令和3年第3回区議会定例会招集あいさつ(令和3年9月15日)

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 0.はじめに

 本日、ここに令和3年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。


 令和3年7月12日に発出された4回目となる東京都への緊急事態宣言は、9月30日まで三度目の延長が宣言され、これまで最長の81日間となりました。

 この度の第5波では、本区においても最も影響が大きかった8月中旬の一週間の感染者数は、約900人まで上昇しました。こうした急激な感染者の増加により、自宅療養者は一時期1,000人を超えるなど、保健所の業務はかつてないほど繁忙を極め、私が区長に就任して以来、今までに経験したことのない、まさに、災害レベルの非常事態となっております。

 このため、保健所では、医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション、救急対応のできる医療サービスなど、との連携をさらに強化し、自宅療養中で医療が必要な方にも支援が届くよう、日々調整を続けています。

 また、8月中旬以降、全庁的な特別支援体制を組み、保健所の体制をさらに20名増員し、陽性者に対する聞き取り調査などに従事しております。

 各職場においても、通常業務を抱えながらのやりくりとなりますが、今、直面する危機を乗り越えるべく、全庁を挙げて保健所を支えることが、区民の皆さまの安全・安心にとって最優先との認識のもと、すべての職員が「自分ごと」として、一丸となって感染された区民の皆さんの支援にあたってまいります。

 区民の皆さんには、これまでも不要不急の外出・移動・会食の自粛、混雑を避けた行動の徹底など、感染予防対策をお願いしてまいりました。

 「自粛疲れ」の広がりが危惧されておりますが、感染を抑制し、医療崩壊を食い止め、皆さんの命と生活を守り抜くために、今一度、お一人おひとりが、感染予防を強く意識し、責任ある行動を率先していただきますよう重ねてお願いいたします。

 区は、コロナ収束の切り札となるワクチン接種を迅速に進めるとともに、継続してコロナ対策事業を展開すべく、全力を尽くしてまいりますので、議員各位におかれましては、さらなるご理解とご協力をお願い申し上げます。


1.新型コロナウイルス感染症への対応

 まず、「新型コロナウイルスワクチン接種」について申し上げます。

 豊島区では、「個別接種」を基本とし、「集団接種」「巡回接種」を合わせた3層体制による接種を進めてまいりました。9月13日現在、1回目の接種をした方は65.1%、2回目の接種を終えた方は52.2%となっています。

 なかでも、65歳以上の高齢者では、1回目の接種を受けた方が91.0%、2回目も89.2%となっており、素晴らしい成果を上げることができました。これも、医師会や薬剤師会の皆さまの積極的な協力による個別接種、巡回接種を中心とした接種体制により、安心して接種が受けられる「豊島方式」を構築できた結果であります。

 8月からは、従来の個別接種を基本とする体制から、集団接種を中心とする体制に移行し、集団接種会場を従来の3か所から8か所に拡充いたしました。あわせて、8月9日より集団接種会場のキャンセル待ち対応を開始するとともに、ワクチン供給の減少のため見合わせていた12歳から15歳の方の接種についても、8月21日から予約を開始し、これで、すべての対象年齢の方の接種が可能となりました。

 私は、この間、安定的なワクチン供給に向け東京都や河野太郎大臣に対し、区の実情を直接お伝えするなど、希望する区民の皆さまに必要となるワクチン確保に努めてまいりました。その結果、8月1日から予約を再開できるだけのワクチンを確保することができました。

 10月以降も厳しい見通しでありますが、必要量の確保に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。

 現在、20代、30代の若い世代の方を中心に、変異株等の感染が拡がっている状況です。ワクチン接種には、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています。

 私は区民の皆さんの生命や健康を守るため、9月末までには、対象となる区民の皆さんのうち1回目の接種を終えた方の割合を、70%以上にすることを目標に取り組んでまいります。さらには、10月末までに、希望する区民の皆さん全員に1回目の接種を受けていただけるよう全力を尽くしてまいります。

 また、23区初となる職員に向けての職域接種では、開始が遅れ、お待たせしましたが、豊島区歯科医師会の協力により8月23日から開始し、池袋保健所内のあぜりあ歯科診療所において、平日の午後6時から9時まで実施しています。

