令和4年第2回区議会定例会招集あいさつ(令和4年6月8日)

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 はじめに

 本日、ここに令和4年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。


 いよいよ、区制施行90周年となる令和4年度がスタートしました。

 90周年は、「輝く未来 開こうとしま新時代」がキャッチフレーズです。人の絆を広げ、豊島区の未来を創る「誰もが主役となれる価値あるまち」をコンセプトとし、多くの区民の皆さんに参画を呼びかけたいと考えています。

 この実現のため、日ごろから区政にお力添えくださっている皆さんを中心とした実行委員会が、既に始動しています。

 5月9日には、第2回目となる実行委員会を開催し、オープニングとして、野村萬氏による謡「うつぼ猿」をご披露いただき、実行委員の皆さんの気持ちが一つにまとまる良い機会となりました。

 そして、「オールとしま」によるまちづくりを加速すべく、新たに取り組むのが、実行委員会における「部会活動」と「企業連携」です。

 豊島区では、区民の皆さんが主体となったまちづくり活動が、各地域で進められています。いずれも豊島区が誇るべき価値ある活動であり、100周年に向けた未来への推進力でもあります。実行委員会では、こうした地域のまちづくり活動を「部会」と位置付け、さらなる活性化と参加拡大のための窓口となります。

 5月30日には、地域活動の各部会から選ばれた方々を中心とする「幹事会」を開催し、今後の活動方針を確認しました。また、企業の実行委員の皆さんとも、90周年を盛り上げるべく、さらに進化した「オール企業としま」の輪を広げてまいります。


 また、3月に開催した第1回目の実行委員会に参加された、区内の若手リーダーの方から、「もっと、まちづくりに関わりたい。」とのお声をいただきました。

 これを受け、4月28日と5月6日に、区内の若手リーダーの皆さんと懇談いたしました。皆さんの“豊島区”に対する熱い思いを肌で感じ、100周年に向けた情熱あふれる若い力が育くまれていることを実感したところです。

 思い起こせば、私が区政に関わるきっかけとなったのは、古書店を営んでいた昭和57年、豊島区商店街連合会の青年部長として、区制50周年記念行事に参加したことでした。

 90周年を機に、こうした若い世代の区政への参画の機運を高め、誰もが笑顔になれる魅力あるまちづくりに全力で取り組んでまいります。


 次に、区制施行90周年「まちづくり記念事業」について申し上げます。

 世代を超えた交流の場となっている区民ひろばをはじめ、学校や保育園などの子どもたちが通う施設、子どもから高齢者までが利用するスポーツ・文化施設など、区民の皆さんに身近な施設が、今年度から、続々と竣工を迎えます。

 とりわけ、四季を感じる「森の中の学校」をコンセプトとする、区で初めてとなる5階建ての池袋第一小学校、植田志保氏プロデュースのウイ・ロードと一体化した、池袋駅北口公衆トイレのリニューアルは、それぞれ完成が間近に迫り、新たなまちの魅力が、また一つ加わろうとしております。

 西部地域では、(仮称)昭和歴史文化記念館や区民ひろば椎名町などの建設工事が進むとともに、旧平和小学校 複合施設や旧第十中学校 野外スポーツ施設では、4月から解体工事に着手しております。東部地域でも区民ひろば朝日の整備に向けた地元説明会を開催するなど、区内全域において、着々と記念事業が進展しています。


 「まちづくり記念事業」のほかにも、巣鴨の旧保健福祉部 分庁舎跡地に、新たな区民ひろば清和と巣鴨第一保育園の改築に向けた仮園舎の整備事業を、今定例会の補正予算として上程しています。

 後程申し上げます千川中学校の改築を含め、公共施設が、単にその事業目的を果たすための施設ではなく、まちの価値や魅力を創り上げ、地域のシンボルとなるよう、全庁を挙げて取り組んでまいります。


1.2022年重点テーマ

 まず、4つの「2022年度の重点テーマ」について申し上げます。

 一つ目として「新型コロナウイルス感染症」について申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の区内感染者数は、累積で3万5千名を超え、区民の約8人に1人が、既に感染したことになります。昨年末からのオミクロン株の流行は、1月下旬に1週間あたりの感染者が約2,600名とピークを迎えた後、徐々に沈静化に向かっています。

