1.はじめに
令和5年第三回豊島区議会定例会の開会に当たり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
区民の皆様におかれては、長きにわたるコロナ禍から日常生活を取り戻しつつあり、さらに、様々なイベント等の再開により人の流れが回復し、外国人観光客の姿も多く見られるようになるなど、街に賑わいと活力が着実に戻っていることを実感しています。
しかしながら、昨今のエネルギー価格や物価高騰は、区民生活や事業者の経済活動に、今も大きな影響を及ぼしています。今後も、こうした社会経済情勢や区民の皆様の生活、各地域の状況を見定めながら、スピード感をもって必要な施策を講じていけるよう取り組んでまいります。
次に、7月10日の第二回区議会定例会においてご同意をいただきました、天貝勝己副区長が7月11日付で就任いたしました。長年区政に携わった経験を活かし、今後の区政をけん引するリーダーとして、大いなる活躍を期待しています。
第二回定例会での所信表明において、私の基本姿勢として、「3つのつながる」と「誰もが住みたくなる8つのまちづくり」について申し上げました。
まちづくりにあたり、私が何よりも大切にしたいのは、区民の皆様の声を受け止め、多様なニーズをしっかりと把握し、より良い区政につなげていくことです。
これを実現するためにスタートしたのが、「もっと身近な区役所改革」の取組み第1弾、子ども版広聴「子どもレター」です。
子どもたちが、嬉しいことや、困っていること、「豊島区がこうなるといいな」と思うことなどを、直接区長に届ける取組みです。これまでに寄せられた声は、9月18日現在で301件にのぼり、子どもたちの反応の大きさに大変驚いております。
手紙の一枚一枚に目を通す中で、公園、学校、区民ひろば、図書館など、日頃 子どもたちが利用する場所に対する要望、緑があふれ、美しく、安全なまちへの願い、「これを知りたい」というワクワクする気持ち、友人関係の悩み、そして、様々なところで働く大人たちへの感謝など、子どもたちのたくさんの思いに触れ、そうした大切な声に応えられるよう、各部署で、受け止めた課題に向き合っています。これからも、子どもレターをきっかけに、区役所、そして区の取組みが、子どもたちにとって、より身近なものになってほしいと願っています。
第2弾として取り組んでいるのが「区民による事業提案制度」です。
区民の皆様が日頃課題と感じていることや、実現してほしいことなど、分野や年齢、個人・団体を問わず、幅広く提案をいただく新たな取組みであり、行政目線では気づきにくい、まさに「区民目線」での課題の掘り起こしと、区民の皆様の区政への関心や参画の一層の推進を目的に開始しました。
9月15日に受付を終了いたしましたが、233件のご提案をいただき、区民の皆様の感じている地域課題と併せ、区政への関心の高さと期待を実感いたしました。
現在、提案内容の審査を進めており、来月、区民投票を実施します。その結果、区民の皆様から「これをやってほしい」との声が多かった提案をもとに、区において事業内容の詳細を検討、令和6年度予算案に盛り込み、第一回区議会定例会に提出いたします。
今後も初心を忘れず、様々な機会をとらえて、区民の皆様の声を受け止め、区政を力強く前進させていく。「ひと」が主役の区政の実現に邁進してまいります。
2.令和4年度決算
さて、今定例会では、「令和4年度決算」についてご審議をいただきます。
一般会計決算額は、歳入が1,493億2,942万円、前年度決算との比較では、3億5,571万円の増となっています。歳出は1,447億2,990万円、前年度と比較すると10億3,443万円の増となっております。
令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として52億円、物価高騰対策を含めた社会経済対策に53億円の積極的な財政出動を行いました。こうした対策と併せて、子育て世帯や中小企業、介護・障害・保育サービス事業者への支援など、国や東京都の支援を踏まえつつ、補正予算を第10号まで編成し、機動的に対策を講じてまいりました。
