五輪塔は、明治40年ごろに願成就寺に隣接する若宮八幡神社の畑地より出土し、同寺墓地の高台へと移築されたと伝わっています。五輪塔に施された様々な装飾や技法などの特異性から、当時の国家権力の中枢にあった人物に関係するものと推測され、「異形の五輪塔」などとも表現されています。三基が現存しており、形状からも三基は同時か極めて近い時期の建立されたものと考えられます。
この五輪塔は平成27(2015)年に本間岳人を中心に調査が行われ、全国的にも他に例がなく、極めて貴重な装飾様式であることが明らかになりました。また、本間氏は「千葉県東金市 願成就寺五輪塔調査概報」(2016)の中で、この五輪塔について「石材は130㎞以上離れた群馬県天神山産であると推測されること、一般的な石造の五輪塔が普及する以前の13世紀中葉に推定される古塔としても重要性を有している」と評価しました。
参考文献
「千葉県東金市 願成就寺五輪塔調査概報」(2016) 本間岳人
「上総・願成就寺の凝灰岩製五輪塔『考古学の諸相Ⅳ』坂誥秀一先生傘寿記念会」(2016)本間岳人
(図①)五輪塔
(図②)五輪塔 背面
(図③)中央塔 実測図①
(図④)中央塔 実測図②
(図⑤)左塔 実測図
(図⑥)右塔 実測図
図①~⑥は、「千葉県東金市 願成就寺五輪塔調査概報」(2016)より引用しています。