 行動制限の緩和により、人と人との接触の機会が増えており、また、感染力の強い新たな変異ウイルス株の発生も報告されていることから、引き続き基本的な感染対策を徹底する必要があると思われます。


 昨年12月に始まった3回目のワクチン接種率は、6月8日現在、65歳以上は89.6%と高い一方、全体で見ると60.1%であり、まだ4割の方が接種されていない状況です。


 特に、若い世代の皆さんの接種が進んでいないことが課題となっています。

 若い世代は、感染による重症化リスクは高くないものの、後遺症が長く続くことなど、日常生活への影響も多数報告されており、決して油断はできません。こうした状況を踏まえ、若い世代の接種促進のため、予約なし接種、夜間・土日接種、ファイザーの接種枠の拡大など、体制強化に取り組むとともに、SNSを活用するなど情報発信にも力を入れております。

 5月25日からは、4回目の接種が始まりました。3回目接種から5か月以上経過した60歳以上の方、18歳以上で基礎疾患をお持ちの方などが対象となっております。引き続き、医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護師会と連携するとともに、日頃から信頼関係を築いている「かかりつけ医」による個別接種を中心としながら、集団接種との両輪の体制により4回目接種を実施してまいります。

 ワクチン接種は、まさに、区民の健康を守る「切り札」となるものです。区といたしましては、区民の皆さんが速やかに、安心して接種していただけるよう、先手先手で取り組んでまいります。


 ワクチン以外にも、国は、コロナ禍における原油価格や物価高騰などへの緊急対策として、2つの特別給付金による支援を決定しています。

 一つ目は、「子育て世帯生活支援特別給付金」です。昨年度と同様、低所得の子育て世帯に対し、児童一人当たり一律5万円の給付を行います。受給対象者のうち、児童扶養手当受給者については、6月末までに給付を行うよう準備を進めております。

 二つ目は、一世帯あたり10万円を給付している「住民税非課税世帯等の給付金」です。新たに対象となった令和4年度住民税非課税世帯に、6月下旬より順次確認書を発送いたします。

 長引くコロナ禍の中で、必要な方に一日も早く給付金をお届けできるよう、スピード感をもって取り組んでまいります。


 次に、2つ目の重点テーマ「SDGsの推進」について申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵攻に、皆さんも心を痛めていることと思います。私はこれまで「文化が平和をつくり、未来をつくる。」と言い続けてまいりました。

 本区は今年「非核都市宣言」から40周年を迎えます。

 これを機に、90周年事業のひとつとして、「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれた池袋周辺の4公園を、SDGsゴールの16番目「平和」のシンボルとして明確に位置付け、公園を核としたSDGsによるまちづくりを、さらにもう一段ステップアップさせてまいります。

 既に、世界の恒久平和の願いを込めて池袋西口公園の「平和の像」、南池袋公園の「哀悼の碑」や「被ばくアオギリ2世」、中池袋公園の「被ばくクスノキ2世」が設置されています。

 そしてこのたび、東アジア文化都市のパートナーシップ事業でご縁のあった、画家であり、彫刻家でもある田渕隆三氏より「円盤を投げる平和の青年像」をご寄贈いただくことになりました。世界10数か国を訪ねて創作活動をすすめてこられた田渕氏が、生涯の集大成として創りあげた、平和とオリンピックをテーマとした、高さ約2メートルのブロンズ像であり、7月中旬にイケ・サンパークに設置したいと考えています。

 これにより、4公園すべてが平和を願う象徴となる、まさに100周年の懸け橋となる、平和推進事業を展開してまいります。


 4月29日から5月1日にかけて、大阪の万博記念公園で開催された、大阪万博のプレイベント「ワライ ミライ フェス2022」に、豊島区は「チームとしま」の一員として参加いたしました。

 「チームとしま」は、区民代表としてのトキワ荘協働プロジェクト協議会、としまアート・カルチャーまちづくり協議会、企業代表としてのWILLER株式会社、株式会社サンシャインシティ、そして豊島区から構成され、民民・公民連携によるブースづくりやPRは、関西の地においても大変好評をいただきました。