財源を見ると、特別区税が13億円の増となる358億円となり、過去最大規模となりました。特別区財政調整交付金は17億円増となる353億円となり、こちらは過去2番目の規模となっています。
次に、主な「財政指標」について申し上げます。
「経常収支比率」は、特別区民税や財政調整交付金の増などにより、指標の分母となる経常的一般財源等の総額が増加したことなどから、80.6%と昨年度より0.6ポイント改善しました。「公債費負担比率」は、起債残高が減少していることから、前年度より0.5ポイント減少の3.2%となるなど、将来世代に過度の負担を残さない財政運営が一段と進んでおります。
このほか、「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債費比率」、「将来負担比率」という4つの健全化判断比率は、いずれも国の基準を大幅に下回っており、本区の財政状況は、健全性を維持していると言えます。
次に、「基金残高と起債残高」について申し上げます。
特別区民税や財政調整交付金が当初の見込みを上回ったことなどによる歳入増は、今後の学校改築や区有施設の更新などの行政需要に備えるために、義務教育施設整備基金や公共施設再構築基金に積み立てました。加えて、区債の新規発行の大幅な抑制、さらには特定目的基金からの取崩しを取りやめたことなどから、4年度末の基金残高は、過去最大となる507億円、296億円の貯金超過となっています。
このように、令和4年度決算は、長期化するコロナ禍に加えて、不安定な国際情勢による原油高や物価高騰への対策を的確に講じつつ、将来の区民生活を支えるための財政基盤を固める決算となりました。
3.関東大震災から100年
今年は、1923年に発生した関東大震災から、100年の節目にあたります。
区は、地震や風水害等の自然災害への備えをソフト・ハード両面から進め、区民の皆様の命と暮らしを守ることを最優先で取り組んでまいりました。
関東大震災が発生した日でもある9月1日、区役所内で図上による総合防災訓練を実施し、私を本部長とする災害対策本部員の参集や、部長を中心とする職員の初動対応における役割の確認を行いました。発災時においては、警察・消防・自衛隊に加え、ライフラインにかかる事業者や関係団体等との連携も重要です。今後も訓練を重ねることにより、区民の安全・安心の確保に取り組んでまいります。
地域の避難所となる救援センターの迅速な開設は、極めて重要であることから、8月25日、豊島区・教育委員会・地域防災組織の3者で、救援センターの鍵の共有にかかる覚書を締結いたしました。休日や夜間に発災した場合など、状況により、職員の参集を待たずに、地域防災組織において救援センターの開設・運営を進めることができる体制を確保することにより、地域防災力が格段に向上し、区民の皆様の安心につながるものと存じます。区といたしましては、これを機に、各地域での行政、消防、町会等の連携強化に向けた取組みに一層力を入れてまいります。
また、防災意識の啓発事業として、10月9日にイケ・サンパークにおいて「としまDOKIDOKI(ドキドキ)防災フェス2023」を開催いたします。災害活動車両の展示や同乗体験、ペットの同行避難に関する展示、防災対策機器・防災グッズの展示等と併せ、今回初めて、豊島区医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護師会・柔道整復師会の5つの医療関係団体の連携により、災害医療を学ぶブースを開設いたします。さらに100年前の大震災において直面した被害や教訓を伝えることを目的に、「関東大震災100年写真展」を実施します。郷土資料館においても、10月8日まで「関東大震災100年、新着資料展」を開催しておりますので、是非、あわせてご覧ください。
大地震が発生した際には、広範囲による停電が想定されます。そこで危惧されるのが、「通電火災」です。停電復旧に伴い、転倒した電気ストーブ等の電気器具に通電した際に出火し、近くの可燃物に燃え広がる通電火災は、阪神・淡路大震災の被害において、その恐ろしさが注目されました。
区はこれまで、火災危険度4以上の地域の住宅を対象に、一定以上の揺れを感知すると自動的に電気の供給を遮断することができる「感震ブレーカー」の設置を進めてきました。
