平成17年第1回区議会定例会招集あいさつ・所信表明

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 本日、ここに平成十七年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。


 今定例会の開会に当たりまして、区政に当たる私の所信の一端を述べさせていただきます。


 初めに、平成十七年度の施政方針について申し上げます。


 我が国はまもなく、平成十八年をピークとして、人口減少社会を迎えるといわれております。都心回帰により増加してきた二十三区の人口も、全国から十年遅れて、平成二十八年以降は減少に転ずると予想されております。少子化と高齢化が世界で最も速いスピードで進む中、拡大や成長に代わり、知識や生活の質、そして持続可能性を重視すべき時代が到来いたします。


 こうした変化に対応すべく、今、経済の拡大を前提に組み立てられてきた社会システムの再設計が急務となっており、国と地方のあり方を根底から見直す三位一体の改革や税制改革、そして社会保障制度全般にわたる改革など、国レベルでの大きな変革のうねりが押し寄せてきております。特に三位一体の改革については、税源移譲に向けた国庫補助負担金の廃止・縮減など、区の歳入や都区間の調整財源に直接影響を与えるものであり、今後とも、地方と国とが十分協議しながら進めるべきであります。私も、特別区長会、そして全国市長会等を通じて、三位一体の改革が真の地方分権につながる改革となるよう、積極的に働きかけてまいります。


 また、豊島区を初め二十三区にとっては、平成十二年の都区制度改革の際に積み残された課題の解決なくして、真の財政的自立はあり得ないと考えております。ここにきてようやく、財源配分の前提となる役割分担の考え方として、大都市事務の内容が東京都から示されましたが、そこには府県事務も含まれておりまして、区として到底納得できるものではありません。このほか、清掃関連経費の取扱い、小中学校の改築急増への対応、都市計画交付金のあり方など、いわゆる都区財政調整制度の主要五課題について、平成十七年度中の解決を目指して、強い決意を持って東京都と協議を進めてまいりたいと思っております。


 新たな分権型社会を築く上で鍵となるのは、ほかでもない地域からの取組みであります。初めは小さなものであっても、地域の活動が、やがては日本を動かす大きな原動力となることをしっかりと認識する必要があると思います。私たちの豊島区も、これからの日本の分権型社会を築く原動力として、力を尽くしていかなければならないと思います。そのためにも、今後の少子・高齢社会の方向をしっかりと見定め、自立した分権の担い手としての政策力、財政力を高めるとともに、持続可能性を重視しながら、公共施設や歳出構造を初め、区政の構造改革を急ぐ必要があるのであります。


 人口減少社会は、まさに都市が選ばれる時代であります。都心回帰の傾向が続くと考えられるこれからの十年間は、第二次ベビーブーム世代が出産期、そして住宅取得期を迎え、さらには日本経済を支えてきた団塊の世代の皆さんが企業社会から地域社会に帰ってくる時期でもあります。今後十年間の中で、いかに、住みたい街、住み続けたい街、そして訪れてみたい街を築くことができるか、また地域への参画が感動を生むような幅広い協働の仕祖みをつくり上げることができるかによって、定住人口や税収、そして来街者や地域経済など、区の将来が決すると言っても過言ではありません。


 そのためには、今から全力を挙げて、その取組みを進めていく必要があります。私は、輝く豊島区を次の世代へと引き継いでいくために、福祉と教育を基本としながらも、「文化」「健康」「都市再生」の三つを新たな経営戦略の柱として明確に位置付け、魅力と価値ある街づくりを進めてまいりたいと思います。そして、街全体をキャンバスに「としまの未来」を描き、地域、大学、企業、NPOなど、地域の力との連携・協働を深めながら、施策を展開してまいります。


 次に、行財政改革プラン二〇〇四について申し上げます。この度、平成十七年度からの五年間における区政改革の道筋を示す行財政改革プラン二〇〇四を策定し、公表いたしました。ただいま申し上げました新たな経営戦略を加速するためにも、改革プランによる構造改革を着実に実施し、一日も早くスリムで変化に強い行政、そして持続可能な財政構造をつくり上げていかなければならないと考えております。


