本日、ここに平成29年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。
平成29年は、災害のない「豊かな文化都市豊島区」の発展が永続するようにと願い、迎えた新年も、早や2月半ばであります。そして4月には桜が咲き、5月には新庁舎のオープンから2年を迎えます。新庁舎への視察は相変わらず大盛況でありまして、最近では海外からの視察が増えております。昨年11月にはインドネシア、12月には中国と韓国、年が明け1月16日には、イギリス、ドイツ、デンマーク、ベルギー、アイルランドの5か国合同の欧州視察団が来られました。そのほかにも、フランスやスコットランドから著名人が視察に訪れるなど、まさに豊島区の新庁舎は、世界でも類を見ない庁舎として、その評判が広がっているのではないかと感じているところであります。
私が区長に就任してから、18年目の第1回定例会であります。就任当時の区政は閉塞感に満ちており、現実を知れば知るほど厳しい財政状況の中で、まず私が真っ先にやるべきことは財政再建であり、文化都市としまを再興させ、区民の心と生活に、安らぎとゆとり・潤いを与えられるのは文化の振興しかないと考え、多様な文化施策を展開してまいりました。その結果、今日では様々な文化芸術や事業活動が、池袋に注目するようにまでなってまいりました。
今年3月には「東京アニメ アワード フェスティバル」が池袋で開催され、10月にはサンシャインシティにおきまして、マンガ・アニメ・映画などの世界的見本市であります、マルチ・コンテンツ・マーケット、「TIFFCOM(ティフコム)」が開催されるとの発表が、先般ベルリン映画祭の場でありました。
このマーケットには、約50の国と地域からの、1,500人を超えるバイヤーやセラー、そして、国内外合わせて350ものテレビ局などの出展団体が集まるもので、世界的な祭典と言っても過言ではない大きなイベントであります。
まさに今、豊島区は文化芸術における世界の十字路になりつつあると感じているところであります。
それでは、今定例会の開会にあたりまして、新年度の区政運営に臨む私の所信の一端を申し上げ、議員各位並びに区民の皆様のご理解と、ご賛同を賜りたいと存じます。
1 国際アート・カルチャー都市実現に向けて
はじめに、平成29年度の施政方針について申し上げます。
振り返れば、本区の区政運営を抜本的に政策転換する重要な出来事が、3年前にございました。それは、平成26年5月、日本創成会議の増田レポートにおいて、23区で唯一、本区が「消滅可能性都市」であると指摘されたことであります。
その後、庁内で様々な議論を行い、平成27年3月に「世界に向けて持続発展する都市『国際アート・カルチャー都市構想』」というビジョンをお示しし、この新たな都市像の実現に向け、区民・区議会の皆様とともに、この課題に真正面から全力で取り組んでいるところであります。
必ずしも先の見えない時代ではありますが、このビジョンが描く軸を、しっかりと貫いていくためにも、持続発展する都市づくりにポイントを絞り、平成29年度の施政方針として申し上げたいと存じます。
(1)文化戦略
まず、持続発展都市づくりに向けた施策の第一の柱「国際アート・カルチャー都市」の実現への取り組みについて申し上げます。
国際アート・カルチャー都市を実現するための取り組みの1つ「文化戦略」のうち、「南池袋公園での伝統芸能イベントの開催」について申し上げます。
昨年9月、都市型総合芸術祭として創設された「第1回 東京芸術祭」が、南池袋公園でのオープニングイベントで幕を開けました。これは当然、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた文化プログラムへの取り組みを意識したもので、私も芸術をとおして世界とつながる文化プログラムとして、大いなる起爆剤になるとの確かな手応えを感じたところであります。
東京芸術祭の中では、豊島区の国際アート・カルチャー都市発信プログラムとして位置づけて、本区が実施した「大田楽 いけぶくろ絵巻」は、日本古来の伝統芸能と近年注目されているコスプレ文化を融合させた舞台となり、南池袋公園がたいへんな熱気に包まれ、盛況のうちに幕を閉じました。
私は、東京芸術祭の開催によって、南池袋公園が新たな価値を育む、交流と参加の文化発信拠点としての存在感を、皆さんに広くアピールできたと考えております。
最新のデザインと機能を備えた南池袋公園と、日本の伝統芸能との間に全く違和感はありませんでした。
