亜炭  

 

(あたん)

【民俗】〈諸職〉

炭化が十分に進んでいない石炭の一種で、燃料として利用された。堆積した木片がそのまま炭化した姿がみられるため、イワキ(岩木)とも呼ばれた。東海地方には岐阜県可児郡御嵩町域を中心に亜炭層が広がり、市域では宮口上など挙母地区西部に及んでいた。亜炭は坑道掘りで採掘され、自家用として田んぼや崖の下から掘り出されることもあった。太平洋戦争前から利用されていたが、燃料に事欠いた戦中から戦後の昭和30年代にかけて盛んに採掘された。市域の亜炭層は1~2mと薄く、坑夫は横向きで膝をついて採掘した。家庭用の亜炭はボール状にして売られ、水分を含んでいたので天日干しし、乾燥させてから使用した。亜炭は空気に触れるとすぐに乾燥し、これをクソガワキといった。また、亜炭は木炭と違って消炭にできず、一度火をつけると燃やし続けなければならなかった。昭和30年代後半に進展した燃料革命で亜炭の需要は著しく減少し、姿を消した。〈諸職〉

『新修豊田市史』関係箇所:16巻192ページ