秋草遊鹿双鳥鏡(豊田市蔵)

 

(あきくさゆうかそうちょうきょう)

【美術・工芸】

面径108.9mm、銅鋳造、平安時代。県指定文化財。神が降臨すると信仰される神奈備型の飯盛山の山頂には、大きな岩が群在する「磐座」がある。大正13(1924)年10月にこの磐座周辺の工事で、和鏡1面と鉄製小刀1点が出土し、その後、昭和27(1952)年には、刻文経筒外容器(猿投窯産のやきもの)の小破片2点が採集されている。この和鏡は周縁が直立する細縁をしており、全体に薄造りで、鈕は捩菊座紐である。鏡背面の文様は繊細なタッチの「箆押し技法」によって秋草と2羽の小鳥、見返りの鹿を描いている。12世紀中頃の年代の刻文経筒外容器と小刀、そしてこの和鏡の出土品の組み合わせは、経塚遺跡(末法思想により仏教経典を弥勒出世の時代まで伝え残すことを目的として、経典を土中に埋納した遺跡)に通有のものであり、その出土地が神奈備型の山頂にある磐座であったことを念頭におけば、これらは経塚出土品のセットであった可能性が考えられる。


『新修豊田市史』関係箇所:21巻442ページ

→ 飯盛山経塚和鏡