令和4年第3回区議会定例会招集あいさつ(令和4年9月14日)

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 はじめに

 本日、ここに令和4年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。


 いよいよ11月1日は区制施行90周年の記念式典です。この日を中心に、この秋は年間で最も記念事業が集中し、充実する期間となってまいります。

 これまでも、31の「シンボル事業」のうち、7月には、寄贈いただいた「平和の青年像」をイケ・サンパークに設置し、隣接する朋有小学校の児童をはじめとする約120名もの皆さんと一緒に除幕式を行いました。8月には、区立中学校2年生の皆さんを広島の平和記念式典に派遣し、戦争の悲惨さ、平和の尊さを学ぶ機会を提供するなど、未来を担う児童生徒の皆さんとともに平和記念事業を実施しています。

 また、90周年実行委員会の活動も大変活発になっています。総勢で約520名、参加企業は250社を超える本当に多くの方に参画いただくなど、委員会活動を通じて地域のつながりがさらに強まり、90周年に向ける皆さんの想いが、ますます高まってきております。

 区民の皆さんの活動を支援する「パートナーシップ事業」は、6月に募集を行い、32事業にものぼるエントリーをいただきました。また、まち全体で90周年を盛り上げる「フレンドシップ事業」についても、8月末時点で166件の申請があり、区内各所で90周年のロゴマークやのぼり旗を目にする機会も増えております。こうした光景を目の当たりにすると、まさに「オールとしま」で90周年事業を創りあげているのだと実感いたします。


 そして、11月1日に開催される90周年記念式典は、区政の発展にご尽力いただいた多くの皆さんをご招待します。炎のマエストロ、小林研一郎氏のコンサートから始まり、記念式典、区功労者表彰、文化栄誉賞表彰のほか、セーフコミュニティ認証式、 都倉俊一文化庁長官による基調講演など、90周年にふさわしい盛りだくさんの内容となっております。


 このように、90周年は、これまでの70周年、80周年記念事業に比べ、地域のまちづくり活動を通じて、人の絆をひろげ、区民の皆さんと共に、未来の豊島区を創造する“ひと”を育てていくことを目指しております。

 90周年を契機に「無形のレガシー」を築くことを最大のテーマにすることで、100周年を見据えた持続発展都市の実現を果たしてまいります。


1.90周年文化事業

 次に、「区制施行90周年における文化事業」について申し上げます。

 郷土資料館では「過去から学び、今日を生き、未来に希望」と題し、区の90年の歩みをはじめ、文化によるまちづくりによって大きく変貌したまちの姿を表現したジオラマ、水戸岡鋭治氏プロデュースエリア、隈研吾氏の模型、山本高樹氏制作のジオラマ、植田志保氏の作品などを展示する大博覧会を開催します。

 今回最大の目玉となる展示は、人が中心となる次世代の都市像を池袋から世界に発信する「としまの未来図」です。100周年、そして、その先の未来を、区民の皆さんが直感的に感じ取れるよう見える化し、ワクワクするようなビジョンを示してまいります。


 11月には「昭和歴史文化記念館」が、新たな文化施設としてオープンします。

 2階では、特別企画展「タイムトリップ 豊島区の90年」と題し、昭和と現在の写真を比較展示いたします。当時の懐かしい景観や生活様式の変化を楽しんでいただけるばかりでなく、山本高樹氏によるジオラマや地元が誇る郷土史家の矢島勝昭氏 による昭和の風景画の展示に加え、昭和30年代後半から40年代のアパートでの暮らしを実寸大で再現したブースを設け、平成・令和世代の皆さんにも昭和を実感いただけるよう工夫を凝らしています。

 1階では、日本博の助成による「これも学習マンガだ!展」を開催します。マンガ・アニメを通じ、多様な価値観を学び、未来を想像するきっかけとなるような展示を行います。雑司が谷旧宣教師館、鈴木信太朗記念館においても、同時期に企画展を開催し、4施設が連動した、まさに街中が舞台の「豊島大博覧会」を多くの皆さんに楽しんでいただきたいと思います。


 「音楽によるまちづくりイベント」の先陣を切って、8月19日には、東京芸術劇場とNHKエンタープライズとの共催事業「トーキョージャズ2022」が、東京芸術劇場とグローバルリングシアターで開催されました。

