千葉・李退渓研究会

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 昭和五八年(一九八三)春まだ早い二月二六日、東金図書館において、千葉・李退渓研究会の設立準備の為、筑波大学副学長高橋進・上総道学研究家松戸光雄・桜井計敏・千葉大学教授赤松弥男・株式会社多田屋社長能勢潔・在日韓国人徳山清一氏等二一名、これに、大韓民国退渓学研究院理事長李東俊氏を加えて、いろいろ協議が進められたが、急拠提案があり、この会を設立総会にかえて、会則、役員選出、会員名簿作成、会員募集、第一回事業等が決定した。
 会則は次の通りである。
第一条 本会は千葉・李退渓研究会と称し、事務所を当分の間、東金市立東金図書館内に置く。
第二条 本会は李退渓の学問を中心に東洋精神文化の研究とその普及に努め日韓親善の精神的基盤を確立することを目的とする。
第三条 本会はその目的を達成する為に左の事業を行なう。
   (1) 講演会・研究会・展覧会の開催
   (2) 李退渓及び上総道学に関する資料蒐集
   (3) 李退渓及び上総道学に関する研究業績の刊行
   (4) その他必要な事項
第四条 本会に会長一名・副会長若干名・理事長一名・副理事長・理事・監事・顧問・評議員それぞれ若干名を置く。会長・副会長は理事を兼ねる。
   会長は会を代表し、理事長は会務を総括する。
   理事会は会の活動方針に従ってその運営に当る。
   会長以下の役員は現事会で選ぶ。
   役員の任期は三年とする。但し、重任をさまたげない。
第五条 会員は本会の目的に賛同する者で、会員の推薦により理事会において決定する。
第六条 本会は年一回定期総会を開催する。但し、必要のあるときは臨時総会を開催することができる。
    総会の決議は出席会員過半数の同意を必要とする。総会の招集は会長が行うものとする。
第七条 本会は会員等による篤志の拠出、その他の収入をもって維持する。
    本会の歳出入予算は理事会において決定し、本会の歳出入決算は監事の監査を経て評議員会に報告し承認を受けるものとする。
附則 本会則は昭和五八年四月一日より施行する。
           事務所所在地 東金市東岩崎一の一
 なお、会則第四条による役員は次の通り。
 会長 高橋進(筑波大学元副学長・教授)
 副会長 能勢潔(多田屋社長)
 同   赤松弥男(千葉大学教授)
 理事長 松戸光夫
 副理事長 桜井計敏
 監事 中村孝(協和興業社長)
 同   中村敏一
 理事 発起人を一応理事とする。氏名略。
 この研究会設立趣意書に、
 
「……文化は本来、人間が「よく生きる」ための様々な営為によって形成されてきたものでありますが、総じて現代の高度工業技術文明社会においては、文化形成の原理たる「ものの見方・考え方」にひずみを生じ、人類の身心ともに健全な「よき生」を実現するための文化的基盤さえも極めて不透明なものになってきています。……今や西欧の、とくに知識人は、伝統的固有文化と外来の西欧文化との調和と共存を体現する日本に対して大きな期待を寄せています。」と述べ、日本の伝統的固有文化は大陸文化を受容しつつ形成されたもので、それはまず朝鮮半島に受容されて日本に伝承したこと、その朝鮮半島に傑出した李退渓の学問、それをうけついだ稲葉黙斎、そして上総道学へと論を進め、
 「……現今世界文化の趨勢は、東洋の精神文化に期待するところ極めて大であります。この時にあたり、すでに昭和四八年に設立されている「李退渓研究会」(東京都文京区湯島聖堂内)と軌を一にし、さらに『上総道学』の伝統をも十分に尊重しつつ、李退渓の学問・人物の研究を中心に、『上総道学』の研究ならびに広く東洋の伝統的精神文化の闡明・普及に努め、もって現代における高度工業技術文明社会に対する真の文化的基礎を形成することを期すると共に、偉大なる文化的英雄としての李退渓を生んだ韓国の人々との文化的交流と親善を深めることを念願して、ここにわれわれは、「千葉李退渓研究会」を設立するものであります。」
 
 と結んでいるが、総会時二一名の会員は、一月足らずして四〇名となり、半年後には、約一〇〇名と驚異的に急増している。
 昭和五八年三月二六日、同年一一月五日と既に講演会二回があり、第三回を昭和五九年三月二四日に予定、別に分散している上総道学関係資料の所在目録作成等へ献身の努力がはらわれつつある。
 他の文化団体と趣を異にし、精神文化高揚への今後の努力が期待されるものである。