平成24年第1回区議会定例会招集あいさつ・所信表明

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 本日、ここに平成24年第1回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。


 それでは、今定例会の開会にあたりまして、区政にあたる、私の所信のいったんを申し上げ、議員各位並びに区民のみなさんのご理解とご協力を賜わりたいと存じます。


1.平成24年度の施政方針について


 はじめに、平成24年度の施政方針について申し上げます。


 WHOセーフコミュニティの認証取得については、昨年12月のWHOへの認証取得申請書の提出に続き、さる2月2日から4日にかけて、アジア認証センターから3名の審査員が来日され、本審査が行われました。そして、本審査後の講評では、豊島区の安全・安心創造都市づくりに向けた意気込みと、今まで進めてきた地域協働の姿について非常に高い評価をいただくことができました。認証を取得できるものと確信をしていますが、審査の最終結果は5月になると伺っています。


 この本審査には、3日間にわたって、10を超える自治体などから視察参加がありました。東京では初のセーフコミュニティへの取り組みについて、私たちが予想していた以上に大きな関心が持たれているということではないかと考えております。


 そして11月には、豊島区池袋で、国際会議「アジア地域セーフコミュニティ会議」が開催されることが決まっており、豊島区は、世界有数の大都市、東京でのセーフコミュニティ認証取得モデル都市として、まさに世界中から注目を浴びることになります。そこでは後進の認証取得取組み都市の範となるような姿を国内外の方々に見て頂きたいと考えています。


 セーフコミュニティの継続には、地域を支える次の世代を育成していくことが重要であります。次の世代でのセーフコミュニティの担い手である子どもたちに、みんなで協力して安全を守るという精神を育み、学んでもらいたいと考え、この間、セーフコミュニティと同時に、インターナショナルセーフスクールの認証取得にも取り組んでまいりました。


 この度の審査でも、セーフコミュニティとセーフスクールを同時に進行させている、世代を越えたセーフコミュニティの構築という困難な課題に挑戦しようとするその姿勢を高く評価されたと思っております。


 審査員を迎えるために児童のみなさんが用意した横断幕には、英語、ハングル語、中国語で歓迎の言葉が記載されていた上に、可愛い声を合わせて、英語で歓迎の言葉をかけてくれたばかりか、英語を交えた堂々としたプレゼンテーションを披露してくれたのであります。委員のみなさんばかりでなく、私も、感動いたしました。


 朋有小学校におけるインターナショナルセーフスクールの認証取得を、さらに確実なものとするよう、子供用自転車ヘルメットの普及啓発などで支援してまいります。


 また、この度の本審査では、外国語に堪能な7名の職員を通訳ボランティアとして配置しましたが、職員の語学力と接遇マナーの高さには私も驚きました。通訳を担当した職員をはじめ、審査の現場に区民のみなさんとともに立ち会った多くの職員に感謝をしたいと思いますが、今後、本区が国際都市として飛躍していくためには、それに対応できる職員のスキルアップが必要です。これからは、このような行事に参加することが、職員の見識や国際性を高めることに繋がるのでありまして、11月の国際会議、アジア地域セーフコミュニティ会議開催の機会を積極的に活用していきたいと考えています。


 セーフコミュニティの完遂には、区民と事業者そして警察などの行政機関との協働関係を深めていくことが不可欠です。


 そこで、犯罪防止及び有害環境浄化をはじめ、交通事故防止、テロを許さないまちづくりなどセーフコミュニティ事業を推進する上で重要な7項目について、警察と区が相互に連携協働して取り組むという基本合意を行い、2月7日、警視庁池袋警察、巣鴨警察、目白警察の3署長さんと合意書に署名をいたしました。また、池袋本町地区では、先日の2月1日に4商店会と8町会が一体となって安全・安心のための防犯カメラ30台を本町全域に設置しましたが、このような地域の自主的な環境浄化の努力に加え、警察機関との連携が図れることは、一層、治安についての効果が挙がるものと期待しているところであります。


 約2年間、区民のみなさんとともに、準備を進めてまいりましたセーフコミュニティの認証取得については、やるべきことをやり終え、5月の認証取得という有終の美を飾るとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。


 しかし、認証の取得自体は、決してゴールではなく、新たなスタートでもあります。


 セーフコミュニティの定着と区民のみなさんとの協働による取組みの拡大を図りながら、次の再認証に向けて、これまでの活動によって生まれた波をさらに大きなうねりにしていくことに全力を傾注してまいります。


