平成26年第3回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成26年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、ご出席を賜わりまして深く感謝申し上げます。


 先月、およそ70年ぶりに国内でデング熱の感染が確認されましたが、その後、感染場所として推定された代々木公園周辺を中心に感染が全国に広がり、9月18日現在で133人の感染者が確認されております。


 現時点では、豊島区内での感染者や、ウィルスに感染している蚊の確認はありませんが、対応が後手に回らないよう、私は9月7日(日曜日)に「豊島区デング熱対策本部」を立ち上げ、翌8日にも第2回本部会議を開催して、本区における緊急対策を講じました。


 その内容は、相談窓口を設置して、区民の皆さんからの問合せに万全を期すとともに、区内全ての公園・児童遊園160か所に、蚊に刺されないよう注意を呼びかける張り紙を本部会議の当日中に行なったほか、蚊の発生源を断つ対策などについての分かりやすいチラシを作成し、区公式ホームページや区政連絡会などを通じて、区民の皆さんに周知徹底する広報活動を行うことにしたところであります。


 デング熱は、ウィルスに感染している蚊に刺されない限りうつらない病気で、人から人に直接的に感染することはありません。


 いずれにせよ、区は、今後とも対策本部での情報収集や対策の推進に努め、最新の情報を随時提供し、区民の皆さんの不安解消に努めてまいります。


1 平成25年度決算


 それでは、初めに平成25年度各会計決算のうち、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。


 平成25年度の一般会計歳入歳出決算額は、歳入が1,047億8,100万円で、収入率は96.6%、歳出は1,020億7,600万円で執行率は94.1%となっております。


 前年度と比較いたしますと、歳入は4億3,900万円の減で0.4%のマイナス、歳出は8,400万円の増で0.1%のプラスであります。


 歳入決算額から歳出決算額を引いた“形式収支”は27億500万円となり、形式収支から翌年度への繰越額4,900万円を差し引いた“実質収支”は、26億5,600万円の黒字で3年連続で前年度実質収支額を上回っております。


 次に、主な歳入について申し上げます。


 特別区税は、特別区民税のほか、特別区たばこ税、軽自動車税と狭小住戸集合住宅税の全ての税目で、前年度より収入済額が伸びており、対前年度比15億3,400万円、5.4%のプラスとなり、このうち特別区民税の増収額は9億7,800万円であります。


 特別区交付金も、3億4,500万円、1.2%のプラスとなりましたが、これは、原資となる市町村民税法人分が大手企業の業績回復による増収が寄与したものであります。


 これら二大財源、特別区税と特別区交付金の収入済額は、合わせて590億9,700万円となり、歳入決算額の56.4%を占めております。


 繰入金の決算額は47億6,300万円で、前年度との比較では6億7,900万円、12.5%のマイナスとなりました。これは、将来に備えるための積立基金の内部留保に努めた結果であります。


 特別区債は、3億1,000万円の発行となり、前年度と比較して24億6,500万円、88.8%の大幅なマイナスとなりました。これは、将来負う債務を極力小さくすることは極めて重要な財政規律の一つでありますので、発行額を最小限に抑えることとした結果、「平成」となった以降の決算において最も少ない発行額となったものであります。


 次に、歳出の状況について、歳出の性質的区分で申し上げます。


 まず、義務的経費の決算額は514億2,900万円で、前年度との比較では12億6,700万円、2.4%のマイナス、歳出決算額全体に占める割合は50.4%となりました。


 その内訳ですが、まず、人件費については、職員給与費の減などにより、4億800万円、2.0%のマイナスとなり、公債費についても、10億4,000万円、18.8%のマイナスとなっております。


 一方、扶助費は、1億8,200万円、0.7%のプラスとなりました。生活保護費は微減となったものの、障害者自立支援給付費などが増加の要因となったものであります。


 投資的経費については、歳出決算額は125億4,100万円となり、前年度との比較では6億8,700万円、5.2%のマイナス、決算額の全体に占める割合は12.3%となっております。また、歳出決算額がマイナスとなりましたのは、南長崎中央公園整備事業や西池袋中学校改築事業が終了したことなどが主な要因であります。