今年度、東京都は木密地域を対象とする感震ブレーカー配布事業を実施しますが、区の不燃化特区指定地域において、配布対象外となる地域があることから、区では独自に配布対象範囲を広げ、不燃化特区指定地域の全てを対象とし、感震ブレーカーを配布いたします。
また、近年頻発する自然災害においては、高齢者や障害のある方は避難が遅れ、被害を受けやすい実態があります。これまでは、区組織の中だけで、災害時の対応を検討していましたが、本年5月、防災や福祉に関して幅広い知見を有する大正大学との間で、災害時要援護者対策にかかる覚書を締結いたしました。今年度は、まず高田エリアにおいて、台風など風水害が発生した際に、自ら避難することが困難であり、かつ支援が必要な方を対象とした個別避難計画の作成に着手いたします。来年度以降は、区内全域を対象に、地震災害も想定した個別避難計画の策定へと広げてまいります。
災害時要援護者一人ひとりの命を守るためには、地域全体で支えていく体制を整えることが何よりも重要となります。行政主導ではなく、町会をはじめとする地域の組織や福祉サービス事業者等との連携をしっかりと図ることで、実効性のある災害対策を着実に進めてまいります。
こうしたソフト面の取組みと並行して、ハード面の充実により、まちの安全性を高めていくことも重要です。
関東大震災では、密集する木造建築物や強風が要因となり、東京23区の中心部の4割強が焼失しました。豊島区は「木造住宅密集地域」が約4割を占め、まちの燃えにくさを示す「不燃領域率」は、今年3月時点で65.6%に留まっています。目標である70%を達成するためには、公園や広場などの防災空地を拡充するなど、不燃化対策に一層力を入れる必要があります。
このため今年度は、東池袋5丁目に「HINODE GARDEN PARK」を新たに整備します。この公園は、地域の皆様からワークショップを通じて提案された、防災井戸やかまどベンチなど防災機能を有する公園として、令和6年3月に完成する予定です。
さらに、雑司が谷地区の広場用地を「雑司が谷・南池袋まちづくりの会」の皆様による提案型広場として、来年度の完成に向け整備いたします。いただいた提案では、地元有志で構成する「ひろばを育てる会」を新たに立ち上げ、広場の維持管理を行うとのことであり、地域主導型の事業展開として、大いに期待しております。
4.子育て支援の強化
次に、「子育て支援の強化」について申し上げます。
これまで区は、「子どもと女性にやさしいまちづくり」を区政の中長期的なテーマの一つに掲げ、他自治体に先駆けた、切れ目のない子育て支援に取り組んでまいりました。今後もこの方針を堅持しつつ、急速に進む少子化への対応、出産や育児期における不安感や負担感、孤立への対応等に力を入れ、安心して子どもを生み、育てることができる環境づくりを推進してまいります。
まず、令和6年2月から、「こんにちは赤ちゃん訪問」を終えた生後4か月から11か月の乳児を持つ全ての世帯を対象に、「子育て世帯見守り訪問事業」を実施します。子育て支援に関する研修を受けた支援員が、毎月ご自宅を訪問し、子育ての状況をお伺いすることで、気軽に相談できる機会を定期的に確保するとともに、おむつや液体ミルクなどの育児用品の支援を同時に行い、乳児を抱える家庭の経済的負担の軽減にも努めます。訪問時の状況は、母子保健を担う保健所、子ども家庭支援センターと共有し、必要に応じ、その方に適した支援につなげることで、安心して子育てできる環境の充実を図ります。
また、東京都による補助事業である「子供・長寿・居場所区市町村包括補助事業」を活用し、子育て支援策をさらに拡充します。
新たに取り組む事業のうちの一つ目は、「妊娠期からの男性育児支援」です。令和3年2月に閣議決定された成育医療等に関する基本方針では、「出産や育児への父親の積極的な関わりにより、母親の精神的な安定をもたらすことが期待される一方、男性の産後うつが課題となっている」こと、そして、「母親を支える役割が期待される父親についても、支援される立場にある」ことが示されています。