 震災対策については、阪神淡路大震災の発生を機に、さまざまな対策を講じてまいりましたが、昨年の東日本大震災は、これまでの震災対策では想定さえしていなかった多くの課題があることが明らかになりました。


 また、現在の防災計画は、今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が70%の確率で発生するとの予想の下に対策をこうじることとされておりますが、今後4年以内に70%の確率で発生するという研究機関の発表もあるなど、安全なまちに暮らしたいという区民のみなさんの想いは、かつてなく大きく、かつ強いものに変わっていることを強く感じております。


 東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の首都直下地震が発生した場合には、区内では約4,700人もの人的被害が予想されていますが、その半数は建物の倒壊・家具の転倒によるものです。地震に負けない都市を造るためには、区内には都内有数の木造住宅密集地域も残っている中、建物や居室内の倒壊・火災に対する安全化を進めることが、特に重要な課題であると認識しています。


 先の区長会で、東京都から木密地域不燃化10年プロジェクトの説明を受けた際に、私は発言を求め、まず東京都に対しては、東池袋四・五丁目地区を例に挙げながら、木密地域の改善は、これまで進展と後退の繰り返しであり、住民が安心して不燃化に取り組むためには、「施策は安定的かつ継続的に」実施されるものでなければならず、政治の状況や財政事情に左右されることがないよう、今度の「新制度の構築」では、条例化を目指すべきことを要望するとともに、各区長さん方に対しては、関係区による横断的な組織をつくることの提案をいたしました。今後も、区としてできる限りの対応を行いながら、東京都が公募する不燃化推進特定整備地区の先行実施地区に応募するなど、関係機関などへも積極的に働きかけ、まちの防災機能の強化を図ってまいる所存であります。


 安全安心創造都市の実現をめざす当区にとって、高度な防災機能を備えた都市づくりは、非常に厳しい財政状況の中ではありますが、まさに最優先で取り組まなければならない喫緊の課題であると考えています。


 そこで、震災対策を計画的に実施するために「総合的な震災対策の推進に向けた基本方針」の策定をいたします。


 この基本方針に基づく事業等を未来戦略推進プランに位置づけることによって、まさに「待ったなし」の首都直下地震に備えるべく、震災対策の強化に向けた取り組みを着実にかつ積極的に進めてまいります。


 さて、豊島区は、昭和7年、1932年10月1日に、現在の区域に誕生しましたので、本年2012年、平成24年は、区制施行80周年に当たります。


 振り返りますと、区長就任後、最初の周年記念である平成14年の70周年は、逼迫した財政状況による閉塞感を打開するため、文化によるまちづくりに取り組みました。その後、文化を施策の中心に据え、翌年の文化創造都市宣言をはじめ、「文化の風薫るまちとしま」の実現に向けた区政を展開した結果、区民のみなさんとの協働による取り組みが評価され、平成21年には「文化芸術創造都市部門」における文化庁長官表彰を受賞するまでに至りました。


 このように、周年ごとに祝う真意は、単なる慶祝の年ではなく、次の10年に向けて、区が取り組む新たなテーマを掲げ、そこに向かって舵を切る、そのターニングポイントとすることであると考えています。


 そこで、当然のことながら平成24年は、区制施行80周年とセーフコミュニティの認証取得を同時に迎えることで、これまで豊島区が取組んできた都市像の集大成としての「安全・安心創造都市」の実現にはずみをつけ、次の90周年へさらに大きな一歩を踏み出していく、そういう契機の年にしていきたいと考えています。


 お力添え賜りますよう、よろしくお願いいたします。


 一方で、ただ今申し上げたような将来の課題を着実に実行していくためには、その推進力として、盤石な財政基盤を構築することが不可欠であります。


 それには、健全な財務体質を維持し、効率的なサービスの提供体制を整えることにより、はじめて成し遂げられるのであり、安定的で持続可能な行財政運営を構築するための重要な要素となるものであります。


