております。
国際アート・カルチャー都市構想を実現するためには、外国人観光客の要望が強いワイ・ファイの整備も必要であります。このため、新庁舎、池袋駅の東西駅前広場に無料のエリアワイ・ファイを整備し、空港から連続して利用可能な通信環境を整えるなど、滞在中、快適に過ごせる国際都市としての池袋の基盤整備を進めるべく、国際化対応に急ピッチで取り組んでまいります。
先日の1月30日、東京都は文化芸術振興の基本指針である「東京文化ビジョン」の素案を公表しました。このビジョンは、2020年大会に向けた文化プログラムを先導する東京の文化政策に関する世界戦略でありまして、まさに本区が国際アート・カルチャー都市構想で示す戦略とぴったり符合しております。
そして、世界戦略の一つである芸術文化都市東京が誇る多彩な文化拠点の一つとして、上野、六本木などと並んで、「池袋」が位置付けられているのであります。
本区の国際アート・カルチャー都市構想は、まさに日本の中での、首都東京における豊島区の役割を示す重要な都市像であり、区の将来に活力を生み出すその原動力となるものであります。
(3)女性にやさしいまちづくり
次に、女性にやさしいまちづくりの推進について申し上げます。
まず、昨年、消滅可能性都市発表への緊急対策としてスタートさせた「としま鬼子母神プロジェクト」は、歯科医師会の協力を得て開始することとなった妊婦歯科健診事業を新たに加えるなど、切れ目のない子育て支援策として、充実を図りつつ今後も継続してまいります。
また、待機児童対策につきましては、今年度中に400人を超える大幅な定員増を実現させたところでありますが、平成29年4月には待機児童ゼロという目標を前倒しで実現できるよう、引き続き積極的に私立認可保育所、小規模保育所の誘致を推進し、安心して子育てできる環境の整備にさらにスピード感を持って取り組みます。
また、若者たちや子育てファミリーが手ごろな家賃で住み続けることができる、魅力的な住まいを提供する手法として、リノベーションまちづくりにも引き続き取り組んでまいります。このリノベーションまちづくりには、空き家・空き店舗対策に悩む全国の自治体も参加することが可能であるため、次に申し上げる地方との共生にも資する取り組みであると考えております。
来る3月に都内で初めて開催するリノベーションスクールは、事業計画コースの定員30人に対し、3倍となる90人もの申し込みをいただき、豊島区内の不動産オーナーから4件の物件提供を受けるなど、大きな期待を集めております。豊島区から全国に向けてリノベーションまちづくりを発信してまいりたいと考えております。
(4)地方との共生
次に、地方との共生について申し上げます。
区と「連携事業に関する協定」を結び、昨年来、本区との協働事業を積極的に展開している大正大学では、国の地方創生の動きを先取りして、地方の活性化を研究のメインテーマとする「地域構想研究所」を開設し、さらに東北地方などの自治体と共同研究を行うコンソーシアムを発足させる計画が着々と進行中であります。
この計画は、本区と大正大学との協定に基づく協働事業の一環であり、将来的には本区の交流自治体も研究所のコンソーシアムへ参画してもらうことを想定しておりまして、地方との共生の推進に資する大変有効な取り組みであると考えております。
また、23区全体の動きといたしましては、特別区長会による「特別区全国連携プロジェクト」が始動しております。先日、1月20日に各区の課長級による事務レベルの会議体“特別区全国連携プロジェクト連絡会”を立ち上げ、具体的な事業の検討を始めているところであります。
当面は、専用ホームページを立ち上げて、自治体間の連携についてマッチングするための掲示板を設置するほか、東北の復興に向けた“東北六魂祭”への支援策を検討しております。
豊島区は、持続発展都市実現のための3本柱を着実に推進し、とりわけ本区が誇るアート・カルチャーの魅力を最大限に発揮して、日本全体の活性化をリードする首都東京の中にあっても、ひときわ存在感を発揮し、魅力あるまちづくりを推進してまいります。
2 平成27年度予算案
次に、平成27年度予算案について申し上げます。
一般会計と3特別会計を加えた平成27年度の総予算規模は、対前年度比101億800万円、6.2%のプラスとなる1,724億9,800万円となり、過去最大であった前年度の予算を更に上回っております。
このうち、一般会計は、対前年度比33億1,000万円、3.1%のプラスとなる1,113億9,600万円となり、平成25年度予算から3年連続で1,000億円を超える規模となりました。
