令和2年第1回区議会臨時会招集あいさつ(令和2年5月11日)

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 本日、ここに令和2年「第一回豊島区議会 臨時会」を招集申し上げましたところ、議員各位には、ご出席を賜り深く感謝を申し上げます。

 本臨時会は、新型コロナウイルス感染症にかかる補正予算と条例改正について、緊急にご審議をいただくため、招集申し上げたものでございます。


1.豊島区の状況

 4月7日に緊急事態が宣言されてから、既に1か月が経過いたしました。大型連休を含めたこの間、区民の皆さんには、徹底した外出自粛や営業の休業などに、多大なるご理解・ご協力をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 その効果は見えてきたものの、収束への道筋を見出すには至らず、5月4日には、緊急事態措置を実施する期間が5月31日まで延長されることとなりました。

 豊島区における感染者は、緊急事態宣言された4月7日には31名でしたが、5月9日現在では134名に達しており、増加の傾向は緩やかになりつつありますが、予断を許さない状況が続いております。なお、回復した方は73名となっております。

 この間、お亡くなりになった4名の方に対しまして、心から哀悼の意を表するとともに、罹患(りかん)された区民の皆様へお見舞いを申し上げます。

 本臨時会では、区民の皆さんの暮らしや事業活動を支援するため、第二回定例会を待つことなく、区として迅速に対処すべき施策についてご提案をいたしました。

 取り組むべき課題は、多岐にわたることから、今後も第二回定例会に向けて、国や東京都と緊密に連携しながら、的確かつスピード感を持って、効果的な対応を検討してまいります。

 29万区民の生命と財産を守るため、区議会の皆さんとともに、「戦後最大の危機」を克服すべく、区政の責任を果たしてまいりますので、さらなるご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。


2.感染症対策の取り組み

 今回の新型コロナウイルス感染症への対応については、3月末からこれまでに、区議会各会派の皆さんから緊急要望を110項目、私のところに寄せられる「区民の声」を約400件いただきました。

 さる4月17日の議員協議会において、区としての取組み状況を報告させていただきましたが、それ以降も、区議会や区民の皆さんからいただいたご要望やご意見を真摯に受け止め、今回ご提案する緊急の補正予算を含め、刻々と変化する状況に対応してまいりました。


(1)区立小・中学校、幼稚園における対応

 区立小・中学校については、3月2日から休校しており、すでに延べ40日も授業が行われておりません。子どもたちは、学校に通えず、友達にも会えない状況が続いており、不安や、寂しい気持ちでいっぱいだと思います。多くの保護者の方々からは、学習の遅れへの心配や、家庭学習のサポートの難しさなど、様々なご意見をいただいております。

 こうした中、まずは子どもたちの学ぶ権利を保障するため、教員が子どもたちの健康管理や、学習プリントの配布、子どもたちとのコミュニケーションなどを行えるように、自宅のパソコンやスマートフォンなどを活用したシステムを、今月から試行的にスタートいたします。

 また、学校でも家庭でも、効果的な学習ができるよう、令和3年度に予定していたICT環境の整備を早め、7月には、全ての児童・生徒に一人一台、タブレットパソコンを配布いたします。

 就学援助についても、3月の休校期間中に実施していた、昼食費用の支給を継続することといたしました。

 現在、学童クラブは、4月10日から臨時休止としておりますが、ご家庭の事情により必要な場合には、応急利用の受け入れを行っております。全学童クラブ登録者2,178名のうち14.3%にあたる、312名が登録しており、平均すると1日約160名が利用しています。

 5月1日からは、子どもの虐待防止や心身の健康状態の把握を目的として、学校から週に1回程度、電話連絡を行っております。


(2)保育園における対応

 次に、保育園における対応について申し上げます。

 保育園については、区内すべての認可保育園を、原則休園とするとともに、ご家庭の状況を踏まえ、応急保育を実施してまいりました。応急保育の登録数は629名、全ての在園児の10%ですが、平均いたしますと1日293名の方にご利用いただいております。