 日本を代表するジャズ作曲家挾間美帆氏 の全面プロデュースによる演奏のほか、世界で活躍する若手アーティストによるスペシャルライブが行われ、盛夏の池袋にジャズの音色が醸し出す魅惑の雰囲気が調和し、またひとつ、池袋に新たな魅力が加わったことを実感いたしました。

 そして、11月13日は池袋がクラシックに染まります。第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで第2位を受賞し、歴代日本人最高位に登り詰めた反田恭平氏と、彼が率いるJapan National Orchestraによる公演、YouTubeで100万人の登録者を誇る角野隼斗氏、多様なジャンルの音楽ファンから注目を集めるフランチェスコ・トリスターノ氏の共演など、世界レベルのアーティストが池袋に一堂に会します。

 さらに、いつもとは一味違う有料公演「トーキョー ミュージック イブニング ユーべ プレミアム」も11月5日と6日に開催され、「アンセムコンサート ~世界は歌であふれてる~」をテーマに、日本を代表するプロフェッショナル合唱団「東京混声合唱団」が世界各国の歌を披露いたします。


 このように、今や池袋は様々なジャンルの文化の活躍の舞台として、世界から求められる存在となってきたのです。これは、まさに文化により経済の好循環を生み出し、さらなる魅力と価値あるまちを実現するという、本区が目指す姿そのものです。この機運がさらに高まり、広がるよう全力で取り組んでまいります。


2.90周年SDGs事業

 次に、90周年を契機に、さらに広がりを見せるSDGsの推進について申し上げます。

 昨年度から開始した「SDGs達成の担い手育成事業」は2年目を迎え、区立小中学校30校では、保護者や地域・大学・企業等の皆さんと連携したSDGsの取組を着実に進めています。

 11月9日に豊島区立芸術文化劇場で開催する90周年シンボル事業「SDGsフェスティバル」と各小中学校で開催する「SDGsチャレンジウィーク」では、各校の特色ある取組を広く区民の皆さんにご紹介いたします。各校の取組は、2年間の積上げにより厚みや広がりが増しており、好評いただいた昨年度を超える発表内容になるものと期待しています。

 これからのまちづくりの主役となる子どもたちを中心とした情報発信は、区民の皆さんのSDGsへの意識をより一層高め、行動につなげる力強いメッセージとなります。持続発展都市につながる子どもたちの地道な取組の発信を通じて、オールとしまでSDGsを達成する機運を醸成し、豊島区の未来を創る“ひと”を育ててまいります。


 SDGs達成の担い手育成事業と並行して、SDGsを学んだ小学生が、豊島区の未来を考え、提案する独自のワークショップ「豊島区こども未来国連会議」を9月23日に開催します。既に、たくさんの応募があり、ワークショップ後には、この議場で子どもたちが発表する予定となっています。

 翌年3月には、世界の子ども達が集まり、語り合う「こども未来国連」にも参加いたします。としまの未来を担う子どもたちを核としたSDGs推進は、本区のSDGsを象徴する展開であり、着実に地域に浸透させつつ、世界に向けても発信してまいります。


3.新型コロナウイルス感染症への対応

 次に、新型コロナウイルス感染症への対応について申し上げます。

 この夏の新型コロナウイルスの感染者数は、本区においても過去最大を記録し、7月下旬の1週間の感染者数は4千851人まで上昇しました。

 この間、保健所では、医師会、薬剤師会、訪問看護ステーションといった関係機関と連携し、高齢者や重症化リスクの高い方を積極的に医療へ繋いでまいりました。加えて、7月下旬から8月上旬にかけて全庁的な保健所支援体制を組み、感染された方の速やかな療養にあたってまいりました。


 現在、60歳以上の方、および18歳以上で基礎疾患のある方や、医療従事者、高齢者施設等の従事者などを対象とする4回目接種が進んでおります。としまセンタースクエアでの集団接種会場は、日曜から土曜まで休みなく、毎日夜9時まで開設し、全てのワクチンを対象とした「予約なし接種」にも対応しております。

 さらに、今般のオミクロン株による感染拡大を踏まえ、新たに期間限定の接種会場を開設し、若い世代を中心に早めの接種を呼びかけました。8月上旬には池袋保健所、さらに8月中旬から下旬にかけては、としま区民センター及びサンシャインシティアネックスに臨時の接種会場を開設し、あわせて1,337人への接種を実施しました。このように、できるだけ多くの皆さんに、できるだけ早く接種いただけるよう取り組んでおります。

