この青磁の花瓶であるが、青磁であるとすれば、それは中国か韓国の器物であって、その価値はまことに高いものがある。
というのは、青磁・白磁の焼物は、九二〇~一二九〇年頃、中国において五代から北宋・南宋の時代に創製されたものであり、その影響を受けて朝鮮半島の高麗で盛んになり、一二~一四世紀を経て李朝時代にその名を高めたものだからである。
この二国の関係を図示すると、次の通りである。
青磁はいくらか灰色がかった青で、その光沢はあまり強くない。しかし、当時の両国の工人は、天性の美意識をもっていて、無造作に作るにもかかわらず、肩・胴・脚に流れる調和のとれた線、気品、高雅さ、艶麗さ、渋さは言いつくせない温かさをもつといわれている。
付記
本漸寺については、本巻「宗教篇」の寺院の項を参照されたい。