 改革プランの検討に当たっては、かつてない規模と、聖域を設けずに検討した施策の見直しに対し、昨年九月の素案発表以来、区民の皆様から厳しいご意見をいただきました。この改革プランは、私を初め職員一人一人が、こうしたご意見を真摯に受け止め、誠心誠意、改革の必要性をご説明し、ご理解を得る努力を重ねながら策定したものであります。選択と集中による行政サービスの見直し、民営化や指定管理者制度による施設運営、新たな予算編成システムの導入、そして十七・十八年度の職員採用ゼロを含めた、五年間で四百名という思い切った職員定数の削減など、従来の枠組みにとらわれず、区政の構造改革に正面から大胆に取り組んだ今回のプランは、まさに「平成の大改革」のスタートに相応しい内容になったと思っております。


 本日お示しする平成十七年度予算案は、難局に立ち向かい必死の覚悟で将来を切り開こうとする、全庁一丸となった取組みが結実したものでありますが、それ以上に、改革による変化と痛みに対する区民の皆様のご理解・ご協力の上に成り立っているものであると認識しております。そして、今後進める改革の痛みを区民の皆様にお願いする以上、何よりもまず成すべきことは、区自らの身を削るような内部努力であります。しかしながら、あらゆる手段を尽くしても、平成十七年度予算に向けて収支均衡を図る見通しが立だない状況でありました。


 このため、私は、臨時・特例的な措置として、一般職員も含め、職員給与の削減に踏み切ることを決断し、一月初めから職員団体と鋭意交渉を重ね、二月三日に妥結に至ることができました。その内容は、平成十七年度一年間に限り、部長級五%、課長級四%、一般職員三%、再任用職員二%相当分を減額するものであり、その額は三億四千九百万円になります。また、今回のコミュニティ振興公社と街づくり公社の統合に当たっては、指定管理者制度の導入による施設管理業務の縮小と合わせ、経営体質の改善を図るためとはいえ、余剰人員となる公社職員を解雇せざるを得ない結果となりました。財政再建という至上命題があるとはいえ、行政組織の長として、また公社の理事長として、こうした給料削減や解雇という、まさに最後の切り札を切らざるを得なかったことは、誠に断腸の思いであり、言葉では言い尽くせない大きな責任を感じております。こうした改革の取組みにより、今後五カ年で二百十九億円もの財政効果を生み出し、平成十七年度の六十七億円の財源不足に対応することができました。また、一歩ずつではありますが、未来につながる新たな政策の芽を育てることができたと考えております。


 しかし、昨年八月時点における三百七十億円の財源不足から、プランの効果である二百十九億円を差し引き、さらにこの二月時点での財政収支見通しによる十五億円の変動を加えますと、依然として、平成十八年度以降の四年間で百六十六億円の財源不足が見込まれております。五年後の平成二十一年度における財源不足は十八億円程度であり、やや明るい展望が見えるものの、十八年度から三年間の五十億円前後の財源不足への対応は、今回の改革を実行した後だけに、容易ならざる艱難であると考えております。集中改革期間と位置付けた平成十七年度からの三年間の中で、何としてもこの艱難を乗り越え、確かな展望と道筋を切り開くため、改革プラン二〇〇四を新たな出発点として、引き続き改革プラン二〇〇五の策定に着手し、財源不足への対応に向け、あらゆる選択肢を検討してまいりたいと思っております。


 改革への取組みは、それ自体が目的ではなく、区財政を蘇らせ、社会やニーズの変化に的確に対応する力を生み出すためのものであります。次の世代に魅力と活力ある地域社会を引き継ぐことは、私たち現世代の責務であります。私は、区長としての政治生命をかけ、勇気と希望、確固たる信念を持って、区政の構造改革に全力を尽くす決意であります。


 なお、平成十七年度からの計画として年度内の策定を予定しておりました基本計画ですが、大きな財源不足への対応が急務である今、新たな施策を体系的に計画化し中長期の財政フレームを想定することは、大変困難な状況であります。しかし、基本構想の実現はもちろんのこと、各分野別計画の総合調整、そして公共施設の再構築など、基本計画が果たすべき役割の重要性についての認識に変わりはございません。したがいまして、基本構想審議会における審議を延長することをお願いし、変化が激しく将来の見通しを立てることが難しい時代における基本計画のあり方についてさらにご議論をいただき、平成十八年度に向け、策定を進めてまいりたいと考えております。