 一般行政経費については、決算額が381億600万円で、前年度との比較では20億3,800万円、5.7%のプラス、構成比は37.3%となりました。これは、基金への積立金が大幅な増となったことなどによるものであります。


 次に、主な財政指標について申し上げます。


 まず、「健全化判断比率」でありますが、「実質公債費比率」については、起債発行の抑制に努めてきたことなどにより、健全化基準を大きく下回る1.9%となり、前年度から1.7ポイントと6年連続しての改善となりました。


 さらに、将来見込まれる実質的な財政負担、ストックの状況を表す「将来負担比率」については、早期健全化基準値がプラスの350%に対しマイナス75.9%となり、これも前年度より11.1ポイント改善いたしました。また、その他の健全化判断比率である「連結実質赤字比率」、「実質赤字比率」についても、早期健全化基準を大きく下回っているものであります。


 さらに、財政構造の弾力性を示す「経常収支比率」につきましては、景気回復に伴う特別区税や特別区交付金などの増収と、人件費や公債費などの縮減により、前年度から2.4ポイント改善して適正水準といわれる80%内の79.8%となり、23区の平均値82.8%を下回り、23区中第6位という好結果となりました。


 次に、基金残高と起債残高について申し上げます。


 25年度末の基金残高は、これまで積極的かつ計画的に積み増しを行ってきた結果、総額で235億7,100万円となり、このうち財政調整基金は、当面の目標としておりました100億円の大台を超え、101億7,900万円となりました。


 一方、起債残高については、これまでの計画的償還と発行抑制効果により、25年度末では217億4,800万円にまで縮減し、土地開発公社の長期債務を含めると債務残高がピークであった平成11年度の872億円から、この14年間でその約4分の1にまで減少させることができました。


 こうした結果、25年度における基金残高と起債残高は、平成2年度以来23年ぶりに、基金残高が起債残高を18億2,300万円上回る、快挙ともいうべき決算状況となりました。


 このほかの比率では、人件費比率が19.7%にまで改善して、初めて20%を下回りました。公債費比率も7.4%と着実に改善しております。


 このように、平成25年度決算は、申し分のない結果となっておりまして、まさに私が目標としてきた、理想的な財政構造が現実のものになりつつあると実感しております。これまで努力に努力を積み重ねてきた行財政改革の成果が実を結び、本区の財政構造は着実に改善しております。そして、豊島区の明るい未来に向けた盤石な財政基盤をさらに構築しつつあると認識しているところであります。


 ただし、油断は禁物であります。これまでの財政再建の成果に決して甘んじることなく、また、景気の回復に対しても決して気を緩めることなく、今後も引き続き、私が先頭に立って、区民ニーズを適確に把握しつつ、安定的で持続可能な財政運営の実現に全力で取り組んでまいる所存であります。


2 新庁舎整備


 次に、新庁舎整備について申し上げます。


 去る9月12日、いよいよ完成後の姿が見えてきた新庁舎について、その最先端を行くであろう建設の技術と開庁後の姿を、広く区民の皆さんにお知らせする「新庁舎整備報告会」を開催したところであります。区議会の皆様にもお忙しい中、積極的にご参加いただきました。改めて御礼申し上げます。


 当日は、総勢1,500人にも上る区民の皆さんにご参加いただき、公会堂は1階席、2階席ともに満席で、立ち見をしている方も大勢おられ、まさに立錐の余地もない様子でありました。また、同時中継を行っていた区民センターの文化ホール、音楽室も満席となり、一部の職員には引き取ってもらわざるを得ないほどの出席者の多さでありました。皆さんの新庁舎への関心と期待の強さを改めて再確認したところであります。


 報告会の冒頭では、公募した1階多目的スペースの審査結果で決定した「としまセンタースクエア」の名称発表と、最優秀賞の高南小学校1年生の受川奈央さんほか、優秀賞を受賞された5名の区民の皆さんを表彰させていただきました。


 最優秀賞の受川さんは、「ここが豊島区の中心になり、たくさんの人が集まる場になってほしい、という願いを込めてこの名称を考えた」と感動的な、うれしいスピーチをしてくださいました。