 日本を牽引する「SDGs推進未来都市」として、本区は2025年の大阪・関西万博に参加し、国際アート・カルチャー都市の魅力を、国内外に広く発信してまいります。


 自治体SDGsモデル事業の第1弾、「ファーマーズ・マーケット」が再開しています。再開に合わせて、区民の皆さんに信頼される自治体を目指し、毎週入れ替わりで、各部局の取組を発信するSDGsブースを設置いたしました。毎週継続的に行政がSDGsを発信する先進的な取組は、大変注目を集め、多くの自治体が視察に訪れています。

 「SDGs担い手事業」で学んだ事を楽しそうに話してくれる小学生や、SDGsブースを毎週楽しみに来場している方とのやりとりは、日頃、区民の皆さんと接する機会の少ない部署の職員にとっても、貴重なフィールドワークの場となっています。


 次に、3つ目の重点テーマ「デジタル化の推進」について申し上げます。

 本区は、前年度から引き続き令和4年度も「デジタル化の推進」を重点テーマとして掲げています。デジタル化事業のすそ野を広げつつ、この4月からスタートした

 後期・基本計画では、全ての施策をバージョンアップする3つの視点の一つとして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を位置付けています。

 これを受け、6月1日付けで「豊島区DX推進計画」を策定いたしました。

 DXの推進により、基本計画で掲げた「あらゆる人・あらゆる世代がデジタル化の恩恵を享受できる“人にやさしいデジタル化社会”」を力強く実現してまいります。

 そのために、DX推進計画では、区民サービスのデジタル化や業務改革、セキュリティ対策の徹底などを方針として掲げ、なかでも区職員のDX推進力を高めていくことが極めて重要であると考えております。


 また、昨年度から「児童手当の現況届」、今年度からは「罹災証明書の発行手続」についてオンライン手続を開始しています。児童手当等の手続の一部についても、7月のオンライン手続開始に向けて準備を進めております。これらの手続は、従来は来庁または郵送による申請が必要でしたが、オンラインによる手続をご利用いただくことで、自宅から申請が可能になります。

 さらに、8月からは、スマートフォンを使って簡単に納税証明書や戸籍証明書等の申請を行えるシステムを順次導入する予定となっています。

 持続可能で魅力ある自治体であり続けるためにも、全庁横断的にDXを推進し、区民サービスの向上や業務改革がより一層進むよう、精力的に取組を進めてまいります。


 次に、4つ目の重点テーマ、「池袋の都市再生」について申し上げます。

 5月11日に「第10回池袋駅周辺地域再生委員会」が開催され、委員長の岸井隆幸先生をはじめ、学識経験者や行政機関、多くの事業者の方にご出席いただきました。

 委員会の冒頭には、池袋の東西をシンボルストリートで繋ぐ、「東西のダンベル型のまちづくり構想」を私から紹介いたしました。

 100周年となる2032年において、さらに輝く「国際アート・カルチャー都市」を実現できるかどうかは、このまちづくりにかかっていると言っても過言ではありません。

 ウォーカブルなまちの玄関口である池袋駅の地下空間から地上へ人を誘い、人の流れを創り出す開放的なサンクンガーデンを一体的に整備する、池袋西口の再開発が動き出しています。池袋西口準備組合は、加入率85%と地権者の機運も高く、今年度は都市計画決定に向けて大きく前進する大事な年になります。

 また、池袋東口には環状5の1号線の開通以降、東口駅前の明治通りをクルドサック化し、グリーン大通りを歩行者広場化する壮大な構想があります。

 さらに、本年4月、都市デザインとアートで日本を代表し世界へ発信する隈研吾氏と北川フラム氏の両巨頭から、別々の機会ではありますが、アートをキーワードとした街づくりの提案がありました。「国際アート・カルチャー都市」を目指す中で、

 ハード面が整いつつあることが、こうしたご提案につながっているものと考えております。都市空間とアートを“池袋らしさ”で調和し、池袋の個性を生かすウォーカブルな都市デザインとしてアートを活かしてまいります。

 90周年となる今年度には、ウォーカブルを軸として貫く“まちづくり方針”の策定を目的とした、「池袋ウォーカブル推進協議会」を開催する予定です。

 池袋駅東西の開放的なサンクンガーデンと東西デッキによってエキブクロを解消し、東西のダンベルをメインストリートでつなげ、まちのエネルギーをウォーカブルな人々の賑わいで、さらに高めていく、こうしたオンリーワンの池袋の都市再生を、官民一体となって取り組んでまいります。

