序説

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 文化財保護法第一章第二条に文化財を定義しているが、その二に「演劇・音楽・工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いもの」を「無形文化財」というよう規定している。
 こうしたものは、東金市にも各地に散在している。
 すなわち「ドンド」「御歩射(おびしゃ)」「初午」「子安講」「千部講・念仏講・観音講」「花見祭」「花祭り」「天王様」「浅間様」「どろんこ祭」「やっさ祭り」「日吉神社祭礼(水祭)、田間神社祭礼」「天神様」「七夕祭」「獅子舞」「八幡神社祭礼」「エビス講」「七五三」「おたきあげ」等枚挙(まいきょ)にいとまのない程である。
 そしてその一つ一つの年中行事に関連して「獅子舞」「はやし」などが伝承されて来ている。
 これらのうち、県は「東金ばやし」「北之幸谷獅子舞」を、市は「新宿囃子」「表谷羯鼓舞」をそれぞれ無形文化財として指定している。
 この無形文化財は、神事・仏事に関連したものが多く、郷土の先輩達が、住民の連帯感の昂揚や、郷土意識の培養、あるいは後輩指導の手だてとして、積極的に伝承し続けて来たものと見ることができる。いわゆる郷土の歴史の記念碑である。それが住民の信仰意識の衰退から、兎角失なわれ勝ちになるのであるが、郷土文化の護持という感情や郷土文化の創出という立場から、文化財保存の思想が昂揚しつつあることを喜びたい。
 たとえば、「御歩射」など各地で行なわれているが、案外社交の場として飲食のみにはしり勝ちであるが、今なお、当番の家がきまり、身を清めて、正装の上に歩射神事を行なうところもあり、一時消滅したかに見えた「獅子舞」を復活させている地域もある。
 私たちはこうした先人の残した文化的所産を、歴史的にも芸術的にもその価値をほり起こし伝承して行くべきではなかろうか。