 その後は、日本を代表する建築家であり、新庁舎のデザインを監修していただいた、本区の都市政策顧問である隈研吾氏による講演会、続いて隈氏、ランドスケープアーキテクトの平賀氏、建設施工会社会長の六鹿氏によるトークショー、DVDによる新庁舎の紹介など、2時間という長丁場にもかかわらず、会場全体が惹きこまれて、あっという間に時間が過ぎ、多くの方々と感動を共にすることができた充実した説明会でありました。


 最高レベルの行政サービス、防災と安全・安心の拠点、文化の拠点、環境の拠点という、これまでの役所のイメージを一新する新庁舎について紹介させていただく機会を得て、来年3月23日の落成式、5月7日の開庁に向けて、いよいよカウントダウンが始まったという実感を強く抱きました。


 80年を超える豊島区の歴史の大きな転換点であり、区の未来を切り開く新庁舎のオープンに向けて、最大限の力を注いで万全の準備を整えていく決意を新たにしております。


3 文化・にぎわい


 次に、文化・にぎわいについて申し上げます。


 来年6月、オープン直後の新庁舎「まるごとミュージアム」を活用し、「アートオリンピア2015」が開催されることとなりました。無名ながら才能ある新人アーティストを国内外で発掘し支援する、ビエンナーレ方式の(これは隔年実施という意味でありますが)国際公募展の記念すべき第1回目が、本区の新庁舎で開催されるのであります。


 去る9月4日、アートオリンピア実行委員会と本区との間で、区は“としまセンタースクエア”、“回廊美術館”、“議場”を会場として無償で提供し、開催経費は実行委員会が負担する旨の開催協定を締結いたしました。共同記者会見を通じてマスコミでも大きく取り上げられたところですが、アートオリンピア実行委員会は、東京、ニューヨーク、パリに拠点を置いて世界各地から作品を公募し、そのうちから240人を表彰し、賞金総額は5,000万円に上る、大変スケールの大きな美術展であります。3つの拠点での審査を通過した優秀作品が新庁舎に集められ、来年6月10日には、そうそうたる審査員によって“議場”において最終審査が行われ、13日から28日まで新庁舎を舞台として展覧会が開催されることになっております。


 まさに、国際アート・カルチャー都市として、文化芸術創造都市にさらに磨きをかけていこうとしている豊島区にふさわしいビッグイベントであります。まるごとミュージアムのこけら落としでもありますので、ぜひとも大成功させ、“アート・カルチャー都市としま”の名前を世界に響かせてまいりたいと考えております。


 さて、いよいよ本日、中池袋公園に面した新築ビル「WACCA」がオープンいたしました。


 午前中のテープカットに参加してまいりましたが、若い女性をターゲットにしたおしゃれな拠点がまた一つ池袋に誕生し、つい先日、WACCA近くにオープンした外国人や若い女性の利用が見込まれる「センチュリオンホテル池袋」の誕生とも相まって、街の風景が爽やかで明るい雰囲気に変わったと感じております。区としても、これら建物のオープンに合わせて、中池袋公園の喫煙スペースの設置や公衆トイレの改装に着手し、来街者にとってより快適に過ごしやすい空間づくりを進めているところであります。


 また、このところ、アニメ関連ショップなどの池袋進出が相次いでおります。


 10月3日には、人気アニメ「エヴァンゲリオン」のオフィシャルストアが、原宿から池袋に移転してオープンいたします。さらに、10月25日には株式会社ドワンゴのアンテナショップ「ニコニコ本社」も原宿から池袋に移転してまいります。いずれも、池袋駅東口「P’パルコ」に移転するものでありますが、池袋にファッションやアニメ、デジタルカルチャーをキーワードとした、新たなサブカルチャースポットが誕生いたします。


 ニコニコ本社のオープン当日には、アニメイト、サンシャイン60、豊島区商店街連合会、豊島区観光協会などが連携したハロウィン・コスプレイベントを開催し、地域を挙げて大いに盛り上げていく予定とのことであります。


 本年12月には、浜松町にある「ポケモンセンタートウキョウ」が池袋に移転して来るとも聞いておりまして、池袋は、今や、アニメ・エンターテイメント産業の集積地として大きく注目される一大拠点となりつつあると感じており、大変うれしいことであります。


