東金市文化財審議委員会

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 いい古された「温故知新」は古くして新しい言葉であるといいたい。
 というのは、このことは今なお生きているからである。「これはよい」と一心に努力していることが何百年の前にすでに実施されていたとしたら、進歩ではない。「古きもの」より、一歩でも二歩でも進展して始めて「新しいもの」と言いうるからである。
 文化財は、これからの国民文化および世界文化の進歩に貢献するものであって、無用の長物ではない。
 東金市においても、原始文化・古代文化はもとより、中世・近世・近代の文化が埋蔵されていて、天災・人災等によって徐々に消滅している。この消滅を防ぎ、保存し、活用することは後世に生きる人々の責務ではなかろうか。
 奈良法隆寺金堂の焼損は、心ある人々を驚かし、昭和二五年(一九五〇)参議院文化委員会の議員によって、「文化財保護法」が立案され、「法律第二一四号」として昭和二五年五月三〇日にこの法が制定された。
 これをうけて五年後、「千葉県文化財保護条令」が昭和三〇年(一九五五)三月二九日条例第八号として成立している。そして、昭和四〇年(一九六五)には、県文化財保護協会が誕生しているのである。
 法では文化財を
 1 有形文化財(建物・絵画・彫刻・工芸品・書籍・典籍・古文書等)
 2 無形文化財(演劇・音楽・工芸技術等)
 3 民俗文化財(風俗習慣・民俗芸能、これに用いる衣服・器具・家屋等)
 4 記念物  (貝塚・古墳・城跡・旧宅・庭園・橋梁・峡谷海浜・山岳等名勝・動物・植物・地質鉱物等)
 5 伝統的建造物群(歴史的風致を形成している建造物群)
の五つに種類わけしているが、県条例では、この1から4までを対象としている。
 東金市においては、昭和四三年(一九六八)四月一日より、「東金市文化財保護条例」を施行し、条例に規定する「文化財審議委員会」を結成した。委嘱された審議委員は
 鈴木浩  (埋蔵文化財)
 川戸彰  (同    )
 根本茂  (民俗文化財)
 内海禎一 (有形文化財-刀剣)
 前島成  (同--古文書)
 関岡帝一 (同--彫刻・無形文化財)
の六氏であった。委員長は鈴木浩氏であった。
 早速活動に入ったようであるが、「法」および「県条令」の規定によって指定を受けた文化財以外の文化財で、東金市区域内に存するもののうち、市にとって重要なものについて、保存および活用のために必要な措置をとるという活動であった。
 この活動は「広報とうがね」によって、報道されている。今関連記事を列挙すると次の通りである。
昭43・7・1 No161「おたくの家宝を文化財に」
 
 44・11・1~7 「郷土のたからを守りましょう、第一六回文化財保護強調週間」
 
 46・11・1 No218「忘れられがちな郷土の宝後世に伝えたい、東金ばやしと獅子舞など、文化財保護強調週間」
 
 47・7・1 No234「古墳群跡を後世に」
 
 49・4・1 No281「市の歴史をつくるため、みなさんのご協力を」
 
 51・4・15 No330「文化財の保護条例など制定定」(定例市議会から)
 52・5・1 No355「埋蔵文化財に想を寄せて」(大豆谷鈴木浩)
 52・11     「新宿ばやし、市の無形文化財に指定」
 
 55・9     「山本恵一氏所有の欅を天然記念物に」
 
 55・12     「表谷羯子舞を市の無形文化財に指定」
 
等であるが、こうしたタイトルの中で、
 1 文化財の理解
 2 文化財指定の報告
 3 文化財に対する関心、論文
 4 文化財の寄贈、借用依頼
 5 文化財審議会の委員、活動報告
等を行なっている。
 現在までに指定した文化財は、左の一六である。それぞれの概要は別項を参照されたい。
 