 次に、平成十七年度予算案について申し上げます。


 平成十七年度の一般会計予算規模は八百六十四億七千六百万円となり、前年度当初予算に比べ十四億一千八百万円の減、一・六%のマイナスとなっております。これは、十一年度以降一貫して減り続け、七年連続のマイナスとなるものであります。一方、国民健康保険事業会計など四特別会計の総額は五百七十八億九千六百万円と過去最高の規模となっており、一般会計と合わせた財政規模は一千四百四十三億七千二百万円となり、前年度当初予算に比べ〇・三%のマイナスとなっております。一般会計の規模が年々縮小する一方、国民健康保険事業会計及び介護保険事業会計の両特別会計の膨張は、高齢化への急速な進行などがあるとはいうものの、今後の区財政に一層深刻な影響を及ぼすことは確実であり、大きな財政課題の一つとして懸念をしております。


 次に、一般会計予算の特徴について申し上げます。


 最初に、歳入についてでございますが、特別区税は、対前年度比五千三百万円の減、〇・二%のマイナスとなっております。これは、景気の一部回復を反映して特別区民税に一定の伸びが見込まれる一方、喫煙率の低下により、特別区たばこ税の減少が見込まれることによります。特別区財政調整交付金は二百五十六億円となり、対前年度比十七億円の増、七・一%のプラスとなっております。これは、企業収益が回復基調にあることを反映し、市町村民税法人分の大幅な増収が見込まれることによるものであります。特別区債は平成十二年度以降厳しい抑制を続けておりますが、平成十七年度は、対前年度比四千三百万円の減、一・二%のマイナスとなっております。起債依存度は四・二%と対前年度比で〇・一ポイントの増となっておりますが、借換債分を控除いたしますと三・四%となり、極めて低い水準を維持しているわけであります。特別区債の残高は、平成十七年度末では五百二十二億六千二百万円と見込んでおります。十一年度のピーク時の六百六十七億円から百四十五億円のマイナスとなるものであります。


 次に、歳出の特徴でございますけれど、経費別では、人件費と事業費が減少する一方、投資的経費が増加しております。まず、人件費でございますが、対前年度比二十億三千九百万円の減、七・七%のマイナスとなる二百四十三億二千四百万円となりましたが、これは、百三人の定数削減や職員の給料の削減、退職手当の減などによるものでございます。事業費は、対前年度比二十五億一千四百万円の減、四・八%のマイナスとなる五百三億五千八百万円となり、五年連続のマイナスとなっております。これは、主に改革プランによる事業の見直しなどによるものであります。投資的経費については、対前年度比三十一億三千五百万円の増、三六・二%のプラスとなる百十七億九千四百万円となっております。このうち経費別区分の変更により新たに投資的経費扱いとしたものが四十四億四千九百万円ありますので、これらを控除いたしますと、対前年度比は十二億七千三百万円の増、二一%のプラスとなります。増の主なものとしては、学校建設や東池袋交流施設、東長崎駅の整備、そして土地開発公社への分割償還金などがあります。


 次に、平成十七年度における七つの重点施策について申し上げます。


 まず、文化政策について申し上げます。


 昨年十二月、「文化芸術創造都市の形成」に関する地域再生計画が内閣府に認定されました。地域再生計画の認定を機に、豊島区の取組みが広く全国に紹介され、文化都市づくりに向けた記念すべき一歩になったと思っております。十七年度は、この地域再生計画の考え方を推し進め、旧朝日中学校におけるにしすがも創造舎を初め、区内の文化施設や活動団体とのネットワークをさらに広げながら、文化芸術による創造のまちづくりを進めてまいります。また、これまでのとしま文化フォーラムの実績を踏まえ、来年度はさらに、としま文化創造プロジェクト実行委員会を設置し、NPO法人を初め、東京芸術劇場、東京音楽大学などの参加・協力の下、地域文化のリーダー役となる人材を育成してまいります。そして、今年の秋を目途に、文化政策の指針となる文化政策推進プランを策定するとともに、文化特区を実現し、これに合わせて文化都市宣言を行いたいと考えております。


 一方、文化政策の組織体制についても充実を図ります。文化政策を総合的に推進する観点から、これまで教育委員会が担ってきた生涯学習やスポーツに関する事務について、この四月から区民部へ移行いたします。


 また、現在のコミュニティ振興公社と街づくり公社を統合し、文化とコミュニティを機軸とした街づくりを担う主体として、新たにとしま未来文化財団を設立いたします。新財団のスタートとなる十七年度は、音楽や演劇の体験を通じて子供たちの豊かな感性を育てるジュニア・アーツ・アカデミー事業や、区民参加による本格オペラ「夕鶴」の手作り公演を行うアート・ステージ事業など、新財団が主体となる文化活動を支援し、連携を深めながら文化政策を展開してまいります。