 また、緊急事態措置の延長を踏まえ、5月7日から応急保育を拡大し、原則として、公立・私立すべての認可保育園での対応を開始いたしました。

 4月入園に伴う育児休業からの復職については、8月1日まで、復職の期限を延長するとともに、登園自粛を要請した期間は日割り計算、臨時休園の期間中は無料としています。

 さらに、子どもたちへの感染防止対策として、私立保育園へのマスクや消毒液などの補助を行ってまいりましたが、このたび、私立幼稚園につきましても、同様の補助を実施いたします。


(3)保健所における対応

 次に、保健所における対応について申し上げます。

 1月当初から相談対応を開始している「帰国者・接触者電話相談センター」の相談件数は、5月8日までで、6,351件にものぼっております。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大により、PCR検査の需要が高まっているため、豊島区医師会及び歯科医師会の協力により、区独自の検査センターを開設し、4月28日から運営を開始しております。これにより、区内の「かかりつけ医」が診察し、必要と判断された方について、週2回、一日最大20件程度の検体を採取する体制を整えることができました。

 さらに、区内の複数の民間医療機関が、独自に帰国者・接触者外来を開設し、PCR検体の採取等を行う動きも出てきております。こうした動きに対して、区では陰圧テントの貸与や感染防護に必要な衛生資材の提供などを通じて、区内医療機関を強力に支援する取り組みを進めております。

 自宅療養している方へのケアも重要であり、血中酸素濃度を測定する「パルス オキシ メーター」を貸与することで、自宅療養者の健康状態を的確に把握してまいります。

 5月7日からは、保健所における「新型コロナウイルス対策室」の体制について、他部署からの応援を含め、4月の2倍にあたる44名へと拡充し、「心と体の健康相談」の開設をはじめ、感染者等への支援、PCR検査センターの運営、区内医療機関や妊婦等への支援など、感染症対策に関するサービスの充実に努めております。

 なお、今臨時会では、感染リスクを抱えながら業務にあたっている保健所職員に対し、「特殊勤務手当」の特例支給を行うための条例改正をご提案しています。


(4)子育て世帯への支援

 次に、子育て世帯への支援について申し上げます。

 現在、「子ども家庭支援センター」や中高生センター「ジャンプ」は休館しておりますが、メールや電話でのDV、児童虐待などに関する相談については、受付を行っています。

 子どもや若者の相談に応じる「アシスとしま」でも、窓口を開設しており、各関係機関と連携しながら支援を続けています。

 外出を自粛せざるを得ない現在、家庭における子育てには様々な問題が起きる可能性があることから、児童虐待やDV等についても対応の強化が必要となりますので、動画配信サイト「としまななまるチャンネル」やSNSも活用しながら、子育て情報や各種相談先の周知を強化してまいります。

 また、国の「子育て世帯への臨時特別給付金」につきましても、6月の児童手当に合わせて支給できるよう、着実に準備を進めてまいります。


(5)特別定額給付金を含めた窓口の対応

 次に、各種の窓口対応について申し上げます。

 緊急事態宣言以降、本庁舎の休日窓口については、臨時に閉庁するとともに、平日の3階の総合窓口では、いわゆる「三密」対策として、待合席の席数を減らすとともに、1階のセンタースクエアを待合スペースとして活用しています。

 各種の行政手続きについては、できる限り郵送等での取得を呼びかけるとともに、相談等で来庁しなければならない区民の皆さんに向けては、庁内放送による「手洗いやうがい」の呼びかけ、手作りではありますが窓口カウンターへの感染防止シートの設置、職員のエレベーター利用抑制などにより、私たちができる限りの安全・安心な環境づくりに努めています。

 また、感染症対策としての融資や、給付金等の申請の増加に伴い、各種証明書の発行件数が増えており、5月7日より、感染症対策に必要となる各種証明書の手数料を免除しています。

 区内18万世帯に向けた「特別定額給付金」の対応につきましては、4月20日、政府発表の直後より準備に着手するとともに、5月1日付で担当課長を新設し、すみやかに事業を推進する体制を整備いたしました。

 郵送による申請については、5月下旬に申請書の送付を開始し、6月には給付金の支給を開始すべく進めております。なお、マイナンバーカードを活用したオンライン申請については、5月7日から受付をスタートいたしました。