後ほど述べますが、「4つの公園整備構想」のうちの一つの公園として、南池袋公園を、日本古来の伝統文化に親しむ機会を積極的に提供する場とし、伝統の意義を伝え、芸術文化の未来を切り拓く、豊かな多様性ある豊島区の魅力を世界に向けて発信する場としていきたいと考えております。
次に、「文化戦略」のもう一つの目玉事業「南長崎マンガランド事業」について申し上げます。
トキワ荘を復元するマンガ・アニメミュージアムの整備につきましては、昨年9月から、著名なマンガ家であり、マンガジャパン代表理事の里中満智子先生を座長とする検討会議を5回開催し、ミュージアムの機能や事業活動、展示内容等について、熱心な議論を重ねてまいりました。また並行して、庁内検討会を16回にわたり開催し、検討に検討を重ね、現在、「整備基本計画」の素案の検討に入ったところであります。来年度には、この基本計画を基に、復元施設の建物・展示の設計に入ってまいります。
合わせて、南長崎地域で展開している「マンガの聖地としま!モニュメント」の新たな設置をはじめ、南長崎のまち全体でマンガ文化を発信し、回遊を促す仕組みを作るとともに、アニメの聖地としての集積が進んでいる池袋から南長崎への回遊性を高める策を講じてまいります。
さらに、マンガ・アニメによるまちづくりについて本区との連携を強めている、練馬区、杉並区、中野区との連携をさらに深め、区の枠を越えたマンガ・アニメエリアとしての発信力を強化することで、インバウンドを視野に入れた事業展開を図ってまいりたいと考えております。
また本区では、春には「東京アニメ アワード フェスティバル」が開催され、秋には「オータムカルチャー フェスティバル」が展開されていますので、豊島区が持つ、他の都市にない大きな強みや特徴として、マンガとアニメを位置づけ、国際アート・カルチャー都市の文化戦略としていきたいと思います。
最近、豊島区が何かとマスコミなどに取り上げられる機会が増えていることから、各方面から様々なイベントの開催のお申し出やご相談をいただいております。
これらを整理しながら、年間を通じてマンガ・アニメのイベントを開催することで、「マンガ・アニメの聖地」として、その魅力を一層強力に発信してまいりたいと考えております。
(2)空間戦略
次に、国際アート・カルチャー都市構想の「空間戦略」として位置付けている、「池袋駅周辺の4つの公園整備構想」について申し上げます。
池袋駅周辺には3つの既存公園と1つの公園新設計画があり、合わせて4つの公園、すなわち南池袋公園、中池袋公園、池袋西口公園、そして、整備計画を進めております造幣局地区防災公園であります。
「国際アート・カルチャー都市構想」の実現戦略では、この4つの公園をそれぞれ特色ある公園として整備し、それぞれが劇場空間を創出する、そのような空間をまち全体に広げられる拠点にしたいと考えております。
昨年の4月にオープンいたしました「南池袋公園」では、遊具で遊ぶ親子連れ、空を見上げ休息をとるサラリーマン、芝生でくつろぐカップルなど、これまでの池袋では見られなかった、明るくおしゃれな空間が既に生まれております。
南池袋公園によって池袋のイメージが変わり、伝統芸能が演じられる公園として施設を整備するなど、この公園に付加価値を付けてまいりたいと考えております。
残る3つの公園の整備のうち「池袋西口公園」は、ほぼ池袋駅正面にある西口エリアの顔になっている場所で、既にこれまでも西口の賑わいの拠点、そして文化の拠点ともなっています。幸い、西口公園には隣に東京芸術劇場がありますので、これと連携することによって、さらに賑わいが生まれ、公園全体が野外劇場となる空間を作り出すにふさわしい公園として、独自の発想に基づくこれまでに全く類を見ない公園に改修したいと考えております。これこそ、池袋西口駅前再開発を誘導する第一歩としてまいりたいと思います。
3つ目の公園「中池袋公園」は、旧庁舎跡地の整備に合わせて平成31年に全面改修をいたします。また、平成32年春には、現在解体が行われております造幣局の跡地に、災害時には区内最大の防災拠点となる「防災公園」をオープンさせる予定となっておりますが、この公園も劇場空間としての機能が果たせるよう、管理運用の仕組みづくりについても現在検討を進めているところであります。
このように、4つの公園で街の回遊性が高まり、賑わいが公園周辺全体に広がり、区民が芸術や文化を知り、それが消えることのない跡として残る、そんな街をつくりたいと考えております。
次に、「空間戦略」の主要事業としての、「池袋駅東西デッキ整備とBRT」について申し上げます。
東西デッキは、池袋駅の東西を結ぶ念願の懸け橋で、災害時の歩行者の避難、滞留空間としての機能も併せ持つデッキとして、南側と北側に2本整備する基本構想を、27年3月に策定いたしました。