一般会計予算のうち、主な歳入では、特別区税全体が301億4,800万円、特別区財政調整交付金が296億円、また、地方消費税交付金については70億1,200万円の収入を見込んでおります。
これら特別区税、特別区財政調整交付金、地方消費税交付金を含む一般財源歳入予算の総額は、対前年度比20億1,000万円、3.0%のプラスとなる686億1,200万円となり、過去3番目の規模となっております。
特別区債は、池袋第三小学校及び池袋本町小中連携校の改築などにより、56億6,600万円の発行となり、起債依存度は5.1%となっております。
次に、歳出でありますが、経費別区分では人件費と事業費がそれぞれ増加する一方で、投資的経費については大幅な減少となりました。
人件費については、前年度より4.9%のプラスとなる218億4,800万円となっております。
事業費については、前年度より7.1%のプラスとなる747億4,800万円となっております。
投資的経費については総額が148億円で、平成23年度予算以来、4年ぶりの対前年度マイナス計上となりました。
歳出の経費別予算計上の状況については以上のとおりですが、平成27年度予算には、区民の皆さんにとって喫緊の課題である福祉、健康、子育て、教育等の様々な施策の充実のため、そして、いよいよ本年の5月に迫ってまいりました新庁舎の開設準備に、さらには、本区が目指す「国際アート・カルチャー都市」の実現に向けた関連事業等々、270事業、76億2,300万円にも及ぶ新規・拡充事業を盛り込んでおり、新たなニーズに可能な限り積極的に応える予算を編成したのであります。
また、昨年の第4回区議会定例会において、新庁舎の保留床等購入経費についての補正予算の議決をいただき、財政調整基金から110億円の取り崩しを行うことといたしました。この結果、平成27年度予算の編成作業に入る前の財政調整基金の残高は、一時的とは言え30億円を下回る見込みとなりました。
こうしたことから、平成27年度予算の編成作業に当たり、極力、財政調整基金に頼らずに予算を編成するよう指示したところでありますが、財政調整基金以外の基金や起債を有効に活用することで、平成26年度当初予算に引き続き、2年連続で財政調整基金を取り崩すことなく予算を編成することができました。
これは、従来から積極・果敢に取り組んできた財政健全化に向けた努力が実を結び、義務的経費である人件費や公債費の予算規模が健全化以前と比較して大幅に圧縮されたこと、また、私が区長に就任した際、205億円にも上る重い債務となっていた「土地開発公社分割償還金」などのいわゆる「隠れ借金」を全額繰上償還したことなど、本区の財政構造が着実に改善しているからこそ実現できたものと自負しております。
今後につきましても、可能な限り、財政調整基金をはじめとした各種基金の残高の確保を着実に図るとともに、これまで築いてきた健全財政の道筋から決して外れることなく、将来を見据えた万全な財政計画のもと、「盤石な財政基盤」の確立に引き続き尽力してまいる考えであります。
3 平成27年度の事業展開
次に、平成27年度事業のうち、主な事業について触れさせていただきます。
(1)安全・安心まちづくり
まず、安全・安心まちづくりについて申し上げます。
はじめに、危険ドラッグ対策についてでありますが、2月2日、豊島公会堂で区民800人にご参加いただき「危険ドラッグ・暴力団追放豊島区民決起大会」を開催しましたが、私は、その会場で声高らかに“危険ドラッグ販売店「ゼロ」宣言”を行いました。
昨年6月24日に池袋駅西口で発生した痛ましい事件以降、議会や警察、区民や企業の皆さんと協力し、官民挙げてドラッグ販売店撲滅に努めた結果、ついに1月26日、最後の店舗を廃止に追い込み、このゼロ宣言となったものであります。
危険ドラッグは、今後、地下に潜り秘匿販売に移ることも予想されますが、関係機関と連携を図ることで徹底した排除の姿勢で臨み、二度と悲惨な事件によって区民の安全・安心な生活が脅かされることがないよう、対応に努めていく考えであります。
次に、客引き対策について申し上げます。
区内では、警察、町会、商店街を中心として環境浄化対策を推進していますが、未だに目に余る客引きを根絶することはできておりません。
そこで、今定例会に「豊島区客引き行為等の防止に関する条例」の制定をご提案申し上げ、繁華街のパトロールを行う「豊島区繁華街警備隊」を創設することといたしました。