 雑司が谷では、去る8月19日、雑司が谷歴史と文化のまちづくり懇談会が行われ、日本ユネスコ協会連盟による「未来遺産」の登録に、雑司が谷の皆さんがチャレンジすることが決まりました。


 未来遺産とは、未来に向けて文化や自然を守り、検証していく市民の活動を登録し、支援する日本ユネスコ協会連盟のプロジェクトでありまして、今年で6回目の募集となっております。


 すすきみみずく保存会、雑司が谷七福神の会、雑司が谷案内処の“としま案内人雑司が谷”など、地域で活動している皆さんによる申請手続きはすでに終わっており、12月の最終選考結果を待つばかりであります。ぜひ、登録が正式決定するよう吉報を心待ちにしております。


 今年は、日本を代表するマンガ家のひとりである横山光輝さんが生誕80周年を迎える年で、没後10年ともなる節目の年です。そこで、横山光輝さんの作品と人物を紹介する展覧会を、10月1日から東京芸術劇場において開催いたします。


 横山光輝さんの作品に関する版権を管理する光プロダクションの協力のもと、初公開となる複製原画・原稿51点の展示を中心に、主な作品の紹介と、昭和から平成へとマンガ文化を支えてきたマンガ家横山光輝の人物像に迫ってまいります。


 また、秋の池袋の恒例行事となっている「ふくろ祭り」は、近時延べ120万人もの観光客が詰めかける、都内屈指の祭りに成長しております。前半の27日と28日に開催される「神輿の祭典」では神輿30基あまりが参加する大パレードが行われます。


 後半は、10月11・12日の両日で、第15回の「東京よさこいin池袋」が行われ、今年は、過去最大規模の111チーム約5,000人の踊り手が自慢の踊りを披露してくれます。


 今回は、第1回から今年の第15回まで、「東京よさこい」に連続で参加している4チームに、ふくろ祭り協議会から特別表彰が行われます。


 同時に開催する池袋西口公園での「友好都市観光物産展」には、最多の28自治体が参加すると聞いております。


 そして、未来遺産の登録に挑戦している雑司が谷では、10月16日から18日にかけて、江戸時代からの伝統が続く「御会式」が開催されます。高張提灯の周りに、500もの桜の花飾りをしだれ柳の枝のように取り付けた“万燈”が連なって、講中の皆さんが纏を振り、独特のリズムで太鼓を打ちながら、華やかに練り歩くさまは誠に壮麗であり、雑司が谷鬼子母神の秋の風物詩となっています。


 ことに、最終日の18日は、各地から遠征してくる講中も含めて54の講中が、池袋から明治通り、目白通りを経て鬼子母神堂まで練り歩き、大変な盛り上がりを見せてくれます。先ほどお話しした未来遺産の登録に弾みをつけるためにも、今年はひときわ多くの皆さんに見ていただきたいと思っております。


4 持続発展都市


 次に、持続発展都市推進本部について申し上げます。


 5月に日本創成会議による消滅可能性都市の発表があって以来、「消滅可能性都市緊急対策本部」において3か月にわたって対策の検討・実施に取り組んでまいりました。“女性にやさしいまちづくり”、“地方との共生”、“日本の推進力となる”を3本柱として対応策を整理したところで、8月28日、緊急対策本部から「持続発展都市推進本部」に移行いたしました。


 今後、人口減少社会、超高齢社会の到来などを真正面からとらえて、全庁体制で本格的な対策の推進に取り組んでまいります。


 まず、その具体策の一つ鬼子母神プロジェクト4つの進捗について申し上げます。


 「女性にやさしいまちづくり」に向けて、F1世代を中心とする若い世代の意見やニーズを掘り起こす場として、まず「としまF1会議」を立ち上げました。12月までに、月1回程度会議が開催されますが、会議の意見・提言を27年度の新規拡充事業に反映させたいと考えております。


 2つ目のスマートフォン、携帯などを活用した「としま見る知るモバイル」の配信は9月1日から、また母子手帳の別冊としては「としま育児サポート手帳」の配布をスタートいたしました。


