(いせじんぐうかんみそのまつり)
【近代】
伊勢神宮の神衣祭(御衣祭)は、毎年4月と9月(明治13年以降は5月と10月)に行われる祭祀で、天照大神へ神衣を奉献する行事である。古代には三河国の糸によって織られた神服が供えられたが、応仁の乱によって中絶したという。設楽郡稲橋村の豪農、古橋暉皃はこの神衣祭のために献糸を行うことによって、郡の養蚕業の振興、輸出産業としての育成を計画した。この動きは明治7(1874)年豊橋の国学指導者、羽田野敬雄の提案に始まる。羽田野は『三河国養蚕由来記』、『三河蚕糸考』の著書がある。古橋は郡内の養蚕業の発展のために尽力し、明治13年には北設楽郡稲橋村・武節町村など12か村が神衣祭の調糸の献納を愛知県に出願した。県は神宮司庁への出願を指示し、神宮司庁は14年5月この願を受け入れた。12か村では「神宮御衣献糸申合書」を取り決めた。27年の新しい申合規約では、献糸のための組織の整備、買い上げ資金、製糸所の設置、工女の選任、献糸の調製などを取り決めた。さらに34年には稲橋・武節両村の組合献糸会が結成された。
『新修豊田市史』関係箇所:4巻488ページ、10巻675・818ページ