江戸の玩具

 江戸時代の末期、文化の担い手が武士から町人に代表される庶民層へと移行します。節句人形やままごと遊びは、かつては平安時代の「ひいな」遊びや礼儀作法を覚える武士階級の子供の接客ごっこが形を変えていったものでした。金蘭や錦などを着飾った節句人形とは無縁の庶民にとって、求められたものは手近で安価な素焼きの土人形やこわれにくいものでした。

 染井遺跡からは、今戸焼と呼ばれる素焼きの玩具類が出土しています。それは、「めんがた」と呼ばれる型抜き遊びに使った鬼の面の型、般若の面、「お稲荷さん」をモデルにした狐の人形、箱庭遊びに用いたと思われる建物などでした。このほか、軟質の陶製のミニチュア徳利や陶磁器製の人形なども出土しています。