 以上、本年度掲げた4つの重点テーマの進捗状況について、報告いたしました。


 それ以外にも、池袋駅北口前公衆トイレの美装化は、植田志保氏による壁面の装飾が仕上げの段階となっています。現在、ワークショップで区民の皆さんと考えた、トイレの象徴とも言える屋上の「光の羽根」の制作に入っており、池袋北口のイメージを一新するような、ライトアップされた完成した姿を、今から楽しみにしています。


 また、中池袋公園においては、長引くコロナ禍において、夜間の利用環境が劇的に変化したことにより、地域の皆さんから、トイレの設置が求められるようになりました。公園周辺の環境や治安の悪化を防ぐことはもちろんのこと、バリアフリーを含めた利用者の利便性を向上させ、さらにハレザ池袋が、安全で、快適なエリアになるよう、公園内のトイレ整備を進めてまいります。


2.文化・産業振興によるまちづくり

 次に、文化や産業振興によるまちづくりについて申し上げます。

 90周年記念事業は、企業との連携により、区民の皆さんの思い出に残る文化体験を提供してまいります。

 池袋西口公園野外劇場(グローバルリングシアター)を中心に、東京芸術劇場、自由学園明日館では、クラシック音楽のフェスティバル形式のイベントを開催します。池袋西武の屋上、南池袋公園、グリーン大通りなどでは、音楽の大道芸「バスキング」や誰もが楽しめる「ドラムサークル」などを開催し、幅広い年代の方に、音楽の魅力をお届けします。

 また、伝統芸能や大衆芸能など、「としま文化の日」を中心に開催される、芸術文化劇場での公演の一部を買い取り、区民の皆さんが楽しく芸術に触れる機会を提供してまいります。

 現在、90周年の目玉事業の一つとして、企画展「昭和の遊びと暮らし」を郷土資料館で開催しています。初日の5月5日は「こどもの日」ということに加え、NPO法人「はばたけ千早」による紙芝居「ふるさと豊島」のお披露目や、学芸員によるギャラリートークを開催したことなどから、来館者が800人を超える大盛況となりました。8月28日まで、様々なイベントを企画していますので、ぜひご来館ください。


 そして10月からは、「(仮称)大豊島区展」を開催いたします。区の歴史をはじめ、文化によるまちづくりにより変貌した現在の姿を、郷土資料、ジオラマ、池袋モンパルナス等の美術作品、江戸川乱歩などゆかりの作家の文学作品を織り込みながら展示いたします。郷土資料館の展示では、かつてない程の、豊島区の「過去・現在・未来」を映し出した「大企画展」となります。特に、まちの将来像を、区民の皆さんが直感的に感じ取れる「としまの未来図」の模型には、是非、ご期待ください。

 さらに、連動企画として、雑司が谷旧宣教師館、鈴木信太郎記念館でも、90周年特別企画展を開催いたしますので、楽しみにお待ちください。


 先ほども申し上げた、昭和の雰囲気が感じられる文化施設「(仮称)昭和歴史文化記念館」の整備が、急ピッチで進んでいます。

 3月31日には第一弾として、民間のマンガに関する施設「マンガピット」がオープンしました。現在、11月の全館オープンを目指して、昭和に関する様々な展示をするための工事を行うとともに、運営に関するルールを定めています。

 90周年を記念して「タイムトリップ豊島区の90年!」と題し、昭和と現在を比較できる写真や昭和のジオラマを展示するなど、区内の景観や当時の生活様式を振り返る特別企画展を開催します。

 また、マンガを通じて楽しみながら学べる「これも学習マンガだ!」から作品を選定し、原画等の展示、作品解説など、参加型の展示を行ってまいります。


 令和元年12月より開催している「トーキョーミュージック・イブニング・ユーベ」は、4年目を迎え、毎回、大勢の方が来場し、大盛況となっています。

 90周年の記念すべき今年度は、特別公演として、日本国内でも初めてのN響、都響、読響の“3大オケ”のコラボレーションによる金管十重奏も開催されます。

 ユーべ以外にも、グローバルリングシアターをはじめ、東京芸術劇場、自由学園明日館で、クラシック音楽のフェスティバル形式のイベントを開催し、最高のピアノ音楽をお届けします。

