幕末に来日したイギリス人植物学者ロバート・フォーチュンは、染井の植木屋を訪れ、その高度な栽培技術に驚嘆しました。しかし、彼の著書『江戸と北京』では、高い技術を習得した染井植木屋も温室の技術を持ち合わせていなかったと記されています。 |
ところが、染井の植木屋が使っていた地下室(ちかむろ)は、植木屋が使っていたことや、科学的な分析の結果そして各種の文献資料などから考えて、一般的に大名屋敷などで発見される地下式の倉庫ではなく、寒気に弱い植物を保護するための温室としての用途が考えられます。フォーチュンの言う温室とは、ガラス張りのヨーロッパの温室で、染井にある地下室は温室とは思わなかったようです。 |
地下室転用のゴミ穴から陶磁器出土 | 地下室は、本来の機能を終了した後、ゴミ穴として再利用されていました。地下室からは、非常にちいさな植木鉢や植木鉢に転用された半胴甕などの特殊な遺物を含め、数多くの陶磁器が出土しました。 |
| また、地下室を埋める土の中には、炭化した樹木が厚い層となって堆積していました。この炭化材は、植木屋が枝下ろしをした際に切った枝で、焼却した後に一括廃棄したものと考えられます。 |