 こうした中、オミクロン株にも対応する新しいワクチンによる接種が間もなく開始となります。2回目の接種を終えた12歳以上の方を対象とし、現在、国を中心とした準備が着々と進んでおります。本区でも、対象者や接種時期・接種会場等、区民の皆さんへの丁寧な情報発信に努めるとともに、接種に遅れの生じることのないよう、万全な体制で臨んでまいります。


4.池袋のウォーカブルなまちづくり

 次に、「池袋のウォーカブルなまちづくり」について申し上げます。

 池袋駅の東西に、国内最大級の歩行者空間を創り出す「東西のダンベル型のまちづくり構想」の実現に向け、7月には「池袋ウォーカブルなまちづくり実現戦略検討部会」を立ち上げました。都市計画や緑化計画、公民連携など、各分野を代表する有識者の方々にお集まりいただき、大変貴重なご意見をいただきました。

 今後、部会において検討を重ね、池袋の将来都市像を見据えた「誰もが歩きやすい“人”が中心のまちづくり」の基本方針を策定してまいります。

 本区のウォーカブルなまちづくりは、四季の移り変わりを感じられる基盤整備や、池袋ならではの都市空間にアートを設置する、他の副都心とは一線を画す“ひと”中心の未来型まちづくりへの挑戦です。池袋を起点としながら、各地域の特性を活かしつつ、豊島区全域へ波及させることにより、まちの価値を高めてまいります。


 昨年8月に閉店した池袋丸井の跡地は、(仮称)池袋西口プロジェクトとして、現在、解体工事が進められております。先月の5日、6日に行われた近隣説明会では、2日間で99名が出席するなど、地域の皆さんの関心が非常に高まっております。

 このプロジェクトは、地下4階、地上28階、高さ約141メートルという、池袋西口の新たなシンボルタワーとなるもので、年明けの1月から新築工事に着工し、令和7年12月に竣工する予定です。低層部には店舗、高層部にはオフィスが入る予定ですが、今後、池袋の発展に寄与するテナントに声をかけていくと伺っています。

 また、計画地では、歩道状空地と広場状空地を整備し、緑化を進める予定となっています。池袋駅西口のサンクンガーデンから、アゼリア通りを抜け、交差点から立教通りに向かうこの場所に、安全で快適な歩行者空間が新たに生まれることにより、池袋西口の回遊性は劇的に高まり、まさにウォーカブルなまちの大動脈になるものと確信しております。


 一方、池袋東口では「東池袋一丁目市街地再開発事業」が着実に進展しております。

 東池袋一丁目地区は、令和2年10月に、豊島区で初めて都市再生特別地区の都市計画決定を受けました。本年7月6日には市街地再開発組合が設立され、着工に向け動き始めています。

 建設予定の超高層ビルは、「国際アート・カルチャー都市」としての池袋の魅力向上に資する大規模なイベントホールをはじめ、防災備蓄倉庫、駐車場、さらにイケバスの運行拠点などの整備が予定されています。

 特にイケバスの運行拠点は、ビルの顔ともなる一階部分へ設置される計画となっております。ここでは車庫や停留所に加え、それらを眺めることができるラウンジを整備することにより、まさにイケバスのショールームとなる予定です。

 開発区域の外側においても、池袋駅前公園をはじめとする周辺環境の整備が行われるなど、ウォーカブル推進都市に相応しい池袋の新たな拠点が誕生するものと確信しております。


5.産業振興・都市交流の充実

 次に、「産業振興・都市交流について」申し上げます。

 イケ・サンパークで開催しているファーマーズマーケットは、猛暑により1か月半ほど休止しておりましたが、9月3日より再開いたしました。

 本年4月から毎週土日に開催してきたことで、各店舗にリピーターが定着し、「毎回、買い物に来るのが楽しみ。」という声もいただいております。ファーマーズマーケットを通じて、イケ・サンパークが広く知られるようになり、地域のにぎわいを創出するという当初の目標は、達成できたものと考えております。

 今後は、生産者と消費者がつながる場から、生産者が主役となる次のステップに向けて、運営方法の見直しを検討していきます。また、イケ・サンパークが防災公園であることをこれまで以上に発信していくため、マーケット内で備蓄食やその調理方法を紹介するなど、他の公園にない新たな価値を生み出してまいります。