 また、「一般財団法人100万人のクラシックライブ」に委託し、駅構内・区内施設でのクラシックコンサートなども計画しています。

 さらに、東京芸術劇場・NHKエンタープライズと共催して、世界で活躍する若手アーティストが出演する「トーキョージャズ2022」を、東京芸術劇場とグローバルリングシアターで開催いたします。こうした世界的なジャズを誘致できるのも、これまで「池袋ジャズフェスティバル」が育んだ文化と、池袋西口の新たな音楽文化が融合し、世界が注目する舞台として認められた結果だと思っております。

 今後、さらにグローバルリングシアター・東京芸術劇場を中心とした、池袋西口エリアを「“音楽”と“まち”の魅力が織りなす 池袋の舞台」として、世界に発信してまいります。


 次に、産業振興について申し上げます。

 ゴールデンウイーク初日の4月29日、30日の2日間、中池袋公園で「池袋東口商人まつり」が盛大に開催されました。コロナ禍によって中止を余儀なくされていましたが、3月の「池袋西口商人まつり」に続き、待ちに待った、実に3年ぶりの開催となりました。多くの出店もさることながら、よさこい踊りなどの演舞が花を添え、ブランクを感じさせない大きな盛り上がりは、改めて、商店街の元気がまちの活気につながることを再確認させられる場となりました。

 こうした産業活動再開の兆しが見える中、長引くコロナ禍を乗り切り、このピンチをチャンスに変えていくため、昨年度に引き続き、商店街に対するプレミアム付き商品券の補助や、新しい生活様式に対応したビジネス展開を支援するための販売促進費やデジタル化等の補助を行います。

 産業活動をバックアップすることにより、事業者支援にとどまらず、SDGsが目指す三側面の環境・社会・経済の好循環を生み出し、さらには、地域コミュニティの活性化などにもつながるよう努めてまいります。


 現在、コロナ禍や原材料高に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻や円安も響き、事業者の経営が厳しさを増しています。とりわけ原油価格の高騰は、公衆浴場の経営を圧迫しており、先日、豊島区浴場組合や会派の皆さんなどから、燃料費助成に対する緊急要望が提出されました。

 地域の公衆衛生を支える公衆浴場の厳しい経営状況に鑑み、経営の安定化が急務であることから、本定例会に補正予算を提出し、スピード感を持った支援を行ってまいります。


3.誰にもやさしいまちづくり

 次に、誰にもやさしいまちづくりについて申し上げます。

 児童相談所においては、令和5年2月の開設に向けた準備が順調に進んでおります。

 現在、長崎健康相談所、消防団施設との複合施設としての外観が確認できるところまで整備が進み、10月末に竣工を迎える予定となっております。

 6月25日には、地域住民の方々をはじめ、地元の町会や関係機関の方々に対して、説明会を開催いたします。子どもの支援と母子保健の拠点が一体となった、さらには地域の安全・安心を守る拠点としての機能も併せ持つ、豊島区ならではの複合施設としての特色を、十分にお伝えしたいと考えております。


 長引くコロナ禍の中、区民や企業の皆さんから、「子どもたちのために役立ちたい」という大変温かいお気持ちを「としま子ども若者応援基金」に寄附という形でお示しいただいています。皆さんのご厚意により、6月6日現在60件、3,093万円もの寄附が集まっております。

 今年度は、地域団体等から、子ども若者や子育て家庭への支援事業を提案いただき、選定された団体等に、寄附から資金を助成する事業を新たに実施いたします。

 5月17日には、飲料メーカーのご協力により、売上げの一部が、子ども若者応援基金に寄附される、「寄附型自動販売機」の第1号が設置されました。さらに、不用品を出品して売買するフリーマーケットアプリで、売上げを寄附できる仕組みも開始いたします。新たな寄附の仕組みを活かしつつ、機運の醸成に努め、「支援の届かない子ども・若者・家庭ゼロ」を目指してまいります。


 国の調査により、小学校6年生の15人に1人が、家事や家族の世話、介護などを担っていることが明らかになりました。こうした子どもたち、いわゆるヤングケアラーは、友人関係が希薄になりやすく、不登校、進学や就職の断念などの問題を抱えることが多くなっています。

 本区におきましても、ヤングケアラーの実情を把握するため、8月に調査を実施し、その結果を踏まえながら、具体的で実効性のある支援策を検討してまいります。

 一方、早急に支援を行う必要がある子どもたちへの対策として、ヤングケアラーについて理解を深め、支援を広げていくために、要保護児童対策地域協議会の関係者や教職員への研修を実施いたします。また、民生委員・児童委員をはじめとする各団体との連携を強化し、ヤングケアラーの早期発見、孤立防止に積極的に取り組んでまいります。