 本区では、これまでも、経済状況の変化に対応するため、区民のみなさんのご理解をいただき、ともに痛みを分かち合いながら、行財政改革に取り組んでまいりました。


 しかし、近時の欧州金融市場の混乱、世界経済を牽引してきた中国経済の減速等々、さらには円高や株安による日本企業の業績の落ち込みは、区民のみなさんの生活に、そして区財政にも深刻な影響を及ぼしており、本区の二大財源である特別区民税と特別区財政調整交付金の合計額は、平成24年度では、20年度に比べ約46億円もの減収が予想されます。


 また、年度間の財源調整機能を担う財政調整基金の平成24年度末の残高見込みは34億7,300万円となりますが、これは平成21年度末残高の半分に満たない額であります。したがいまして、このような額の残高では、この先、一般財源歳入の好転が期待できない状況の中で財源不足を、財政調整基金に頼り続けるということは、もはや限界に近づきつつあると考えざるをえません。


 そこで、平成25年度以降の財政を視界に、全ての歳入と歳出について総点検を行うよう指示をしたところであります。


 行政評価制度の充実を図るとともに、事業の一つずつについて無駄や非効率がないかを徹底的に精査し、事業の総点検を行います。


 この総点検によって、歳出総額の抑制と債務の圧縮による将来負担の軽減を図る一方、将来の備えとして各種基金への積み立てを可能な限り行い、将来を支える持続可能な財政基盤の確保に努めてまいる所存であります。


 一方、地域社会や区民のみなさんが必要とするサービスに対するニーズは、今後さらに多様化していきますが、行政のみが主体となってサービスを提供し続けることは財政的に限界があるばかりでなく、多様なニーズに柔軟に対応することにも限界があります。したがって、地域や民間の活力を活用し、こうした方との協働により、最も効率的で効果的な公共サービス提供の仕組みを、築いていくことがますます必要となります。


 昨年12月、日本経済新聞社が全国809自治体を対象に実施した「経営改革度」調査の「市民参加度」の分野で、豊島区は23区では最高位の3位にランキングされました。今後さらに、民間とのパートナーシップによるサービス提供を広げていくためにも、情報の共有、説明責任に対する自覚、政策形成への参加の促進をさらに図ってまいりたいと思います。


2.平成24年度予算案について


 次に、平成24年度予算案について申し上げます。


 一般会計と3つの特別会計を加えた平成24年度の総予算規模は、1,505億9,900万円であり、対前年度比11億8,000万円、0.8%のマイナスとなりました。


 これは、過去最大規模であった平成23年度、そして平成19年度に次ぐ、3番目の規模になるものであります。


 このうち、一般会計予算は、991億9,100万円であり、規模的には、過去10年間では23年度に次ぐ2番目となるものですが、対前年度比37億9,800万円、3.7%のマイナスであります。


 予算規模が縮小した主な理由は、公債費が前年度比29億円と大きく減少するとともに、子ども手当支給経費が11億円減少することによるものです。


 一般会計予算について申し上げますと、まず主な歳入では、特別区民税については、税法改正の増収が見込まれ、対前年度比1億4,900万円、0.6%のプラスとなる241億9,600万円、3年ぶりの対前年度プラス予算を計上しています。


 また、特別区財政調整交付金については、調整3税のうち固定資産税が3年ごとの評価替えの年に当たること、また法人住民税も、引き続く景気低迷により減収が確実視される中にありますが、前年度の実績に基づいて各区別に算定される経費が本区においては2億円余り増加することから、前年度と同額の277億円を計上することができたところであります。


 特別区債は、32億4,000万円を発行します。これは前年度とほぼ同規模ではありますが、予算総額が減となりましたので、起債依存度は、0.1ポイント増加し、3.3%となっています。


 来年度末の特別区債の残高見込みは、今年度末より14億6,300万円減少して、281億円になると見込まれ、平成12年度から連続して約13年間でありますけれども、特別区債残高は減少するものであります。


 次に、歳出ですが、まず経費別区分では、人件費と事業費が減少し、投資的経費は微増となりました。


 人件費の総額は、再任用職員、正規職員がともに減少したことによる給与費の減などにより、対前年度比7億5,200万円、3.5%のマイナスとなる208億200万円であります。


 また、事業費の総額は、生活保護費、特別会計繰出金が合わせて7億2,100万円、対前年度比で増加したものの、区債の元利償還金、子ども手当支給経費が合わせて40億5,200万円減少したことなどにより、対前年度比32億9,300万円、4.7%のマイナスとなる、665億6,200万円を計上いたしました。