 一日でも早く、確実に給付金をお届けするため、「広報としま特集号」をはじめ、あらゆる手段を活用し、区民の皆さんへの分かりやすい周知に取り組んでまいります。


(6)中小企業等への支援について

 次に、中小企業等への支援について申し上げます。

 中小企業の経営は、緊急事態宣言の発令に伴う休業要請等により、経済活動が制限され、非常に厳しい状況となっております。

 区では、「としまビジネスサポートセンター」内に特別相談窓口を設置し、事業者の資金繰りや経営に関する相談、個々の事業者に見合った融資制度の提供・紹介を行ってまいりました。これまでに約5,000件の相談を受け、区の特例小企業融資も400件を超える申し込みがございます。

 しかしながら、今回の緊急事態措置の延長により、経営危機を脱する見通しが持てない状況が続いています。

 このため、今回新たに、利子補給と信用保証料を全額区が負担する、「無利子・信用保証料本人負担ゼロ」の区独自の融資を実施いたします。

 今後も、国や都の制度を含む支援策の積極的な周知を進め、相談窓口や「豊島区テイクアウト・出前OK店舗リスト」の作成・公開などの支援を充実してまいります。

 また、都の「感染拡大防止協力金」や国の「持続化給付金」など、事業継続に関しては、複数のメニューが用意されていますが、これら制度の活用を具体的に支援することは、区としての役割でもあります。

 そのため、東京商工会議所豊島支部、豊島法人会、豊島産業協会、東京中小企業家同友会豊島支部、豊島区商店街連合会、豊島青色申告会、東京税理士会豊島支部、東京司法書士会豊島支部、東京都社会保険労務士会豊島支部、豊島区中小企業診断士会、東京都行政書士会豊島支部、東京パブリック法律事務所など、日頃から区民の皆さんを支えてくださっております12団体・士業の方々と連携した相談体制を構築いたします。特に、行政書士会とは、制度上許されている相談から申請書類の作成までを一体的に支援する仕組みをつくりたいと考えています。


(7)生活困窮者への支援について

 次に、生活困窮者への支援について申し上げます。

 庁舎4階の「くらし・しごと相談支援センター」に寄せられる相談件数は、例年、平均で月100 件ほどですが、先月4月の実績は2,209件と大幅に増加しております。ネットカフェへの休業要請に伴う宿泊先の相談なども、これまでに85件受け付けています。

 4月20日からは、「住居確保給付金」の要件が緩和されたことから、給付金に対する相談も613件と急増しております。このため、社会福祉協議会の職員を6名から8名に増員するとともに、福祉総務課内で応援体制を組み、すみやかな事務処理に努めています。

 「緊急小口・総合支援資金」の貸付は、これまでに約2,000件の相談、600件を超える申請をいただいております。相談の増加に対応するため、社会福祉協議会では「特例貸付担当課」を設置し、申請窓口を従前の4つから8つに大幅に拡大したうえで、CSWに兼務発令を行い、現在12名体制で業務にあたっています。

 なお、国民健康保険加入者への「傷病(しょうびょう)手当金」についてですが、今臨時会には、区の国民健康保険条例の一部改正とともに、支給に必要な補正予算についても提案しております。


(8)職員の感染予防対策について

 次に、職員の感染予防対策について申し上げます。

 区の行政機能を維持しつつ、感染症に対応する区民サービスを迅速に推進していくためには、まず職員が感染しないことが重要であります。

 これまでに23区中15区で、職員に感染者が発生していますが、幸いに皆さんの努力で、豊島区では現時点において、職員に感染者はおりません。

 しかし、油断してはなりません。

 窓口職員のマスク着用や消毒液の設置、オフピーク通勤の徹底や残業の原則禁止をはじめ、特にテレワーク等による出勤抑制については、4月下旬から50%を目標として取り組むなど、あらゆる方策を実施してまいりました。

 しかし、今後は、保健所業務に加え、給付が急がれる「特別定額給付金」の業務や、各種の相談業務の増加が見込まれることから、これら感染症対策に関する緊急業務に人員を振り向けるため、全庁的な応援体制を拡充・強化する必要があると考えています。

 今後も出勤抑制の取り組みを継続するとともに、既存事業については、優先度を判断しつつ、最小限の人員で執行する体制を構築してまいります。

 さらに、中長期的な視点からも、オンラインによる行政手続きの拡大や、業務へのICTやAIの導入、職員の働き方改革など、「スマート自治体」の実現に向けた取り組みを進めてまいります。