 平成十九年九月の開設を予定する東池袋交流施設につきましては、開設準備を担う事業者を選定するとともに、質の高い施設運営に向けた体制づくりを進めていきたいと思っております。また、「演劇と映画のまち池袋」の新たな魅力を創造・発信する拠点に相応しい名称について、区民の皆様から公募を行いたいと思います。さらに、二十一世紀型のIT図書館として同時に開設する新中央図書館との効果的な相互連携についても十分検討してまいります。


 第二番目に、健康政策について申し上げます。


 我が国は、生活環境の改善や医学の進歩などにより、世界有数の長寿国になりました。しかし、その一方で、認知症や寝たきりなど、要介護状態となってしまう高齢者や生活習慣病の増加が深刻な社会問題となっております。また、医療や介護に関する負担の増大が懸念されており、区においても、介護給付費や医療費の増加が財政硬直化の大きな要因ともなっております。これからの高齢社会では、単に長生きするということではなく、高齢区民の一人一人が心身ともに自立した生活を送り、社会に参加して自己実現を図ることができる期間、即ち健康寿命を延ばすための取組みこそが重要であります。


 私は、こうしたことから、文化政策と都市再生に並ぶ、未来につながる基本政策の一つとして、新たに健康政策を位置付けたのであります。そしてこの度、その政策展開の全体像を示す計画として、健康推進プラン21を策定いたしました。


 このプランは、生活習慣病の予防や高齢期の介護予防など、いわゆる一次予防に重点を置き、乳幼児から高齢者まで、地域ぐるみの健康づくり運動を展開する行動計画として策定したものであります。来年度は、特に介護予防に重点を置き、保健福祉部に介護予防担当課長を新設するとともに、「七十五歳からの介護予防大作戦」と銘打った取組みを進めます。豊島区では毎年約二千人が七十五歳を迎えますが、その七五%が自立した生活を継続できることを目標として、要介護状態の原因となる骨折や認知症の予防に取り組んでいきたいと思っております。今年度からスタートした介護予防健診「としま・おたっしゃ21」には約三百人が受診いたしましたが、十七年度はこれを五百人に拡大いたします。また、高齢者筋力向上トレーニングを二カ所から四カ所に増やすとともに、学習療法を活用した脳イキイキ事業、そして転倒予防教室、おたっしゃ栄養教室などを新たに実施いたします。さらに、平成二十年四月の開校が予定される帝京平成大学の医療系学部との連携を図り、健康政策を展開してまいりたいと考えております。


 一方、介護予防と並行して、介護を支える基盤や仕組みづくりにも取り組んでいきたいと思っております。今年五月には、南長崎四丁目において、区内三カ所目となる認知症高齢者グループホームが開設されますが、来年度は、新たに三ユニット分の補助を行い、さらにグループホームの整備を進めてまいります。また、安心して介護サービスを利用・選択できる仕組みづくりに向け、新たに介護サービス向上推進委員会やケアプラン指導チーム、介護サービス調査員を設置するとともに、第三者機関による評価・公表を促進してまいります。


 そしてこの度、約四年をかけて進めてまいりました南池袋三丁目の福祉基盤施設等がいよいよ完成し、二月十九日に落成式が行われることになりました。特別養護老人ホームから保育所、住宅まで、複数の施設が安心を織り成すという意味で、この施設は「オリナス ふくろうの杜」という愛称で呼ばれることになりました。住宅部分には、区民住宅十二戸、高齢者向け優良賃貸住宅二十七戸も加わり、施設の外周部分も緑豊かな明るい空間に生まれ変わりました。複合施設であるが故の様々な課題を乗り越えながらこの事業を推進してこられた各事業主体の皆様の並々ならぬご努力、そしてこの間の区議会、近隣の皆様のご理解・ご協力に対しまして、心より御礼を申し上げます。