 “見る知るモバイル”は、お子さんの誕生日を登録すると、予防接種の事前通知、健診やイベント案内をお届けします。そのほか結婚、妊娠前、妊娠中の女性が知っておきたい情報を積極的に掲載し、掲載情報について匿名でメール相談もできます。


 3つ目の“育児サポート手帳”は、お子さんの健やかな成長と安心子育てを支援するための手帳で、結婚・妊娠・子育てのサポートが切れ目なくつながるツールとしてご活用いただきたいと考えております。


 また、4つ目の女性のライフプラン形成のための健康相談では、9月3日から毎月第一水曜日に、健康で自分らしい生き方や、安心な妊娠・出産・子育てをサポートする女性の総合相談を開始しました。産婦人科の医師、助産師、保健師などが個別相談に応じ、女性のからだのメンテナンス体操も行ないます。


 10月11日には生活産業プラザにおいて「妊孕力セミナー」を開催いたします。妊孕力、即ち“妊娠する力”は、女性・男性のどちらにも関わるテーマであり、人口問題対策としても関心が集まっています。性別にかかわらず、また幅広い世代の皆さんの参加をお待ちしております。


 こうした各種の施策を、9月9日、10日にサンシャインシティで開催された「リトル・ママフェスタ」で、子育て中の親子に楽しんでいただきながら情報発信いたしました。今後も、積極的に情報発信してまいります。


 次にリノベーションまちづくりについて申し上げます。


 住みたい、暮らしやすい街となるためには、良質な住宅の供給が不可欠であります。


 近年、豊島区はファミリー向けの良質で手ごろなマンションの供給が進み、池袋が住みたいまちランキングで上位に入るなど、人気が高まっております。


 その一方で、区内には2万戸を超える空き家・空き住戸が存在しており、街の美観や安全・安心の確保、治安対策などの面から問題となっております。


 そこで、本区は、北九州市で成功を収めている、中古物件を改修して新しく魅力的な物件に生まれ変わらせる「リノベーションまちづくり」に注目いたしました。新築や改築に比べて、短期間で、かつ経費を抑えて中古物件を再生させることができるため、家賃も比較的安価に抑えることができます。すでに、区内でいわゆる“DIY賃貸”“カスタマイズ賃貸”という取り組みにより大成功を収めているマンションがありまして、空室もあった中古マンションが、今や、自分好みの部屋に住みたいと考えるクリエイティブな若者たちの間で人気を集めて満室となり、さらに150人もの人が順番待ちしていると聞いております。本定例会に補正予算を提案しているところでありますが、都内で初めてとなる「リノベーションスクール」を年度内に開催し、区内において成果を上げていきたいと考えております。


 空き家対策は、同じく空き家問題に直面している地方の自治体とも共通の課題でありますので、交流自治体に対して本区のスクールへの参加を呼び掛けることは、地方との共生にもつながっていくものとも考えており、お誘いをしたいと考えています。


 新築物件には手が出ないけれども、交通至便で魅力に溢れる豊島区で、自分好みの物件に住みたいと考える若者たちと、何とか空き物件を解消し、街の賑わいを取り戻したいオーナーとを結びつける仕組みづくりを、この「リノベーションまちづくり事業」で積極的に進めてまいります。


 次に、国際アート・カルチャー都市について申し上げます。


 豊島区は、日本全体の推進力となる世界に向けての魅力を発信し、人や産業を惹きつける「国際アート・カルチャー都市」を目指して、これまで推進してきた文化創造都市づくりをさらにスケールアップさせた街づくりを推進していこうとしております。


 そのため、日本のアート・カルチャーシーンを最先端でリードする方々に「国際アート・カルチャー都市プロデューサー」として就任していただき、行政には無い豊かで自由な発想を生かして都市構想についてアドバイスを受けながら、世界に誇れる都市構想を策定していきたいと考えております。


 この国際アート・カルチャー都市プロデューサーにつきましては、近いうちに正式発表できるよう、現在、鋭意調整中であります。


 また、具体的な方向性として、手始めに国家戦略特区による規制緩和初期メニューの「エリアマネジメントの民間開放(道路占用基準の緩和)」を活用し、池袋駅東口の顔ともいえるグリーン大通りの歩道において、オープンカフェを実施し、新たな賑わいの創出と魅力の向上を図ってまいります。サンシャイン60通りに集中している賑わいを池袋駅東口全体に面的に広げる取り組みを進めるべく、現在、地元の町会、商店会をはじめ、まちづくり団体や沿道の事業者のみなさんのご協力をいただきながら、実施に向けて協議を進めております。