同年7月には、特定都市再生緊急整備地域の指定を受けましたので、東西デッキ整備は重要な都市基盤整備事業として、29年度には整備方針を定め、周辺開発との整合を図りながら今後さらにスピードアップさせてまいります。
特に、西武鉄道株式会社は、自社ビルの建設に合わせ、ビックリガード上空まで、歩行者の避難・滞留空間として公共的な利用ができるデッキを整備することとなっております。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック頃までには、東西デッキや庁舎跡地周辺の開発、さらには環状5の1号線の地下道路など、人や車の新たな動線計画や交通計画を立案せねばならない案件が目白押しとなっております。
その案件の中には、街中の気軽な移動手段として、外国からの来街者も気軽に利用できるLRTの検討があることも忘れてはなりません。また、BRTと呼ばれるバス輸送システムの導入もLRTの検討に加え、東京オリンピック・パラリンピックまでに運行できないか真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
(3)国際戦略
次に、国際アート・カルチャー都市構想の「国際戦略」のうち、「東アジア文化都市」への立候補について申し上げます。
東アジア文化都市は、毎年、日・中・韓の3か国からそれぞれ1都市を選定し、さまざまな文化芸術イベントを実施する事業として、平成29年で4年目を迎えるものです。日本では文化庁が所管しており、この開催都市に選ばれる都市は、日本を代表する文化芸術創造都市であると、国に認められたことの証しとなると言っても過言ではありません。
豊島区は、この東アジア文化都市の2019年開催を目指し、本年5月、開催都市に立候補いたします。豊島区において東アジア文化都市が開催されますことは、国際アート・カルチャー都市を世界に向けてアピールできる、まさに千載一遇のチャンスと考えます。
開催都市の選考は文化庁によって行われ、5月に申請書が提出されますと、書面審査、プレゼンテーションを経て、7月には開催都市が内定いたします。
旧庁舎跡地に新ホールをはじめとする文化にぎわい拠点が雄姿を現すその年に、この国家的事業に参加できますことは、文化創造都市宣言から積み上げてきた豊島区の文化政策の集大成となると位置付けているところであります。2019年の開催を勝ち取ることができるよう、全庁を挙げて取り組んでまいります。
次に、「国際戦略」の主要事業である「国際競争力強化推進事業」について申し上げます。
現在、公民連携組織である「池袋ブランディング・シティ戦略検討会」において、池袋駅周辺地域の国際競争力の強化を図る、地域戦略策定のための検討を進めております。
昨年開催した検討会では、「来街者誘客の強化」、「アーティスト・スタートアップ」、「異分野連携イノベーション」、「女性等にやさしいダイバーシティ」と、4つの施策の方向性を定め、効果的な施策展開をどうすべきか検討しているところであります。
29年度は、戦略検討会のメンバーに、池袋の国際競争力強化の取り組みに参加意欲のある民間事業者を加え、推進体制をさらに強化していくとともに、アートとサイエンスと女性を象徴する、シンボリックなプロジェクトの展開を考えているところであります。
池袋駅周辺地域の国際競争力強化の取り組みは、まだ緒についたばかりですが、昨年11月には、池袋駅周辺地域が「アジアヘッドクォーター特区」に指定されておりますので、税制優遇や財政支援、規制改革などの特区のメリットを活用し、国際競争力強化への取り組みを加速化させてまいります。
2 女性と子どもにやさしいまちづくりの推進
次に、持続発展都市実現に向けた施策の第二の柱、「女性にやさしいまちづくり」への取り組みについて申し上げます。
まず、「女性にやさしいまちづくり推進事業」について申し上げます。
昨年4月に「女性にやさしいまちづくり担当課長」を設置し、女性一人ひとりの多様なライフスタイルを大切にすることを基本コンセプトに「働く・住む・育む・輝く」の4つのテーマで様々な施策を展開しております。
28年度には、主に働く世代、子育て世代を対象とした地域情報サイト「としまスコープ」を開設したほか、女性にやさしいまちづくりのシンボルマークを作成するなど、本区が女性にやさしいまちであるというイメージの定着に努力をしております。
また、昨年9月に行なった「としまイクボス宣言」を通じて生まれたネットワークを活かし、ワークスタイル変革にとどまらず、一人ひとりの多様なライフスタイルを応援する取り組みにも努めているところであります。