 第三番目は、都市再生についてであります。


 豊島区全体の魅力と価値を高めていく上で、池袋副都心の再生は大変重要なテーマでございます。池袋は、その文化性と安心感、そして新東京タワーの誘致やLRTの導入などによる未来性を高めることで、渋谷、新宿にはない存在感を発揮する可能性を秘めた街であります。平成十七年度においても、池袋副都心再生プランに基づき、商業業務エリアを対象とした地区計画の導入など、将来ビジョンを明確に打ち出すことで、民間の力を誘導し、街が持つポテンシャルを最大限に引き出す取組みを進めてまいります。補助八一号線沿道まちづくりと南池袋二丁目地区の街区再編まちづくり、そして補助一七三号線、一七二号線についても、東京都と連携しながら着実に整備を進めてまいります。また、環状五の一号線の地下道路化についても、その実現に向け、東京都に強く働きかけております。


 さらに、池袋の文化的なイメージを方向付ける要素として、大学の存在は大変重要であります。現在の立教大学、東京音楽大学に加え、平成二十年四月には帝京平成大学が開校する予定であります。開校に伴い、五千人もの学生が池袋に来ることが想定されており、新たな人の流れが確実に街を変えていきます。この機会を捉え、私は、池袋駅や大塚駅から帝京平成大学への人の流れを想定し、学園通りづくりに着手することといたしました。平成十七年度には、魅力ある道づくり計画の策定に向け、地元のご意見を踏まえながら調査を実施いたします。また、将来的には、こうした取組みを立教大学、そして東京音楽大学の周辺にも広げてまいりたいと考えております。


 さらに、観光や買い物を目的に豊島区を訪れる来街者や交流人口を増やすことも重要でございます。その観光の窓口として、今年八月には、池袋駅東口交番の移転跡に観光情報センターをオープンさせます。池袋だけではなく、豊島区全体の観光情報や地域情報を発信するインフォメーション・センターとして、ビジターを優しくお迎えする心をモットーに運営してまいります。なお、新たな池袋駅東口交番についても、梟を模した親しみのあるデザインを装い、この四月にオープンいたします。


 また、この度、今年五月に宮城県の名産品を販売・PRするアンテナショップが、約四百平米もの規模をもって、池袋東口にオープンすることが決まりました。さらに、二月二十六・二十七日には、区民センター及び中池袋公園を会場として、「なまはげ」や「かまくら」など、ふるさと秋田「文化・芸能まつり」が開催されます。姉妹都市である秩父市を初め、今後も、こうした地方都市との交流を、池袋副都心の新たな魅力の一つとして育て、内外にアピールしてまいりたいと考えております。


 そして、いよいよ来月には、これまで地域を挙げて誘致に取り組んでまいりました新東京タワーの候補地が決定される予定であります。残る時間は僅かでございますけれど、二十一世紀を象徴するランドマークとなる新東京タワーの誘致実現に向け、区民、そして区議会の皆様と心を一つにして、全力で取り組んでまいります。


 そしてさらに、区内各地域の魅力と活力を高める取組みも進めてまいります。まず、巣鴨・大塚地区につきましては、商業活性化と街づくりを一体的に進める中心市街地活性化事業を本格的に展開してまいります。「ぶらり・ゆったり 暮らし楽しむ巣鴨・大塚」をコンセプトとして、平成十七年度には事業の中心的な主体となるタウンマネージメント機構を設立し、今後展開する事業に関する全体構想の策定を支援いたします。大塚駅南北自由通路については、平成二十年度の完成に向け、十七年度から工事に着手いたします。大塚駅の自転車駐車場についても、整備に向け調査を行います。また、目白及び駒込地区につきましては、地域ブランド創出プロジェクトを実施いたします。歴史的・文化的資源、老舗やギャラリー等の個性ある店舗など、居住者と来街者の両方の視点から、地域固有の資源に改めてスポットを当て、地域ブランドとイメージ向上に結び付く具体的なアイデアを提案してまいります。このほか、駒込駅のバリアフリー化や東長崎駅の自由通路等の整備を進めるとともに、新たに池袋本町地区において居住環境総合整備事業を展開いたします。


 第四番目は、産業振興であります。


 今月初め、巣鴨地蔵通り商店街が、「訪ねてみたい商店街」として、日本で一番との評価を受けました。全国の主な商店街六十カ所の中から、日本経済新聞社の調査により選ばれたものであります。賑わう商店街の存在は、地域の魅力や活力、さらにコミュニティの源泉であり、区内の各地域における個性ある商店街づくりに向け、今後とも様々な支援を展開してまいりたいと考えております。来年度は、空き地や不良テナント対策に向け、池袋駅西口の商店街が中心となって設立を予定するNPOを支援するほか、西巣鴨では、地元商店街と大正大学が連携して進めている空き店舗を活用した福祉サービスの展開を支援するなど、商店街の活性化を進めます。また、多店舗展開するチェーン店と商店街との協力関係の強化を含め、区の産業振興施策の基本となる商工振興条例の制定に取り組みます。