 職員ばかりでなく業務委託先の社員、その家族等の方々にも接種することにより、区民の皆さんの生活に密着したサービスを確実に提供してまいります。


2.令和2年度決算

 次に、「令和2年度決算」について申し上げます。

 令和2年度決算は、区民生活を守るため、新型コロナウイルス感染症対策に全力を傾注したことから、歳入・歳出決算ともに、過去最大規模となりました。

 国や都の新型コロナウイルス感染症対策を踏まえ、補正予算は第7号まで編成し、介護施設や保育施設等の職員に対するPCR検査の実施、低所得のひとり親世帯への臨時給付金の支給、繁華街におけるクラスター対策、さらには、「豊島方式」として注目を集めた個別接種・集団接種・巡回接種の3層によるワクチン接種体制の構築など、区独自の支援策も含めて、機動的な対応を展開しました。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 今回の決算では、歳入が1,552億6,245万円、収入率は94.1%、前年度決算との比較では、89億6,482万円、率にして6.1%のプラスとなっています。歳出は、1,504億6,830万円、執行率は91.2%、前年度と比較すると80億844万円の増、5.6%のプラスとなっております。

 決算規模拡大の主な要因は、新型コロナウイルス感染症対策の展開によるものであり、国の特別定額給付金事業293億円を含めた新型コロナウイルス感染症対策経費の歳出総額は327億円となりました。

 歳出を性質別に見ると、まず、投資的経費につきましては、対前年度比で245億円、64.4%の大幅な減となる136億円となりました。これは、元年度に「百年に一度の大改革」と位置付けて行った集中投資が完了したことによるものです。扶助費につきましては、保育所関係経費が増となったことなどから、16億円、4.3%の増となる377億円となりました。

 一方、これらの行政需要を支える財源ですが、不合理な税制改正やコロナ禍などによる法人住民税の落ち込みにより、特別区財政調整交付金が40億円の減少となる298億円となったものの、前年度の収入に賦課を行う特別区税は7億円の増となる348億円と過去最大となりました。これは、特別区民税が、課税人口の伸びや一人当たり課税額の増などにより、増収となったことが主な要因です。

 歳入から歳出を差し引いた「形式収支」は、47億9,415万円となり、過去最大の決算額となりました。翌年度への繰越額9億3,171万円を差し引いた「実質収支」は、38億6,244万円の黒字と、過去10年間で最大となっております。

 次に、主な財政指標について申し上げます。

 財政構造の弾力性を示す「経常収支比率」については、85.9%と昨年度より、5.0ポイント上昇しました。これは、財政調整交付金の減などにより経常的一般財源等の総額が減少となる一方、人件費や扶助費、物件費などが増加したためです。

 公債費など借入金にかかる返済負担を表す「公債費比率」については、前年度より0.6ポイント上昇し、4.1%となりましたが、本区独自の財政規律である10%以下を大きく下回る数値となっております。

 このほか、「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債費比率」、「将来負担比率」という4つの健全化判断比率を見ても、大幅に下回っており、本区の財政状況は、コロナ禍の中でも、引き続き高い健全性を維持しております。

 次に、基金残高と起債残高について申し上げます。

 令和2年度当初予算を編成した昨年の3月に、「としまのお財布」において、今後5か年の財政見通しをお示ししました。その際、2年度末のいわゆる「貯金」と「借金」の差は、63億円の貯金超過と予測しておりました。

 その後、特別区民税が堅調に伸びたことや、区債の新規発行の抑制、特定目的基金である義務教育施設整備基金と公共施設再構築基金からの取り崩しの取りやめなどにより、2年度末の基金残高は334億円、起債残高は247億円となり、一年前の予測を24億円上回る87億円の貯金超過となりました。なお、2年度末の基金残高334億円のうち、財政調整基金残高は192億円となっています。元年度末の財政調整基金残高が184億円でしたので、コロナ禍にあっても、8億円、積み増すことができました。

 さらに、決算剰余金を積み立てた後の財政調整基金は、231億円を確保できております。

 こうしたことから、令和2年度決算は、コロナ禍による区財政への影響を最小限に抑えつつ、健全性も確保できており、「SDGsの推進」や「国際アート・カルチャー都市の実現」、「池袋の都市再生」、さらには令和4年度に迎える「区制施行90周年」に向けた基礎を固める決算となっております。


3.SDGsの推進

 次に、「SDGsの推進」について申し上げます。

 「SDGs未来都市」の選定は新たなつながりと広がりを生み出しています。

 本区と同時に「SDGs未来都市」に選定された、岩手県岩手町の佐々木光司町長からご依頼があり、新たな交流の一環として豊島区を紹介する展示を、8月17日から9月2日まで丸の内の三菱ビルにて開催しました。