 来春、新庁舎がオープンいたしますが、池袋東口からグリーン大通りを歩いて来られる方々が、庁舎だけではなく、街並みまで変わったと実感していただけるような開放的なオープンカフェを実現いたします。


 さらに、今後、区全域において、電柱のないまちづくりを検討してまいります。


5 安全・安心


 次に、安全・安心に関連して、危険ドラッグ対策について申し上げます。


 去る6月24日、池袋西口駅前繁華街において危険ドラッグが原因の暴走車による死傷事故が発生いたしました。私は、このことを重く受け止め、7月4日には区議会の議決をいただいて「違法ドラッグ・脱法ドラッグ撲滅都市宣言」を行い、翌5日、池袋駅前で1,000人を超える区民の皆さんと共に、「撲滅!区民の集い」を開催したところであります。


 また、8月5日に厚生労働大臣、同22日には東京都知事に対して要請行動を行い、大臣・都知事から危険ドラッグ撲滅に向けて全面的な支援を約束していただきました。特に、当時の田村厚生労働大臣には、池袋を含めた都市部の販売店ゼロを目指すと強い決意を表明していただきました。


 こうした中、区といたしましても、保健所職員が、厚生労働省、東京都、警視庁と合同で、危険ドラッグ販売店への立入調査・指導を行い、一方で、8月26日には、危険ドラッグの危険性を周知する「薬物問題を考える」と題した特別講演会を催し、積極的な啓発活動を行っているところであります。


 こうした、本区の迅速かつ厳正な対応は、日本国中の危険ドラッグ撲滅に向けた世論を喚起するきっかけとなり、危険ドラッグ撲滅に向けた世論形成に多大な貢献をしたものと確信しております。今後も、WHOセーフコミュニティ国際認証都市として、区独自条例を制定するなど、最終的には区内すべての危険ドラッグ販売店を撤退に追い込むべく、総力を挙げて取り組んでまいります。


6 福祉


 次に、福祉について申し上げます。


 まず、生活困窮者への支援についてですが、生活福祉課では、“無料職業紹介事業所”の届出を済ませ、今年7月からサービス提供を開始しております。この届出により、ハローワークに登録していない新規求人の開拓、求職者とのマッチング、面接等の支援、いったん就職した人への定着支援など、これまで以上に踏み込んだ有効な対策を進めているところであります。


 また、9月からは、ハローワークが有する求人情報の一部をオンラインサービスで利用することができるようになり、生活保護受給者の方に対して就労支援員が豊富な求人情報を庁内で即時に提供することができるようになりました。この情報を利用し、ハローワークの支援員と連携することで、求職者の状況に即した就労支援の充実を図ってまいります。


 さらに、10月8日、豊島区、東京労働局、池袋公共職業安定所が連携して雇用と福祉の一体的支援を目指す「ワークステップとしま」を生活福祉課内に開設いたします。生活保護受給者、住宅支援給付受給者、児童扶養手当受給者、生活困窮者自立促進モデル事業支援者及びその相談段階にある方を対象に、各課担当者及び池袋ハローワーク就職支援ナビゲーターが連携し、きめ細かな就労支援を実施いたします。


 日本全体の経済状況は好転しているとはいえ、安定した収入を確保する就労への道はまだまだ厳しく、こうしたきめ細かな支援は重要であると考えております。


 新たなサービスを活かしながら、各担当において対象者の方に寄り添い、時には厳しく指導し、そして連携を取りながら隙間のない支援をすることで就労者の数は間違いなく、大きく伸びるものと考えております。


 次に、生活困窮者自立促進支援モデル事業の状況について申し上げます。


 先の定例会でも触れましたが、6月末から社会福祉協議会に委託して、生活にさまざまな不安や悩みを抱えている方に対する総合相談「くらしと仕事の相談」を開始いたしました。この2か月あまりで約30名の方々が相談に見えており、就労支援や家計管理支援など、それぞれの方に適した様々な支援を関係機関と連携して実施しているところであります。