女性にやさしいまちづくりを推進するためのキャッチコピーを『わたしらしく、暮らせるまち。』とし、誰もが住みやすく、働きやすい、自分らしく暮らせるまちづくりを引き続き目指してまいります。
次に、「待機児童ゼロへの取り組み」について申し上げます。
私は、豊島区は「子育てしやすい街」だと評価されることが、女性と子どもにやさしいまちづくりにとって重要と考え、29年度末に待機児童ゼロを達成したいという公約を実現させるべく、待機児童対策をこの間、強力に進めてまいりました。
緊急対策を打ち出した平成25年度から平成27年度までの3年間で、900名の定員枠を増やし、さらに平成28年度には、認可保育所を10園新設するとともに、居宅訪問型保育事業の対象に待機児童を加えるなど、様々な方法により699名の定員増を図ったところであります。10園のうちの1園は、としまエコミューゼタウンの2階に本年4月に新設されますが、自治体庁舎の入居するビルに認可保育所が入居するのは、全国初のことであると思われます。
一方で、「保育園は、造れば造るほど保育需要が高まる」と巷間では言われているところですが、本区においても確かに、そうした状況が何年も続いております。平成29年4月の認可保育施設への第一次申込者数は1,736名となり、前年度の28年度より199名増加しました。27年度申込者数は26年度より22名減少していましたので、またぐっと入園申し込み者が増えたという印象であります。
待機児童ゼロ達成目標の29年度末までいよいよ1年しかありません。平成29年度は、少なくとも認可保育所を13園以上新設することなどを中心に、待機児童ゼロ達成に向け施策を進めてまいります。また、池袋駅西口近くの豊島都税事務所の空きスペースを活用し、認可保育所を設置する準備を、東京都と連携して始めております。
とにかく、やれることはすべてやることで、待機児童ゼロを必ず実現するよう、最大限の努力をしてまいります。
次に、民間企業との連携などによる「パブリックトイレの改修」について申し上げます。
豊島区では「女性にやさしいまちづくり」の視点からまちを見つめ、そして、すべての人にやさしく、暮らしやすいまちを目指し、様々な取り組みを行っております。
平成30年秋にオープン予定の「新区民センター」には、公的施設に設置される女性のためのトイレの数では国内最大級の、女性のためのパブリックトイレを整備いたします。さらに、区内全ての小・中学校のトイレの洋式化への改修も3か年計画で進めております。
また、駅前の公衆トイレ整備では、大塚駅北口のトイレを駅前改修工事に合わせて建て替え、巣鴨駅の南口にある公衆トイレも、改修する予定にしております。
こうしたトイレ改修の取り組みをさらに広げ、29年度から3か年で、女性から「使いたくない、使わない」と極めてマイナス評価の、公園・公衆トイレの改善にも着手いたします。
このような公園のパブリックトイレは区内に133か所あります。池袋西口公園にある大きなトイレから、児童遊園にあるような、小さなトイレまで、形状や様式は様々ですが、やはり、古く、暗く、汚いといったイメージが強く、特に女性から敬遠されております。
こうしたトイレ問題を解決するために、これまでと同じように全てのトイレを撤去して建て替えていくのは、膨大な時間と経費がかかります。そこで、スピード感を持ちつつ、経費を抑え、これまでの「公衆便所」のイメージを刷新させていくために、民間企業とタッグを組んで、民間企業と連携した方式を積極的に取り入れながら、パイロット・プロジェクトとして、トイレ改修に取り組んでまいりたいと考えております。
また、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンといった、コンビニ事業者の協力の下、区民や来街者が、区内約200店舗のトイレを気軽に利用できるよう、各コンビニとの連携協定の締結を計画しております。
そのほか、おしゃれでスマートなユニット型の仮設トイレの設置など、『トイレが変われば街が変わる』といった想いで、新たな試みを様々に取り入れながら、女性の皆さんに利用していただけるパブリックトイレを実現いたします。
次に、「子どもスキップ事業の教育委員会への移管」について申し上げます。
昨年の第4回定例会におきまして、平成29年度に向けて、子どもスキップを教育委員会の所管とすることについて、検討を開始しましたことを申し上げました。
その後、教育委員会と子ども家庭部では、子どもスキップの現状と課題についての共通認識に立ち、これらの課題解決に向けた取り組みを進めております。