 コロナ禍の影響に加えて、原油や穀物等の価格の高騰は、区民生活や事業者の活動にも大きな影響を与えています。

 このような状況を打開するために、スマートフォンによる決裁サービス「PayPay」を活用し、予算総額4億円、プレミアム率20%、1回あたり2,000円、期間最大10,000円を上限とした事業者支援を11月から実施します。

 豊島区商店街連合会の非加盟店も含め、大規模店舗を除いた区内の小規模店舗で利用することができます。最大20億円が区内で消費されることにより、地域経済に好循環が生まれ、事業者の収入増加や商店街の活性化が図られるものと大いに期待しております。


 近年、本区の様々な分野における先進的な取組を反映し、全国の自治体より自治体間交流の申出を多数いただいております。

 そうしたお声を受け、外部委員を招いた「豊島区都市交流推進委員会」において、地方との共生のあり方を検討すると同時に、他自治体との協定の締結等について協議し、7月1日には北海道中富良野町と相互交流協定を、また7月21日には長年交流を重ねてきた長野県箕輪町と「姉妹友好都市協定」を締結するに至りました。

 今後もまちの価値を相互に高めあえるような交流を、積極的に進めてまいります。


6.誰にもやさしいまちづくり

 次に、「誰にもやさしいまちづくり」について申し上げます。

 令和3年7月に、子ども若者、子育て家庭をオールとしまで応援する「としま子ども若者応援プロジェクト」を立ち上げてから、1年が経過いたしました。

 先月には「子ども若者応援基金」を活用し、子どもの夏休みの食を応援する「食べて元気、応援隊」と称して、お米や食品等の緊急配付を実施いたしました。

 また、今年度の新規事業として、子どもや若者、子育て家庭への新たな事業提案を広く公募し、優れた提案には賞金を交付する「としま子ども若者応援コンペティション」を実施します。既に募集が始まっており、来月には受賞事業を発表する予定となっております。この事業は、基金を活用した地域による地域課題の解決につながる、新しい区民参加型事業として大変意義のあるものと考えています。


 「すずらんスマイルプロジェクト」が主体となって進めている「若者等がつくる若者の居場所応援事業」が、東京都の「子供・長寿・居場所区市町村包括補助事業」に採択され、より強化されることになりました。民間支援団体の知見を活かした、若者や女性の居場所づくりが、本区独自の先進的な取組として認められたものです。

 同様に、高齢者のデジタルデバイドを解消し、介護予防・フレイル予防を推進する「つながる ひろがる デジタルシニア育成事業」も、「チョウジュ」分野での採択が決まりました。

 本事業は、区民ひろばや地域文化創造館にフリーWi-Fi等を設置し、誰もが使えるデジタル環境を整備するもので、今年度は東京都から1億円の事業経費が充当されます。

 また、高齢者の皆さんを対象とした地域共生カフェの開設やスマートフォン活用講座の実施により、デジタル技術を学ぶ機会を提供するとともに、オンラインでの介護予防講座を実施し、介護予防・フレイル対策を充実・強化していきます。

 今年度から最大3年間、都の補助金を活用し、これらの取組を積極的に展開することで、高齢者の皆さんが、デジタル技術を利用しながら、健康の維持・増進を図り、「安心して暮らせるまちづくり」を推進してまいります。


 来年2月の豊島区児童相談所の開設まで残り4か月に迫っています。今定例会においても、設置に伴う関連条例等を14件上程しております。

 児童の緊急一時保護や児童養護施設への措置など、重大な任務を果たすために人材育成を最重要課題として、平成29年度から今年度までの6年間にわたり、延べ92名もの職員を東京都や他自治体の児童相談所等に派遣し、専門職の育成を図ってまいりました。

 現在、東京都からの引継ぎも最終段階を迎えており、万全の体制で準備を進めております。区が運営する最大の強みである、区内の各種団体や庁内各部署との強固な連携体制を早急に構築し、「児童虐待ゼロ」の実現に向け、地域の誇りとなる児童相談所づくりに努めてまいります。


 ひきこもりの方にとっての居場所づくりは、外出するきっかけにつながるばかりでなく、同じ思いを持つ人と出会うことにより、ひとりではないという安心感を与える効果が期待できます。

