(あんていどういたい)
【自然】
水分子を構成する水素と酸素の原子には、質量数の異なる同位体が存在する。水素には3つの同位体が存在し、質量数が1と2の水素原子が安定同位体である。酸素には質量数16、17、18の3つの安定同位体が存在する。河川水や地下水の大本となる降水の水素および酸素の安定同位体は、降水が形成されたときの温度の影響を強く受け、その際の同位体分別効果により、季節、緯度、高度によって、水素では2H/1H(δD)、酸素では18O/16O(δ 18O)の同位体比が変化する。同位体の水分子は、化学的には水と同様の挙動で、溶存成分のような土地利用などの周辺環境によって異なる物質の影響を受けることがない。これらの特徴を利用することにより、地域の水循環の中での水の動きを把握することができる。このように、水の動きを把握するために利用される物質をトレーサー(追跡子)と呼ぶ。
『新修豊田市史』関係箇所:23巻213ページ