 一方、商工融資制度については、融資資金の体系化、利子補給の重点化など、改善を加え、わかりやすく利用しやすい制度にするとともに、中小企業の資金需要に円滑に対応する施策を展開してまいります。また、起業相談の充実や起業融資への利子補給など、区内で新たに起業・創業しようとする事業者を積極的に支援するとともに、区内製造業の中核を成す印刷関連産業の再生に向けた調査・検討を進めていきたいと思っております。


 第五番目は、区民生活の安全と安心の確保であります。


 繁華街等のパトロールや防犯カメラの設置、夜間啓発清掃など、これまでの治安対策の実績を踏まえ、平成十七年度には、特に子供の安全確保に重点を置いて事業を展開いたします。全国各地で子供を狙う犯罪が相次いでいることから、すべての区立小中学校と六カ所の全児童クラブに防犯カメラを設置いたします。また、保育園や小中学校等の保護者に対し、携帯電話等へのメール配信を活用して、事件や不審者に関する情報を迅速に提供するシステムをスタートいたします。


 また、従来からのパトロールにつきましては、今年四月から、改正された東京都の迷惑防止条例及びぼったくり条例が施行されることも踏まえ、安全・安心パトロールと池袋駅前夜間啓発清掃を統合し、喫煙等のマナー向上を含め、より効果的な監視体制も整備いたします。また、警察に通報するか判断に迷うようなことであっても、委託した警備員が迅速に現地に向かい、情報収集や調査を行う体制を新たに導入いたします。また、公募ボランティアによります落書きなくし隊を新たに展開するとともに、各町会の皆様によるパトロールを積極的に支援してまいります。


 一方、新潟県中越地震に対応した災害対応力の強化といたしまして、備蓄物資を充実するとともに、被災地における活動拠点の確保に要する宿泊装備を導入するほか、防災意識の向上に向け、魚沼市を初め防災協定を結ぶ自治体関係者の参画を得て、防災フォーラムを開催いたします。


 第六番目に、子育て施策について申し上げます。


 この度、子育ての喜びを実感できる社会づくり、そして子供が元気に育つ環境づくりをさらに進めるために、子どもプランを策定いたしました。


 平成十七年度については、これまで区民の皆様からのご意見をいただきながら準備を進めてまいりました全児童クラブを六小学校区においてモデル実施いたします。


 また、保護者の入院等による宿泊を伴う養育事業として、新たに児童のショートステイ事業をスタートするほか、認証保育所の第三者評価、母子家庭の自立支援に向けた職業訓練に関する給付金制度を創設いたします。


 区立保育所の民営化につきましては、今後十年間に二十八園のうち半数程度を目標として、事業の安定性・継続性に十分配慮しつつ、民間への移行を進めてまいります。現在、平成十八年四月の南池袋保育園については既に運営主体を選定しておりますが、その他の園につきましては、今後、事業者選定の考え方を整理し、来年度前半には具体的に選考を実施してまいります。


 第七番目といたしまして、学校教育について申し上げます。


 子供の育成に向け、家庭、学校、そして地域社会が連携して、教育力を高めていくことが課題となっております。これまでも、学校教育を豊かで魅力あるものとするため、地域や大学などの教育力を導入する取組みを進めてまいりましたが、十七年度においても、さらにその取組みを広げてまいります。まず、英語によるコミュニケーション能力「話せる英語力」の向上に向け、小学校五・六年生を対象に、外国人指導助手による英語教育を行います。また、旧朝日中学校で活動するにしすがも創造舎との連携により、新進気鋭のアーティストを近隣の中学校に派遣し、芸術活動を体験する機会をつくります。さらに、これまで消防署の協力により実施してまいりました普通救命講習についても、すべての中学校三年生に対象を広げていきたいと思っております。


 一方、特色ある学校づくりに向けたプロポーザル制度を拡充するほか、学校図書館の活性化に向け、蔵書の充実や図書館の改造、図書館活性化アドバイザーの派遣を行います。また、小学校では、子供が安定した学校生活を送ることができるよう、学級担任を補佐する指導員の派遣を拡充いたします。