 投資的経費は、学校の改築経費、南池袋二丁目A地区市街地再開発事業経費が増加することにより、対前年度比2億4,700万円、2.1%のプラスとなる、118億2,800万円であり、平成22年度以来2年ぶりのプラスの予算となるものです。


 歳出の性質別予算計上の状況については以上のとおりですが、平成24年度予算では、160項目、22億8,000万円に及ぶ新規・拡充事業を盛り込んでおり、昨年の大震災をふまえた防災対策をはじめ、健康対策、待機児対策、教育の充実など、区民のみなさんにとっての喫緊の課題に積極的に取り組むとともに、「安全・安心創造都市」の実現に、より一層の弾みをつけるために、可能な限りの対応をいたしました。


 一方、平成24年度予算編成におきましては、基金の活用や起債発行による財源対策を講じるとともに、最終的な財源不足である18億7,300万円を、財政調整基金を取り崩すことによって、収支のバランスをとっておりますが、先ほど申し上げましたように、財政調整基金の残高は多くありませんので、すべての事業にわたって、聖域なく総点検を行い、これまで以上に厳しい財政状況を乗り切ると同時に、将来に向けて、中長期的に安定した施策の展開を可能とする行財政システムをしっかりと構築してまいりたいと考えております。


3.平成24年度の事業展開について


 次に、平成24年度の事業展開について、申し上げます。


(1)防災、震災対策


 まず、防災、震災対策について申し上げます。


 さる2月3日、東京湾北部を震源とした首都直下地震によって駅周辺に大量の滞留者が発生した場合を想定し、池袋駅をはじめ都内の3大ターミナル駅周辺と湾岸地区で実施する東京都や埼玉県などとの連携による広域的な帰宅困難者対策訓練を本区でも実施しました。


 首都圏全域にわたって広域に発生する帰宅困難者については、縦割りにされた役割分担では、適切な初動対応をすることができないことが、東日本大震災の経験から明らかになりました。


 そこで、都や近隣区のみならず埼玉県とも可能な限り情報を共有し、連携した支援対策ができるよう訓練を行ったのであります。


 池袋での訓練では、池袋駅周辺の集客施設、商店会をはじめ多くの方々に参加をいただきましたが、他のターミナルと異なり、埼玉方面への帰宅者を想定し、メトロポリタンと第一イン両ホテルの協力により、受け入れ訓練をおこなったことが大きな特色でありました。


 この訓練の成果を十分検討し、区が主導して発災時の対応をする「豊島区帰宅困難者対策計画」を着実に具体化してまいります。


 また、震災に強いまちづくりのために、昨年6月に指定された特定緊急輸送道路の沿道建築物について耐震診断費用を全額助成するとともに、補強設計および耐震改修費用を助成します。さらに、倒壊の恐れのあるブロック塀などの撤去および改善工事の助成を引き続き実施するほか、民間住宅の耐震診断および改修に対する助成を拡大いたします。


 また、自助共助力の育成では、地域防災組織に防災器具の購入補助を行うとともに、火災危険度が高い地域内の公園などに簡易水道消火装置を設置します。


 適切な初動対応では、多数の負傷者が発生した場合に対応する医療救護態勢を確立するため、医薬品と資器材などの整備を行うとともに、帰宅困難者の発生に備えた備蓄物資を整えます。


 また、新庁舎建設に合わせ、災害対策本部の決定に従って、情報の統合と伝達を図るために災害情報システムの導入準備に着手します。加えて、昨年9月の訓練で利便性の向上が実証された「り災証明書発行システム」を導入することにいたします。


 さらに、震災により被災した区民のみなさんの生活が、都市機能の分野でいち早く震災前のレベルに戻すことができるよう、復興手順を時系列的にまとめた震災復興マニュアルの生活・産業編を作成してまいります。


 原子力発電所事故にともなう放射能問題に関しては、国における基準などが充分に整理されていないために、区民のみなさんの不安を払拭できない状況が続いています。


 こうした中、区では、学校や保育園などの空間放射線量、また、土壌やプール、給食食材の放射性物質検査を行ってきました。その結果、区内には一定規模の広がりをもつ、いわゆるホットスポットは存在しないこと、また、給食食材などからも放射性物質が検出されていないことが確認されました。しかしながら、雨水などが溜まりやすい箇所などで局所的に比較的に高い値の空間放射線量が測定されるいわゆるマイクロスポットの存在が確認されていました。