 また、「SDGs未来都市推進アドバイザー」を委嘱した一木広治氏のお力により、国連事務総長の立ち上げた報道機関の枠組み「SDGメディアコンパクト」を通じて、本区の取組が国内の主要メディアでも取り上げられることになりました。

 私は区政の業務こそがSDGsそのものだと考えております。この度の選定を機に、「SDGs未来都市」としての取組をしっかりとお伝えしてまいります。

 9月下旬の国連SDGs週間に合わせたイベントを皮切りに、10月のSDGsモニュメントの除幕式、ファーマーズマーケットの再開、イケブクロリビング・ループの開催、11月の「としま文化の日」での「SDGs」の取組に至るまで、本区ならではの魅力を国内外に広く発信してまいります。

 今後は、地域や区内団体、企業等との連携や「SDGs未来都市としま」のプロモーションなどをさらに強化すべく、8月より所管を国際文化プロジェクト推進室へと移しております。

 現在、「基本構想審議会」でご審議いただいております「後期・基本計画」においては、68の全ての施策においてSDGsの理念や考え方を反映するとともに、SDGsの目標と施策の紐づけや整理を行っております。さらには、豊島区の将来像「国際アート・カルチャー都市」を実現するための主要な視点として、「SDGsの推進」を位置付ける方向で検討が進められています。

 2030年に向けた「国際アート・カルチャー都市」によるまちづくりを、さらに磨き上げ、「SDGs未来都市」として全国の自治体を先導するモデル自治体としての使命を果たすため、区議会・地域団体・企業などの皆さまと力を合わせながら、今後も全庁を挙げて、あらゆる分野においてSDGsの推進に取り組んでまいります。


4.文化を基軸としたまちづくり

 次に、「文化を基軸としたまちづくり」について、新型コロナウイルスの厳しい感染状況を受けて、オリンピック・パラリンピックの聖火リレーやライブサイトは中止され、東京2020大会も無観客での開催となりました。これまで準備に準備を重ね、この好機を捉えて豊島区が進めてきたまちづくりの勢いを、さらに加速させたいと思ってきただけに残念であり、寂しい気持ちでいっぱいでしたが、大変うれしいニュースがありました。オリンピックのスポーツクライミング女子複合で、豊島区出身の野中生萌選手が堂々の銀メダルに輝きました。

 オリンピック閉会後の8月12日に、野中選手が区役所を訪問されました。地元町会や後援会などの皆さんとともに、職員による手作りの横断幕や大きな拍手でお迎えし、オリンピックでの活躍をご報告いただきました。野中選手は、「地元の皆さんの一つひとつの応援が力になった。皆さんには感謝してもしきれない」と述べられ、地域の皆さんと一緒に応援できたことはオリンピックのレガシーのひとつになりました。

 3年後のパリ・オリンピック・パラリンピックに向けても、野中選手をはじめ豊島区ゆかりの選手を「オールとしま」で応援し、活躍を後押ししたいと考えております。


 トキワ荘マンガミュージアムは、開館から一周年を迎え、これまでの来館者は、延べ約5万人となっております。

 4月7日から始まった「手塚治虫企画展」は、臨時休館の期間を除き、約4か月にわたり開催され、新聞やテレビ、雑誌などにも数多く取り上げられこともあり、コロナ禍にもかかわらず1万人を超える多くの皆さまに来館いただき、大成功を収めることができました。

 7月7日の一周年記念では、トキワ荘ゆかりのマンガ家11人の塗り絵をあしらった七夕の短冊がトキワ荘公園に飾られました。区立小学校や子どもスキップ、保育園などから、将来の夢やコロナ禍の早期終息などの願いが書きこまれた約4,000枚の短冊が寄せられ、マンガ界の巨匠である先生方の作品を知るきっかけとなるとともに、子どもたちとトキワ荘の距離がまた一段と近づきました。

 引き続き、今週末の9月18日からは、新特別企画展「トキワ荘の少女マンガ」を開催いたします。トキワ荘に住んだ先生方のほとんどが少女マンガを描いたことから、その華やかな作品を紹介する、大変見ごたえのある企画展となっておりますので、ご期待ください。