 つい先日も大阪におきまして大変痛ましい事件が発生いたしましたが、学校と子供の安全確保にも、一層力を入れた取組みを行いたいと思っております。先程申し上げましたすべての小中学校への防犯カメラの設置、安全安心情報のメール配信のほか、今年度からスタートいたしましたセーフティ教室の充実に向け、身の安全を守る実践事例集を作成し、各学校に配付いたします。


 一方、学校環境の整備につきましては、平成十八年四月に向け、明豊中学校の建設、道和・真和中学校を統合する西池袋中学校の改修を行います。また、来年度の耐震補強工事は、小学校五校、中学校三校で実施いたします。このうち西巣鴨中学校については、十七・十八年度の二年間で実施いたしますが、これによりましてすべての区立小中学校の耐震工事が完了することになります。小学校普通教室の冷房化についても六校で実施いたします。


 最後に、地域の力との協働を基本とした区政の展開について申し上げます。


 ただいま平成十七年度の重点施策についてご説明いたしましたが、文化政策から学校教育に至るまで、どの分野をとってみても、施策の効果を高める上で重要な鍵となるのが、地域の多様な主体との連携・協働であります。将来展望を区民の皆様と共有し、地域の力との協働を進めることで、初めて、豊島区の未来を切り開くことができると考えております。


 こうした認識の下、私は、「街全体をキャンバスに・文化、健康、都市再生をテーマにとしま未来を描く」と題し、将来展望を描いた地図を作成いたしました。家庭や町会等、商店街、NPO、企業、学校、そして行政など、地域を舞台に多様な主体が課題や情報を共有し、必要に応じて相互に連携を図り、力を合わせながらそれぞれ主体的に活動することにより、新たなアイデアが生まれ、大きなエネルギーが湧き上がってくるのであります。来年度からモデル実施する地域区民ひろばは、まさに、これから先、地域の力との協働を広げていく上で、大変重要な役割を担う仕組みであると考えております。今はまだ若木を植える段階でありますけれど、十年後には、地域コミュニティの拠点、そして地域への魅力ある参画を支える大木として成長するよう育ててまいりたいと考えております。こうした意味で、今回描いた絵はまだ完成したものではありません。議員、そして区民の皆様からの積極的なご提案をいただきながら、ともに筆を加え、としまの未来を描いてまいりたいと考えております。


 さらに、今後は、区内の教育施設との連携強化を図りたいと考えております。そのため、もう一枚、「街全体をキャンパスに・地域と学校との連携から生まれるとしまの未来」と題した地図を作成いたしました。豊島区は、幼稚園から大学に至るまで、実に百三十を超える教育施設がある街であり、約九万人が学ぶ教育機能を有しております。教育豊島は今でも健在であります。特に来年度は、立教、学習院、大正、東京音楽大学、そして帝京平成大学の参画を得て、新たな連携とネットワークのあり方を検討する場を設置し、生涯学習や地域福祉、健康づくり、そして文化や都市再生に至るまで、大学と地域社会との連携を深めてまいりたいと考えております。そして、平成十七年度には、地方分権の流れの中で、区民自治のさらなる伸展を図り、地域の力との協働を基本とする区政を進めていくため、としま自治新時代の憲法ともいうべき自治基本条例を制定いたします。現在、区民の皆さんが主体となる自治基本条例区民会議とパートナーシップ協定を結び、三月末を目途に、豊島区に相応しい条例のあり方について、積極的にご議論をいただいているところでございます。また、区議会においても、自治基本条例調査研究会が設置され、鋭意、検討が進められているところでございます。今後、約一年間の議論に基づく区民会議からのご提案を踏まえ、さらに広く区民の皆様、区議会の皆様からのご意見を伺いながら、今年秋を目途に、具体的な条例案の策定作業を進めてまいります。


 「韓非子」の中に、「一手独り拍つは、疾しといえども声なし」という言葉がございます。どんなに速く手を動かしても片方の手だけでは音が出ないように、私一人では何事も成し得ません。議会はもとより、行政と区民の皆様、私と職員との間も同じであります。改革の道のりは決して平坦なものではありませんが、豊島区を愛し、この街を大きく育てたいという区民の皆様の思いを、職員とともにしっかりと受け止め、歩み続けてまいる所存でございます。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例三十一件、予算八件、ほか十六件の合わせて五十五件であります。後程、日程に従いまして助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつ並びに所信表明といたします。