 西部子ども家庭支援センターで実施している発達支援相談は、年々希望者が増え、平成28年度と比較すると約1.7倍まで増加しており、初回相談が3か月から4か月待ちの状態となっています。今回、初めての試みとして、相談の枠を拡充するためにセンターから徒歩圏内の2か所の区民ひろばに、サテライト会場を設置することにいたしました。これにより大幅に相談の待機期間を短縮し、お子さんの発育と発達に関し、適切な相談と療育訓練につなげられるよう取り組んでまいります。


 コロナ禍の状況下において、高齢者の皆さんの外出自粛や交流の機会が減少したことによる心身や認知機能の低下など、生活不活発による健康への影響、いわゆる「コロナフレイル」が危惧されています。

 そこで、介護予防・日常生活支援総合事業では、区民の皆さんが主体となり、介護予防に取り組む「つながるサロン」を、介護サービスの一つとして提供しています。活動内容は、体操や料理教室、趣味の活動など多種多様であり、現在区内全域で32団体が活動しています。

 また、認知症の方やそのご家族の支援を目的とした、住民主体の通いの場である「認知症カフェ」についても20団体が活動しています。

 こうした取組を積極的に展開することにより、高齢者の方々の活動環境を確保し、健康状態の維持・増進や交流の機会を創出してまいります。


 新しい日常における介護予防・フレイル予防活動を行うためには、デジタル技術の活用が強く求められています。

 このため、これまでも「シニアの介護予防のためのスマホ講座」の実施や東京都の普及啓発事業を活用し「高齢者のためのスマートフォン入門講座」を実施するなど、オンラインツールを活用した介護予防事業に取り組んでまいりました。

 今後は、これらの取組を充実・強化するとともに、新たにラインアプリを活用したウォークラリーを試行し、高齢者の外出機会の創出・外出意欲の促進を図るなど、「100歳健康づくり」を推進してまいります。


4.環境都市づくり

 次に、「環境都市づくり」について申し上げます。

 本区は、現在、燃やすごみとしている「プラスチック製容器包装」と「製品プラスチック」を、資源として回収するための準備を進めております。環境対策は、「SDGs未来都市」として認定された本区が、率先して行うべき一丁目一番地の対策であるとともに、区民の皆さんがSDGsを身近に感じ、実践いただく好機となるものです。

 プラスチック資源回収に向けた方針等を、6月期の区政連絡会でご報告し、7月には昨年度とは異なる地域で実態調査を行います。

 その後、調査結果を踏まえ新たな分別ルールを策定し、11月からは、令和5年4月の「プラスチック資源回収モデル事業」の開始に向けた区民説明会を開催いたします。

 あわせて、区民の皆さんのご協力が得られるよう、対象地域における案内チラシの全戸配布や、ホームページ、SNSを通じた周知を丁寧に行っていくとともに、令和5年度中の区内全域における本格実施をめざし、取組を加速させてまいります。


 昨年7月にご逝去された、宮脇昭先生のご指導の下、平成21年度から始まった「グリーンとしま再生プロジェクト」では、令和4年3月現在、13万3,325本を植樹し終え、今では立派な森として各地で育っています。

 今年度は、「みらい館大明」と「南長崎スポーツ公園」に加え、90周年事業として、池袋第一小学校を「森をつくり、その中に学校をつくる」という発想により、改築します。この「森の中の学校」が、宮脇先生とともに歩んできた「いのちの森」のシンボルとなるよう取り組んでまいります。


 より多くの皆さんが、もっと気軽に、楽しく環境美化活動に参加できることを目的に、4月から「としま“まちキレイ”プロジェクト」を立ち上げました。

 プロジェクトの推進大使である、ごみ拾い活動を行うパフォーマンス集団「ゴミ拾い侍」を先頭に、地域や企業の皆さんとともに、90周年事業として、“まちキレイ”の輪をさらに広げてまいります。

 具体的には、3年ぶりの実施となった「ごみゼロデー」やプロジェクトのPRロゴに加え、清掃活動の写真を投稿することによって、参加者同士がつながる、ごみ拾いSNS「ピリカ」を活用することで、新しいスタイルのごみ拾いの輪を確実に広げてまいります。


