平成11年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十一年第四回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。


 さて、今回ご提案申し上げます案件のうち、平成十年度一般会計並びに三特別会計歳入歳出決算の認定につきましては、地方自治法の規定に基づきまして、過日、監査委員より審査意見書をいただきましたので、法令の定める関係書類を添えましてここに提出いたした次第でございます。よろしくご審査の上、認定を賜りますようお願い申し上げます。


 平成十年度一般会計決算の概要について申し上げます。


 決算収支の状況でありますが、歳入決算額は一千三十五億二千七百万円、歳出決算額は一千十二億一千六百万円となっております。その前年度に対する伸び率は、歳入決算額が一三・〇%、歳出決算額が一二・一%で、歳入歳出決算額とも三年ぶりにプラスに転じております。これは、健康プラザとしま、菊かおる園、そして新池袋保健所の三大施設建設への投資がピークを迎え、歳入歳出決算額が大きく膨らんだことによるものであります。形式収支は二十三億一千百万円の黒字となり、この形式収支から繰越明許費繰越額八億九千四百万円を差し引いた実質収支も十四億一千七百万円の黒字となっています。


 しかしながら、これら決算収支上の黒字は、特別な財源対策として講じた庁舎等建設基金などの二基金からの運用金、合わせて四十二億円の資金運用を行った結果によるものでありまして、実質上の収支は二十八億円の赤字となっているものであります。この基金からの資金運用は平成六年度から始まり、累積額は十年度末で二百三億円に達しています。資金運用を行わなかった場合の実質上の収支は、六年度から五年間、赤字が継続していることになります。


 また、財政構造の弾力性を判断する指標であります経常収支比率は前年度を二ポイント上回る九三・四%、同じく公債費比率も前年度を一・二ポイント上回る一二・九%と、いずれの比率も過去最大となっているなど、決算の内容は財政の硬直化が一層進行し、大変厳しいものとなっております。


 今回の決算状況を見てみますと、本区がかつて経験したことのない未曾有の財政危機に陥っていることは明らかでありまして、財政再建を成し遂げることが私に課せられた最大の責務であると改めて痛感をしております。


 次に、行財政改革についてであります。


 過日、平成十二年度行財政緊急再建計画を取りまとめ、ご説明させていただいたところであります。行財政改革推進本部は五月から十六回の回数を重ね、全庁を挙げて行財政改革に取り組んでまいりました。私が区長に就任して以来の毎日は、行財政改革を中心に動いてきたと言っても過言ではなく、現在の苦しい財政状況を打開する道がどこかにあるに違いないと信じ、区政運営に当たってまいりました。


 私が今まで区政を外側から見ていたときは、区の行財政改革はまだまだ不十分であると思っていました。しかし、区政をあずかり、また行革推進本部の本部長として、これまで継続してきた行財政改革の実情と現時点における事業実施の内情を知るにつけ、率直に申し上げて、行財政改革の推進ということの難しさを改めて再認識したところであります。今回の緊急再建計画の策定に際しましては、本部会議やヒアリング等におきまして、内部努力の徹底はもとより、すべての事業についてあらゆる角度から精査・検討を加え、その見直しを図っておりますが、見直し事業の中には、区民生活への影響の大きさを考えたとき、断腸の思いで決断をいたしたものもありました。


 介護保険と都区制度改革、さらには東京都の財政再建推進プランにかかわる財政調整に関する事項などにつきましては、その詳細や財源配分がいまだに確定しておりませんので、今回お示しした緊急再建計画には入れてはおりません。このうち介護保険は国の動向にかかわるものであり、区としては何とも動きようのない事柄であります。一方、都区制度改革は、東京都と特別区が当事者であり、当事者間での解決が可能なことであります。来年度予算編成の大詰めにかかろうというこの時期になってさえ、いまだに解決の方向が明らかでないということの原因は、私は東京都の姿勢にあると考えています。東京都が都区制度改革の本来の趣旨に則した姿勢に立てば、財源配分の問題も一致点が見出せるはずであります。今回の都区制度改革が名実ともに満足のいくものとして実現できるよう、区長会等を通じて今後とも働きかけてまいります。


 行財政緊急再建計画の内容をすべて実施した場合でも、十二年度予算における財源はなお三十億円以上不足いたします。また、介護保険や都区制度改革による財源配分、東京都財政再建推進プランの動向によりましては、さらなる財源不足が生ずることがあるかも知れません。今後、こうした財源不足を埋めるため、予算査定や各種の財源対策、さらには福祉施策の再構築などを通じて予算の編成を行ってまいりますが、区議会におかれましては大所高所からのご指導を引き続きお願い申し上げます。


 行財政緊急再建計画の策定に合わせ、今回、財政白書とバランスシートを作成いたしました。財政白書は八年度に初めて作成したものに引き続く第二次のものであり、バランスシートは初めて作成したものであります。


 財政白書からは、五年度までと六年度以降とでは歳入構造が大きく変化していること、すなわち六年度以降は長期不況により二大財源である特別区税と特別区交付金が大きく落ち込み、区財政に深刻な影響を与えてきたことが読み取れることと思います。一方、歳出構造では、六年度以降も事業拡充を継続してきたことや扶助費が一貫して増え続けていること、さらにはこれまでに建設した施設の公債費負担や維持管理費が増えてきていることが明らかになりました。また、財政指標からは、元年度以降は経常収支比率と公債費比率が上昇し続けており、近年は財政構造の硬直化が顕著になっていることがわかるところであります。


 バランスシートは、国、自治体での作成はいまだ未開拓・試行錯誤の段階でありまして、その手法として確立されているものは現在のところありません。こうした中で、他団体に先駆け区として今回初めて作成したものであります。今後継続して作成することにより、行政評価への活用等を図ってまいりたいと考えております。来年度から導入いたします外部監査との相乗効果も考えられ、区政のより一層の透明性の向上や事業の有効性の検証に役立うものと期待をしております。