そこで、男性に対し、育児の知識を増やすサポートに加え、周りの方や相談機関などに支援を求める「受援力」を向上させる取組みを始めます。今年度は、区において男性育児支援を実施する部署と民間支援団体との連携による「支援ネットワーク」を構築し、父親の孤立を防ぐための啓発活動や、育児支援に向けた調査を実施するなど、支援体制の充実を図ってまいります。
もう一つは、「若年ファミリーサポート」事業です。若年ファミリー世帯専用の区営住宅を3戸増設し、壁の角にぶつかっても痛くないコーナークッションや、指挟みを防止するソフトクローズ仕様の扉を採用するなど、乳幼児の安全・安心に配慮した設備へ改修いたします。令和6年4月の若年ファミリー募集を目指して、準備を進めてまいります。
発達障害はじめ、お子さんの発育や発達に関する相談が増加している中、西部子ども家庭支援センターの障害児支援機能を更に強化し、令和6年4月に、児童福祉法の「児童発達支援センター」に位置付ける予定です。
それに向け、調理室や医務室など、必要な改修を行うとともに、西部子ども家庭支援センターに通所しているお子さんが、保育所等に通所している場合に、職員が保育所等を定期的に訪問し、お子さんの集団生活を支援する「保育所等訪問支援」の実施、また、児童発達支援事業を実施している民間事業者や関係機関と、障害児支援への共通理解と円滑な連携を図るため、定期的な会議体を運営するなど、「児童発達支援センター」に求められる「地域の中核機関」としての役割を果たすべく、組織や運営方法について、今年度中に検討を進め、体制整備を図ってまいります。
生きづらさを感じる10代・20代の若い女性を支援する「すずらんスマイルプロジェクト」では、令和6年4月施行の困難女性支援法に基づく「支援調整会議」の「若年女性版の試行モデル」として、民間支援団体と情報交換・連絡調整を行う「(仮称)すずらん・ネット会議」を10月に開催いたします。これは、全国初の試みとなります。
また、区内の大学や高校と連携し、若者自身による情報発信や、同世代に向けた企画を進める「若者企画!すずらんエール事業」をはじめ、区民や企業・事業者の皆様にご協力をいただき、それぞれの強みを活かした居場所づくりなど、支援の輪、支援者の輪をつなげる「街なかすずらんサポーター」制度の創設など、豊島区ならではの若年女性支援を推進してまいります。
5.教育の充実
次に、教育の充実についてです。
まず初めに、今年度から始めた中学生の放課後支援について申し上げます。
居場所づくりの取組みとして、5月23日に開設した「にしまるーむ」は、これまで11回開催し、延べ約300名の生徒が訪れてくれました。多くの生徒が訪れては、思い思いの時間を過ごしています。現在は週に1回の開催ですが、週2回、3回と段階的に日数を増やしてまいります。
部活動改革につきましては、地域移行モデル事業である「としま土曜部活」が、いよいよ10月からスタートします。これは、部活動の運営を学校ではなく、区と民間が連携して担うものです。
今回は、ダンス部とプログラミング部の2つを立ち上げるべく、今月25日まで部員を募集しています。プログラミング部では、ドローンのプログラミングを行い、実際に飛ばします。どちらの部活も、生徒たちがプロのインストラクターよる指導を受けられるチャンスです。また、11月からは東京音楽大学のご協力により、音楽系の部活動を追加する予定です。いずれも、今、学校にはない部活動であり、生徒たちには是非積極的に参加し、楽しんでもらいたいと思います。
今後は、「としま土曜部活」の拡充に加え、現在、部活動を支援してくださっている外部指導員を増やしながら、部活動改革に取り組んでまいります。
また、不登校対策として、今月から「校内別室指導支援員配置事業」が西池袋中学校をモデル校としてスタートし、区内の大学に通う複数名の学生に学習ボランティアとしてご協力いただいております。別室は2部屋用意し、授業のある日は毎日1時間目から6時間目まで開設しております。年齢の近い大学生が支援員となることで、学習面のサポートだけでなく、様々な会話をする中で、生徒の登校意欲の向上等につながることも期待しています。
第二回定例会の所信表明で申し上げた事業も着実に実現しています。