5.安全・安心なまちづくり

 次に、「安全・安心なまちづくり」について申し上げます。

 今年も、梅雨やゲリラ豪雨、台風など、浸水被害が心配される季節が到来します。

 近年、「異常気象」や「観測史上初」という言葉に代表されるような、「想定外」の災害が頻発しています。この「想定外」を、可能な限り小さくするためには、日常の中で防災意識を高め、日々の努力を積み重ねていくことが、最善の方法です。

 こうした取組の一つ、コロナ禍で昨年度開催できなかった、消防団の訓練を再開しています。5月20日には豊島区と、池袋・豊島の消防署・消防団の合同による「総合水防訓練」を総合体育で開催しました。

 また、同29日にはイケ・サンパークにおいて、令和2年度に開園以来、初めての「豊島消防団によるポンプ操法審査会」を、6月5日には、南長崎スポーツセンター「多目的広場」において「池袋消防団によるポンプ操法審査会」を開催しました。

 平時における訓練を着実に積み重ねることで、災害時に一人でも多くの命を救えるよう、今後も安全・安心なまちづくりに取り組んでまいります。


 地震などの被害からライフラインを守る無電柱化も着々と進んでいます。

 江戸時代から中山道として歴史のある「巣鴨地蔵通り」では、無電柱化にあわせて、にぎわいを呼ぶまちづくりのための商店街整備事業を進めています。

 参道をイメージした天然石による整備は、巣鴨地蔵通りの価値を高め、商店街再生の契機となるものと確信しています。入り口から高岩寺までの第Ⅰ期工事は、本年11月から5年度末までを工期とし、第三回定例会への上程を予定しております。


 もう一方の、立教通り無電柱化は、本年10月から着手する予定です。去る4月14日には、沿道の方々を対象とした事業説明会を「イケ・ビズ」で行い、約40名の方が出席しました。多くの方から賛同をいただきましたが、様々な意見をしっかりと受け止めながら、今後も、地域の皆さんとの連携を密にして工事を進めてまいります。


 このように、ソフト・ハードの両面から安全・安心への取組が進められておりますが、思い起こせば、区制施行80周年記念の年に、初めてセーフコミュニティの国際認証を受けました。今年はセーフコミュニティの10年目の節目であるとともに、3度目の認証にチャレンジする年となります。

 この間、子ども、高齢者、児童虐待など9つの分野において、地域で活動する皆さんや警察、消防など、「オールとしま」で、安全・安心の取組を進めてまいりました。

 本年7月には、海外審査員の厳しい審査が予定されております。必ず、この審査に合格し、90周年の記念式典と合わせて行う認証式では、区民の皆さんと一緒にお祝をしたいと思います。


6.教育

 次に、教育について申し上げます。

 学校では、コロナの影響により休止や縮小を余儀なくされていた、運動会や修学旅行などの活動が再開しつつあり、「新しい生活様式」を踏まえた、新たな「学校における日常」への移行が進んでおります。

 他自治体に先駆け、タブレットパソコン1人1台体制を整備してから3年目を迎え、教員のスキルと経験が蓄積され、授業における協同的な学びやコロナにより登校していない児童・生徒に対してのオンライン授業など、ますますタブレットの活用の幅が広がっています。

 また、本年度は学習者用デジタル教科書実証事業として、全小中学校で英語のデジタル教科書を、さらに一部の学校では算数・数学や理科のデジタル教科書を活用するなど、着実にGIGAスクール構想実現に向けた取組を進めています。

 こうした取組を後押しするため、今定例会では、10年以上前に配備された、ほぼ全ての大型ディスプレイを迅速に更新するための予算を計上し、タブレットやデジタル教科書活用の可能性をさらに高め、分かりやすい授業による教育の質の向上に努めてまいります。


 不登校や虐待・貧困などの問題を児童・生徒が抱えることは、その後の人生にも悪影響を及ぼしかねず、可能な限り早期に対応・改善することが重要です。

 現在、学校だけでは対応が困難なケースは、教育センターの5名のスクールソーシャルワーカーを派遣して対応しておりますが、今年度中に8名にまで拡充し、全ての小・中学校を定期的に巡回して問題の早期発見・早期対応を可能とする体制を確保いたします。