番号 指定 種別 名称 所在地 所有者 指定年月日
1 天然記念物 成東・東金食虫植物群落(一五、〇九六m2) 上武射田字入道島一八七四~五 大九、七、一七
2 無形民俗 東金ばやし 岩崎・押堀 いわか会雷囃子保存会 昭三八、五、四
3 北之幸谷の獅子舞 北之幸谷 本地獅子連 昭三九、四、二八
4 天然記念物 日吉神社表参道杉並木三九本 大豆谷八六〇 日吉神社 昭四四、一〇、一
5 史跡 丸山遺跡 四、六〇〇m2 大豆谷字七七二の一 角栄建設株式会社 昭四四、一〇、一
6 天然記念物 墨染桜 一樹 山田字山中台三二五 貴船神社 昭五一、九、一六
7 無形民俗 新宿囃子 新宿 新宿囃子保存会 昭五二、一一、一〇
8 天然記念物 八坂神社の欅、銀杏各一樹 松之郷字東本郷一二六九 八坂神社 昭五三、一一、八
9 天然記念物 欅 一樹 極楽寺二二〇 山本恵一 昭五五、九、一六
10 無形民俗 表谷羯子舞 小野 表谷羯子舞保存会 昭五五、一二、一一
11 有形文化財 閻魔王坐像一躯 田中三一〇 法光寺 昭五六、五、一五
12   〃 山部赤人坐像一躯   〃  〃   〃
13 有形民俗 三社神社絵馬一面 極楽寺三一七 三社神社 昭五六、一二、一
14 有形文化財 八坂神社本殿一棟 松之郷東本郷一二六九 八坂神社 昭五八、二、一四
15 天然記念物 願成就寺の枝垂桜一樹 松之郷願成地四八〇 願成就寺 昭五八、一〇、一四
16 史蹟 三介の墓   〃  〃   〃

審議会委員は次の通りである。

 

 (付) 東金市文化財保護条例(昭和五一年三月三〇日条例第五号)
 東金市文化財の保護に関する条例(昭和四三年条例第五号)の全部を次のように改正する。目次第1章総則(第1条-第3条)
   (略)
第6章 罰則(第29条・第30条)
 附則
第1章 総則
 (目的)
 第1条 この条例は、文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)及び千葉県文化財保護条例(昭和30年千葉県条例第8号。以下「県条例」という。)の規定による指定を受けた文化財以外の文化財で、東金市区域内に存するもののうち、市にとって重要なものについて、その保存及び活用のために必要な措置を定めることを目的とする。
 (定義)
 第2条 この条例において「文化財」とは、法第2条第1項第1号から第4号までに掲げる有形文化財・無形文化財・民俗文化財及び記念物をいう。
 (財産権等の尊重)
 第3条 東金市教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、この条例の執行に当っては、関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。
第2章 指定文化財
 (指定)
 第4条 教育委員会は、市の区域内に存する文化財のうち重要なものを、東金市指定文化財(以下「指定文化財」という。)に指定することができる。
   2 前項の規定による指定をするには、教育委員会は、あらかじめ指定しようとする文化財の所有者、保持者又は権原に基づく占有者(以下「所有者等」という。)の同意を得なければならない。ただし、当該文化財の所有者等が判明しない場合は、この限りでない。
   3 第1項の規定による指定をするには、教育委員会はあらかじめ、第24条の規定により設置された東金市文化財審議会(以下「審議会」という。)に諮問しなければならない。
   4 第1項の規定による指定は、その旨を告示するとともに、当該文化財の所有者等に通知して行なう。
   5 第1項の規定による指定は、前項の規定による告示があった日からその効力を生ずる。
   6 第1項の規定による指定をしたときは、教育委員会は、当該指定文化財の所有者等に指定書を交付しなければならない。
(解除)
第5条 指定文化財が指定文化財としての価値を著しく失った場合、その他特殊の事由があるときは、教育委員会は、その指定を解除することができる。
   2 前項の規定による指定の解除には前条第3項から第5項までの規定を準用する
   3 指定文化財について……(以下略)
 所有者等の管理義務及び管理責任者          第6条
 所有者等の変更等                  第7条
 滅失・き損等                    第8条
 所在の変更                     第9条
 管理又は修理等の補助                第10条
 管理又は修理等に関する勧告             第11条
 修理の届出等                    第12条
 現状変更等の制限                  第13条
 環境保全                      第14条
 公開及び出品の勧告                 第15条
 調査                        第16条
 所有者等の変更に伴う権利義務の承継         第17条
 標識等の設置                    第18条
 選定                        第19条
 解除                        第20条
 保持者の氏名変更等                 第21条
 保存                        第22条
 保存に関する指導又は助言              第23条
第4章 文化財審議会
 (設置)
 第24条 文化財の保存及び活用に関し教育委員会の諮問に答え、又は意見を具申及びこれらに必要な調査研究を行うため審議会を置く。
 (組織及び任期)
 第25条 審議会は委員10人以内で組織する。
   2 委員は学識経験のある者のうちから、教育委員会が委嘱する。
   3 委員の任期は2年とし再任を妨げない。委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 (会長等)
 第26条 審議会に会長及び副会長を置く。
   2 会長及び副会長は、委員が互選する。
   3 会長は、審議会を代表し、その会務を総理する。
   4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を行なう。
 (会議)
 第27条 審議会の会議は、会長が招集し、議長となる。
   2 審議会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。
   3 審議会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のとは、議長の決するところによる。
                          (以下略)
 施行規則                      第28条
 刑罰                      第29・30条
 附則(施行期日)(経過措置)