 次に、組織改正についてであります。


 来年四月からは、都区制度改革の実現により、特別区が基礎的自治体としての新たな歴史を刻み始めることになります。この時期に合わせ、庁内組織も地方分権の推進、低成長経済への移行、今日的社会問題への解決の観点から抜本的な再編成を行い、簡素にして効率的な組織・機構を目指すことにいたしました。部・課等の再編・統合と名称変更並びに出張所の廃止と区民事務所の設置など、すべての部局にわたる大幅な見直しを行いましたが、新しい組織を有効に機能させ、区民サービスの一層の向上に努めてまいりたいと考えております。


 次に、オウム真理教対策であります。


 去る九月三十日から始まった二十四時間体制の監視活動も1カ月半を迎えようとしています。夜間は冷え込みも厳しくなり、監視に当たる地元の皆様のご労苦は計り知れないものがあります。


 一方、オウム真理教反対のうねりは着実に高まってきております。去る十月二十四日の「NO!オウム真理教豊島区民大会」は、予想をはるかに上回る盛り上がりとなりました。このことは、オウム問題は池袋本町地区だけではなく豊島区民全体が関心を持ち、一丸となって地域の環境を守るのだという、心強い意志の確認がなされたものと受けとめております。この豊島区民大会の決議を受け、十月二十六日には内閣官房長官、法務大臣、自治大臣に面会し、要請を行ったところであります。


 国では、オウム真理教関連二法案が成立の見通しとなっております。とりわけこのうちのオウム活動の規制に関する法案は、今回の豊島区民の行動が法案化のきっかけとなっていると思われます。今回の法案の成立があっても、オウム真理教の拠点施設が直ちになくなるというわけにはいかないかもしれませんが、区といたしましては、国に対して新法と現行法の厳格な適用を要請していくとともに、区民の皆様と歩調を合わせ、転入届の受け入れ拒否をはじめとする対応を引き続き行ってまいります。なお、去る十日には、マンション管理組合からの仮処分申請に基づき、占有移転禁止の仮処分が執行されたところであります。


 次に、介護保険についてであります。


 介護保険の実施まであとわずか五カ月を切ったこの時期になって急遽持ち上がった今回の動きにつきましては、制度開始に向けて厳しいスケジュールの中で準備に追われている自治体はどこでも大変困惑していることと思います。この時期における混乱は、介護保険制度の信頼性に水を差すことにもなりますので、制度開始後の運営に影響が出るのではないかと危惧しているところであります。


 区では、既に十月一日から要介護認定申請の受付を開始し、精力的に訪問調査や準備要介護認定等を行っているところであります。どんなことがあろうとも、来年四月には円滑に制度を開始しなければなりませんので、引き続き準備に万全を期してまいる所存であります。


 次に、コンピュータ西暦二〇〇〇年問題についてであります。


 区では、去る八月に私を本部長とする豊島区コンピュータ西暦二〇〇〇年問題対策本部を組織し、事前の対策と不測の事態に対する対応の検討を進めております。既に、区の事務処理にかかおるコンピュータプログラムは、住民記録をはじめとするすべてのシステムにわだっての対応は済ませておりますが、それでも予期せぬ事態に備え、コンピュータが停止した場合を想定した対応笛も準備しているところであります。また、電気・交通等のいわゆる社会インフラに関しましては、都や民間インフラ事業者等、関係機関との連携のあり方の検討と準備を進めています。


 具体的には、ライフラインが停止した場合の最悪の状態を想定し、十二月三十一日の夕方五時から翌一月一日の正午までを特に警戒すべき要警戒期間として、私をはじめ関連部課の管理職及び担当職員が本庁舎内で待機を行うとともに、万一重大な災害が発生した場合には、直ちに豊島区災害対策本部を設置する体制といたしております。また、区民の皆様からの問い合わせや相談等に応ずる窓口を十二月二十九日から常時開設する予定であります。


 次に、管理職手当の一〇%辞退についてであります。


 第三回定例会で私と特別職の給料の減額をいたしましたが、これと時期を合わせ、管理職全員から管理職手当の一〇%辞退の申し入れを受けました。本年度の人事委員会給与改定勧告では、職員の期末・勤勉手当の減額に加え、管理職については、部長級は給与改定が見送りとされ、統括課長は改定率が抑制されるという、管理職にとっては厳しいものとなっており、管理職手当の辞退は二重、三重の痛手となるものです。


 難局に直面している区政の中で、行財政再建のために昼夜を分かたず粉骨砕身の努力を重ねている幹部職員の身を削るような今回の申し出に、私は幹部職員の並々ならぬ決意と意気込みに感動し、また頼もしくも思い、この申し出を受け入れることにいたしました。なお、管理職は、昨年度も一年間、今回と同様、管理職手当の一〇%の辞退を行っていたところであります。


 私は、区政の最高責任者として、危機的財政状況下にある区政に不退転の決意で立ち向かい、区民の皆様のご理解とご協力はもとより、区議会のご指導をいただきながら、細心にして大胆に行財政を総点検し、行財政改革を実現してまいりたいと考えております。行財政の再建には一刻の猶予も許されません。今日なし得ることをあすに延ばすことなく、再建の未来を信じて「元気・やる気・勇気」の信念のもと、果断に区政運営を進めてまいりたいと考えております。


 本日ご提案申し上げます案件は、決算認定四件、条例九件、協議規約一件、予算一件、合わせて十五件であります。各案件につきましては、後ほど日程に従いまして、助役並びに収入役よりご説明申し上げますので、よろしくご審査の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして招集のあいさつとさせていただきます。