 そこで、本年1月から3月にかけて、学校や保育園など84か所で空間放射線量の詳細測定を実施しています。


 また、「豊島区放射性物質対策ガイドライン」で、空間放射線量の詳細な測定や、基準を超える値が測定された場合の除染方法について必要な事項を定めましたので、今後とも施設などの詳細測定を進め、必要な箇所については、適切な除染を行ってまいります。


 いずれにしろ、放射能に対する区民のみなさんの不安を解消する行政の信頼性に的確に応えていく姿勢でこの問題に対応してまいります。


(2)子育て


 次に、子育てについて申し上げます。


 保育需要については、現在、急増期を過ぎたものの、増加傾向が続くと見込まれます。したがいまして、待機児童の解消は、依然として優先的に取り組むべき喫緊の課題であると考えており、区立や私立保育所の改築・改修などの施設整備事業を着実に進めるとともに、当面の待機児童解消のためにも、その他の施策を積極的かつ機動的に展開し、待機児童対策については、保育計画を着実に遂行し、解消に努めてまいります。


 まず、巣鴨第一保育園および要町保育園の両分園の新設、駒込第一保育園の新築に加え、池袋本町臨時保育事業での時限的対策をさらに2年間継続運営する一方、私立の認可保育所であるみのり保育園としいの実保育園の改築事業に補助を行います。


 また、認証保育所2か所の新規開設に対して運営費等の補助を行うとともに、「すくすくルーム」を新規に開設するなど増員を図ってまいります。


 これらの措置により、平成24年度当初には109人の受入枠を拡大します。


 さらに、今回の予算措置によりまして、24年度中にさらに49人、25年度中に40人の定員増を図ることができるものであります。


 また、人口の転出入による流動性が高く、また、核家族化の割合が高いという本区の特性から、親の孤立感や負担感が大きくなっていることが、子どもの虐待や健全な発達に影響することが懸念されています。こうした親の孤立感や負担感を解消していくことが課題となっています。また、親の育児能力が低下していることが指摘もされています。


 そこで、東部子ども家庭支援センターの職員体制の充実や、合わせて西部子ども家庭支援センターの相談室を整備することにより、子どもの虐待や発達に関する相談などに、よりきめ細やかに対応していきます。


 子どもの居場所づくりに関しては、西部地区中高生センター「ジャンプ長崎」と、区立要小学校敷地内に「子どもスキップ要」を開設するほか、区立目白小学校校舎内への「子どもスキップ目白」の開設に向け、準備を進めます。


 すべての子どもが健康でいきいきと育ち、また、親は、安心して子どもを産み育て、子育ての喜びを共有できるように、地域や民間団体等との連携や協働を図りながら、これらの施策を推進してまいります。


(3)健康


 次に、健康について申し上げます。


 健康施策は、区民のみなさんの暮らしと生命を守るという安心戦略の中に、福祉、子育てと並んで重点的に取り組むべき課題であると位置付けています。


 がん検診については、自己負担をお願いしていた検診を無料で受診できることにいたします。また、がんの早期発見ができる大腸がん検診については、受診習慣の第一歩となるよう、一層の受診率向上を図ります。


 また、おたふくかぜワクチンとみずぼうそうワクチンの接種について助成することにいたします。


 さらに、節目に実施している歯周疾患検診を無料とし、歯周疾患の早期発見に努めるほか、出生、転入などによる乳幼児の増加に対応するため、乳幼児健康診査の回数を拡大します。


 これまで23区でも中上位で推移してきた豊島区の自殺率を低下させることは、セーフコミュニティの重点テーマであります。そこで、精神疾患の治療を中断した自殺ハイリスク者や働き盛り世代を医療や専門相談機関につなげることで、自死を減らすことを目的とした自殺うつ予防事業を立ち上げ、マニュアルを作成するほか、普及啓発に努めます。


 保健衛生関係事業について、来年度は総額約1億4千万円の新規拡充予算を措置し、予防接種やがん対策を健康施策の柱として積極的に取り組んでまいります。


(4)教育


 次に、教育について申し上げます。


 本年4月から、昨年の小学校に続いて中学校の新学習指導要領が全面実施となり、学習内容も3割増しとなることから、限られた時間数の中での学力の向上は一層重要な教育課題になってきます。また、教員のICT機器活用能力の向上と次世代の情報教育に対応できる教育環境の整備が求められておりますので、「教育ビジョン2010」の目指す「教育都市としま」の実現に向けて、積極的に教育現場の教育活動を支援したいと考えております。