 グローバルリングでは、開設以来の一大野外エンターテイメント「TOSHIMA ARTS LIVE2021 真夏の夜の饗宴」が、9月1日に開催されました。コロナ禍で活躍の場を失ったアーティストを支援する文化庁助成事業「ARTS for the future!」として繰り広げられた多岐にわたる総合芸術舞台です。

 フランス「レジオン・ドヌール勲章」を授与されるなど世界でご活躍のデザイナー・コシノジュンコさんによる総合プロデュースで、野外劇場の可能性が大きく広がり、グローバルリングの価値がさらに高まったとの声が多く寄せられました。

 都倉俊一文化庁長官をはじめ、日本を代表する著名人の方にも大勢お越しいただくなど、今までの豊島区では考えられない、世界レベルの一大イベントが開催されました。


 今年も文化芸術に関わるあらゆる人々がいきいきと活動し、文化が次世代に継承されるまちを目指して、11月1日に「としま文化の日記念式典」を開催します。式典は、文化栄誉賞の授賞式のほか、第二回定例会招集挨拶でご報告したとおり、「江戸川乱歩賞」の贈呈式を「日本推理作家協会」と連携して行います。

 また、11月1日から7日までの文化推進期間においては、区立芸術文化劇場におけるとしま未来文化財団主催の公演、グローバルリングでの吉本興業による公演、イケ・サンパークでのファーマーズマーケット、グリーン大通りリビング・ループの開催、池袋西武とヤマハのコラボレーションによるドラムサークルイベントなど、多くの文化イベントを予定しております。

 当然のことながら、開催にあたっては、新型コロナウイルス感染対策を徹底しながら、としまの「文化の灯」が途切れることのないよう、しっかりと灯し続けてまいります。


5.都市再生の推進

 次に、本年の重点テーマの一つである「都市再生の推進」のうち、池袋駅西口地区市街地再開発事業の動向について申し上げます。

 本事業では、駅前の交通広場を再編し、歩行者のための魅力的な空間を整備することで駅の賑わいを駅周辺に広げ、居心地がよく、歩きたくなる「ウォーカブル」なまちの実現を目指しています。これにより、駅から街へと人々の流れを広げる広大な地上・地下結節空間、いわゆる「サンクンガーデン」を起点として、都会の中でも四季を感じながらまち全体を散策したくなる、心地よい歩行者空間を創り上げてまいります。

 駅前交通広場については、現在分散しているバス・タクシーの乗降場所を集約し、交通広場に駅前のシンボルを設置する検討をしております。すでにあるグローバルリングと相まって、周辺繁華街と調和した、池袋西口駅前の新たな顔となるよう検討を進めております。

 この開発は、単に駅前だけがきれいになれば良いというものではありません。駅前の開発が周辺に波及することで、池袋西口全体の価値を高めるような開発に誘導することが必要です。そのためには、駅前地権者や周辺の住民の皆さまばかりでなく、事業者や区も一体となって取り組み、これからの「先進的な街づくりモデル」となるよう、推進してまいります。

 去る8月29日に、44年にわたって池袋西口の顔として、若者向けファッションをリードしてきた、池袋マルイが閉店となりました。私にとって、池袋西口の中心として、商業ビルとはいえ、共に歩んできた思い出の深いマルイです。退去後は、建物の老朽化もあり、所有者による解体工事が行われ、新たに生まれ変わります。

 このマルイ跡地は、西口駅前からアゼリア通り、交差点を経て立教通りに向かう途中にあり、副都心線池袋駅の真上に位置する最高の立地であります。

 現在検討中の池袋西口駅前地区、西池袋一丁目地区などの開発は、今後の池袋西口全体の開発機運を盛り上げるうえで重要なものです。この開発が、池袋西口のシンボルとして周辺の賑わいを広げ、西口再開発の起爆剤となる、魅力的な開発となるよう事業者とも協議してまいります。そして、私は、一番重要なことは、この池袋らしさを残すことではないかと思っています。


 区制施行90周年を迎えるための「まちづくり事業」の一つとして、池袋駅北口のシンボルとなる、「池袋駅北口公衆トイレ」の改修に取り組みます。トイレ単体としての改修ではなく、ウイロードからのつながりを重視し、池袋駅北口全体が、明るく楽しい雰囲気になるようなデザインを植田志保氏に依頼しております。