 あわせて、スーパーバイザーを登用し、先程申し上げました、ヤングケアラーなどの新しい問題に対しても、スクールソーシャルワーカーの専門性を活かしつつ、組織的に対応する体制づくりを進めてまいります。

 来年の2月には児童相談所が開設します。スクールソーシャルワーカーを連絡・調整役としながら、関係機関との連携を強化し、オール豊島で子どもたちの今と未来を支えてまいります。


 令和2年度に始まった池袋第一小学校の改築工事は、8月に竣工を迎え、2学期から新しい校舎での授業が始まります。

 こうした中、中期計画の最後となる千川中学校の改築においても、今年度より基本設計に着手するなど、令和8年度の竣工に向けた取組をスタートします。

 私は、これまで「学校づくりはまちづくり」という理念のもと、地域のシンボルとなるような、自慢出来る学校づくりを進めてまいりました。千川中学校でも、最新の学習環境や防災機能の充実に加え、地域の方が文化と触れ合える環境なども整備し、地域の価値を大きく高め、ひいては教育の価値を高める学校づくりに邁進いたします。


7.おわりに

 「満は損を招き、謙は益を受く」これは、『書経』からの一節です。慢心は損害を招き、謙虚は利益を受けるという意味です。物事は慣れてくると慢心してしまいがちですが、謙虚で張りつめた気持ちを忘れてはなりません。


 これまでの豊島区の90年の道のりは、決して平たんではありませんでした。様々な危機を乗り越え、ピンチをチャンスに変えてきたことが結実し、数年前には誰も想像できないほどの「価値あるまち」へと大きく変貌を遂げてきたのです。

 こうしたまちづくりが、国や他自治体からも注目され、高く評価されています。

 昨年度には、長野市をはじめ、北は北海道中富良野町、南は沖縄県伊江村まで多くの自治体が豊島区を訪れ、今年度に入ってからも、ベネズエラ大使との面会、金子総務大臣と鳩山総務大臣政務官によるマイナポイント支援窓口視察もありました。

 100周年に向けた豊島区のまちづくりは、これからが本番です。「オールとしま」によるまちづくりの総仕上げとして、ウォーカブルなまちづくりを進め、東京のなかでも圧倒的な存在感を示す、「国際アート・カルチャー都市」としての発展を加速させてまいります。


 このような盛り上がりのなかで起きた、このたびの政治資金規正法違反に係る事件は、区政への信頼を大きく失墜させる、私の在任期間の中で、最も厳しい不祥事となりました。

 この事実を真摯に受け止め、二度と同じ過ちを繰り返さないために、強い決意をもって、厳正な処分を行いました。

 私が給料の3割を3か月減額、両副区長は直属の上司として、給料の1割を3か月減額といたしました。略式命令を受けた職員2名については、減給10分の1を3か月の処分、不起訴となった6名については文書訓告を行っております。

 そして、組織を一新するため、5月1日付で関係した職員を含む幹部の人事異動を行い、略式命令を受けた2名については、民間企業と外郭団体への派遣により、区政の中心を担う職からは、一旦、離れさせるなど、大変厳しい一連の措置をいたしました。

 さらに、5月25日の議員協議会においては、すべてを明らかにした調査報告書をお示しさせていただきました。


 今回の不祥事は、公務員としての自覚や法の認識が不足していたことが原因です。既にコンプライアンス研修を実施するなど、対策を講じているところではありますが、さらに、組織の法令順守を徹底するとともに、全職員一丸となって再発防止に努め、強い意志で区民の皆さんの信頼回復に取り組まなければなりません。


 豊島区が「価値あるまち」へ大きく変貌し、さらなる高みを目指す今こそ、慢心を諫め、謙虚な姿勢で努力を続けることが必要です。今回の件については、改めて大きな反省の上に立ち、これまで以上に気を引き締めて、区政運営に臨んでまいります。


 最後になりますが、先日、写真週刊誌に、約8年前の宴席において撮影されたものと思われる写真が掲載されておりました。一緒に写っていた人物とは、一切、交流、交際はありません。


 重ねて、皆さまから誤解を招くことのないよう、しっかりと脇を締めてまいります。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例13件、補正予算2件、その他5件、合わせて20件であります。

 各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、齊藤副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のうえ、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。

 以上で私の招集挨拶を終わらせていただきます。