 報道によれば、未だ3割ほどの自治体が制度の担当部署すら決まらない状況で、全国的に準備が進んでいない中、制度施行まで半年余りとなり、他に先駆け準備を行っている本区には多くの問い合わせや視察が入っております。


 本区のモデル事業が他の自治体の模範といわれるよう、今後とも困窮者の皆さまの支援に全力で取り組んでまいります。


 次に、自立支援センター「(仮称)豊島寮」の設置に伴う地域連絡協議会の立ち上げについて、申し上げます。


 自立支援センターは、東京都と23区の共同事業でありまして、仕事と住居を失った就労意欲のある方に対して、最長6ヶ月間にわたり就労自立に向けた支援を行う施設であります。23区を5つのブロックに分け、ブロックごとに各区が5年間の期間限定の持ち回りで設置することとされております。


 本区においては、東京都の倉庫跡地を事業用地として決定し、7月に地域住民の皆さんへの説明会を実施いたしました。今後、平成27年9月から建設を開始し、平成28年3月に開設、33年3月まで設置する予定となっております。


 今後は、10月に地域の代表者、東京都、豊島区、特別区人事・厚生事務組合で構成する地域連絡協議会を立ち上げ、解体・建設工事に関わること及び施設についてのご意見、ご要望を聞かせていただきながら設置準備を着実に進めてまいります。


7 教育


 次に、教育について申し上げます。


 まず、今定例会に上程しております「豊島区いじめ防止対策推進条例」について申し上げます。


 先の第二回定例会で、条例の素案をご報告いたしましたが、その後、パブリックコメントをいただき、教育委員会事務局が関係団体や地域に出向いて本条例の趣旨を説明してまいりました。その結果、いじめを深刻な問題として受け止めている区民の皆さんが大変多いこと、条例制定のプロセスで60件近くのご意見をいただいたと、報告を受けております。


 「いじめは、しない、させない、許さない」という区民の総意を共有し、いじめ根絶に向けた学校や教育委員会の取組を支援して参ります。


 次に、能代市との教育連携など、本区の学力向上施策について申し上げます。


 去る8月20日、教育委員会は第3回豊島教育フォーラム「学力向上サミット『学力日本一への挑戦!』」を開催し、豊島公会堂に700名を超える全教員とPTA代表が集いました。今年は、学力日本一の秋田県能代市から須藤教育長をはじめ17名の教員派遣団、学力第二位の福井県から教育研究所・牧田調査研究部長をはじめ3人の先生方が参加し、盛大な共同開催となりました。


 第一部では、本区池袋中学校の牧野先生の指導の下、同校2年生13人が舞台上で理科の提案授業を行い、能代市及び福井県からは、映像を使って先進的な授業事例が紹介されました。第二部のシンポジウムでは、「学力の二極化にどう対応するか」をテーマに、三田教育長、須藤教育長、牧田部長などによる熱い討論が交わされました。


 私は、能代市との教育連携が着実に成果を上げ、全国に優れた取組みを発信している「としま教育フォーラム」の充実ぶりを、大変嬉しく思っております。教育は、優れた教師と子どもたちとの深い信頼があってこそ実現するものであり、今後も、優れた教育実践が数多く生まれることを、心から期待しております。


 また、8月25日、本年4月に小学校6年生と中学校3年生を対象に実施した、平成26年度「全国学力・学習状況調査」の結果を、文部科学省が公表いたしました。


 豊島区はいずれの学年、教科においても全国の平均を上回る好成績を上げることができました。学校によっては、全国一の秋田県の平均点を上回るところもあり、区独自の学力調査の実施や放課後チューター制度、授業改善推進プランの作成など、学力向上策が着実に成果となって実を結んでおります。


 次に、この夏の、豊島区の児童・生徒の活躍ぶりについて申し上げます。


 まず、全国中学校水泳競技大会において、駒込中学校が女子400メートルメドレーリレーで第3位、女子団体総合でも第3位と、素晴らしい活躍をいたしました。このほか、全日本中学校陸上競技選手権大会で千登世橋中学校が、関東中学校卓球大会で池袋中学校がそれぞれ好成績をあげ、豊島区の名前を全国にとどろかせてくれました。