条例は、全国初の規定となる、客引きが案内した客を店内に立ち入らせる行為の禁止、客引き等の違反者への罰則としての過料5万円、違反者の氏名等の公表といった内容で、4月1日施行を目指しております。
また、「豊島区繁華街警備隊」は、屈強な警備員が4月から繁華街のパトロールを行い、客引きに現場で指導を行い、客引きのいないまちを目指してまいります。
豊島区は、危険ドラッグ販売店「ゼロ」という成果を示しました。客引き対策についても実効ある施策を推進し、全国に「範」を示してまいります。
次に帰宅困難者対策の強化について申し上げます。
早いもので、東日本大震災からもうすぐ丸4年が経過しようとしています。
今月、2月5日には、三年振りに東京都と合同で帰宅困難者対策訓練を行い、私も、駅周辺の訓練会場を約2時間かけて歩いて回り、視察をいたしました。
冷たい雨が降る大変厳しい気象条件の中でしたが、帰宅困難者役の参加者は約1,000人、訓練全体の参加者数は約7,000人にも上り、いずれも過去最大規模でありました。
今回の訓練は、一昨年に駅周辺の事業所等と「帰宅困難者対策の連携協力に関する協定」を締結してから、初めての訓練であり、協定に基づいた内容の訓練を行うことで、これまで以上に実践的で本格的な訓練を行うことができたと考えております。
新たな取り組みとして、高齢者などの帰宅支援を想定して、バスによる「さいたま新都心」への帰宅困難者の搬送訓練や、外国人の帰宅困難者を想定した一時滞在施設での外国語対応、サンシャイン60通り周辺や池袋駅北口などでの大型ビジョンによる災害情報の提供などを行いました。
訓練などのソフト面の対策だけでなく、平成27年度予算案には、帰宅困難者1万人の一日分の備蓄倉庫を南池袋公園に整備する経費を盛り込んでおります。新庁舎と池袋駅とのほぼ中間地点にあるこの公園は、帰宅困難者対策において大きな役割を果たすものと考えております。
また、豊島区防災対策基本条例に基づき、駅周辺の事業所等で結成された池袋駅周辺エリア防災対策協議会において「池袋駅周辺エリア安全確保計画」が来月末には策定される見込みであります。この計画には、訓練や意識啓発などのソフト対策に加えて、退避経路の確保や、一時滞在施設の確保などのハード対策の内容が盛り込まれると聞いております。
区は、今後、訓練などのソフト対策と駅周辺の整備によるハード対策の両面から駅周辺の帰宅困難者対策をさらに推進し、池袋駅周辺の安全性を高め、誰もが安心して訪れることのできる池袋を実現してまいります。
(2)高齢者福祉
次に、高齢者福祉について申し上げます。
まず、「認知症戦略」についてでありますが、区内の認知症高齢者は、現在約5,700人に上ると推計されておりまして、その対策は喫緊の課題であります。認知症の方の在宅生活を支えるため、高齢者総合相談センターの機能を強化するとともに、「認知症支援コーディネーター」を配置し、認知症の早期発見・早期対応に努めるなど、認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる社会の実現に向けて、戦略的にスピード感を持って対策を講じてまいります。
併せて、高齢者おむつの助成対象をこれまでの寝たきり高齢者だけでなく、認知症等でお困りの方にも拡げるなど、ご家族の負担軽減も図ってまいります。
また、住み慣れた地域での生活を支援する一方で、在宅での生活が困難な方々への対策として、特別養護老人ホームなどの施設整備も推進しなければなりません。施設用地の確保が難しい区内の現状を踏まえまして、富津市の竹岡健康学園跡地をはじめとした区外での整備についても、調査経費を計上し、調査・検討に着手いたします。
次に、介護予防センター構想について申し上げます。
高齢者にいつまでも元気でいていただくためには、日常的な介護予防が大変重要であります。そのため地域における介護予防活動あるいは生きがい活動の拠点として、運動機器等を備えた「介護予防センター」を区内各所に設置することを検討してまいります。将来的には高齢者総合相談センター圏域ごとに整備していくことを目指し、27年度中に整備計画を策定いたします。
また、東京都健康長寿医療センター及び大正大学と連携し、現在、介護予防のまちづくりについての実証実験に取り組んでいるところであります。実験の成果を踏まえ、地域における効果的な介護予防活動を拡げていきたいと考えております。
(3)健康
次に、健康について申し上げます。
27年度は、区民の皆さんの健康的な生活の維持のために、糖尿病の重症化予防に向けた新規事業に取り組んでまいります。