 秋には工事を起工し、今年度内の完成を目指しております。これまでの池袋北口公衆トイレのイメージを一新する、池袋の新たな名所となるような改修を実現いたします。


 「無電柱化事業」について申し上げます。

 無電柱化事業は「防災」「安全」「景観」の3つの基本方針を掲げ、区内約1万3千本の電柱をゼロにすることを目指しております。

 モデル路線の巣鴨地蔵通りは、令和元年から工事に着手し、本年6月に真性寺から高岩寺までの第1期区間の工事が完了いたしました。変圧器を入り口のアーチに乗せるなど、これまでにない斬新な手法で、困難だと言われている歩道のない道路での無電柱化を成功させております。

 3区間のうち1区間の工事を終えたところですが、無電柱化が完了した区間ごとに、順次、無電柱化工事後の道路の本舗装を実施することにしております。整備にあたっては、豊島区を代表する歴史のある商店街にふさわしい、旧中山道の佇まいを彷彿とさせるような、魅力と賑わいのある街並みを目指してまいります。


 昨年11月に運行を開始した「イケバス」について申し上げます。その後コロナ禍に陥り、これまでに2度にわたる運休や、運行時間の短縮などを強いられてきました。

 こうした中でも、びっくりガードを経由したゴールデンルートの開拓、「イケ・サンパーク」への乗り入れ、保育園児たちの「キッズパーク」への送迎、「アトカルツアー」の実施などにより、より多くの皆さんから愛されるようになっております。

 今日では、池袋エリアの25社の企業から、サポーター企業として賛同いただき、まさに区民や地元企業の皆さまのお力により、「イケバス」が運行され、まちの価値と魅力を高める存在となっています。

 インバウンドなどが期待できないコロナ禍において、より多くの区民や来街者の皆さんに、日常的に「イケバス」を利用していただけるよう、暫くの間、運賃を大人も子供も一回100円に統一いたします。さらに、東ルートについて、回遊性や利便性の向上を図るため、池袋駅東口からHarezaを経由せず、利用客の多いサンシャインシティやイケ・サンパーク方面へ最短で向かえるよう、ルートを変更いたします。これにより、池袋駅からサンシャインシティへの所要時間は今までの13分から8分へ短縮、東ルート全体で一周38分から28分へ短縮されます。

 今後も、環境にやさしく、池袋の顔として、区民の皆さんを中心にご利用いただき、「イケバス」の魅力、さらには「イケバス」を通じて、まちの魅力を発信してまいります。


 次に、「グリーンとしま再生プロジェクト」について申し上げます。

 このプロジェクトの中心として、長い間ご指導を賜りました、宮脇昭横浜国立大学名誉教授が、去る7月16日にご逝去されました。

 平成20年(2008年)、「環境都市づくり元年」として、新たな環境政策に取り組み始めたその年に、宮脇先生と区長室でお会いしました。「環境への取組は、高密都市だからこそやりがいがあるのです。豊島区で取り組むことは世界の大都市のモデルになります。」とのお話を伺ったことをきっかけとして、私は、みどりを確保することが難しい豊島区において、緑化を進める決意をしたのです。

 子どもたちと、地域の皆さんとともに植えてきた樹木は、現在12万6,744本まで増えており、区内の各地で「いのちの森」「学校の森」として、地球環境を守っています。

 宮脇先生の熱心なご指導があったからこそ、今日の豊島の環境があるといっても過言ではありません。これまでの先生の功績を称え区制施行90周年事業のひとつとして「記念植樹」を行うとともに、「豊島区グリーンとしま再生プロジェクト」の歩みを冊子にまとめ、未来の地球環境を担う区内の子どもたちにも配布し、未来へ継承してまいります。


 「豊島区みどりの基本計画」においては、10年に1度の改訂を迎えます。策定に当たっては、区民公募により委員を選定するとともに、パブリックコメントを実施してまいります。来年度に向けて、地球温暖化の問題、都市の防災性の確保、都市景観のあり方などの視点を取り入れながら、SDGs未来都市として、緑地面積が少ない豊島区ならではの、新たな計画を策定いたします。


6.子どもから高齢者までの安心を支えるまちづくり

 「子どもから高齢者までの安心を支えるまちづくり」について申し上げます。

 まず、「子どもと女性にやさしいまちづくり」について申し上げます。

 SDGsへの取組の一環として、困難を抱える子どもや若者を支援する輪を広げるため、企業からの「コト・モノ支援」の推進と、「寄附金の有効活用」を柱とする「としま子ども若者応援プロジェクト」を7月から始動しました。