 今年度から、清瀬市や文京区などとの合同により、当事者やそのご家族が自分に合った居場所を選べるよう、広域的な居場所づくりに挑戦しております。去る9月6日に、としま区民センターで開催した「ひきこもり女子会」には、コロナ禍にもかかわらず51名の参加がありました。こうした参加者をはじめ、悩みを抱える皆さんの声に丁寧に耳を傾けながら、それぞれに見合った支援を提供できるよう、他自治体とも連携しながら支援の輪を広げてまいります。


7.さらに安全・安心なまちづくり

 次に、「さらに安全・安心なまちづくり」について申し上げます。

 「区民の声」など多くの方々から寄せられている路上喫煙などへのご意見を鑑み、受動喫煙による健康被害を未然に防止し、区民の健康を守ることを目的に、高際副区長を本部長とした「受動喫煙防止対策本部」を立ち上げました。

 受動喫煙などの現状分析や課題を整理したうえで、これまで実施してきた街のパトロールや喫煙マナーの普及啓発などをさらに効果的に推進します。また、民間事業者による新たな喫煙所の設置や喫煙スペースマップの作成などを検討いたします。

 健康、道路、公園などの関係所管が一丸となって、誰もが安全・安心に暮らせるまちづくりの実現に向けて、総力を挙げて取り組んでまいります。


 新型コロナウイルス感染症の拡大により、防災訓練や防災関連イベントが制限されておりましたが、ようやく10月10日に「としまみどりの防災公園」において、区制施行90周年記念「としまDOKIDOKI防災フェス」を開催いたします。

 防災を学べる場として、町会の皆さんをはじめ、児童、生徒とその保護者等多くの方に参加いただけるよう、体験型の訓練を取り入れ、警察や消防などの関係機関と連携しながら、地域防災力の向上や裾野の拡大に努めてまいります。


8.教育

 次に、「教育」について申し上げます。

 区立小中学校・幼稚園は、9月1日から新学期を迎え、ほぼ平常どおりに学校生活を再開しております。

 そのような中、子どもたちや地域の皆さんが待ち望んでいた池袋第一小学校の新校舎が、9月1日に開校を迎え、17日には落成式と施設見学会を開催いたします。

 私は、「学校づくりは まちづくり」との理念のもと、地域の価値を高める緑の拠点となるような樹木の配置や、敷地周りのウォーカブルな空間づくりを進めてまいりました。

 池袋第一小学校は「森の中の学校」をコンセプトに、建物と樹木が層となって重なり合うよう、建物の各階に階段状の植栽を配置するなど、まさに「森を作り、その中に学校がある」イメージで、整備してまいりました。

 新校舎は本区の小学校では初となる5階建ての高層校舎とし、より広い校庭を確保しました。高層化に伴い、本区の学校では初めてエレベーターを2基設置し、1クラスがまとめて移動できるよう、使いやすさにも配慮しております。

 改築にあたり、隣接していた「ひばりがや広場」も学校敷地に組み込むとともに、昨年7月にご逝去された宮脇昭先生と歩んできた「いのちの森」を去る6日に設置いたしました。防災広場としての機能と合わせ、子どもたちや地域の皆さんが集える憩いの場所、様々なアイデアが詰まった学校になっております。

 先日、PTAや地域団体の皆さんを中心として、新校舎のビオトープや畑などを学校とともに管理する『「森の中の学校」ネットワーククラブ』が発足しました。SDGsフェスティバルでもネットワーククラブの活動など、「森の中の学校」を生かした取組が発表されると聞いており、大変楽しみにしています。これから何十年と使い続ける地域のシンボルの森を、子どもたちと学校・保護者・地域が一体となって大切に管理し続け、持続可能な、素晴らしい地域のSDGsのシンボルになることを大いに期待しております。

 新しく生まれ変わった池袋第一小学校が、80年を超える歴史と伝統を後世に紡ぎ、子どもたちが、「ともに生き、ともに学び、ともに育む、集いの場」として、また地域の皆さんから、いつまでも愛される「森の中の学校」となることを願っております。


 「自閉症・情緒障害」を持つ児童への支援については、平成29年4月に、南池袋小学校に「けやき学級」を設置し、いち早く対応に着手してまいりました。現在では、1学級8人定員の「けやき学級」には、例年、定員を超える希望が出ています。また、中学校進学後に同様の固定学級がないことから、学校になじめず、不登校となるケースもあり、対応が急がれておりました。