「区立小中学校給食費の無償化」は、先の議会で採択いただき、予定どおり9月から実現することができました。子育て世帯への経済的な支援に加え、教員及び職員の事務負担の軽減の面でも効果が見られています。
さらに9月6日には、「としま子どもの権利相談室」を千登世橋教育文化センター内に開設いたしました。新たに設置された「子どもの権利相談員」は、アウトリーチなどにより、子どもの声に耳を傾け、子どもの気持ちに寄り添い、子どもの権利擁護委員と連携しながら、子どもの権利の救済・回復に努めてまいります。
6.区民が主役となる文化のまちづくり
文化を基軸にしたまちづくりを進めてきた豊島区では、あらゆる主体の力を結集し、豊かな文化を創造し続ける地域社会と明るい未来を子どもたちに引き継いでいく決意のもと、令和2年に「としま文化の日条例」を制定し、豊島区立芸術文化劇場がオープンした11月1日を「としま文化の日」と定めました。
今年は、11月1日を中心に、区民の皆様が日頃の活動の成果を発表する舞台や、乳幼児と一緒に演奏を楽しめる機会を設けるほか、地域課題の解決に向けた官民連携のプラットフォーム「チームとしま」のメンバーが、新たなカルチャーで若者を盛り上げる企画など、「区民が主役、区民が楽しむ」をコンセプトに、約1か月間にわたる文化の祭典を展開してまいります。
具体的には、区立芸術文化劇場では東京都交響楽団によるスペシャルコンサート、路上や公園など池袋東口の6会場では、79の認定アーティストが様々なジャンルの音楽の演奏をする「としまミュージックサークル」が開催され、池袋のまち全体が音楽に染まります。このほか、グローバルリングシアターでは、ストリートカルチャーとして、若い世代が盛り上がるアーバンスポーツ体験、あうるすぽっとや区民センターでは、区民参加型のイベントなど、誰もが楽しむことができるイベントを開催いたします。
先月、区立芸術文化劇場で開催されたミュージカル公演には、主催者のご協力により、演劇部に所属する区内中高生や、児童相談所で支援している子どもたちをリハーサルに招待しました。プロフェッショナルの演技を間近に見た子どもたちは、劇中のポーズを真似たり、歌を口ずさむなど大喜びで、夏休みの忘れられない思い出になったのではないかと思います。今後も、保護者のもとで暮らすことができない子どもや障害のある子ども、病気を抱えた子どもなど、多くの子どもたちに文化を楽しむ経験をしてもらえるよう、関係団体の皆様と連携し、知恵を出し合い、取り組んでまいります。
次に、豊島区が世界に誇るコンテンツである「マンガ・アニメ・コスプレ」について申し上げます。
トキワ荘マンガミュージアム周辺では、マンガ文化の聖地として、次世代へのマンガ文化の継承とともに、南長崎エリア全体の活性化に向け、今後も、地域の皆様と手を携えて取り組んでまいります。
また、池袋エリアは、アニメイト池袋本店はじめ、多数の民間企業により、人気作品の企画展、イベント、グッズショップなどが展開され、国内外から注目される一大拠点となっています。区も民間企業と連携し、アニメキャラクターによる区立芸術文化劇場正面ガラス面の装飾や、商店街フラッグで街中を飾り、池袋を訪れるアニメファンばかりでなく、街ゆく多くの方々に楽しんでいただいております。
今年10周年を迎え、コスプレファンの聖地の一つともなってきた「池袋ハロウィンコスプレフェス」は、パレードの規模を拡大するとともに、来場者の皆様に、例年以上に楽しんでいただける工夫を凝らした仕掛けを計画しております。
さらに来月、新たなアニメ拠点として誕生するのが、南池袋に東京都が整備する「アニメ東京ステーション」です。この施設は、アニメに関する展示やイベントを通じたアニメ文化・産業の認知と振興、アーカイブ機能を有しており、私も出席したプレ・オープンセレモニーでは、小池百合子都知事が、「アニメ文化は、日本が誇るキラーコンテンツ。この文化を池袋から世界へ発信していく。多くのアニメファンが海外から集結するので、トキワ荘やアニメイトなど豊島区をグルグル回っていただきたい」と熱く語られました。
こうした勢いを加速させるため、アプリ等を活用してまちの回遊性を向上させる取組みや、ふるさと納税による返礼品や体験機会の提供を通して、豊島区の魅力を発信するなど、マンガ・アニメ・コスプレを一つの核とし、国内外から広く人を呼び込むシティプロモーションを展開してまいります。