組織再編としては、教育委員会事務局に「放課後対策課」を新設することとしました。放課後対策課長のもとで移管された子どもスキップを所掌すると共に、子どもの放課後を総合的に捉えた事業展開を行い、スキップが子どもたちの地域における豊かな育みの場として保障されるよう事業を推進してまいります。
また、運営に関しましては、現在、教育委員会と子ども家庭部に小学校の校長を加えたプロジェクトチームを結成し検討を重ねております。小学校内にフレキシブルに共用できるスペースを増やして、タイムシェアリングするためのルールづくりや、スキップ施設のメンテナンスを含めた維持管理の一元化、学校教職員とスキップ職員の情報の共有化を図るなど、子どもスキップを利用する子供たちのために、安全・安心な放課後の環境を整え、子どもスキップが遊びを通した児童の健全育成を十分に果たせるように鋭意検討を重ねております。
4月の移管を間近に控え、部局の横断的な連携のもと、移管準備を着実に進め、これからも地域の方々との強い結びつきの下で、本区ならではの先進的な放課後対策事業を確立してまいります。
3 高齢化への対応・地方との共生
次に、持続発展都市実現に向けた施策の第三の柱「高齢化への対応」と、第四の柱「地方との共生」への取り組みについて申し上げます。
まず、高齢化への対応の一つ、「選択的介護モデル事業」の実施について申し上げます。
本年2月10日、国家戦略特区東京圏域会議において、豊島区は、東京都と連携し、多様な介護ニーズへの対応や介護職員の処遇改善、介護離職者対策につながる「選択的介護モデル事業」に着手することを表明し、同会議においてこれが決定されました。私もその会議に小池都知事と出席をし、本区としての意見を述べたところです。
事業名称につきましては、従来「混合介護」と言われておりましたが、より内容にふさわしい名称として「選択的介護」となりました。
超高齢社会の到来に伴い、介護が必要な区民は、ここ10年で1.4倍となり、今後も介護サービスの需要はますます増加していくものと考えられます。同時に、介護サービス費用を支える介護保険料は右肩上がりで上昇しています。
一方、介護職員の賃金は他の産業に比べ低い実態があり、都市部でも人材が確保できず、事業所が休・廃止に追い込まれる事例が多くなっております。
「持続可能な地域福祉の仕組みづくり」に取り組む本区としては、介護サービスが安定的に提供されず、介護をしながら仕事をしているご家族が、離職せざるを得ない事態が起きることを、絶対に避けなければなりません。
そのため、これまでの仕組みから一歩踏み出し、国家戦略特区を活用した「選択的介護」モデル事業を開始することを決意いたしました。この「モデル事業」が開始されれば全国初の取り組みとなり、これまでできなかった新しい介護サービスの仕組みづくりにチャレンジしてまいります。すでに多くの区民の皆様や介護事業者からも高い関心が寄せられております。
平成29年度は、有識者をはじめ様々な方のご意見を伺いつつ、新しいサービスを提供する仕組みを検討し、特区認定が得られ次第、介護保険事業計画が新たな開始時期となる平成30年度からモデル事業を順次実施し、効果及び問題点を検証してまいります。
次に、「地方との共生」について申し上げます。
平成26年の消滅可能性都市の指摘以来、秩父市と日本版CCRC構想、すなわち本区と秩父市と協働による「生涯活躍のまちづくり構想」の検討を進めております。
27年度には移住に関する区民アンケートの実施、区域外特養整備のあり方検討などを行い、28年度には秩父市と協働で「地方居住を考える住民ワークショップ」を実施いたしました。
秩父市でも、28年度に移住受入れ等に関する市民アンケートの実施、「秩父市生涯活躍のまちづくり構想案」の策定を行うなど、連携が進んでおります。
このような流れを受け、29年度は秩父市と協働で「お試し居住」を募集するなど、地方との共生事業を進めてまいりたいと考えております。
また、長野県箕輪町との交流事業では、箕輪町が県の「地方創生推進交付金」を活用した本区との交流事業を両都市の産業界を巻き込んで様々展開する予定であります。
こうした秩父市や箕輪町をはじめとする地方との交流は、豊島区も地方の一部であることを考えるならば、全国の都市と共に発展し、お互い「共存共栄」することが重要で、それが本区の持続発展都市実現にもつながるものであると考えます。