糖尿病が重症化し透析にまで至りますと、定期的に通院して数時間にもわたる治療を受けなければならず、患者ご本人にとって時間的にも肉体的にも大きな負担がかかります。また、一人あたりの医療費は年間450万円にも上るといわれております。
区内には、およそ2万人もの糖尿病患者の方がおられるものと推計しておりますが、早い段階で食事や運動習慣の改善を促すことで重症化を予防することも可能でありますことから、国民健康保険や特定健診のデータを活用し、保健所との連携によって患者の皆さんへの保健指導を行う新たな事業を開始することといたしました。
糖尿病の重症化予防事業は、まだ全国的にも取り組み事例が少ない事業でありますので、関係部局との密接な連携のもとで、都市部における健康づくりの新たなモデルとなるよう、積極的に取り組んでまいります。
(4)子育て・教育
次に、子育て・教育について申し上げます。
新年度予算では、4月から始まる子ども・子育て支援新制度及び待機児童対策の加速化に向けて、18億円を超える大規模な予算を計上しております。
こうした新たな課題に積極的に対応するだけでなく、新制度の開始に備えて、先ほど新庁舎に関連して申し上げましたとおり、区民の皆さんが戸惑うことなく新制度を利用できるよう、子育てナビゲーターを導入し、利用者目線に立ち、ワンストップで利用できる総合的な相談体制を整えてまいります。
加えて、鬼子母神プロジェクトの継続・充実を図り、ひとり親世帯への支援の拡充策として、育児支援ヘルパーやファミリーサポートの利用助成の拡充を図るなど、きめ細かな対策の充実を図り、子育てしやすい環境の整備に力を注いでまいります。
次に、教育について申し上げます。
まず、教育ビジョン2015への改定準備が進んでいる現在、教育事業の今日的な成果について申し上げます。
第一に、豊島区と能代市との教育連携では、学力向上や教員の指導力向上、中学生の田舎体験など多方面にわたって着実な成果を上げています。1月16・17日には須藤教育長をはじめに15名の能代市教員派遣団が本区を訪れ、区内を視察していただき、交流を深めました。
第二に、1月21日、豊島区いじめ防止対策推進条例に基づく「いじめ問題対策委員会」が設置され、緊急時に対応すべき役割が明確になりました。今後、学校間との密接な連携によって盤石の体制でいじめ問題解決に向かうものと確信しております。
また、27年度からは、区独自の学力調査と心理テスト・ハイパーQUを有機的に活用するシステムを導入すると聞いており、いじめ問題への強力な支援策につながるものと期待しております。
第三に、東京オリンピック・パラリンピックを見据えた、健康づくりと体力向上についてであります。これまで成果の上がってきた「ガンに関する教育」や「歯と口腔衛生に関する教育」などの授業と同時に、小中学生の体力調査の結果を入念に分析し、対策を強化して、オリンピック・パラリンピック教育を推進してほしいと思います。
次に、『としま教育の情報化ビジョン』に基づく小中学校のICT化に伴う、画期的な学習と授業の改善について申し上げます。
全区立小中学校へのタブレットパソコン配備の完了により、これまでパソコン室に限定されていた学習が、いつでも、校内のどこの場所でも可能となり、活用率がこれまでより3倍程度に高まり、児童生徒の学びのスタイルが大きく変わって来ました。
また、全小学校普通教室に配置されていたテレビを全て電子黒板化することにより、タブレットパソコンと連動させて個別学習と協働学習等、多様で有効な活用が可能となります。
さらに、ICT機器の整備・充実によって、次期学習指導要領の重点課題となっている「アクティブラーニング」の基盤が整って来たとの報告を聞いておりまして、「21世紀型スキル」の育成等、次世代に必要な資質・能力を存分に伸ばしていってほしいと思います。
次に、学校改築について申し上げます。
池袋第三小学校の改築につきましては、1月に解体工事が終了し、2月から改築工事に着手しました。また、池袋本町小中連携校についても、現在、杭打ち等の基礎工事を行っており、順調な行程で進んでおります。
また、今後予定されている巣鴨北中学校の改築につきましても、計画に基づき21世紀の新しい教育ニーズ、地域ニーズに応える学校の改築・改修を進めてまいります。
次に、本年4月から改正される新教育委員会制度について申し上げます。
法改正により新教育長制度ができますが、本区では経過措置を適用し、現職の教育長の在任期間中は、現行の教育長と教育委員長が併存する形態となります。