7.健康・福祉の増進
次に、「健康・福祉の増進」について申し上げます。
最近、区内において、高齢者を取り巻く悲しい事態が起こりました。
60代の息子が80代の母親を殺害するという痛ましい事件では、「自分には母親の介護ができないと思い殺した」との動機が報道されています。また、ご自宅を訪問した高齢者総合相談センター職員の通報により、区内の住宅で高齢の男女2人が死亡した状態で発見された事案がありました。
区といたしましては、こうした悲劇が再び起きないよう、相談先の周知や地域の見守り、アウトリーチなど様々な手段を通じて、介護の不安をご家族が抱え込むことのないよう、全力で取り組んでまいります。
区では、今年6月から50歳以上の方に帯状疱疹ワクチン接種費用を助成しておりますが、希望者が当初の想定を大きく上回るため、大幅に予算を増額いたします。帯状疱疹は80歳までに3人に1人がかかると言われており、帯状疱疹が治まった後も、神経痛による強い痛みが残ることもあります。こうした状況を踏まえ、帯状疱疹ワクチン接種を希望する全ての方が助成を受けられるよう対応してまいります。
新型コロナウイルスワクチン接種につきましては、本日(9月20日)より、初回接種を完了した全ての方を対象とした「令和5年秋開始接種」を開始いたしました。区では、引き続き、区内医療機関をはじめ、医師会・薬剤師会など関係機関との協力・連携のもとに、区民の皆様が安心して接種できる体制を整え、ワクチン接種を円滑に推進してまいります。
また、高齢や障害による難聴者のコミュニケーションをより円滑にするため、23区で初めて、区役所本庁舎3階、4階の窓口など5か所に、「軟骨伝導式イヤホン」を設置することといたしました。
これまでも区は、補聴器購入費補助を拡充するほか、会話を円滑にするスピーカー「コミューン」を区立施設に設置するなど、区民の皆様の「聞こえ」の問題をサポートしてまいりました。これに加え、この度設置する軟骨伝導式イヤホンは、軽く耳にあてるだけで、音漏れしにくく、周囲の方に話の内容が聞こえないという点で、これまで以上にプライバシーに配慮した窓口対応が可能となります。
令和7年には、聴覚障害者のスポーツの祭典「デフリンピック」が東京で開催されます。区といたしましては、今後、開催に向けて周知や機運醸成の活動が進んでいく機会をとらえ、区民の皆様に、難聴者をはじめ障害のある方への理解を深めていただけるよう普及啓発に努めるとともに、あらゆる人々の情報保障と円滑な意思疎通を実現するため、様々なツールの活用等を通じた環境整備を進めてまいります。
8.池袋周辺のまちづくり
次に、「池袋周辺のまちづくり」について申し上げます。
池袋駅西口駅前再開発事業では、駅から街へ人を送り出すサンクンガーデンの整備や、周辺のまちへ繋ぐ歩行者ネットワークの整備を行います。また、現在分散しているバス停の集約や、西口五差路の改良など、自動車動線の整理も併せて行い、回遊性の高いウォーカブルな空間が広がるまちを実現していきます。今年度末の都市計画提案に向け、交通管理者とも着実に協議を重ね、進めております。この池袋西口地域の開発により、駅周辺の近隣まで賑わいが広がり、まち全体の価値が高まるものと確信しております。
さて、グリーン大通りの秋の風物詩となっている「池袋リビングループ」のスペシャルマーケットを、11月3日から5日までの3日間、グリーン大通りエリアマネジメント協議会主催、豊島区共催により開催いたします。
このイベントは、居心地の良いリビングのような公共空間を目指して、まちを訪れる方々のニーズに沿ったマーケットの出店や、休憩スペースとなる木製ファニチャーの常設化など、毎年工夫を重ねながら事業を進めており、今では一店舗当たりの平均購入者数や売上が当初の倍近くに増えるなど、盛り上がりを見せています。
昨年は、池袋リビングループの期間に合わせて、サンシャインシティや4つの公園などで同時に賑わいのあるイベントを開催しており、住民や来街者の方々が各施設のイベントを回遊して楽しむ姿が見られました。