以上述べてまいりましたとおり、29年度は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催も視野に入れつつ、これからの豊島区の将来像である国際アート・カルチャー都市づくりのために、総力を挙げて諸事業を完遂させねばならない年であります。
そして一方、区民の福祉の増進についても、区民が必要とする多様なサービスを有機的・横断的・総合的に提供できる仕組みをつくることなどにも積極的かつ果敢に取り組んでまいります。
こうした福祉施策と持続発展都市づくりの諸施策とが互いに影響し合って、誰もが暮らしやすく、住み続けたくなる街の実現ができるものと確信しております。
4 平成29年度当初予算案
次に、平成29年度当初予算案について、その概要を申し上げます。
一般会計と三特別会計を合わせた平成29年度当初予算の規模は、前年度に比べ30億7,800万円、率では1.7%のマイナスとなる1,815億900万円となりましたが、28年度の1,845億8,700万円に次ぐ、過去2番目に大きい財政規模となりました。
4会計予算のうちの一般会計当初予算は、1,167億100万円であり、前年度と比べ、51億700万円、率で4.2%のマイナス予算となりましたが、これも過去2番目に大きい予算規模となり、1千億円を超える予算規模が、ここ5年連続しており、子育て支援など大都市特有の歳出需要の膨張が顕著であります。
一般会計の主な歳入では、特別区民税が納税義務者数の増加等により対前年度比2億9,300万円、1.1%のプラスとなる274億8,300万円と、6年連続で対前年度比がプラスとなっております。しかしながら、この特別区民税の計上額は、「ふるさと納税」で約7億円もの減収を見込んだうえでの計上額であり、その区財政に及ぼす影響は、看過できない状況となっております。本区では、決して豪華な返礼品競争に巻き込まれてはならないと思っておりますので、南長崎マンガランド事業など、地域活性化、文化・芸術振興の取り組みにふるさと納税を活用する形で寄附募集を募り、寄付者への返礼品を「区の事業への支援」にかえたいと考えております。
また特別区民税に特別区たばこ税等を加えた特別区税全体は、311億3,100万円となり、3年連続で当初予算計上額が300億円を超えております。
特別区財政調整交付金については、財調交付金の原資となる調整三税のうちの法人住民税の一部国税化や、企業収益の減などが影響し、本区においては対前年度比で6億円のマイナスとなる291億円の計上にとどまりました。
地方消費税交付金については、73億4,600万円を計上しております。
これら特別区税、特別区財政調整交付金、地方消費税交付金等、一般財源の総額は、対前年度比3億9,400万円の減、率で0.6%のマイナスとなる、695億1,200万円で、歳入全体の59.6%を占めております。
特別区債は、対前年度比63億8,600万円の大幅減となる、50億2,600万円の発行となり、起債依存度は5.1ポイント減となる、4.3%となっております。
なお、29年度末の起債残高は、310億1,500万円となりますが、前年度末残高より、17億1,500万円の減となります。
以上が歳入であります。
歳出につきましては、歳出の経費別区分において、人件費と事業費が増加する一方、投資的経費が大幅に減少いたしました。
まず人件費は、227億9,100万円で、対前年度比3億1,100万円、率で1.4%の微増となっておりますが、これは職員関係経費の増が主な要因でございます。
事業費は、前年度と比べ56億8,800万円、7.6%のプラスとなる800億4,700万円となりました。事業費の増の要因は、年々予算の増加要因となっている扶助費や特別会計への繰出金などの社会保障費の増と、満期一括償還を迎えるために一時的に多額の公債費の計上があったためであります。
投資的経費については、平成28年度に、池袋本町地区小中連携校、池袋第三小学校の学校改築事業が竣工を迎えたことから、対前年度比111億600万円、44.5%の大幅なマイナスとなる138億6,300万円となっております。
平成29年度一般会計予算は5年ぶりのマイナス予算となっておりますが、大型の学校改築が終了したことによるもので、かつてない事業数227事業、80億9000万円の新規拡充事業を計上した積極型の予算となっており、また、4年連続して財政調整基金の繰り入れをしないで編成した点において、堅実型の予算編成であったと考えております。今後も気を緩めることなく、先を見据えた安定的で持続可能な財政運営に、取り組んでまいる所存であります。
5 新たな公民連携への取り組み
次に、29年度の主要な事業のうちから、何点か申し上げます。
