『足助八幡宮縁起』

 

(あすけはちまんぐうえんぎ)

【典籍】

足助とその周辺の総鎮守である足助八幡宮の縁起として、室町時代後期に神主源光重により書写された、袋綴1冊の写本。冒頭に、足助神をはじめとして猿投神や砥鹿神という三河国を代表する古社の鎮座を、異界から鬼や猿・鹿が飛行してこの地に至り、神として顕われたという、独特な在地神話伝承が説かれることが興味深い。以降、足助社は薬師を本地として足の病を癒す霊験を、都の公卿や高僧・武家の参詣を通じて記し、後半には遁世者の聖が参籠して諸宗の教理を聴聞し、ついに念仏に帰すという物語で八幡神を讃え、八幡縁起に結びつけていく。中世三河の土地に根ざしながら、さらに全国の宗教動向とつながる世界を映しだす貴重な文化遺産である。なお、足助八幡宮には、近世の真名(まな)(漢文)で書かれた縁起一巻も伝わるが、これはそうした中世的世界がすべて払拭されている。市指定文化財。


『新修豊田市史』関係箇所:特別号85・118ページ