(アカトンボ)
【自然】
「夕焼け小焼けのアカトンボ~」と歌われるように私達には身近な存在である。実はアカトンボという名のトンボはいない。一般にはアカネ属とほかの一部の種を指した総称である。日本に生息するアカネ属のトンボは、ナツアカネをはじめ、アキアカネ、マユタテアカネ、ヒメアカネ、ノシメトンボなど21種が含まれる。21種の中には北方系種で愛知県には生息しない種や、海浜性の偶産種なども含まれるため、豊田市には12種のみが生息する。そのほかの赤いトンボとして、全国にみられるウスバキトンボや、成熟した雄の体が真っ赤になるショウジョウトンボなどもアカトンボとみなされる。ただ、アカネ属のトンボの中には成熟しても黒みが強い体色のままのマダラナニワトンボや、翅の大部分が橙黄色となる美しいキトンボもいる。昔、秋になると唱歌にあるような夕日に照らされたアカトンボの群れがみられたが、今はほとんどみられなくなった。トンボの生息環境が少なくなったことはもちろん、アメリカザリガニやブラックバスなどの外来天敵が増殖したこともアカトンボの減少に大きく影響している。さらに近年ある種の農薬がアカトンボの生息に重大な打撃を与えているという報告もあり、今後も目が離せない。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻628ページ