全国有数の農業地域

377 ~ 379 / 383ページ
 昭和四十三年(一九六八)の豊川用水の開通は、東三河地域の農業に革命をもたらした。施設園芸が増え、高収益の農業経営へと大きく変わった。
 ところが、通水から六年めを迎えた昭和四十八年の夏、異常気象により宇連ダム地点の降水量は平年の三分の一にしか満たなかった。水がめである鳳来湖は干上がり、農業用水を四〇%から五〇%節水しなければならない状況に追い込まれた。思いもかけない非常事態である。すでに豊川用水は、東三河地域の農業にとって欠くことのできないものとなっていた。生産性の向上も、経営の安定も、用水によって豊富な水を確保できればこそであった。昭和五十一年、豊川用水に関係する一九団体の代表が集まり、八木一郎を会長とする豊川総合用水事業推進連絡協議会が結成された。県と農林水産省の協力を得て、豊川用水の新しい水源を求める事業が着手されたのである。
 そこで、設楽(したら)・大島の二つのダム構想は、水源地域の人々の反対で時間がかかるとの判断から、豊川用水の受益地の中に三つの調整池をつくることになった。この三つの調整池の貯水量は、合計すると九〇〇万立方メートルである。
 最初に着工されたのは、豊橋市の赤沢町に計画された万場(ばんば)調整池であり、全国で初めて平地のダムとして認可された。工事は急ピッチで進み、着工から六年めの平成二年に完成した。地元の人々が待ち望んだこの万場調整池は、アースダムで五〇〇万立方メートルの水を貯水できる。

万場調整池

 また、昭和六十二年二月には、新城市富岡にロックフィルダムの大原調整池の工事が開始され、この年の十月には田原町に芦ケ池調整池の建設が始まった。さらに、設楽・大島ダムも建設への明るい見通しもでてきている。
 東三河地域は温暖な気候であり、安定した水の供給さえあれば、土地生産性の高い農業が展開できる。豊橋市の平成二年度における農業粗生産額は五九八億円に及び、全国市町村別では飛び抜けて第一位である。
平成2年度全国農業粗生産額
順位市町村名粗生産額
1位豊橋市(愛知県)59,823
2位別海町(北海道)36,373
3位都城市(宮崎県)35,514
4位渥美町(愛知県)32,413
5位浜松市(静岡県)32,187
(単位:百万円)

 この年の経営部門別を見ると、トマトが全国二位、キャベツが全国三位、豚肉が全国四位、鶏卵が全国五位というように園芸と畜産分野を中心とする農業の進展が著しい。また、地域別に見ると、開拓地の多い南部地域では、畑作中心に露地栽培や施設園芸が進み畜産農家も多くなっている。豊川流域の西部地域では、早場米を中心とした稲作が多くみられ、北部地域では石巻の柿づくりやぶどうに代表されるように果樹栽培が盛んである。
 平成二年度における経営規模を見ると、市内の農家一戸あたりの経営耕地面積は九五アールであり、県平均の六五アールと比べると高い数値を示している。その階層分布を見ると、二ヘクタール以上の大規模農家が増えてきている。このような経営規模の拡大は、国際競争力をつけるために避けて通れない道である。