 こうした中、本年3月策定の「豊島区特別支援推進計画」に基づき、「自閉症・情緒障害特別支援学級」を小学校で2学級・中学校で1学級の態勢といたします。令和5年4月に、池袋第一小学校と池袋中学校に、1学級ずつ増設することとし、現在、周知を行っているところです。

 すべての子ども達が困らない環境を、少しでも早く充実させ、本区の特別支援教育を推進していくことで「誰一人取り残さない教育の実現」を目指してまいります。


9.令和3年度決算等

 次に、「令和3年度決算」について申し上げます。

 令和3年度決算は、区民生活を守り、地域社会の混乱を防ぐため、新型コロナウイルス感染症対策として137億円の積極的な財政出動を行いました。

 新型コロナウイルスワクチン接種をはじめ、子育て世帯や中小企業への支援など、感染予防対策に64億円、社会経済対策に73億円の施策を講じ、区独自の支援策も織り交ぜながら、機を捉えて補正予算第9号まで編成したことから、歳入・歳出ともに過去2番目の規模となっています。

 こうした積極的な財政出動の中でも豊島区政において過去最高となる基金残高446億円を達成しました。基金残高と区債残高の差額も218億円の貯金超過となり、これまでにない、財政の健全性を確保した決算となります。私が区長に就任した当時の破綻寸前の状況を思い返すと、奇跡とも言えるV字回復となっております。


 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 今回の決算では、歳入が1,489億7,371万円、収入率は93.3%、前年度決算との比較では、62億8,873万円の減、率にして4.1%のマイナスとなっています。歳出は、1,436億9,547万円、執行率は90.0%、前年度と比較すると67億7,283万円の減、4.5%のマイナスとなっております。

 決算規模が減となった主な要因は、令和2年度に実施した国の特別定額給付金事業293億円が皆減となったことが挙げられます。

 また、歳出では、扶助費が国の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」により実施した、住民税非課税世帯や子育て世帯等への給付金事業が増となったことなどから、59億円、15.7%の増となる436億円となりました。


 一方、財源を見ると、特別区税は、過去最大であった2年度に比べ、3億円の減となる345億円となったものの、法人住民税が堅調に推移したことなどから、特別区財政調整交付金は38億円増となる336億円となり、コロナ禍前の令和元年度決算とほぼ同程度の水準まで回復しています。

 また、4公金の収納率は、特別区民税と後期高齢者医療保険料で過去最高を更新するなど、担当職員の努力によって、いずれも非常に高くなっています。

 歳入から歳出を差し引いた「形式収支」は、52億7,824万円となり、過去最大の決算額となりました。翌年度への繰越額が27億1,656万円で、こちらも過去最大となったため、繰越額を差し引いた「実質収支」は、25億6,169万円の黒字で、例年並みの水準となっております。

 次に、主な「財政指標」について申し上げます。

 「経常収支比率」は、財政調整交付金の増などにより、指標の分母となる経常的一般財源等の総額が増加したことから、81.2%と昨年度より4.7ポイント改善しました。

 「公債費比率」は、元年度に「百年に一度の大改革」と位置付けて行った集中投資の際に起債した特別区債の償還が、3年度から開始されたことから、前年度より0.5ポイント上昇し、4.6%となりました。これは、本区独自の財政規律である10%以下を大きく下回る数値となっております。

 このほか、「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債費比率」、「将来負担比率」という4つの健全化判断比率は、いずれも国の基準を大幅に下回っており、本区の財政状況は、健全性を維持しております。


 次に、「基金残高と起債残高」について申し上げます。

 財政調整交付金が当初の見込みを大きく上回ったことなどによる歳入の増は、将来の行政需要に備えるために、義務教育施設整備基金や公共施設再構築基金に積み立てました。加えて、区債の新規発行の大幅な抑制、さらには特定目的基金からの取崩しの取りやめなどにより、先ほど申し上げましたとおり、3年度末の基金残高は過去最大となる446億円、218億円もの貯金超過となっています。このうち、財政調整基金残高は220億円、過去2番目の規模となっています。