 さる1月21日、秋田県能代市から須藤幸紀教育長をお招きし、「学力向上シンポジウム」を南池袋小学校体育館で開催したところ、区内の全幼稚園、小・中学校から教職員、保護者、区民など400人余りが参加し、当たり前のことを当たり前にする教育や、学力向上に果たす家庭の役割などについて熱い議論が交わされました。


 平成24年度には、区市間では初めてとなる「教育連携に関する協定」を締結するとともに、教員を相互に派遣するなどの学力向上に向けた取り組みを支援してまいります。


 併せて、本年度モデル事業として4校に導入した学校図書館司書の配置によって、蔵書の整理が進み、図書の貸し出しも1.5倍に増えるなどの成果が確認されたことから、来年度は学校図書館司書を13校に配置します。これにより、児童・生徒の読書力や学力の向上がさらに期待できると思います。また、引き続き電子黒板や実物投影機の増設、ICTの活用などの環境整備の拡充に努力をしてまいります。


 さらに、本区では、不登校児の出現率がなかなか下がらない状況の中で、ケースによっては学校のみでは解決が困難なケースも見られることから、問題を抱える児童・生徒に対し、学校と家庭、関係機関を繋ぎ問題解決を推進する、スクールソーシャルワーカーの導入を図ります。


 つぎに、今後の学校改築でありますが、本年は、西池袋中学校の改築工事が夏に終わり、次に、目白小学校の解体、改築が始まります。目白小学校仮校舎への通学の安全確保には万全な対応ができるよう通学バスの運行などを行ってまいります。


 今後とも、豊島区の学校で教育を受けたい、子どもを育てたいと思う魅力のある「教育都市としま」の実現に向けて、教育委員会と連携を密にしてまいります。


(5)福祉


 次に、福祉について申し上げます。


 福祉については、「すべての人が地域でともに支え合い、心豊かに暮らせるまち」の実現を基本理念に、高齢化の進展などに対応した福祉基盤を整備するとともに、セーフコミュニティの観点から高齢者や障害者の安全・安心の確保に区民のみなさんとの協働により全力で取り組んでまいります。


 その一環としてのコミュニティ・ソーシャル・ワーク事業は、豊島区社会福祉協議会との連携のもとに、地域で活動されている民生・児童委員や町会のみなさんとともに、支援を必要とする人々を、地域の絆で支え合うための事業として、これまで1圏域で展開してきましたが、来年度は、3圏域に拡大し、セーフコミュニティのキーステーションでもあり、区民のみなさんにとって、身近な存在である区民ひろばを拠点として展開してまいります。


 今後は、この事業を本格的に展開し、「区民だれもが必要とする、多様できめ細かい福祉サービスを受けられ、地域の中で孤立することなくつながりをもって生活できる」ようにするための先駆的な地域福祉システムの構築を目指してまいりたいと考えています。


 あわせて、医療・介護・予防・住まい・生活支援などのサービスを切れ目なく、かつ有機的に提供する「地域包括ケアシステム」の実現に向け、介護保険制度の中で24時間対応の「定期巡回・随時対応サービス」の導入を図るほか、千川小跡地および中央図書館跡地での特養ホームの整備にも、できるだけ早い時期に事業者公募の段階へ進めるよう全力を注いでいるところであります。


 また、身体障害者手帳を新規に取得する方に対して、診断書等の費用の一部を助成するとともに、本年10月に障害者虐待防止法が施行されるのに備え、障害者虐待の未然防止や早期発見と迅速な対応などを行うことができる環境の整備をしてまいります。


 さらに、視覚に障害がある方が安全・安心に外出できる環境を整備することで、社会参加の促進を図ることが重要です。このための実証実験として、椎名町駅と心身障害者福祉センター間の歩道にICタグを埋設し、携帯電話の読み上げ機能を使った道案内を実施することとします。


 一方、生活保護受給世帯の増加の伸びは鈍くなってきているものの、今なお増加傾向にあることから、引き続き適切に対応する必要があります。


 とりわけ重要なことは自立支援であります。生活福祉部門の体制を整備するとともに、ハローワークとの一体的な支援体制を構築するなど、着実に取り組んでまいりたいと考えています。