 企業からの支援としては、8月4日から24日にかけて、宅配ピザでお馴染みの「ピザーラ」を運営する株式会社フォーシーズより、区内5か所の子ども食堂において、延べ480人分ものピザをご提供いただきました。

 株式会社ベジリンクからは、化学農薬などを使わない安全なオーガニックのベビーフード548食をご提供いただき、東西の子ども家庭支援センターで育児についてご相談があった方にお配りしました。

 また、寄附金として、現時点で1,356万円ものご支援をいただいております。この寄附金の一部を活用し、厳しい状況に置かれるひとり親家庭に対して、昨年に引き続き、精米5㎏を配布いたします。

 今後も、寄附された方の「思い」や「心」を、支援を必要とする方に確実に届けることによって、コロナ禍で社会的に孤立しがちな困難を抱えるお子さんや若者、そして、そのご家族の方々を勇気づけられるよう、支援団体の協力も仰ぎながら、地域の皆さんとともに取り組んでまいります。


 今年も「待機児童ゼロ」を達成いたしました。

 平成25年には待機児童が270名にまで増加するなど、非常に厳しい子育て環境でありました。こうした事態を踏まえ、保育受入枠の拡大へと大きく舵を切り、平成26年度から令和3年4月までの6年間で、58園の私立保育所を誘致いたしました。

 平成29年度に「待機児童ゼロ」を達成して以降、国の待機児童の基準が変更された平成31年度を除き、「待機児童ゼロ」を続けております。

 今後につきましても、地域ごとの保育需要を見定めながら、新規保育園の整備を厳選することで、「待機児童ゼロ」を維持してまいります。


 東京都は、今年度から「未来の東京戦略」の重要政策である、「チルドレン・チョウジュ・コミュニティー」の3つのCを推進するための補助事業を創設しました。本区ではSDGsモデル事業にも選定された「中小規模公園活用プロジェクト」を提案し、先月、東京都から採択の連絡がありました。

 今年度から最大3年間、都の補助金を活用し、障がいの“ある子”も“ない子”も一緒に遊ぶことのできるインクルーシブ遊具の整備や、多世代で土いじりのできるプランターの設置など、暮らしの中にある小さな公園づくりを進めてまいります。


 環境省主催の「熱中症予防対策の推進に係るモデル事業」に本区が採択されたことから、協働実施者である株式会社タニタとの間で本年6月に「連携・協力に関する協定」を締結しました。

 現在、タニタとの協働で区民ひろばなど14か所の施設に熱中症計を設置し、各地点での暑さ指数をリアルタイムでモニタリングしています。このデータを収集しながら、各施設に設置してあるタブレット端末にその暑さ指数を表示し、熱中症のリスクを見える化することで、利用者等への注意喚起を行なっています。また、セミナーの開催やリーフレットの配布など、区民への熱中症対策の普及啓発も行なっています。

 こうした取組を専門的な知見を有するタニタと協力しながら実施することにより、高齢者を熱中症から守り、一人暮しでも安心できる「高齢者にやさしいまち」の実現を目指してまいります。


7.防災対策

 次に、「防災対策」について申し上げます。

 近年、地球の平均気温の上昇に伴う異常気象により、集中豪雨や大型台風といった自然災害が世界各地で頻発しています。今年7月に静岡県熱海市で発生した、大雨による大災害は記憶に新しいところです。

 こうした風水害への備えに加え、コロナ禍における「複合災害」を念頭に、とりわけ災害時の区民の安全・安心の拠点となる「救援センター」では、飛沫感染防止のためのパーテーション、消毒液やマスク等を、全ての救援センターに完備するなど、改善・強化を図ってまいりました。

 また、発災時において、特に援護や支援が必要な方を、円滑かつ迅速に避難させるために活用する「災害時要援護者等名簿」を更新し、本年7月に町会や民生委員の方々に配布いたしました。本年5月には「災害対策基本法」が改正され、名簿に掲載された方の避難の実効性を確保することを目的とした「個別避難計画」の作成が求められました。

 今後、発災時において、より確実にすべての皆さまが避難できるよう、地域と協力しながら、実効性の高い対策を講じてまいります。


8.公共施設の整備について

 次に「公共施設の整備について」の中で、池袋保健所整備について申し上げます。南池袋C地区の開発スケジュールに合わせ、令和8年の移転に向け、保健所の機能とレイアウトに関する検討を進めております。「健康危機管理の拠点」、「包括的な子育て支援の拠点」、「健康づくりの拠点」の“3つの基本機能”を充実させ、区民の誰にも親しまれる「健康センター」としての役割を併せ持つ、公衆衛生の拠点となることを目指しております。