これは、「人が主役のウォーカブルなまちづくり」の目指す光景であり、今年も引き続き、池袋エリアの広範囲にわたる施設で、賑わいのあるイベントを同時に開催する予定です。
また今年のイベントでは、昨年11月に公民の多様な人材が集結して発足したまちづくり団体である「池袋エリアプラットフォーム」が、展示ブースをグリーン大通りに設置することについて検討しています。池袋の将来像の共有とにぎわい創出活動の展開に向けて、区も含め多様な主体からなるエリアプラットフォームの取組みの紹介などを想定しています。
ウォーカブルなまちづくりを進める上で重要な路線として、昨年の10月から、立教通りの無電柱化の工事に着手しています。9月26日からは、いよいよ立教大学の正門と二又交番までの区間が一方通行となります。無電柱化と併せて、緑や水など自然の力を活用した環境モデル路線として、人優先の道路づくりに取り組んでまいります。
9.おわりに
今年の夏は、東京の猛暑日の日数が最多記録を更新するなど、災害級の暑さが続きました。
区では、「熱中症対策本部」を開設し、全庁を挙げて熱中症対策に取り組んでおります。具体的には、さまざまな媒体を活用した熱中症予防に関する注意喚起、一人暮らし高齢者等を対象とした戸別訪問、全ての区民ひろばへのマイボトル用給水機の設置および涼みどころ(クールシェルター)としてのPRなど、関係各課において実施してまいりました。さらに、豊島消防署と連携し、熱中症による救急搬送状況等について本部でご報告いただいたほか、安全安心メールを活用し、救急車の利用に関する情報発信等を行いました。
今後は、10月に予定している熱中症対策本部において、今年の取組を振り返り、課題等を整理したうえで、来年につなげてまいります。
区は、2050年までに、地球温暖化への影響の大きい二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを表明し、昨年、「ゼロカーボン戦略」を策定しました。戦略の柱のひとつに「資源循環・3Rの推進」を掲げており、そのための大きな取組みである「区内全域でのプラスチック資源回収」が、いよいよ10月1日から始まります。
これまで、区民説明会を99回、町会の役員会やマンションなどへの出前説明会を10回開催し、延べ2,000人の皆様に参加いただきました。説明会以外にも、プラスチックの分け方・出し方を掲載したパンフレットの全戸配布や、ホームページやSNS、ハレザビジョンにおける動画の配信、豊島区版ごみ分別アプリの公開など、様々な手段により、総力を挙げて周知に取り組んでまいりました。
10月の区内全域開始を前に、9月23日・24日に開催するファーマーズマーケットでは、開始直前のPR活動を実施、9月26日には、としまセンタースクエアで100回目の区民説明会と相談会を行います。今後も、一人でも多くの区民の皆様にご理解いただけるよう、丁寧な周知に努め、環境にやさしい行動への機運を高めてまいります。
世界的な原油価格・物価高騰は今なお続いており、区民生活や事業者の経済活動に影響を及ぼしています。こうした状況の中、8月31日に自由民主党豊島区議団、公明党豊島区議団、都民ファーストの会豊島区議団・国民民主党から、原油価格・物価高騰に対する支援にかかる緊急要望書をいただいたことをはじめ、各会派から、物価高騰等に伴う要望をいただきました。これを受け、今定例会におきまして、介護・障害・保育サービス事業所や公衆浴場への支援にかかる補正予算を計上いたしました。
区長に着任して、早いもので、まもなく5か月が過ぎようとしています。今後も、物価高騰など直面する課題に迅速に対応しつつ、しっかりと区政の未来を見据え、先般の所信表明で申し上げた「8つのまちづくり」の着実な実現に向け、全力で取り組んでまいります。
議員の皆様におかれましては、何とぞご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、条例5件、決算認定4件、補正予算4件、その他4件、合わせて17件の議案を提案しております。
よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。
以上を持ちまして、令和5年第三回区議会定例会 開会の挨拶を終わります。