新設される「総合教育会議」につきましては、私、区長の責任において新年度に入って早期に招集し、教育委員会と膝を交えて教育目標や学校改築計画等、教育の重要事項について協議し、基本方針や教育に関する「大綱」を策定してまいります。
(5)文化・産業振興
次に、文化・産業振興について申し上げます。
文化に関しまして、昨年末、喜ばしいビッグニュースが飛び込んでまいりました。日本ユネスコ協会連盟の未来遺産に、「雑司が谷がやがやプロジェクト~歴史と文化のまちづくり~」の登録が決定したのであります。
未来遺産とは、長い歴史を超えて人々が紡ぎ続けてきた文化遺産や、自然とともに生きる知恵や工夫の中でつくりあげてきた自然遺産などを、100年後の子どもたちに伝えるための運動です。
2月9日には、登録証伝達式と記念シンポジウムを行ったところでありますが、喜びに沸いた方々が数多く駆けつけてくださり、会場にあふれんばかりの皆さまとともに認証を祝うことができたことは、大きな喜びでありました。
雑司が谷が、日本中あるいは世界からも多くの人を惹きつける観光スポットとなるよう、今後とも地域の皆さまと共にさらに磨きをかけてまいります。
また、新庁舎丸ごとミュージアムのこけら落としともなる国際公募展「アートオリンピア2015」につきましては、いよいよ2月2日から応募が開始され、テレビ、ラジオでのコマーシャルも始まり、注目度が急上昇しております。既にパリ、ニューヨークの拠点における審査員が決まり、さらには審査委員長である東京藝術大学学長の宮田亮平氏によるトロフィーも完成いたしましたので、2月9日の記者会見で披露いたしました。
また、今年のバレンタイン期間中には、2月11日から14日までをハイライト期間として「池袋バレンタイン・ファンタジー」が開催され、池袋西口公園におしゃれなマルシェやメリーゴーランドなどが登場しております。
先日、フランスのストラスブール市のクゼル観光局総裁、ジェニー観光局長らが豊島区観光協会の新年会に出席され、私が立会って友好交流イベント開催にかかわる協定書の締結式が行われたところでありますが、バレンタイン・ファンタジーにも特別協賛してくださっており、国際色豊かなイベントとなっております。
豊島区の都市交流は国際的なものに広がりをみせておりまして、国際アート・カルチャー都市づくりは着々と進行中であります。
また、国は地方創生の推進策として、平成26年度の補正予算で「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を創設いたしましたが、さらに東京都による上乗せ措置も決定しているところであります。これらの経済対策の活用につきまして、現在、関係部局において鋭意検討しているところでありまして、今定例会期中に補正予算案を追加提案させていただく予定でありますので、よろしくお願い申し上げます。
(6)都市再生
次に、都市再生について申し上げます。
権威ある情報誌「日経アーキテクチュア新年特別号」に、「加速する首都圏大改造 ~五輪をバネに飛躍を狙うエリア」と題して池袋が大きくとりあげられました。
虎ノ門・六本木エリア、銀座・日本橋・大丸有エリア、渋谷エリア、品川エリア、横浜エリアと並び、首都圏で注目されている6か所の一つとして、わが池袋の最新動向が、特集の紙面4ページを使って大々的に紹介されているのであります。
国内2位の乗降客数を誇る池袋駅は、駅の周辺に人が流れないことから“駅袋”とも呼ばれてまいりましたが、サンシャイン60以降大きな変化のなかった駅周辺が、新庁舎への移転を契機として、庁舎跡地の活用、造幣局跡地の整備、環5の1の開通後に想定される池袋駅東口のサンクンガーデン整備、西口の駅前街区整備、そして池袋駅東西連絡デッキなど、次々に連鎖的な動きが生まれてきていることは、皆さんもご承知のとおりであります。記事では、こうした池袋における活発な動きについて「庁舎移転を機に玉突き再生」としてまとめられております。
今回の新庁舎整備は、豊島区のまちづくりの起爆剤であると同時に、東京全体の近未来に大きな影響を与えるものとして大いに注目されているのであります。
今年は、新年早々にNHKで本区の新庁舎開設やF1会議の動向が報道されましたが、日経アーキテクチュアのようなまちづくりの専門家が購読する専門誌にも豊島区の動きが取り上げられるようになって来ております。
豊島区の動向は、各界から期待を寄せられ、池袋は首都圏の中における注目スポットの一つとなっているのであります。
まさに、豊島区は新時代を迎え、今、大きく飛躍していこうとしているのではないでしょうか。
