発刊にあたって

 豊橋市が誕生したのは明治三十九年、二十世紀に入って間もない頃でした。今、余すところわずかとなったこの世紀は、世界にとってまさに激動の時代でありました。豊橋の歩みも国の歩みと共にあり、その道は決して平坦ではありませんでしたが、空襲による廃墟から血と汗のにじむ必死の復興をはじめ幾多の苦難を乗り越えて、今や東三河の中核都市として発展して参りました。これも、先人のたゆまぬ努力と英知の結集の成果にほかならぬことと心から感謝と敬意を表します。
 本市は平成八年の今日、市制施行九十周年の記念すべき年を迎え、来たるべき二十一世紀に向けて更なる躍進を遂げようとしています。いうまでもなく、次の時代を希望に満ちた輝かしい世紀にするか否かは現在を生きる私たちの肩にかかっています。そのためにも、過去から現在へと受け継がれ積み重ねられてきた郷土の歴史を学び、それを未来に踏み出す一歩の教訓とすることが肝要です。幸い、本市には昭和四十八年以来、その道に造詣の深い諸先生によって編纂された「豊橋市史」がありますが、何分にも八巻に及ぶ膨大な文献のゆえ、日常生活の中で一般市民が手軽に読めるダイジェスト版をとの要望も一方でありました。こうした声に応え、各種記念事業の一環として市内小中学校の先生方のお骨折りにより、「とよはしの歴史」を刊行する運びになりました。
 どうか、ひとりでも多くの市民の方々が本書を手にされて本市の歴史に親しみ、郷土を愛する心の糧とするとともに、あすの豊橋を築く一助とされるよう念願してやみません。
   平成八年三月

豊橋市長 高橋アキラ