庭木に松を植えるな

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 どこの家でも、門を作り、庭を作る。そして、門かぶりの松を植えたり、築山をつくったり、池を掘り、石をおいて楽しむ。
 ところが、二又(東金市二又)地区には、いつ頃から言い伝えられたのか明らかでないが、松の木を庭にうえると、よいことがないといい伝えられている。そのためであろうか、門かぶりの松のある家はない。そればかりか、庭に松の木を植えてある家はないという。一体、どうして松の木が植えられていないのであろうか。
 古老の話によると
「三社神社の神様が松の木をきらうからだ。」とか、
「三社神社の神様のお告げで、松の木を植えない。」とかいう。
 三社神社は、前の内(東金市前の内)にあり、祭神は天照大神である。そして、前の内と二又の産土(うぶすな)神として地区民にあがめられている。察するところ、
 (1) たんぼの中にある聚落(しゅうらく)で地下水が高く、松がそだたない。
 (2) 松の木は手入れに時間と経費がかかり、経済的に考えると庭木として不適切である。
 ということが根底にあるのではあるまいか。東金市極楽寺にも三社神社があり、応神天皇・天照大神・春日大神を祭神としているという。この地域は山村であり、山武杉が亭々として美林をなしている地域であるが、二又地区と同じような話はないようだ。
 なお、三社神社について、明治四一年(一九〇八)発行の「国史大辞典」によれば、天照大神宮・八幡宮・春日神社を三社というとある。