 また、去る7月13日に行われた第64回「社会を明るくする運動『区民のつどい』」における作文コンテストでは、区内の小学生から953点、中学生から641点、合計1,594点の作文が寄せられ、多くの優秀作品が表彰されました。応募数や優秀作品の数は、東京都の中でもトップクラスであると伺っております。


 さらに池袋中学校吹奏楽部が東日本・学校吹奏楽大会への出場を決めるなど、豊島区の子どもたちはスポーツだけでなく、文化の面でも目覚ましい活躍を遂げております。今後も、次代の豊島区を担う子どもたちの健やかな成長・活躍を心から願っております。


8 和解


 最後に、訴訟上の和解について申し上げます。


 平成25年第1回定例会においてご承認いただきました緊急雇用創出事業受託金返還請求に関する民事訴訟等の3議案にかかる訴えの提起につきまして、今月の1日に東京地方裁判所より和解勧告を受けました。勧告の内容を慎重に検討した結果、相手方の株式会社辰巳及び代表取締役と和解することといたしました。


 辰巳側は、損害賠償金および契約違約金について、すでに弁済・相殺した分も含め、約1億1,414万円について支払い義務を認めております。これに対し、実際に回収できる額は、4,954万円であり、半分にも満たない金額となっております。しかしながら、相手方の支払い能力を詳細に調査・分析した結果、これ以上の条件を引き出すことは不可能であると判断せざるを得ませんでした。


 苦渋の決断ではありますが、和解勧告に応じることといたしました。


 支払いは、3,433万円を今年11月末までに一括で、さらに会社から毎月5万円ずつ5年間、代表取締役から毎月5万円ずつ3年間、分割払いを受けることとなっております。区では、この度の事件を契機として、再発予防のため、監督制度の強化や契約期間中の要件確認を行ってまいりました。加えて、社会保険労務士の活用や入札参加事業者取扱いの厳格化についても取り組んでまいります。


 さらに、こうした事案を発生させたことを行政のトップとして深く反省し、区民の皆さんに謝罪の意を示すため、区長・副区長の給料の減額を行うことといたしました。


 今定例会に必要な条例案を上程しておりますので、ご理解賜りますようお願い申し上げます。


 「危機」という言葉は、二つの漢字でできている。


 ひとつは『危険』 もうひとつは『好機』である。


 これは、アメリカの第35代大統領、ジョン・F・ケネディの言葉であります。


 豊島区は、5月に行われた消滅可能性都市の発表、6月に発生した危険ドラッグによる死傷事故など、今年度に入って立て続けに大きな危機に見舞われましたが、その度に、迅速果断に適切に対処し、むしろそれをチャンスに変えて全国に「豊島区」の名を響かせてまいりました。


 ピンチをチャンスに転じるには、言うまでもなく、極めて素早い決断と何としてもやり抜いてみせるという強い決意が必要であります。


 振り返ってみれば、本区は、バブル崩壊以後、議会や区民の皆さんの大きなご協力をいただきながら、必死で知恵を絞って長きにわたる財政再建に取り組み、一時は財政再建団体への転落の瀬戸際まで追い詰められた財政危機を乗り越えてきました。そして今、健全な財政基盤を築きつつあります。


 また、庁舎の老朽化の進行、厳しい財政事情という苦しい状況下にあって、これまでにまったく先例のない新庁舎整備手法に果敢にチャレンジし、ついにあと230日で開庁日を迎えるというところまで来ているのであります。


 こうした努力を通じて、豊島区は危機管理能力を高め、スピード感溢れる区政運営、政策を実現していく力を高めてまいりました。


 私は、その先頭に立って、80年を超える歴史をさらに紡ぎ、次代の子どもたちに誇りを持って受け継いでもらえる価値あるまちづくりに向けて、もてる力を振り絞って区政を牽引してまいる決意であります。議会の皆様におかれましても、最大限のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。


 本日、ご提案申し上げる案件は、条例6件、決算認定4件、補正予算4件、その他8件、合わせて22件であります。


 各案件につきましては、後ほど、日程に従いまして、副区長よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜わりますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。