 当然のことながら、区役所本庁舎と隣接する立地のメリットを最大限に活用し、「健康センター」とは今まで以上に緊密な連携を取ってまいります。


 次に、区制施行90周年を迎える令和4年度に向けて、複数の区民施設の整備について申し上げます。

 一つ目は、各地域における世代を超えた交流の場となっている区民ひろばが続々とリニューアルオープンいたします。オープンする区民ひろば池袋・椎名町・要は、いずれも区民集会室が併設された複合施設となります。それぞれの整備にあたっては、児童遊園との敷地の一体化や移転、複合化などの工夫がなされており、令和4年度の秋には区民の皆さんへお披露目となる予定です。

 二つ目としては、「森の中の学校」をコンセプトに設計した「池袋第一小学校」が令和4年8月に完成します。新校舎は、区内の小学校としては初の5階建てとなり、みどりに囲まれた学校全体で四季を感じられる、新たなまちのシンボルに相応しい地域の拠点に生まれ変わります。

 三つ目として、長崎健康相談所・児童相談所等の複合施設が令和4年度に開設いたします。国や東京都との協議を進めつつ、他団体の児童相談所に職員派遣を積極的に行いながら人材育成を図り、開設に向けた準備を着実に進めてまいります。

 四つ目として、生活介護が必要な方の受け入れ枠を拡充するため、上池袋豊寿園の跡地を活用し、目白生活実習所の分室を整備いたします。令和4年度の開設に向けた準備を進めるため、今定例会において補正予算を計上しております。

 五つ目として、トキワ荘復元を契機に、新たな文化施設を南長崎のバス通りにある「味楽百貨店」に整備いたします。味楽百貨店は、戦後に長屋状の木造建物を建て、その中に商店を並べた「一棟式マーケット」で、当時の間取りや設備を保ったまま今日まで現存している、非常に貴重な豊島区の文化資源です。この財産を、子どもから大人まで誰もがマンガ・アニメ文化に触れることができ、また、古き良き昭和の街並みを感じられる文化施設として生まれ変わらせたいと考えております。この施設によって、これまで育まれてきたマンガ・アニメ文化による南長崎地域のまちづくりが、より一層発展し、地域全体をさらに活性化するものと確信をしております。

 また、教育施設の改築や長寿命化についても、旧平和小における仮校舎を中心とした複合施設の整備を進めるとともに、第4回定例会には、今後10年間の方針をお示ししたいと考えております。


9.教育

 次に、教育について申し上げます。

 本区の区立小中学校・幼稚園は、9月1日から新学期を迎え、概ね9割の児童生徒・幼児が登校し、学校生活を再開しております。また、各学校では、タブレットを活用したオンライン学習を積極的に行い、コロナ不安により登校を控えている児童生徒に対しましても、コミュニケーションを絶やさず、学びを止めない取組に努めているところです。

 今後も、学校における感染防止対策と、子供たちの「心のケア」対策の両方に力を入れながら、子供たちの安全・安心な環境を整え、持続的な学びを着実に実施してまいります。

 今年度の新たな取組の中から、まず、「子供たちのSDGsの取組への支援」について申し上げます。

 各学校では、教育委員会に設けた「SDGsプロジェクトチーム」のサポートにより、SDGs達成に向け、身近な地域の方々や大学・企業との連携による取組が既に始まっています。多様な人々との協働の体験による実践的な学習をとおして、子供たちが、持続可能な地域の未来を主体的に創造する行動につなげていきます。

 11月の「SDGs週間」、11月8日の「SDGsフェスタ」では、SDGs未来都市の実現に向けた学校の取組と、そこで学ぶ子供たちの姿を保護者や地域の方々へ広くご紹介いたします。この全校による一斉発信は、区民の皆さんのSDGsへの意識をより一層高め、行動を呼びかける力強いメッセージになるものと考えております。

 また、このたび、持続可能な社会づくりの担い手育成についての研究で第一人者として活躍しておられる立教大学名誉教授の阿部治先生を、「豊島区教育委員会学校SDGs推進アドバイザー」にお迎えいたしました。