『人類史上の進歩のほとんどは、不可能を受け入れなかった人々によって達成された。』
これは、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏の言葉であります。
まさに、これまでの豊島区の歩み、そして、これからの発展を象徴的に示した言葉ではないかと思っています。
新庁舎のオープンは今や目の前に迫っておりますが、思い起こしてみますと、市街地再開発事業による前例のない整備手法に、当初、「不可能」と思われた方々も多かったのではないでしょうか。
私が、夢と希望を胸に秘め 強い情熱をもって区長に就任した16年前、区は、極めて厳しい財政事情にあり、次の予算の編成も困難な状況でした。行政経営は、まさに「自転車操業」で、止まったら倒れてしまうほどに追い込まれ、将来展望を示すどころではありませんでした。平成17・18年度には、新規採用の職員はゼロ、全職員の給料の削減まで踏み込まざるを得なかったことは、今でも私の心に深い傷として刻まれております。
こうした最悪の状況の下では、一度頓挫した新庁舎建設の再考など、とても、とても口にできる事態ではなかったのであります。
しかしながら、庁舎の老朽化が進み、新庁舎整備は待ったなしの状況でありました。
そして、私を筆頭に、職員や関係者の英知を結集し、あらゆる可能性を模索して編み出したのが市街地再開発事業による整備手法でありました。
検討の過程では、「不可能である」との厳しいご意見もありましたが、私たちは池袋の秘めるポテンシャルの高さを信じて事業を推し進め、ついに、新たな借金をすることなく新庁舎整備を成し遂げる見通しを立てるまでに至ったのであります。
同時に、破たん寸前のどん底の状態にあった財政の立て直しにも、全庁を挙げて果敢に取り組み、区民の皆さん、議会のご理解ご協力を得ながら、職員定数の削減など聖域なき行財政改革、いわゆる隠れ借金の繰り上げ償還など、財政基盤の強化を断行し、財政の健全化を成し遂げたのであります。
「新庁舎の整備」と「財政の健全化」を同時に実現するという、およそ不可能と思われた難事業を、私は多くの皆さまとともに力を合わせて成し遂げてまいりました。
そして、昨年5月の消滅可能性都市との発表に対しては、行政、区民、事業者などが「オール豊島」で一体となって機敏に対応し、みごとに持続発展都市へ転身してみせ、日本中から大いなる注目を集めたのであります。
とりわけ、「としまF1会議」を設置し、豊島区を消滅させないために集まってくださった若い女性の声を予算案に反映させたことは、報道に大きく取り上げられ、高く評価されました。
こうした動きを一過性のものに終わらせることなく、引き続き、女性の積極的な参画を後押しし、女性が輝くまちづくりを推進することが肝心であると考えております。
豊島区は、新庁舎整備を大きなきっかけとして、連鎖的に大改造が進行中であり、女性や若者たちの人気のスポットへと変身を遂げています。
そして今、国際アート・カルチャー都市として、世界に向けて羽ばたこうとしているのであります。
10年、20年前に、現在の豊島区の大躍進を だれが想像したでしょうか。
およそ不可能と思われてきた豊島区の大改造を、私は区民の皆さん、議会の皆さまと共に強い信念と熱意をもって着実に実現してまいりました。
今後も、経済の先行きは不透明な面があり、山あり谷ありの厳しい区政運営を強いられることも覚悟しなければなりません。
しかし、私は、常に自ら区政の最前線に立ち、全身全霊を捧げ、強いリーダーシップを発揮して豊島区の輝かしい未来を力強く切り拓いていく決意を固めております。
議会のみなさまにおかれましても、絶大なるご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
本日、ご提案申し上げる案件は、条例27件、予算6件、基本構想1件、その他4件、合わせて38件であります。
各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、水島副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。
あらためて、この議場で、長い歴史の中、最後の招集あいさつ、所信表明をさせていただきました。まさに私は、豊島区は永遠であり、そして皆さんとともに、この豊島区政の発展に全力を尽くしてまいりたいと思います。
本当に53年7か月、この議場を見渡しながら、本当に感無量であります。どうか皆さんとともに、これからの未来に向けて、頑張ってまいりたいと思います。本当にありがとうございました。