(一) 年中行事

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 年中行事は、家族や集団の間で、年々くり返される周期的な行事や儀式であって、元来は宮中において行なわれていたものが、公家・社寺・武家の間に伝わり、次第に民間に広まっていったものである。
 年中行事はその集団の範囲によって条件がちがってくる。さらに生業によっても内容が異なり、また、宗教や社会階層によってもちがったものになる。
 年中行事は、歳事、節、折り目ともいって、平素とちがう晴れの日、物日、節日、神ごとの日として、節供などの行事で知られている。本来は信仰儀礼としての神事であって、これが正月や盆などのように、各月にわたる年中行事となって伝承されている。
 とりわけ生業についての神事が、年中行事の中心となり、特に長期間にわたり営まれる農作物の栽培に関する農耕儀礼は、「生産暦」としての性格を持つばかりでなく、農作物の生産・収穫についての信仰的行事が多くを占めている。
 すなわち、田の神に関する水口祭や刈上祭、稲を風水害、干害、病虫害などから防ぐための風祭、虫送り、左義長(ドンドン火)、雨乞い祭などがある。
 また豊作を予祝する武射祭、七夕祭もある。この他には、日常生活上の祭事としての子安講などがあり、さらには、これらの祭事に含まれない年中行事もある。
 現在では社会情勢の変化により、祭事本来のものより、商業主義的要素の濃いものや、日常生活に適合させた年中行事が入り込み、そのありかたに変化がみられ、存廃の岐路に立たされているものもある。