「五ヶ村民神山王神輿堂之鍵」

(解読文)
五ヶ村民神山王神輿堂鍵
之儀、先例を以大林寺ゟ私方江
預リ来候処、去亥年四月中
私并家内もの共一同農業二
罷出子供而己留す居いたし
罷在候処、訴訟人勝五郎之儀
大林寺先住圓道与馴合
私留主宅江罷越、鍵を取出し
山王神輿之鎖前を押明ヶ
神輿蕨手と申金ナ物を持
出し候旨、帰宅之上承候間、其段
勝五郎江懸合候処、無拠金子
入用有之、右わらひ手金物
持出し質物ニ入候間、其旨承知
致呉候様申之候得共、右ハ大切成
(わらひ手)蕨手無懸合も持出し
質物ニ入候段、不当之儀二付、早々
受戻し相帰候様度々懸合候へ共
取敢不申候二付、無拠村役人江
相届候得とも平日強勢之勝五郎
二付、一圓取敢不申、右蕨手
無之候而ハ、当六月十五日山王
神輿候得とも差支ニ相成甚タ
難儀至極仕候間、何卒以
御慈悲早速受戻し相帰し
山王神輿差支ニ不相成様被
仰付被下置度奉願上候、已上
 
    清水領知
    上総国山邊郡台方村
       与頭
         太郎左衛門
文政二子年五月
 
御奉行所殿
 
 
(大意)
五ヶ村民(台方村の外、辺田方・堀上・大豆谷・川場・押堀)の山王神輿堂の鍵は、以前から私方(台方 与頭)へ預っていますが、去る亥の年の四月、子供以外家族全員が農業に出ていた間に、勝五郎は大林寺の住職 円道と相談(くわだて)、私(太郎左衛門)が留守の時に来て、鍵を取り出し、神輿蕨手の金物を持ち出した。そのため勝五郎へ懸け合ったところ、金子が必要になったため、質屋に入れたとのこと。
この蕨手は山王神輿(祭り)には大切なもので、(勝五郎が)相談も無く勝手にやったことから、早々返却するよう申し入れたが、勝五郎は全く取り合わない。山王神輿(祭り)が差し支え無く開催されるよう、お奉行様の御慈悲(勝五郎に返すよう申し渡してほしいこと)をお願い致します。