 こうしたことから、令和3年度決算は、コロナ禍という未曽有の危機、さらには年明けからの不安定な国際情勢による原油高や物価高騰という困難に直面している日本経済にあっても、本区は、かつてない安定感をもって、財政の健全性を確保しております。「区制施行90周年」を迎えた本区を、財政面からしっかりと支えることのできる決算となっており、100周年も見据えた良好な決算であると言えます。


 3年度決算について申し上げてまいりましたが、令和4年度も昨年度同様に引き続き、社会経済状況に応じた財政運営を展開しております。

 今定例会では、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とする光熱費や食材などの物価高騰への対策として、区の事業のみならず民間の事業者への支援を補正予算として上程しています。日常生活に不可欠で公共性の高い福祉、子育て、教育などの中でも、物価高騰による経費を、利用者等に転嫁しにくい介護、障害者、保育園などの民間事業者に対し、支援を行うことで区民の皆さんの生命と生活を守ってまいります。

 10.おわりに

 「成長を欲する者は、まず根を確かにおろさなくてはならない。上に伸びることのみ欲するな。まず下に食い入ることに努めよ。」これは、日本の哲学者、和辻哲郎氏 の言葉です。

 区長就任当初、厳しい財政状況のなか、一体、どうしたら豊島区を再生できるかと、日々悩んでおりました。様々な行財政改革を断行すると同時に、「文化でご飯が食べられるのか。」とも言われましたが、区民の皆さんが未来に希望を持てる、活気あるまちをつくるため、「文化によるまちづくり」を進めることを決意したのです。


 この信念が実を結び、財政破綻寸前から、リーマンショック、消滅可能性都市の指摘、コロナショックと様々な危機に直面しながらも、国際アート・カルチャー都市構想の策定、東アジア文化都市開催の成功、まちを変える23プロジェクトの完成、東京初の「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」のダブル選定など、常にピンチをチャンスに変え、価値あるまちへと、本区は大きく変貌を遂げました。

 そして、このたび私は、大学教授、美術館長をはじめ、日本でも名だたる劇作家やメディア・アーティストの方々が名を連ねる中、全国自治体の代表として、文化庁の「文化審議会文化政策部会委員」に指名されました。これは、まさに豊島区が歩んできた、文化を基軸としたまちづくりが、我が国の文化振興政策をけん引してきた積極的な取組として、国や他自治体から高く評価された結果であると自負しております。


 去る7月に、これまでの区政の歩みや今後の展望について「奇跡のV字回復」と題した資料を、議員の皆さまにも報告させていただきました。

 本区は、財政破綻寸前の危機を乗り越え、挑戦に次ぐ挑戦によって価値あるまちづくりを成功させ、4万人の人口増、4.3万人の納税義務者増、109億円の特別区民税増、約9千人の若年女性増を実現してきました。この資料は、こうした実績に加え、令和元年度の集中投資をしたうえでもⅤ字の財政再建を成し遂げた軌跡を、職員はもとより、区民の皆さんや事業者の皆さんと一緒に振返りつつ、将来を見据え、着実に持続発展都市に向けた取組を進める、本区の姿勢や方針をご理解いただくために作成したものです。

 コロナ禍、そして90周年の今だからこそ、100周年に向けたまちのビジョンを発信していくことによって、区民の皆さんに勇気を与え、まちの魅力や価値をさらに高めていくことが重要であると考え、このタイミングで報告させていただきました。

 今後さらに「国際アート・カルチャー都市」の実現に向けた道筋を、より具体的にお示しできるよう、検証を進めてまいります。

 区長就任時からこれまで、地上の幹や枝葉とともに、地中にも根を張ってまいりました。区制90周年を迎えた今こそ、美しい花を咲かせ、豊かな果実を実らせる時期でもあります。同時に、区民の皆さんや企業・関係団体の皆さんと手を取り合って90周年事業を成功させることは、未来の豊島区を創造する“ひと”と“地域”を育てる、次の100周年に向け、より広く、深く根を張っていくために欠かせないプロセスだと考えております。


 「SDGs未来都市」そして、「国際アート・カルチャー都市」を実現するため、区民の皆さんや事業者の皆さんと手を携えながら、信念と情熱をもって果敢に挑戦し、100周年への扉を開いてまいりますので、議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例13件、決算認定4件、補正予算4件、その他7件、合わせて28件であります。

 各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、齊藤雅人副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議のうえ、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上で私の招集挨拶を終わらせていただきます。