まず、民間事業者等と共に地域課題の解決を図る「新たな公民連携への取り組み」について申し上げます。
民間企業との連携によるパブリックトイレの改修については、すでに申し上げましたが、これ以外の主な公民連携事業について申し上げます。
まず、「旧第十中学校跡地活用等事業」について申し上げます。
旧第十中学校敷地は、約1万6千平方メートルの面積を有する、区内最大規模の区有地であり、スポーツ施設の設置要望を踏まえ、未来戦略推進プランでは多目的な競技に対応した野外スポーツ施設を整備することとして位置付けてまいりました。
現在、建物は、文化財等の保管場所として暫定活用するとともに、校庭は施設開放事業として、テニス、少年野球やサッカーなどの活動に利用されております。
一方で、築57年を経過した建物は、耐震上の問題とともに、近年、雨漏り等の老朽化が著しく、文化財等保管場所のあり方が大きな課題となってまいりました。
これらの課題に対応するため、財政負担を極力抑えながら、民間の資金とノウハウを活用し、この旧第十中学校敷地と、文化財収蔵庫予定地として確保している飯能市の区有地を、一体的に整備する手法について検討に着手いたします。
スポーツは、人間の体を動かすという根源的な欲求に応えるとともに、爽快感、達成感、他者との連帯感等の精神的充足や、楽しさ、喜びを与えるなど、人類の創造的な文化活動の一つです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、まさに世界一流のアスリート達が、さまざまな競技を通じて、私たちにスポーツ文化のすばらしさを伝えてくれるに違いありません。
この大きな感動を次世代に伝えるためにも、東京オリンピック・パラリンピック記念事業として、旧第十中学校跡地の整備について検討に着手し、区民の健康の保持・増進、体力の向上に資するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成をめざしてまいります。
次に、「庁舎跡地エリアマネジメント」について申し上げます。
「国際アート・カルチャー都市」のシンボルとして位置付ける旧庁舎跡地開発は、いよいよ1月から新築工事に本格的に着手いたしました。旧庁舎跡地開発は、新庁舎の建設に続く、公有地を有効活用した公民連携事業であり、2020年には開発地周辺に年間1千万人の集客があると見込んでおります。
工事期間中も完成後を見据えたエリアブランドづくりを進めるほか、完成後に設立される、このエリアの事業者、テナント、地元企業等が連携して環境維持活動や賑わい創出イベント等を自主的に行う「エリアマネジメント」組織の活動についても、さらに連携の幅を広げながら進めてまいります。
今年度は、2020年のグランドオープンに向けたブランド構築の一環として、エリアネーミングに取り組んでおります。「1000万のきらめく物語が生まれるまち」をコンセプトとして公募したところ、2月7日の締切りまでに、一般から4,520件、区立小中学生の皆さんから545件、合計5,065件ものご応募をいただきました。
選定委員会の委員長は、豊島区都市政策顧問である隈研吾さんにお願いしております。民間事業者のトップのご意見もうかがいながら愛称を決定し、今定例会の最終日にはご報告したいと思いますので、ご期待いただきたいと思います。
6 安全・安心まちづくりの推進
次に、安全・安心まちづくりの推進に関する事業のうち、「無電柱化推進事業」について申し上げます。
昨年8月、小池都知事が誕生すると早速、都議会定例会の知事所信表明の中で、ご自身の大きな政策の柱である、無電柱化を推進することが示されました。
一方、国においても昨年の12月、「無電柱化推進法案」が成立し、安全・安心のまちづくりの有効な手段として、無電柱化が注目を集めております。
本区におきましても、大災害時における倒壊の危険性防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成等を図るため、「無電柱化の推進」を重要施策と位置付け、平成27年度より電線地中化を事業化しております。
そのうち、「巣鴨地蔵通り」につきましては、都の区市町村モデル事業となるべく、電線共同溝の中央配置や、浅層埋設といった、新しい手法を積極的に採用しながら、事業期間の短縮とコストの低減に取り組んでまいります。
また、「学習院椿の坂」につきましては、東京電力の既設埋設管を活用することで工期を短縮し、29年度から3年間で、区施工の電線地中化第1号として、当該道路の無電柱化を実現させてまいります。
8 教育都市としまの推進
次に、教育について申し上げます。