 阿部先生には、地域・学校・企業・関係機関との連携を通したSDGs推進に向けた教育委員会の取組に関して、研修を通じたご支援のほか、様々なご助言を頂いてまいります。


 「通学路における合同点検の実施」について申し上げます。

 本年6月、千葉県八街市におきまして、下校中の小学生の列にトラックが衝突し、5名が死傷する痛ましい交通事故が発生いたしました。子供の死傷事故では、今から9年前の平成24年の京都府亀岡市での登校中の大規模な交通事故が思い出されます。

 本区におきましては、この時の教訓から、これまで3年に一度の通学路の合同点検、通学路における防犯カメラの増設、通学案内指導員の配置、登下校メールサービスの導入など、不審者対策、安全対策に積極的に取り組んでまいりました。

 このたびの事故を受け、本区では、今月13日から教育委員会を中心に、岡谷晃治危機管理監の陣頭指揮のもと、区の関係部局、学校関係者、警察、地域の皆さんと一緒に、全区立小学校の通学路における合同点検を順次、実施しております。

 今後も引き続き、学校関係者、警察、地域の皆さんと連携を密にしながら、通学路の危険箇所を減らし、児童の安全対策に万全を期してまいりたいと思います。


 次に、「コミュニティ・スクール」について申し上げます。

 令和元年度から開始した、池袋本町小学校と千登世橋中学校における「モデル校」を、本年8月より「本格実施」に移行をいたしました。インターナショナル・セーフスクールなどで培ってきた、学校と保護者・地域の皆様との信頼関係を土台としながら、「地域とともにある学校づくり」をしっかりと進めてまいります。

 今後は、モデル校の学校運営協議会委員も検討に参加した「豊島区コミュニティ・スクール推進ガイドライン」に基づき、他の学校にも順次、導入してまいります。


10.おわりに

 令和3年第三回定例会の終わりになりますが、「過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow」この言葉は、20世紀最大の物理学者、アルベルト・アインシュタインの残した言葉です。

 私が区長に就任してからの6期22年間にわたる区政の道のりは決して平たんなものではありませんでした。就任当初に直面した財政状況は、破綻寸前、まさに絶体絶命の状況でした。

 しかし、私は、お金はなくとも、心の豊かさを忘れない、文化によるまちづくりによって、バブルの崩壊、リーマンショックなどの難局を乗り越え、財政再建を果たしました。2014年、平成26年に消滅可能性都市の指摘を受けた際には、これまでの文化によるまちづくりを強みに、持続発展可能な都市の具体的な将来像「国際アート・カルチャー都市構想」を打ち出しました。

 この構想のもと、まちづくりのチャンスを見極め、100年に一度の集中投資を進め、職員はもとより区民の皆さま、池袋を訪れる来街者、文化に関係する方々にも、この豊島区が、そして池袋が「数年前には誰も想像できないぐらい、大きく変わった。」と言われております。池袋東口の豊島区立芸術文化劇場では、宝塚が定期公演を行い、日本を代表するミュージカル、さらには、歌舞伎の長期公演の打診も受けております。

 池袋西口の新たなシンボル「グローバルリング」は、世界的な音楽家に選ばれる舞台となりました。先ほども申し上げましたが、おそらく日本では初めてとなる野外でのファッションショーが盛大に開催され、街ゆく人々までもが、その世界観や迫力に圧倒されておりました。また、池袋駅周辺の4つの公園は、あらゆる世代に愛される居心地の良い都市空間に生まれ変わるなど、豊島区は10年前の80周年のときには想像がつかないような、夢のような大発展を遂げています。

 早いもので、来年は、豊島区制施行90周年という節目を迎えます。私にとっては、「文化によるまちづくり」の集大成を迎えます。そして、迎える90周年は、「過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ」ものにしなければなりません。今まで歩んできた節目ごとの周年行事ではなく、この言葉のように、未来へ向けて豊島区が大きな希望を持てる90周年です。後年度に借金を先送りしない、基金を有効に活用した100年に一度の集中投資に代表されるような過去からの学びを最大限に取り入れつつ、これから先の10年、100周年に向けて、そしてさらに、その先を見据えて「としま新時代の未来図」をお示しし、広く発信してまいります。

 庁内においても、9月1日には90周年に向けた検討組織を設置し、準備をスタートいたしました。議員の皆様におかれましても最大限のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例7件、決算認定4件、補正予算3件、その他7件、合わせて21件であります。

 各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、齊藤副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のうえ、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。

 以上で私の招集挨拶を終わらせていただきます。