3.結び

 5月4日の緊急事態措置の延長を踏まえ、5月5日には小池都知事からも、「新型コロナウイルス感染の拡大を抑え込み、都民の命を守る」、「都民の生活や東京の経済活動をしっかり支える」、「課題への大胆な挑戦により、社会の変革を促し、東京の未来につなげる」の3つの柱からなる、当面の対応方針が示されました。

 区民の皆さんの暮らしや、子どもたちの教育、そして地域経済に与える影響は、計り知れないものがあり、大変残念ではありますが、収束が見えない感染状況や、ひっ迫する医療現場をみれば、やむを得ないものと考えています。

 収束が見えない現時点において、区としての明確な出口戦略を描くことは難しい状況ですが、令和2年度に展開しようとしていた政策や計画、予算の執行等について、時には、今進めている事業も延期・休止を英断せざるを得なくなることがあるかもしれません。

 今回のコロナショックは東京の経済に計り知れない打撃を与え、区財政についてもリーマンショックを超える影響が待ち受けていると考えなければなりません。

 まさに、これから本格的に執行しようとする令和2年度予算ではありますが、改めて様々な影響を検証し、第2回定例会において、今年度の区財政の運営方針についてお示ししたいと考えています。

 また、「特別定額給付金」を契機に、新型コロナウイルス対策に充てるための寄付金の受付を開始するとともに、受け皿としての基金の創設を、第2回定例会に向けて検討してまいります。

 もう一つ心配なことは、地域のコミュニティについてです。

 東日本大震災を契機に、人と人との「絆」の大切さが再認識されることとなりました。未曾有(みぞう)の危機において、協力し合い、助け合う基盤となるのが地域のコミュニティであります。

 今回の不要不急の外出自粛、地域の祭りや文化イベント等の中止、区施設の休館等により、心のつながりまで失いかねない状況です。

 豊島区が目指す「国際アート・カルチャー都市」は、文化の力で人と街を元気にし、子どもから高齢者まで、誰もが主役となって地域コミュニティを支え合うようなまちづくりを目指しています。

 2020(ニーゼロ ニーゼロ)東京大会が延期となり、グランドオープンを迎える「ハレザ池袋」は休業状態であり、「イケバス」も運休しています。さらに、「トキワ荘マンガミュージアム」や「イケ・サンパーク」のオープンなども、お待ちいただいているところです。

 今後、この難局を乗り越え、収束の道筋が見えてきた際には、これら文化のまちづくりを再開するとともに、町会や商店街などを中心とした地域や住民相互の交流、そして地域の「絆」をいち早く回復させることが重要であると考えております。

 区民の皆さんが一日も早く、平穏な日常を取り戻せるよう、さらには、その先にある豊かな豊島区の未来のため、全力を尽くしてまいりますので、議員各位におかれましても、ご協力をお願いいたします。

 結びになりますが、感染症のリスクを抱えながら最前線で働く医療従事者の皆様、社会インフラを支えてくださる方々、国や都の要請にこたえ、休業や営業時間の短縮などに協力してくださっている事業者の皆様に、改めて心から感謝を申し上げます。

 「逆境を転じて、その逆境さえ、前進の第一歩に加えていく。」これは、戦前から戦後にかけて活躍した日本を代表する小説家 吉川英治の言葉であります。

 緊急事態宣言が延長されたいま、まさに険しい、逆境と言うべき事態となっております。

 私は皆さんの不安に思いをはせ、「新型コロナウイルスと戦っていく」という不退転の決意をお伝えするため、「コロナに負けるな」と題しました、私からのメッセージを掲載した「広報としま号外」を5月7日に発行し、全戸配布いたしました。

 直面する逆境と向き合い、なすべきことを的確かつスピード感をもって実現するとともに、しっかりと次のステップにつなげるための準備を怠たることのないよう、先を見据えながら、議員の皆さま、区民の皆さまと一丸となってこの難局を乗り越えてまいります。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例2件、補正予算2件、合わせて4件であります。

 内容につきましては、後ほど日程に従いまして齊藤副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のうえ、ご賛同賜りますようお願いを申し上げまして、招集のあいさつといたします。