農具と工具

 古代の鉄製農耕具は古墳時代にほぼ整えられ、若干の形状変化はあったがその多くは次代に引き継がれていった。鍬鋤先・斧・鎌・(のこぎり)穂積具(ほつみぐ)(きり)(のみ)(やりがんな)紡錘具(ぼうすいぐ)刀子(とうす)などの鉄製農工具やヤスなどの漁具、また金槌(かなづち)鉄鉗(てつばさみ)などの鍛冶具(かじぐ)も揃い、多種多様な鉄製道具類が生活の一部として普及した。さらに道具類には鉄製のものだけでなく、この工具を使って作る木製のものも多く存在していたのである。
 このように鉄製の道具類が必要となった背景には、おそらく中央政府が出した法令「三世一身法」(723年)や「墾田永年私財法」(743年)などによって開墾が活発となり、その私有化が許されるようになったことが主に指摘できよう。

「農工具装着」図


「穂積具」使用図