(6)新庁舎等の整備


 次に、新庁舎等の整備について申し上げます。


 日本経済新聞社が全国809市区を対象に調査をしたところ、全体の2割にあたる151市区で庁舎建て替えの計画が進められているとの結果が、先日、「日経グローカル誌」に掲載されました。その中で、豊島区の新庁舎は、建築手法の面のみでなく、エコ照明、雨水利用の水循環システム、自然排気、自然採光のほか、緑化テラスにより回遊しながら自然学習ができるなどの環境対策を重視することで、市民が集い・楽しむ施設となっているとして注目され、大きく取り上げられております。


 新庁舎は、区民サービスを飛躍的に向上させる区民自治の拠点としての機能、そして、発生が懸念される首都直下地震時にあっては、揺るぎない防災拠点としての機能を果たしていかなければなりません。防災性能を高めることに加えて、自然エネルギーの利用を積極的に取り入れた環境庁舎としての側面も重視することで、防災都市、環境都市、そして文化都市のシンボル庁舎として、次の世代に引き継いでいきたいと考えています。


 2月2日、庁舎が入る市街地再開発事業の建物起工式が執り行われ、いよいよ新庁舎の新築工事が着手されました。今後は、27年の移転に向け、新庁舎室内プランの具体化に取り組むとともに、再開発建物の管理運営計画の策定、現庁舎地資産活用の準備作業のほか、移転プロジェクトの具体化について検討を始めてまいります。


 あわせて、豊島区の自然の生態および植物の環境調査を実施し新庁舎の緑化計画に反映させてまいります。


 また、仮称西部地域複合施設については、地元のみなさんともきめ細かに調整しつつ、基本設計に次ぐ実施設計を行いながら、解体工事に着手してまいります。


 敷地北側の緑が豊かな粟島神社側と南側の千早公園を自由に通り抜けられる建物内のフォーラムでつなぐことで、地域の交流や活動を活発にするとともに、地域防災の拠点としての機能も充実させた地域のシンボルとなるような親しみの持てる建物にしたいと考えています。


 加えて、西部複合施設で新庁舎と同様のサービスを提供することができるようにするなど、区民のみなさんにとって身近な地域における行政サービス機能の充実についても検討を進めてまいります。


 また、併設する芸術文化資料館の開館に向け、豊島区にゆかりのある文学・マンガ分野に関する資料の収集、修復などを行います。さらに、本区の歴史文化にゆかりのある方々への取材に基づく資料映像の作成とともに、美術作品や郷土資料などの整理、データベース化にとりかかってまいります。


(7)文化・産業振興


 次に、文化政策と産業振興について申し上げます。


 「文化政策」の分野では、地域の総合力を結集して、あらゆる政策にわたり文化活動を進め、文化の力で街のイメージを大きく変えるような取り組みを引き続いて展開してまいります。


 来年度は、区制施行80周年、さらには資生堂名誉会長福原義春氏を座長とする豊島区文化政策懇話会からの提言を受け、文化政策に取り組みはじめ、10年となることから、文化創造都市推進シンポジウムを開催するなど、これまでの取り組みを検証しながら先進的な文化活動をより進展させてまいります。


 また、雑司が谷旧宣教師館の事務所棟が老朽化したための建て替え工事を行います。期間中、本館は休館となるため、ご迷惑をおかけすることになりますが、合わせて、北側道路の狭隘拡幅工事、野外消火設備の改修などを行うものであります。


 一方で、不況が長引く中、消費不振による価格の引き下げなどの影響が中小企業、商店街に大きくのしかかっています。今後とも、中小企業並びに商店街施策の積極的な展開により、地域経済の基盤強化に取り組んでまいります。


 景気の先行きが不透明な中、中小企業の資金繰りを支援するために緊急の経済対策として拡充してまいりました小規模零細企業者を対象とする利子補給や、信用保証料に関する補助を来年度においても継続いたします。


 また、商店街連合会主催の商人まつりの事業補助を増額するとともに、産業振興計画の策定に向けた区内産業と商店街における小売り活動に関する基礎資料を作成し課題を整理することとします。