まず、「インターナショナル・セーフスクール」について申し上げます。
先週の2月9日、インターナショナル・セーフスクールの認証式が仰高小学校と池袋本町小学校で執り行われました。私も両校の認証式に参加し、激励のメッセージを添えてまいりました。
当日は、両校とも大変な盛り上がりで、審査に当たられた国際セーフスクール公認認証審査員パク・ナムス先生、日本セーフコミュニティ推進機構代表理事の白石陽子先生のご指導のもと、新たに「仰高小学校」と「池袋本町小学校」の2校がセーフスクールの認証を取得いたしました。セーフスクールの取り組みは、学校内のケガの減少や安全行動力の向上といった効果が、両校共通に見られました。その他、児童の他者への思いやりの心の育成や、コミュニケーション能力の向上にも繋がっていることが、これまでの認証取得校で明らかになっており、何よりも、地域が学校を支えていくといった「チーム学校」という関係が、より強化されてきたと頼もしく感じております。
本区の特色であります「地域区民ひろばと密接に連携するセーフスクール」の取り組みは、地域コミュニティの活性化にも通じ、他の自治体のモデルとなっていることはもちろん、昨年11月22日に開催されたインターナショナル・セーフスクール・アジアカンファレンス会議の中でも、高く評価されたところであります。今後とも、すべての小・中学校でセーフスクール認証取得実現に向けて、取り組んでいけるよう支援してまいります。
次に、「学校改築」について申し上げます。
昨年末に竣工した池袋第三小学校の落成式が1月21日に執り行われ、当日午後の見学会には、700人を超える近隣の方々がお越しになりました。
池袋第三小学校は、校舎の色合いを立教大学の象徴的なレンガ調を地域カラーとして採用することで、周辺環境と調和し、地域伝統を取り入れたシンボル性のある学校に生まれ変わりました。また、学校南側の「緑の門」の前には、元PTA会長さんが寄贈してくださった、子供たちの交通安全、健全育成を願う「慈母ふくろう像」が設置され、本校の新たなシンボルとなりました。
都会の住宅密集地の中で改築しました池袋第三小学校は、手狭な敷地の有効活用をはじめ、様々な工夫を凝らしており、都心部の学校改築の先進的モデルになるものと自負しております。
今後の学校改築につきましては、29年度から巣鴨北中学校の改築工事が始まり、31年度完成予定となっております。工事期間中は、手狭な旧朝日中を仮校舎として使用するため、現在改修工事を進めており、生徒の皆さんに、できるだけ不便をかけないよう、きめ細かく対応してまいります。
また、池袋第一小学校では、「池袋第一小学校の建替え等を考える会」からの提言書をいただいた後、基本構想、基本設計・実施設計を経て、平成34年度の完成を予定しております。
私は、「学校づくりは街づくり」であるとの信念に基づき、知恵を絞り、地域の皆様と協働しながら、学校改築計画を着実に推進してまいります。
おわりに
アメリカの作家、デール・カーネギーは、その著書の中でこう言っています。
「信念は人を動かす。自分が信じないでどうして他人が信じるか。自分が動かずしてどうして他人を動かすことができるか。行動の伴わない信念は信念ではない。そんなものは単なるうぬぼれでしかない。」
私はこれまで、「この豊島区を世界に誇れるまちにしたい」という熱意と信念をこの胸にしっかりと抱き、そして実行に移してまいりました。
かつて「消滅可能性都市」と言われた豊島区でありますが、夢を持って未来を切り拓いていくことで持続発展都市へ、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた「国際アート・カルチャー都市」へ大きく変化し、世界から注目される都市になろうとしています。
私は、この豊島区が、世界の文化の中心として大きく発展し、ここを訪れる人も、住む人も、学ぶ人も、働く人も、全ての人の心が豊かになり、誇りと愛情を持てる街になることを確信しております。
これからも、常に自ら区政の最前線に立ち、全身全霊を捧げ、強い信念とリーダーシップを発揮して、輝かしい未来を力強く切り拓いていく決意であります。
本日、ご提案申し上げる案件は、予算4件、補正予算1件、条例22件、その他3件、合わせて30件であります。
各案件につきましては、後ほど日程に従いまして、水島副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のうえ、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつ、所信表明といたします。