釈尊入滅涅槃(ねはん)像(最福寺蔵)

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 釈迦の入滅の像である。涅槃とは「仏陀の入滅のことであり、後転じて仏道修業の成就した境界を言うようになった。」と説明されている。
 なお、涅槃は入滅のほか、寂滅、円寂、円常、滅度、無為、不生不滅、遷化などともいい迦葉品という経典には無生、無出、無作、無為、帰依、窟宅、解脱、光明、燈明、彼岸、無長、無退、安処、寂静、無相、無二、一行清涼、無闇、無礎、無静、無濁、広大、耳露吉祥など皆同意義につかうと述べられている。
 最福寺にある「涅槃像」は、足利時代の作といわれ、全部刺繍で、丈九尺(二・七メートル)幅六尺(一・八メートル)という大きいものである。
 足利時代は一三三八年八月より一五七三年七月に至る間であり、寺院の修復や建立、絵巻などの描かれた時代で、絵師としては一四世紀には、宗舜・円寂・惟久・如心・永快・行忠・明兆などがその腕をふるい、一五世紀には、如拙・宗湛・雪舟などが有名で、一六世紀には土佐光信・光茂・僊可・永徳などの活躍した時代である。
 これらの足利時代の文化はその後のうちつづく戦乱や天災地変に消失したものが多い。
 したがってこの涅槃像が寺伝に言う通り、この時代の作であるなら貴重なものといえる。
 付記 最福寺については本巻の「宗教篇」の寺院の項を参照されたい。

釈尊入滅涅槃像