 このように様々な角度から、地域ぐるみで区内産業の活性化を推進してまいります。


(8)まちづくり


 最後に、まちづくりについて申し上げます。


 池袋副都心の個性ある都市再生を推進するとともに、魅力ある地域拠点を整備するために、新たな価値を加えつつ、段階的にまちづくりを展開してまいります。


 池袋で進めてきたこれまでの様々なまちづくりに引き続き、平成24年度では、次の段階として、平成18年に都市計画決定をしている池袋駅・主要街路沿道エリア地区計画の区域を拡大し、既存建築物の建替えを促進する新たなルールづくりについての調査検討を進めてまいります。また、池袋を訪れる来街者の回遊性を確保するとともに、歩行者の利便性の向上を図るために、整備計画案をとりまとめ、事業化に向けた検討を進めます。さらに、バリアフリー基本構想に基づき、駅地下通路などのバリアフリー化を整備するための事業調整を合わせて行ってまいります。


 一方、大塚駅では、南北自由通路の完成に続き、駅から街へとつながる歩行者優先の街づくりを展開します。南口では駅ビルの工事が始まるとともに、地下自転車駐車場整備計画と連携して、バス・バースやタクシー・プールの再編など南口駅前広場整備に着手します。


 椎名町駅では、昨年10月に駅舎と、地域の文化資産を紹介した自由通路の一部を開設し、駅利用者等の利便性が大きく向上するとともに、駅から地域情報を発信するまちづくりを展開します。本年6月には自由通路が完成するとともに、平成24年度内には、駅前広場と椎名橋(ばし)下の広場が完成する予定となっております。


 巣鴨地域では、まちづくり活動が活発に展開されてきましたが、巣鴨地蔵通りを主とした地区の将来像と公共施設整備の方針、民間事業の在り方等について、検討を進め、地元との合意形成を図っていきたいと考えています。


 一昨日、目白駅前の開発を手掛けるNTT都市開発にお伺いし、目白小学校と同時に完成する計画中のビルは、沿道の緑化や地域が誇れるコミュニティ道路と連続性のあるものにするとともに、目白の雰囲気にふさわしい商業施設の誘致を検討しており、目白ブランドの向上に貢献したいとの三ツ村社長さんのお考えを伺うことができました。


 先ほどらい、地域のまちづくりについていろいろお話をしてまいりましたが、これら各地域のまちづくりの動きと連動し、新庁舎、西部地域複合施設、南長崎中央公園、二つの特別養護老人ホーム、補助173号線等々の施設が、区制施行80周年を契機に一層はずみをつけ、平成26年度には、いずれも完成期を向かえます。


 また、豊島区が、セーフコミュニティの認証取得をはじめ、施策の集大成としての安全・安心創造都市の実現に向けて、まさに官民一体となって取り組んでいることについて、かつてない注目を集めています。


 今こそ、これらの動きと、区が有する文化資源等を有機的に連携させることにより、区民のみなさんが誇りに思えるまち、誰もが訪れたいまちとしての本区のブランド力を高める千載一遇の機会であると考えます。


 そうした中で、パブリシティやプロモーション面での政策発信力を強化することにより、シティプロモーションを推進することは、政策効果を最大限に高める上で必要不可欠なものです。この度、シティプロモーション担当課長を外部から登用することにいたしましたが、民間企業等で培われた知識と経験を活用することにより、より一層大きな成果を得られるものと期待しています。


 「悲観主義者は、どんな好機にも難点を見つける。楽観主義者は、どんな困難にも好機を見つける。」とウインストン・チャーチルは言いました。


 社会経済のさきゆきに閉塞感が漂っているから、不透明感が深まっているからと、萎縮するだけでは、自ら好機を逸することになります。


 成長を前提に、拡大を旨とした経営が崩壊してから、はや20年が経過しようとしています。わずかな機会を逃すことなく、確実なものとしていかなければなりません。


 さらなる成長の可能性を持つ都市である豊島区が持つ大きな可能性を伸ばし、次世代の子供たちに、引き継いでいくことが私たちの使命であります。


 あらゆる課題を想定し、知恵を振り絞って打開の道を探すことが、私たちに課された区民のみなさんの信託に応えることであります。


 重ねて、区制施行80年を機に、この想いを確認し深く胸に抱きながら、区政運営にまい進してまいりたいと考えています。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例18件、予算5件、その他3件、合わせて26件であります。


 各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつ及び所信表明といたします。